本家保管庫の更新再開までの暫定保管庫です。18歳未満立ち入り禁止。2013/2/15開設

ヒルダの怪我がようやく治った。
なので古市は騒がしい。
「全快祝いしますからパーッとやりましょうよヒルダさん!」
と、以前にも増して付き纏って来るのが鬱陶しいのだろう。 柳眉を逆立てるのも面倒だとばかりに
ヒルダは手にした本に落とした視線を変えないまま返事をする。
「ほう…貴様も暇だな」
「ヒルダさんの為ならどんなことだって」
「いいから静かにしてるんだな、本が読めんぞ」
少しでも気に入られるようあれこれと言葉を尽くす古市に、以前も今もヒルダは素っ気無い。並の
神経であれば脈がないのだと諦めるところだが、特に何も考えていない。勝算を狙っても明らかに
無駄なのは分かっている。
それでもどこかに付け入る隙があればいい、目的はただそれだけのことだ。
なのに追い打ちをかける者がもう一人いる。
「うるさいわね、ヒルダ姉様を労わろうって気がアンタにはないの?」
いつも何かと側に付き添っているラミアが、明らかに不機嫌な顔で睨んでいる。
「お子様には分からないこともあるんだって」
「なっ!」
子供扱いされてムキになるところが可愛い。そしてやはり子供だ。二人きりならもう少しからかって
いるところだが、ヒルダの目があるのでやや抑え目にしている。
しかしそんな思考がバチ当たりだったのか、とんでもない爆弾を落とされる羽目になった。今の
今まで鼻もひっかけない態度だったヒルダが初めて本から顔を上げてにやりと笑う。
「では貴様は大人だと言うんだな」
「まあ、少しはですけど」
「だからこのようなものを見てるのか。しかし少々対象年齢には達していないようだがな」
言うなり、今までどこに隠していたのか分からないが、ひらりと一枚のDVDを取り出して見せつけ
てきた。それを見た瞬間、頭の中が真っ白になりかけて慌てるしかない。
「ぅわっ!何でそんなモンがここに!」
それは所謂、AVと言われる類のものだ。しかもモザイク処理もかなり際どいタイプで、密かに楽し
んでいた中の秘蔵の一枚でもあった。家族にすら絶対見つからない場所に隠していた筈なのに
どうしてここにあって、ヒルダが持っているのだろうと頭がくらくら混乱してくる。
「ちょっと、それヤバいっすよ…」
「自業自得じゃないの?ちょっとはエロいこと頭から追い出したら」
ヒルダの後ろで、ラミアがせせら笑っている。

もしやラミアが、とも思ったのだが尚更隠し場所など知る訳もない。
だとしたら、容疑者はたった一人だ。
「アンタがあんまり生意気だから、アランドロンにカマかけてアンタにとって都合の悪いこと色々
聞いたの。で、これもその流れで入手したってことよ…バーカ、ドスケベ!」
ラミアは頬を染めて一息で全部言い切った後、憎らしげにべーっと舌を出す。
「うあああ……」
やっぱりあのオッサンかよ、と思わず憤りそうになったのだが、それよりも先にまずはDVDを取り
返さないと何も始まらない。さすがに中身までは見ていないのだろうし。
そんな古市の一縷の望みをあっさり打ち砕き、ヒルダはDVDのパッケージをまじまじと眺めながら
面白そうに唇を歪ませる。
「ほう、デジモザか。男も女も全員全裸にならねばならぬ日が制定された、という設定はなかなか
興味深かったぞ。ウェイトレスの女に男共が寄ってたかって…というのは相変わらず陳腐だった
とは思うがな」
「わあああ!」
中身を見ていなければ分からないないことをすっぱり言われて、もうどうしていいのか分からなく
なりそうだった。いっそこの場から消えてしまいたいと思ったのだが、魔界の女二人はにやにや
しながら次はどう苛めてやろうかと示し合わせているようでもあった。
「古市、アンタの根っこがブレまくってるのが悪いんだから反省しなさい」
まだ顔を赤くしたままのラミアが、精一杯怒った顔を作りながらも事の一部始終を見ていようと
ばかりにぴったりと視線を合わせて言い放った。




どなたでも編集できます