作曲家・多田武彦〔通称・タダタケ〕のデータベース。

混声合唱組曲「わが心の詩」(作詩:山本伸一)

わが心の詩ワガココロノウタ指示速度調性拍子備考
1春風ハルカゼ早く、さわやかに4分音符=約132変ホ長調4/4 
2五月の海サツキノウミ中庸の速度で、堂々と4分音符=約92ニ短調5/4 
3ユメややおそく、幻想的に4分音符=約80ホ短調3/4Baritone Solo
4富士と詩人フジトシジンやや早く、荘重に4分音符=約116変ホ長調4/4 
5爽やかな別れの日にサワヤカナワカレノヒニ中庸の速度で、心をこめて4分音符=約96ヘ長調3/4Tenor Solo (or Soprano Solo)
6秋風アキカゼかなりおそく、憂愁の想いをこめて4分音符=約60ホ短調2/4Solo※
7旅人タビビトややおそく、力強く2分音符=約88ニ長調2/2Baritone Solo
※声部の指定がないが、ト音記号で書かれている。

作品データ

作品番号:T51:G08n
作曲年月日:1982年?月?日

初演データ

初演団体:創価合唱団
初演指揮者:北村協一
初演年月日:1982年?月?日

楽譜・音源データ

作品について

創価合唱団による委嘱作品。作詩者の山本伸一とは創価学会名誉会長・池田大作氏のペンネームである。曲数が多い事、ソロが多く歌い手の力量が必要な事、それぞれの曲が重厚な事など、数ある多田作品の中でも歯応えのある組曲となっている。この作品が高水準の完成度を得ていることに、当時の多田氏の充実ぶりがうかがわれる。
この組曲の作曲は1月2日から開始されたが、その前日まで男声合唱組曲「水墨集」(委嘱:関西大学グリークラブ)を書いていた。なお、1月2日は作詩者の誕生日でもある。
また、第5曲目「爽やかな別れの日に」は、北村協一氏が男声版への編曲を多田氏に直接依頼し、「関西学院グリークラブ第52回リサイタル」のアンコールにおいて演奏された。

(作曲者の言葉)
昭和56年秋、写真詩集「わが心の詩」を頂いた。その「まえがき」の中の作者の言葉を、私は感動的に読んだ。それは、「激流のごとき日々にも、大自然とひとり対話する安らぎのひとときはあった。努めて、そのような心の余裕をもとうともしてきた。・・・・・(中略)・・・・・四季折々の大自然のドラマを呼吸しつつ、私はいつもうるおいと感動を覚えた。その素朴な心の動きを、私は少年時代から一片の詩に託し、書き記してきた。湧き出ずるままに、ノートの隅に、あるいは日記のページにつづったものである。・・・・・(中略)・・・・・詩の心というものは素朴な人間感情の発露にあると思っている。折にふれて高鳴る生命琴線の調べこそ、赤裸々な人間の詩である。素朴なるがゆえに、心のひだに共鳴の和音を広げてゆくのであろう」の一節であった。
私は23歳の時、「多くの人々に永く親しんで歌ってもらえる美しい日本の合唱曲を作曲し続けよう」と志した。爾来29年間、日本の選りすぐられた詩の中から更に合唱曲に合う詩を選んで、いくつかの合唱組曲を作曲しつづけてきた私は、さきに掲げた「わが心の詩」の作者の巻頭言に、「詩と人との関わり合い」「詩作の原点」が言い尽くされているのをみて、それに感動したにちがいない。
ページを繰り開いていく私の眼に、紛れもなく、すばらしい、そして自然で素朴な詩のかずかずと、それぞれの詩の心をありのままに写し撮った写真のかずかずが広がっていった。
この写真詩集を贈ってくださった創価合唱団のかたに「合唱組曲ができますね」と申し上げた。一連の詩の中に、「歌曲として必要な『赤裸々な人間の心』や『自然な起承転結』が溢れていたからである。
後日、「作詩者の了解をとることができたので、是非作曲してください」とのご依頼を受けた。丁度その頃、私は、ある大学からの委嘱作品を作曲していたので、年内はこれに専念し、翌年のお正月から、組曲「わが心の詩」にとりかかる予定をたてた。計画は一日ずれ込み、北原白秋の詩による男声合唱組曲「水墨集」を1月1日の夕刻に書き上げ、巻末奥書に日付を記した。
翌1月2日払暁より、混声合唱組曲「わが心の詩」の作曲にとりかかった。終日、詩を幾度も読みかえし、7つの詩を選んだあと、巻末の著者略歴をみて、著者のお誕生日が、1月2日であることを知った。
作曲は、自然に、流れるように進んでいった。28年間の作曲活動の中でも、こんなにすがすがしい心で書き綴ることができたのも珍しい。また、作曲しながら、私は幾度か、詩の心の美しさに泣いた。この7つ詩は、曲と共に、終生私の心にも深く刻み込まれることだろう。とりわけ、私の好きな詩の一節は、「爽やかな別れの日に」の次の一節である。

 爽やかな日 別れの日から
 よしや相見ることの叶わなくとも
 わたしはよもや忘れまい
 呼び合う心と心の実在を
 刹那の永遠にかけて信じよう

なお委嘱依頼者の関係者のブログに打ち合わせ事のエピソードが記されている。

http://muto3137.seesaa.net/article/444688311.html

歌詩

爽やかな別れの日に

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