THE BELKA OF MAZIKAL5話

スーパーリリカル大戦(!?)外伝 魔装機神 THE BELKA OF MAZIKAL 5話 絶望

「え?今日この町を出て行く?」
翠屋で、マサキとリィンフォースはここには探し人がいなかったため、そろそろこの町を出て行くと桃子に言った。
ちなみに、今恭也とそのすずかの姉の忍はなのはのところへ行っている。
シュウを探すこと自体は、はっきり言ってしまえばずっとここにいても大丈夫だ。
しかし、人を探すといった以上はいつかは離れないといけないし、何より今は管理局の人間と常にいる状況でもある。
前述のとおり、リィンフォースが管理局の人間にばれると少々厄介なので、そのためにも、そろそろ離れる時期なのかもしれない。
「はい、いろいろとお世話になりました」
リィンフォースはそういって礼を言う。
本当にここには世話になった。
「なのはさんには……また後で言っておいてください」
マサキの話と桃子の話である程度の事はさっしたので、なのはの事を話しておいて二人は翠屋を後にしたのだった……

その数日後のこと……
「う…ん……」
高町なのはは目を覚ました。
ゆっくりと、自分がどうなったのか思考するが、なかなか頭が回らない。
それどころか体を動かせない。
体を無理やりに動かそうとすると
「う!」
といううめき声ともに激痛が走る。
何とか動く首を使い周囲を見ると、自分には包帯やチューブがたくさん巻かれていた。
ここは医務室で、今は誰もいないようだ。
(そうか……私……)
なのはは思い出す。あのときの事を。
あのアンノウン02に一撃でやられた事を……
なのはは痛むのを我慢しながら布団のシーツを握り締める。
べつに、自分は最強だなんて思ってはいない。
けど悔しかった。何も出来なかった自分が。
このときなのはは思った。もっと強くなりたいと。
その時、ドアの向こうから何か声が聞こえた。
それも聞きなれた声。
(お兄ちゃんに……お母さん?)
良く見てみたら、ここははやてが入院していたときに使っていた病室に似ている。
アースラに収容された後、なのははこの病院に移されたのだ。
そのほうが家族のほうも都合がいいだろうという事にいたったからだ。
よく見ると母のバックも置かれている。
おそらく先ほどまでここにいたのだが用事でもあってここを離れたのだろう。
ガチャリとドアが開くと、やはりそこには4人がいた。
「お母…さん……」
なのはの言葉に、シャマルの話を聞いていた桃子は驚いてなのはの方を見る。
いつの間にか目が覚めていたのだ。
「なのは……」
桃子は急いでなのはのほうへ駆け寄る。
「よかったあ……」
目を開けているなのはを見て、本当にほっとした桃子。
すぐに恭也もやってきて、なのはが目が覚めた事に喜ぶ。

何故も桃子と恭也がここにいるのかと言うと、話は少しさかのぼる。
「すみません桃子さん恭也さん。ちょっといいですか」
シャマルは二人をを面会室に連れて行った。
その顔は非常につらそうな顔だった。
シャマルが桃子をアロビーへと連れてくると、そこには既にリンディと石田医師が待っていた。
二人ともどこか浮かない顔をしていた。
二人も席に座ると、リンディが重い口をあける。
「なのはさんの事で、重大なお話があるんです。
そう言って、リンディはある資料を渡す。
「なのはさんが怪我を負ってから、今日までの身体に関する記録です」
そこには専門的は用語がずらりと並べられていて、桃子にはさっぱりわからなかった。
「二人も見たあの戦いで、なのはちゃんの体……特に足のダメージがひどいんです。私達も一生懸命治療しましたけど……」
声をかけづらい雰囲気で石田医師はふと黙り込んでしまう。
それほど重症なのだろうか。
包み込む重い空気。
「それで、なのははどうなんですか?」
その中で、桃子は勇気を出して尋ねる。
一体なのは葉これからどうなるのか……
勇気を搾り出すようにシ石田医師は事実を告げる。
「なのはちゃんは……二度と歩けない可能性が極めて高いです。
歩けるようになるには、かなり激しいリハビリをしないといけません後はほとんど運のようなものです」
医師の言葉に、そうですか……と桃子は下を向く。
その目からはぽたぽたと涙がこぼれている。
「それで、しばらくはなのはちゃんが目が覚めても、その事は黙っててくれませんか。しばらくはまだ落ち着いてないでしょうし……心の整理がついてから、私のほうから説明します」
リンディの言葉にわかりました、という桃子。
リンディは、今の彼女の気持ちが痛いほどにわかる。
は自分の夫が亡くなったと聞かされた事を思い出すリンディだった。

「そんな……」
話を聞いて、美由希はショックを隠せないでいる。
その挽、桃子は家族を集めて昼間の出来事を話した。
「それで、歩けるようになる可能性は限りなく低いって……」
桃子はまだ涙を流しながら絶望的な事を言う。
桃子の話を聞いて、家族はただ俯く。
ただ一人を除いて。
「なのはなら大丈夫さ、心配要らないよ」
士郎は家族を励ますように、いつもどおりの笑みを浮かべながら言う。
「なんたって父さんの子供だからね。恭也とおなじで体の丈夫さなら折り紙つきさ」
そう、父士郎も一度生死の境をさまようほどの怪我をした。
だが、今はこのとおり完全に完治している。
そんな士郎の血を引いているなのはだからこそ助かったのだろう。
おそらく、士郎がいつもどおりにいるのも、家族を励ますためのものだろう。
本当は士郎もつらいはずだ。
「だから、みんなも元気出して。桃子も、なのはにもそんな顔で会いたくはないだろ?」
まるで子供をなだめるように桃子をなぐさめる士郎。
本当にこの人が夫でよかったと、桃子は心から思った。

その数日後。
「なのは、大丈夫?」
フェイトとはやてがなのはの見舞いにやってきた。
「フェイトちゃん、はやてちゃん」
二人はあれから毎日なのはの見舞いに訪れている。
今日は習い事でアリサもすずかもいない。
なのははまだ体を動かせない状態であった。
「体の調子はどう?ちょっとはよくなった?」
そういいながらフェイトはなのはの体を見る。
まだ体には栄養を体に補習するチューブがつながれている。
以前までの元気いっぱいの顔が、今では嘘のようにやせ細っている。
「かまないものなら食べられようにはなったよ。あんまり量は食べれないけど」
シャマルの話しによれば、あと1週間もすればほとんどのものは食べられるといわれた。
この痩せ細っている体も、いずれは元の元気そうなすがたに戻るだろう。
「フェイトちゃん、はやてちゃん、どうしたの?」
なのはの言葉に、ふたりはえ?となのはのほうを向く。
何かを考え込むような表所を二人はとっていた。
「あ、いや…なんでもないよ」
「う、うん……」
二人は苦笑いを浮かべながらあははと渇いた笑い声を出す。
それは昨日の事だった。

「やっぱり、無理なんですか……」
フェイトと八神家のメンバーは、アースラでリンディとクロノ、そしてシャマルの説明に愕然とする。
「うん……まだ絶対とうわけじゃないんだけど、歩けるようになるのはほとんど絶望的なの」
シャマルの言葉に、ただ俯くしかない一同。
その中、はやては違う
「そんなことない……何とかなるはずや。私やってあの時はもう歩けへんと思ったけど、今ではこのように自由に歩ける。
せやから、なのはちゃんやって歩けるようになるはずや。元気になるはずや」
はやては自分の事を思い返してみて、自分だって何とかなったのだから、なのはだってどうにかなる。
そう思っている。
「はやて……うん、そうだよね」
フェイトもはやてと同じ気持ちになる。
「勿論、ぼく達もなのはの回復を心から願う。そのためにも、絶対にアンノウン02を捕らえないといけない」
そう、なのはをこんな目にあわせた張本人であるアンノウン02。
これ以上なのはのような人を増やさないためにも、早急に見つけなければいけない。
ヴィータの話からすれば、アンノウン02は魔道機械ではなく、人が変身したようなものだと思うといっていた。
自分達がバリアジャケットを着ているのと同じように。
「そこで、どうにかしてアンノウン01と接触を図りたいんだが……」
02が人なのなら02もそうである可能性が高い。
アンノウン01は02となにかかかわりがあるかもしれない。
そして、まだ断言できないが、敵である可能性はそんなに高くはない。
でなければ、あの時なのはを助けるようまねはしなかっただろう……

などということが先日行われた。
それで、なのはにはしばらくはふせて置くようにといわれたが、隠し事が苦手な二人はこんな顔になってしまう。
「しばらくお風呂に入ってないから早く入りたい。体がべとべとする」
なのはがちょっとした愚痴をこぼし、二人は微笑んだ。
「もうちょっとしたら、お風呂に入れるようにもなるし、おいしいご飯も食べれるようになるよ。そうなったら、私がめいっぱいご馳走したげるわ」
「だから、まだそんなに食べれないって」
いつしか3人には笑顔が戻り、いつもどおりの話などに戻った。
学校ではどうなったのか、など。
「だいぶ暗くなってきてるわよ」
話し込んでいると、ドア越しから石田医師の声が聞こえてきた。
石田医師の声で二人は時計を見てぎょっとする。
既に6時を回っている。
かなり話し込んでしまったようだ。
「すんません。なのはちゃん、また明日な」
フェイトもまたね、といって病室を出る。
誰もいなくなって少したつと、さっきとは打って変わって暗い表情になる。
そして自分の足を見る。
よくドラマなどで、重い病気を抱えた老人が「隠さんでもよい、自分のことは自分がいちばんしっとる」というが、
なんとなくその意味が分かったような気がした。
みんなはなかなか言わないが、おそらく自分の足はかなりの怪我を負っているのだろう。
未だに足がずきずきと痛むのだ。
家族や友達が来るときは何とか元気な姿を見せようと元気に振舞ってはいるが、その間も足が痛む。
黙ってたって言えばみんなに怒られるかもしれない。
みんなは自分のこと心配してくれるのはわかっているが、どうにも強がってしまう。
これも自分の性格のせいだろう。
なのははこれからどうなるのだろうと思い、もう一度布団にスッポリとかぶさった自分の足を見つめるのだった。
「なのは、かなり無理してたね」
フェイトの言葉にはやてはうんと頷く。
フェイトとはやては、なのはは笑ってはいたものの、いつもの笑みではない事にも気付いたし、ちらちらと自分の足の様子も伺っていた。
もしかしたら自分の足の容態に気付いているのかもしれない。
「アリサちゃんたちにはどう話す?」
はやての言葉にうーん、と考える。
「アリサの場合、すぐにでもなのはのところに飛んでいくだろうなあ……」
まだアリサとすずかにはなのはの足の事は言っていない。
すずかはともかく、アリサに言えばすぐになのはのところへ飛んで行って事情を聞くことだろう。
おそらく、なのははまだ何も足の事は知らないだろう。
だから、数日たって落ち着いたらリンディや石田医師のほうから話してくれるといっている。
そういうことに関しては自分達よりも大人に任せたほうがいいだろう。
ただ、普通に話していたのがまずかった。
「で、私に言われたくない事って何?」
後ろからのいきなりの声にギク!と急に足を止めた二人はおそるおそるおそる後ろを振り向くと、そこには腕を組みながら仁王立ちしているアリサが二人を睨んでいた。
そこにはさりげなくすずかもいた。
「取りえず聞くけど、いつから聞いてた?」
ためしにフェイトが聞いてみると、不機嫌そうな顔をくずさずにアリサは言う。
「いつからって……二人が病院から出てきたけど様子が変だったからつけてきたんだけど」
いつの間に…と二人は呆れながらアリサの行動力に感嘆する。
「それで、私達に聞かれたくない話って何よ。なのは関連だって事はわかってんのよ」
すずかもこちらを見つめている。
もはや退路は絶たれた。増援もない……
観念して、二人は現状を話す事にした。
「わかった。けど、なのはもまだしらないことだから、絶対になのはには黙っててね。なのは自体も気付き始めてきてるとは思うんだけど。
それと、話はアリサの家でするけどいい?」
フェイトの提案にアリサも頷き、アリサのほうも時間が時間だから帰りは鮫島に送らせることにした。
そしてフェイトとはやては二人に話した。なのはの足の事を……

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2007年08月01日(水) 11:01:22 Modified by beast0916




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