なのはA's×ギアス11話+12話改

九月末、時空管理局本局、コーネリア提督の執務室・・・
”彼”はコーネリア提督に次の任務への着任辞令を受けていた・・・

「・・・では私は次の任地へ赴くが・・・いいなルルーシュ?
くれぐれも判断を誤るなよ。お前はいつも・・・」
「・・・その口上はもう聞き飽きましたので私は失礼させてもらいたいのですが・・・」
「・・・相変わらずだな、その人を舐め切った態度は」
「誰のお陰でこんな性格になったと思っているんです、提督殿?」

「閃光の女帝」の異名を持ち、時空管理局内はおろか行政府にも強い発言力を持つ彼女に
唯一まともに張り合える男・・・ルルーシュ・ランペルージ
彼は元々ミッドチルダ行政府に強い影響力を持っていた高官の家系の出自だったのだが、
彼らの両親がロストロギア関係のテロに巻き込まれて命を落とし、
その時に救助に現れたコーネリアに幼い妹共々命を救われ
彼女の庇護の元で穏やかに暮らしていたのだが、
自身に魔法の才覚があったことと両親を殺した犯人を自らの手で見つけたいという思いから
時空管理局への入局を志願し、現在では彼女の片腕として辣腕を振るっているのだが・・・
二人とも大の負けず嫌いであり、二人が顔を合わせればいつもこんなケンカ口調で
会話が始まる・・・

「全く・・・本来ならば、我等が全軍で事に臨まねばならぬ事態だというのに・・・
何故今年に限ってこうも”豊作”なのだ・・・!」
「仕方ないでしょう・・・。今年に入って発見されたロストロギアは総計で128、
内、第一種指定物が25、しかも遺跡型が12ですから・・・
それらの調査の為に我々はおろか、行政府や聖王教会の部隊まで駆り出してるのが
現状ですからね・・・シュナイゼル卿が手を回してくれなかったらお手上げですよ・・・」

コーネリアは大きく溜息をついて話を続けた
「・・・ともかく今回のお前の任務はあの”11年前の惨劇”を起こした闇の書の回収だ
くれぐれも油断はするなよ。もし何かあれば我等も直ぐに駆けつける」

彼女の言葉にカチンときたルルーシュはまたも無意味に張り合い始めた
「・・・まだ着任すらしていないのになぜ貴方にギブアップ宣言をしろと
言われなければならないんです・・・?」
その彼の言葉にコーネリアも我慢の限界とばかりに立ち上がり彼を怒鳴りつけた
「もしもの時の事を言っているっ・・・!!お前は指揮官としての自覚が・・・!」

また長くなるなとルルーシュが考えていた時、突如提督宛に緊急の連絡が入った
「提督、アヴァロンより緊急入電です。第237特定放置エリアにて闇の書の不法所持で
手配中の人物を発見、カレン副長率いる第二、第三部隊が現在その者達と交戦中、との事です」
「・・・わかった、ご苦労だったな」
「第237特定放置エリアか・・・ここからではカレンとの合流までに2時間以上掛かるな・・・」
ルルーシュがそう呟いた
「それを言っても仕方あるまい。ルルーシュ、お前は直ぐに現場に向かえ。
現場までの足はこちらで用意する。いいな?」
「了解です、提督」
「いいか、繰り返すようだがくれぐれも判断を・・・」
彼女がしつこくルルーシュに注意を促そうとすると、彼は無理矢理彼女の発言に割って入った
「・・・分かっていますよ。私としてもあの惨劇を再び起こす気など毛頭ありませんからね・・・
では提督、私はこれで失礼します」

余程の事が無い限り見せないルルーシュの決意の満ちた表情・・・
それを見たコーネリアは落ち着きを取り戻し、椅子に腰をかけた
「・・・ふっ、では頼むぞルルーシュ。ハラオウン提督にも宜しく言っておいてくれ」
彼女の笑みを背にし、ルルーシュは執務室を後にした・・・
そこから時間をさかのぼる事1時間前・・・
アヴァロンに正体不明の魔力反応を発見したとの報告が飛び込んできた

「火山の噴火?」
カレンが通信管制官のシャーリーにそう問いかけた
「ええ。第237特定放置エリアにて原因不明の火山活動が確認されて
それの調査に向かった情報部員が奇妙な魔力反応を感知した、という事なんだけど・・・」
「それで、その魔力反応のデータは?検証は行っているの?」
「現在、ドルイド・システムによる検証を・・・あっ、今終わったとこ。メインモニターに回すわね」

メインモニターに映し出された映像を見て、カレンとシャーリーは溜息をついた・・・
「はぁ、大当たり・・・。手配中の容疑者の内2人の魔力反応が送られてきたデータと一致したわ・・・」
「・・・ふぅっ、そうね、なんてタイミングの悪い・・・」
シャーリーの報告にカレンはつい本音を漏らしてしまいシャーリーもそれに同意する
「ホント、もう直ぐルルが来てくれるっていう時に・・・。おまけになのはちゃん達も今は地球にいるし・・・」
「・・・今更そんな事を言ってても仕様がないわ・・・私達だけでも出ましょう。
シャーリー、アースラとの通信回線を開いて、リンディさんに出撃許可を要請するから」
「了解。アースラとの通信回線、開きます。」

「本当にカレンさん達だけで行くの?せめてランペルージ師団長と合流してからの方が・・・」
カレンからの出撃承認要請を受けたリンディだったが、前回の戦闘の事もあってか
素直に要請を承認出来ずにいた・・・
「いえ、ようやく奴等の尻尾を掴んだ以上、この機を逃したくはありません。リンディさん、出撃許可を。」
「ですが・・・」
「大丈夫です。奴等の戦闘スタイルは前回の戦闘で既に検証済みですし、それにいざとなれば私も
”紅帝”を使うつもりです。お任せ下さい。」

カレン達の能力を信じていない訳では無かったが、リンディはやはり彼女達の出撃を渋っていた
だがその時・・・

「・・・僕がカレンさんの援護に回ります。提督はなのはやフェイトを回収した後に現地で合流して下さい」
クロノがリンディにそう提案した
「クロノ・・・!?駄目よそんな・・・!」
リンディは強く反発したが、クロノはそんな彼女を宥め、発言を続けた
「母さん、父さんや多くの人の命を奪ったあの闇の書の復活だけは何としてでも阻止しなければならない
それは分かるでしょう?それに僕もカレンさんも別に死にに行く訳じゃない、
自分と、仲間と、そして罪無き人達を守る為に戦うんです。それが僕達の役目ですから
今度は前回の様な油断はしません。行かせて下さい、”提督”」

クロノの発言に同調し、カレンもまたリンディに懇願する
そんな二人の覚悟に心を打たれ、遂にリンディは彼らに出撃命令を下す

「分かりました。アヴァロンはクロノ執務官の移乗が完了し次第現場に急行、対象の捕縛または排除を行って下さい
我々はなのはさん達を回収の後に現場にてアヴァロンと合流、皆さんのバックアップに回ります。いいわね?」
「了解!!」
彼女の言葉に皆が承服し、応答した
カレンがリンディに例を言い、アースラとの通信回線を切ろうとしたとき、
「カレンさん、どうか気をつけて・・・クロノの事を頼みます・・・」
リンディがカレンにそう呟き、カレンもまたそれに頷いて応えた
そしてカレンは皆の生還を固く心に誓うのだった

こうしてカレン率いる第二、第三部隊はクロノ執務官と共にアヴァロンにて
第237特定放置エリアへと先行、アースラは地球にいるなのは、フェイト、アルフの
三人を引き入れる為に衛星軌道上に待機となった・・・
そして一方・・・
闇の書の纂集を行っていた朱雀、シグナムの二人は、火山地帯に住み着いていた巨大な竜との
戦闘に臨みこれに勝利する。だが、纂集を行う前にその竜が死に際に起こした火山の噴火を起こし
それにに巻き込まれそうになるも、命からがら脱出に成功。二人は安堵の溜息をついていた・・・

「ふぅ、危なかったなぁ」
「全くです。まさかあの竜が我等を道連れにしようとするとは・・・」

それだけ相手も生きる為に必死だったんだと、朱雀はそう考えていた

「朱雀様?どこかお怪我でも?」
「ん?ああ、いや、何でも無いよ。ちょっと考え事をしていたんだ。すまない」
「そうですか・・・それよりもここは危険です。どこか安全な場所に避難しましょう」
「そうですね・・・」

二人は火山地帯を離れ、草原で一休みをする事にした
朱雀は草原で大の字になって寝転がり、透き通る様な青空を見上げていた・・・
「シグナムさん・・・僕達のやっている事って本当に正しいんでしょうか・・・」
「朱雀様・・・?」
シグナムは朱雀の突然の問いにキョトンとするが、朱雀は尚も話を続ける
「・・・確かに僕達は大切な人の命を守る為に戦っている・・・いや、そもそも僕達が生きていると言う事自体が
多くの命の犠牲の上にあるという事、それは理解はしているつもりです・・・
ですが、こうやって何も無い草原や砂漠の上にいると嫌でも考えてしまうんです。
妹の病も”運命”という結果の一つなんじゃ無いかって・・・」
シグナムは押し黙っていた・・・
「・・・ただ僕達は妹の運命を認めたくない一心で無意味な犠牲を他の命に押し付けているだけなんじゃないかって
つい考えてしま・・・」
そんな朱雀の悲壮感に業を煮やしたのか、シグナムも反論し、朱雀の言葉を中断させる・・・

「・・・ならば朱雀様は、はやて様をこのまま見殺しになさるのですか?」
シグナムの言葉に朱雀はハッと驚き、顔を下に向けて自らの迷いを強引に振り切った

「・・・わかってる。それが出来ないから、僕達は戦っている、いや、生きているんだ」
シグナムとて朱雀の苦しみを理解していない訳では無かったが、
彼を生かし諭す為に敢えて苦言を呈し続ける・・・

「朱雀様の御気持ちは分かりますが、今はご自身が生き残る事のみに専念して下さい。
貴方のその迷いは、いずれ自分自身の首を絞める事にもなり兼ねません。
貴方にははやて様という貴方の帰りを心待ちにしている方が居るのです。
その事だけは決してお忘れにならないで下さい」

シグナムの励ましによって心の整理がついた朱雀は彼女に例を言う
「肝に銘じておくよ。ありがとう、シグナムさん。でも、はやてが帰りを待っているのは僕だけじゃない
シグナムさんも、だという事を」

この状況にあっても彼は自分を家族だと認め、自分を求めてくる・・・
シグナムはそんな彼に心の中で深く感謝する
「ふふっ、言ってくれます。その気持ちがあればまだ大丈夫ですね?
さて、もう十分に休息も取れたでしょうし、纂集を続けましょう。
それともまた先程の様な弱音を吐いて逃げ帰りますか?」
シグナムの言葉にカチンときた朱雀は少々膨れっ面をして反論する
「まさか、さぁ行きましょうシグナムさん!まだ全然やれますよ!」
朱雀が決意を新たに立ちあがろうとした時、彼は自分の頭上の青空がぼやけて霞んでいる事に気付いた
「何だ?空がぼやけて・・・目の錯覚か?」
シグナムもそれに気付き、空を見上げる。と、その時だった・・・

「なっ・・・!?」
「馬鹿な・・・!?」

その空間から突如金色の魔力波動を纏った魔導師達が次々と現れ、あっと言う間に
朱雀達を包囲してしまった・・・
二人が突然の状況に驚き呆けていると、その魔導師達の内の一人が朱雀に話しかけて来た

「私達は時空管理局の者です、ってそれは前にも言ったわね・・・?」
朱雀は自分の目の前に居る女性・・・カレンに目を大きく見開いて答えた
「貴方はあの時僕が倒した・・・!」
「そう。覚えていていてくれたのね?なら私達がどうしてここにいるかも、理解してくれるわね?」

焦った朱雀はカレンに反論した
「どうして僕達を捕まえようとするんだ!?僕やシグナムさん達が何かしたというのか!?
ただ僕達は・・・!」
「・・・貴方達は闇の書を復活させようとしている。私達はそれを止めなければならない。
十分過ぎる理由だわ。」

朱雀の言葉にカレンが割って入った。だが朱雀も負けじと反論を続ける
「だからどうしてそれだけで僕達が捕まらなければならない!?
僕はただ、この力で妹を救いたいだけなんだ!!他に何もするつもり・・・」

「ふざっ・・・!!けるなぁぁぁっ・・・!!」

突如朱雀の言葉を叫びと共に阻んだ人物がいた
それは以前シグナムが打ち倒し、リンカーコアを抜き取られた少年・・・クロノ・ハラオウンだった

「何が・・・!何が妹を救う、だ・・・!?寝言を言うなぁっ!!
僕の父や数十億もの人間を無残に殺しておいて・・・!!その力で今度は誰を殺す気なんだ!?答えろぉっ・・・!!」

彼の言葉で朱雀は強い衝撃を受け激しく動揺した・・・!
「そんな・・・!父さん・・・!?数十億もの人間・・・!?シグナムさん!!一体どういう事なんですか!?
闇の書に妹を救う力があるって・・・!、闇の書を復活させると妹が助かるって・・・!
あれは嘘だったんですか・・・!?答えて下さい!!シグナムさんっ!!!」

シグナムは朱雀の問いに答えず顔を背けただ俯くだけだった・・・
見渡す限りの広い大草原・・・
そこにはただ朱雀の悲痛な叫びが木霊するのみだった・・・

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2007年06月15日(金) 16:31:51 Modified by beast0916




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