債権総論　米倉先生

債権総論・米倉先生

２００４
　
次の二問中、一問を選択して答えなさい。二問とも答えた場合には
二問とも採点されません。

一．金銭債務の不履行に基づく損害として、債権者が債務者に対して
支払い請求訴訟を提起した場合に、その訴訟に要した弁護士費用を賠償
請求することは認められるべきでしょうか。是非いずれにせよ、法律上
の根拠を示してください。（100点）
（注）該当条文がこうなっているからとか、該当条文がないからという
だけでは得点にはなりません。

二．詐害行為取消権に関する以下の問いに答えなさい。
（１）詐害行為取消の理論構成の主たるものとして、相対的取消権、
責任説および訴権説がある。これらの三節はつきつめたところ、どこに
相違点を要するのか、指摘してください。
各説自体についての解説はしないでよく、端的に相違点を指摘しなさい。（40点）

（２）詐害行為取消権の被保全債権として、詐害行為後に発生した
遅延損害金債権（以下「債権」を略す）も含まれると解すべきかにつき
甲説は「含まれない」（遅延損害金は元本債務の履行遅滞によって
「新たに」生じたものだから、４１９条１項参照）とし、乙説は「含ま
れる」（遅延損害金は元本債務の「当然の拡張、延長」でしかない
から、４１９条１項参照）と論じています。
あなたは甲乙両説のうち、どちらを採用しますか。
いずれかの結論を採用するにしても、説明を自分なりに試みるという
答え方でもよろしい。法律上の根拠を示して答えてください。（60点）

2003年度
債権総論Ｃ　後期
米倉　明先生

「政府広報」として、次に掲げる記事が出されました。これを読んで、
後掲の設問に答えなさい。解答は(1)－(4)の順に書き、根拠説明を付し
てするようにしてください。そうでないと、大幅に減点します。

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｜政府広報　[中小企業庁]　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜
｜社長さん、ご存知ですか？　　　　　　　　　　　　　　　　　｜
｜　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜
｜●政府は、中小企業者の方々の資金調達力がアップする売債（売掛｜
｜　債権担保融資保証制度）の利用促進を進めています。　　　　　｜
｜●しかし、風評被害が心配、契約上売掛債権が譲渡禁止にされてい｜
｜　るため利用できない、といった中小企業者の声も聞かれます。　｜
｜●全国の社長さん、中小企業の売債へのご理解と譲渡禁止特約の解｜
｜　除に御協力を！　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　｜
└――――――――――――――――――――――――――――――┘

Ａ（個人商店）が得意先Ｂ（大企業）に対して有する現在・将来の売掛
金債権（Ｆ）を、Ｃ（銀行）とＡとの継続的取引から発生する借受金債
務の担保として、ＡはＣに譲渡した。Ａの対Ｃ債務につき、Ａの委託に
もとづいて保証人Ｈがたてられている。ＣはＡ所有の不動産に、右債務
を担保するため、根抵当権を設定し登記した。

(1) 「風評被害が心配」とはどういう意味か。民法のスキームがこうだ
　　から、こうなるという説明をしてください。
(2) ＨがＣに、現在の債務10億円を全部弁済したとして、ＡＣＨ間の法
　　律関係はどうなるか。
(3) Ａが死亡して、その子ＤがＡを相続したとき、ＨはＣＤ間に今後も
　　続く取引にもとづいてＤがＣに対して負担する債務を保証しないと
　　いけないのか。
(4) Ｆには譲渡禁止特約が付されているとする。にもかかわらず、Ａは
　　ＣにＦを譲渡し、Ｂにその旨通知したとする。ＣがＢにＦの弁済を
　　求めた場合に、Ｂがそれを拒絶できるとすれば、どういう理由にも
　　とづいてできるか。二点挙げて説明しなさい。