債権各論　藤岡先生

１．出題年度　　2004年度（秋学期）
２．科目名　　　債権各論Ｃ　
３．担当教員名　藤岡康宏
４．問題文
　　
２問必答

問題一　ある判例をベースにしたものであるが、以下のような事件が起こったとする。

　Ａは韓国籍を有する外国人で、その氏名は漢字によって「崔晶華」と表記されるが、民族語読みによれば「チォエ・チャン・ホア」と発音される。Ｂテレビ局は平成１０年１０月１日及び２日のテレビ放送のニュース番組において、Ａがあらかじめ表明した意思に反して、Ａの氏名を日本語読みによって「サイ・ショウ・カ」と呼称した。Ａは１０月１日の放送を聞いてただちに電話で講義したが、翌日も同じことが繰り返されたので、激怒し、テレビ局に直接赴き謝罪を求めることにした。放送後、タクシーでテレビ局に出掛ける途中、Ｃ運転の車に追突され、重傷を負った。ＣはＤ社の従業員であるが、会社で仕事を終えたあと、会社の車を使用して東京ドームに赴く途中であった。
　この事件において、どのような不法行為が問題となるか。Ａは誰にだれに対してどのような請求をすることができるか(あるいはできないか)について検討しなさい。

問題二　三題の内、一題を選択して答えよ。

(１)　解除の法的構成について論じる意義はどこにあるのか(あるいはないのか)。
(２)　委任における解除の自由はどこまで認めることができるか。
(３)　過失の客観化は違法性との関係にどのような影響をもたらしたか。

1.2003年度（前期）
2.債権各論
3.藤岡康宏先生

（１）高齢に達したＡは数年前にＢから家屋を借り余生を過ごしている。賃料については格別の約束はしていないが、毎月気持ちだけのものを支払っている。正月が過ぎた頃から体調が悪くなったため１月末に入院し、この家屋には引き続き姪のＣに住まわせることにした。梅雨に入って余命いくばくもないと感じたＡは預金通帳と印章をＣに渡し、入院費の支払い、知人へのお礼、葬式、法要など死後の処理を頼んだ。Ａは残暑の厳しい８月末に死亡したが、Ａにはハンブルク在住の長男Ｄがいる。長男は長年帰国していない。Ａの死亡をめぐってどのような問題が生じうるか。

①Ｂが家屋の明渡しを請求したとき、②Ｄが預金通帳と印章の返還を請求したとき、について検討しなさい。

（２）売買と贈与は契約は守らなければならないということにおいて変わりはないとされている。この立法過程で強調された考え方は何を意味するか。売買と贈与の法構造を対比しつつ、簡潔に説明し、問題点を指摘しなさい。

１、２００３年度
２、債権各論
３、藤岡康弘
４、後期問題
２問必答
第一問　Ａ男(中三)は顔見知りのＢ男(中一)が集金した新聞代を奪うことを企てた。ある日の夕暮れ時、校庭裏の空き地に誘い出して殴り倒し、重症で意識不明に陥ったＢから金を奪い逃走した。ＢはＣ病院に運ばれ治療を受けたが、医療ミスで死亡した。この事件でＢの死亡に対してＡは賠償義務を負うか。また、Ａの両親は賠償義務を問われることがあるか。Ａは非行癖があり、両親も不仲で、日頃のしつけも十分でなかったことがわかっている。本件を処理するにはさまざまなアプローチが考えられるが、それらのアプローチを論評しつつ、どのような処理が最も妥当か、自分の考えを述べなさい。

第二問（次の２題の内１題選択）
（１）不動産売買においては手付が交付されることが多い。手付契約は契約の拘束力と関係がある問題とされいるが、その意義と問題点について検討しなさい。
（２）不動産の賃貸借では信頼関係破壊の法理という考え方がよく話題にされる。このような法理がなぜ必要とされるのであろうか。その意義と問題点について検討しなさい。

２００１

債権各論（藤岡先生）-

　二問必答

　一、AはBから土地を借り建物を建てたが、しばらくしてその建物をCに譲渡した。ネット関連の事業で一もうけしたCは数年後、Dに依頼してその建物を建て替えてもらった。しかし、不況のあおりで業績が悪化し、請負代金をまだ払っていない。海外勤務を終えて帰国したBはこの事態を知って驚き、その土地には自分が住みたいと考えはじめた。一方、Dも請負代金を早く払ってもらいたいと先日弁護士に相談したところである。以上の事実関係において、BないしDの要求をめぐって関係者間にどのような問題が生じるであろうか。問題点をあげて望ましい事案処理について検討しなさい。

二、危険負担について債権者主義には問題があり、債務者主義が妥当だとの説がある。債権者主義のどこに問題があり、どのように克服されるべきなのであろうか。また、債務者主義は本当に妥当な考え方といえるのであろうか。危険負担の構造とその問題点について論じなさい。