リリカルスクリーム12話

翌日…海鳴市の上空を二つの影が飛行していた。デストロンか?いや違う。
昨日現れた謎の国籍不明機に関する情報を収集するため航空自衛隊と在日米軍が
それぞれ派遣した早期警戒機「E2C」である。スペック上は探知距離が560kmにも
達し2000以上の目標を識別できるとされるこの機体の出現にデストロンもおいそれと
航空部隊は出撃させる訳にも行かなくなっていた。
そのころ基地の内部では…
「コレ美味ソー!コノ飛行機食わせロ!」
「やめろ!一晩かけて苦労して修理してやっと映るようにしたんだぞォ!」
「檻の中で大人しく寝てろこの能無しトカゲ!」
双頭竜に変形するテラートロンの一員・ハングルーがモニターに映ったE2Cに
飛び掛ろうとするのを工作部隊オートローラーズの一員・オートランチャーと
建築部隊ビルドロンの一員・グレンがやっとの事で制止していた。
「あの状態じゃ航空部隊は出せんな。とりあえずスコルポス達を出撃させて
この山の周りの偵察をさせてるけど。それとスタントロンやバトルチャージャーは
じめ自動車をスキャニングした奴らを出撃させた。あいつらなら目立たない
それにエネルギーを確保せねば…。なにぶんにもこの人数ではじきエネルゴン
キューブが底をつく。」
ノイズメイズとサウンドウェーブの報告を聞いてスーパースタースクリームは
渋い顔をしていた。そのとき…
「エネルギーの収集の任務はこの俺達にまかせてもらおうか!」
「貴様は…?」
「ガイスターズの元リーダー・ホーンガイスト様だ!」「
いつからてめぇがリーダーになったんだ!」
仰々しくスーパースタースクリームに名乗ったホーンガイストに
プテラガイストが突っ込みを入れた。
「よかろう…やって見ろ。」
「こんな奴らをマジであてにしてるのかよ?」
スーパースタースクリームにノイズメイズが小声で言った。
「馬鹿を言え。あいつらが出て行けば一時的にせよこの基地は静かになると
思っただけだ。まあエネルゴンキューブのかけら一つでも持って帰ってくれば儲けものだがな。」
その頃…。
「出かけるのかなのは?」
「うん。ちょっとフェイトちゃんの家に…。」
翠屋ではなのはがリンディ提督らが拠点にしているマンションに出かけようとしていた。
「仲がいいのは結構だけどあんまりしょっちゅうお邪魔しても迷惑じゃないのかなあ…?
今度お礼しなくちゃなあ…。」
なのはの父・高町士郎はなのはを見送りつつ頭を掻きながら言った。
「どけどけ〜!」
「わ!」
なのはが道を歩いていると突然フェラーリ308GTB…解りやすく言うと
スポーツカーが前から現れ、乱暴に狭い脇道を疾走していった。
「危ないなあ…。」
なのははむくれた顔で走り去るフェラーリを睨んだ。
しかし…そのフェラーリには運転手が乗っていなかったことになのはは気がつかなかったのだ。
「ん、あいつは!?」
そのフェラーリの正体はデストロンの暴走部隊スタントロンの一員・ドラッグストライプだった。
「ドラッグストライプよりサウンドウェーブへ。緊急連絡だ」
「どうした。」
「昨日戦った訳解らない技を使う人間のチビガキを見つけた。映像を送る。」
「これは…馬鹿な!なぜ奴がこの世界に居る!」
「わかりゃー苦労しねーや!」
「解った。スーパースタースクリームに報告しておく。」
「益々面白い事になってきたッス…。」
物陰でサウンドウェーブとドラッグストライプのやり取りを盗み聞きしていたメカ蜘蛛に
変形するトランスフォーマー・タランスはほくそ笑んだ。

その頃シグナム達が暮らしている八神家では…。ニュース番組にヴォルケンリッターの一員にして
鉄槌の騎士の称号を持つ八神家の一員・ヴィータが見入っていた。
「ではここでハチ研究家の加藤宗賢さんにお話を伺いたいと思います。」
「ハチ研究家の加藤宗賢です。繁殖期のスズメバチは非常に凶暴であり、
年間三十人が死亡しています。これは毒ヘビなどと比較していても突出した数字であり…。」
「ぶ〜ん。僕ちゃんに似た声が聞こえてくるぶーん?それにしてもここはどこなんだぶーん?
僕ちゃんはセーバートロンのお花畑に居たはずなのに…。」
八神家の付近を蜂が一匹飛んでいた。といっても普通の蜂では無かった。
大きさは二十センチほど…日本最大と言われるオオスズメバチの約四倍である。
さらには頭部のみがとってつけたような紫色のロボットの頭であり、
何よりも当たり前のように言葉を喋っていた。
「加えてキイロスズメバチは民家の軒下などにも巣を作ることから非常に危険です…。」
「蜂か…ま、何百匹来たって私が居る限りはやてには針一本…。」
「ここから聞こえてきたぞぶーん。」
ヴィータは愛用のゲートボールのスティックを構えて開放されたままの窓に目をやった。
…しばしの沈黙、そして…
「あ〜んやられた〜。」
その謎の蜂はヴィータが放った渾身の一撃を食らい気の抜けた叫び声を
残して空高く消えていった。
「ヴィータ!どうしたん?」
ドアを開けてヴィータ達守護騎士の主である八神はやてが部屋に入ってきた。
「はやて〜!」
「わ…もう、いきなりどうしたんよ?」
「ハチが居たんだよ〜!こんなでっかい奴が!」
「おー、そら怖かったやろ。もう大丈夫やからなー。それにしても…ハチかぁ
…どっかに巣でもあるんかなあ…物騒やなあ…」
はやてはいきなり抱きついてきたヴィータの頭をやさしく撫でながら顔をしかめ、
言った。
「ぶーんぶん、ぶーん。ひどすぎるう…ただ覗き込んだだけなのに
いきなりバーンだなんて…。訴えてやる!保護責任者出て来ーい…
もう…泣いてやる。ぶん…。」
数百メートルほど吹き飛ばされて墜落した気の毒な
「蜂」はそんな事を言いながら道路を這っていた。しかしその時…
「全く狭い道だな。地球人の道路整備能力はかなりお粗末なものらしい。」
そんな事をひとりごちながらタンクローリーとB747に変形する
デストロンのトリプルチェンジャー・オクトーンが道路の真ん中をノロノロと
這っている「蜂」に迫ってきた。」
全身を損傷していた「蜂」は全く身動きがとれなかった。
「ぶーーーん!?(ああ…僕ちゃんもここで終わりかぶーん。思えば
メガトロン様にそそのかされて反乱に参加してからこっちばらばらになったり
やられたり宇宙を泳いだりバイクロボに改造されたりいろんな事があったけど
僕ちゃんもここで終わりなのかぶーん?)」
しかしタンクローリーが目前まで迫ってきたその時…彼の視界から
突然タンクローリーが外れた。
「あ…」
ふと顔を上げて見るとそこにはやさしそうな表情をした女性が立っていた。
自分はその女性に抱えられているらしい事も解った。
「ノエル〜!いきなり走り出しちゃってどうしたの!?もしはねられたりしたら…。」
「申し訳ありません忍お嬢様…。」
そんな声も聞こえてきたが
「いいおんな…。」
彼は自分を抱えている女性の顔を見つめてそう呟くと意識を失った。

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2007年06月16日(土) 18:08:59 Modified by beast0916




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