カルタグラ〜ツキ狂イノ病〜
序幕
元警官の高城秋五は元上司の有島から少女捜索の依頼を受ける
その少女は過去に逢瀬を交わした逗子の名家、上月家の長女由良であった
由良の父、慶一郎から由良は既に死んでいる事、捜索は茶番であることを聞かされる
由良の妹、和菜に姉の死を納得させる為であった
和菜は姉の所在を確かめる為に、秋五に同行する
また、同時期に上野連続殺人の三人目の被害者が出ていた

第一幕
上野葵町で目撃された由良と思しき少女について聞き込みを始める
結果、「死の腕」の中に「雹」と言う、由良とよく似た人物が居ることが分かる
しかし、その雹も現在は行方不明であることも
決定的な証拠が見つからず、中々進展しない捜索
そんな中、世界の破滅を謳う奇妙な宗教、「千里教」を知る
そして、連続殺人第四の被害者が出る
四肢と頭部を切断され、背に漆黒の羽を縫付けられた惨くも美しい屍
それは秋五の住居である雪白の遊女、乙羽であった
娘の様に可愛がっていた乙羽を殺害され、激昂する雨雀
乙羽の仇を取る為と、秋五は殺人事件の犯人の捜査を頼まれる
秋五に断る選択肢など無かった

第二幕
翌日、乙羽の葬儀が執り行われた
しかし、そこに生前親しかった凛の姿が無い
不安に思う秋五だが、気が紛れるとのことで他の店で働いていただけであった
雪白に戻って来た凛に、「一緒に乙羽の遺体があった上野公園に行きたい」と言われ同行する
雪降る中、悲しみに暮れる凛はひとしきり泣いた後、秋五に「好きだった」と告白する
答えを出した秋五は、仕事に行くと言った凛を見送る
その後、雪白に戻った秋五は凛が戻っていない事を知らされる
先の事件も相まって不安に駆られ凛を捜しに飛び出す秋五
駅前、葵町、繁華街、どこを捜しても凛の姿を見つける事は出来ない
途方に暮れて公園に辿り着いた修吾の前に、七七が姿を現す
殺人事件の犯人はもう分かっていると仄めかされた秋五は七七に詰め寄る
問答を交わした後、七七は「犯人は学園に居る」、そう言って秋五を送り出す
学園に入り込み、血液の臭いを辿って行くと地下室に入り込む
そして秋五が見たものは、脚を切り落とされ磔になっている、命を亡くした凛の姿だった
認め難い現実に茫然とする秋五、それはあまりに無防備であった
突如背後から何者かに頭部を強打され、彼は意識を失う
(→分岐:抜け殻end)
目覚めるとそこに深水薫の姿があった
まさに脚を切り落とされようとした瞬間、冬史が現れ薫と対峙する
難無く薫を払い除け、秋五を救い出す冬史
薫を警察に引き渡し、秋五は病院で療養する
治療を終え、雪白に戻ると雨雀が凛と乙羽の墓参りに行こうと言う
二人を供養した後に、雨雀は秋五に尋ねる「もう事件は終わったんですよね?」と
「終わりましたよ、姐さん」彼は迷いを感じながらも答えた

第三幕
連続殺人事件が解決し、元通り由良の捜索にあたる秋五
そんな折、彼は新米時に警護を担当した綾崎楼子と出会う
もっと話をしたいと言う彼女に事情を告げ、別れて冬史と落ち合い、
冬史の集めた由良に関する情報を整理していると、和菜と公演の美術監督、赤尾生馬に出くわす
殺人事件の解決者と讃える赤尾に、秋五は調子を合わせる
すると、赤尾から自分のアトリエにぜひ来て欲しいと話を受ける
また、和菜からは公演のチケットを受け取る
二人と別れ情報を整理した後、浮き上がった千里教の黒い噂を確かめる為、秋五は千里教本殿に乗り込む
詩草時子により首尾良く進みはしなかったが、教主への謁見を取り付け、一旦引き下がる
夜も更け、二人は帰途についた
(→分岐:初音end)
日を改めて会った秋五は、桜子を公演に誘う
自分の夢を追い生きる和菜の姿に感銘を受けた楼子は、初めて用意された道を外れる覚悟を決める
そしてその自分と共に歩んで欲しいと秋五に告白する
(→分岐:崩壊end)
「幼い頃の憧憬と恋慕を混同しているよ、自分に受ける資格は無い」と告白を断る秋五
失意の彼女を見送り、秋五は雪白に戻る
また、由良捜索の足掛かりを得る為、再び逗子の上月家を訪ねることを決める
和菜と共に逗子を訪れ、その夜を明かす二人
探偵と依頼人の関係はいつしか恋人のそれと等しくなっていた
翌日、上月家を訪れ、由良の捜索を真に行うことを伝える
激昂する慶一郎だが、口外はしないという条件で、由良失踪の真実を語る
当時、盛隆の影も無い上月家は行き詰まっていた
手足の出ない状況にいた慶一郎を、或る研究機関の研究員、ナラハシカズマが訪問する
ナラハシは取引を持ちかける
長女由良には特殊な能力があること、彼女を被検体とするなら援助をする事を
困窮していた上に、或る理由で由良を嫌っていた慶一郎はこの取引に飛びつく
戦時中の軍事研究によって壊された由良は、戦争の終結と共に上月家に返された
泣き叫び、呻く由良を気味悪く思った慶一郎は彼女を部屋に軟禁する
そして秋五との逢瀬を経て、今から五年前に由良は突如姿を消す

第四幕
事実を聞いた二人は、改めて由良を見つけ出す決意を固め、上野に戻る
和菜と別れ、雪白に戻った秋五
だが、そこには有島と秋五と入れ替わりで入った刑事、八木沼が待っていた
殺人事件の重要参考人として連行される秋五
そう、楼子と別れた翌日、彼女は無惨な姿で発見されたのだ
結局、和菜の同行によってアリバイは証明されるが
雪白に大きな迷惑を掛けてしまった秋五は、雪白から引き払うこととなる
冬史の手回しで新居に引っ越す秋五
繁華街を一回りし、家に戻るとそこには荷物を持った和菜が居た
雨雀から秋五の住居を聴いた和菜は、彼と一緒に住みたいと言う
(→分岐:解決、未解決end)
和菜を大切に想う秋五は、彼女と生活を共にすることを決める
離反を起こした時子を匿い、傷の治療を施し寝かしつけると途端に彼女が苦しみだす
彼女は薬によって身体の自由を奪われていた
時子自身が持っていた薬品を注射することで、一命は取り留めることは出来た
だが、発作は再び起こること、千里教から追われていることを鑑み
警察に身柄を預け、安全な状況を作ることを秋五は考える
そこで秋五は有島に時子から聞いた千里教の真実─
父が千里教の教主であったこと、前代教主である父は現教主を連れてきて姿を消したこと、
薫の殺人の指針を示したこと、赤尾が教主の教えを現実のものとするべく人を殺めたこと、
また、教主であった由良を殺し、赤尾の意のままに動く身代わりを据える事で千里教を我が物にすること─
を伝え、警察での保護を頼む
話を聞いた有島は情報を整理する為に一人で考え込んだ後、秋五に使いを送る旨を伝えた
唯一の証人である時子が保護されることで、事件の解決を確信した秋五は家に戻った
そこには首を括り、命を失った時子の身体が吊るされていた
遺書によって自殺と判断されたことで、事件は解決の糸口を失う
また、和菜が居なくなっていることで秋五は混乱する
彼が呆けて佇んでいると冬史が現れ、時子の自殺の異常点を口にする
ふ、と秋五は一つの推測を思い付く
方々に連絡を入れ、推測を確固たるものにした秋五は冬史と共に事件を解決すべく舞台に向かう
本殿、教主の間には赤尾が一人佇んでいた
赤尾は語る、全ては由良の為であり、元凶こそ高城秋五であると
由良に妄執する赤尾は、その心を惹く為に彼女の望む全てを行ったのである
和菜の危険を感じた秋五は冬史に赤尾の相手を任せ、先に進んだ
傷を負っている冬史だが、快く引き受け、赤尾と対峙する
友人であり、惹かれた男に報いる為に
辛くも冬史は赤尾に勝利するが、満身創痍であり、燃え盛る本殿から逃れる術は無かった
一方で、秋五は元上司であり、一連の事件に関わる切っ掛けとなった有島と対峙していた
彼こそが首謀者の一人であった
何も変わることの無い旧体質に絶望し、千里教を裏で操ることで支配者になろうと目論んでいたのだ
秋五と問答を繰り返しながら、彼の身体を撃ち抜いてゆく
秋五の身体も限界が近くなる中、有島は止めの引き金を引こうとする
その瞬間、連絡を受けていた八木沼が現れ、有島の拳銃を撃ち落す
形勢が変わり、有島は追い詰められる
観念した有島は、最期に秋五に敬意を払うかのように一言の忠告を残し、自らこめかみを撃ち抜いた
既に満足に動くことも出来ない秋五だが、和菜を見つけるべくさらに奥に進む
そして、両目から血液を流す和菜を見つけ、彼の意識は途切れる

終幕
一連の事件が解決し、傷も癒えた秋五は毎日の様に和菜の許を訪れていた
和菜の視力は失われてはいなかったが、精神的なショックから眼を開けなくなっていた
それでも秋五は語りかけ、手を握り、口付けを交わし彼女を励ましていた
そんな日々が続いてた或る日、七七が上月家を訪れる
偶然に由良の部屋に居合わせた秋五に、七七は事実を突きつけ、最後の謎解きを始める
和菜の部屋に集まった面々、そして七七は大仰にとある人物を紹介する
それは正に、和菜であった
和菜が二人居る、彼女に成り済ましていた人物こそ、真なる首謀者である上月由良であった
彼女は秋五の傍に居たい、ただそれだけの為に人を殺め、多くの人間を掌の上で躍らせていたのだった
由良である証拠、呪いの証、慶一郎が忌み嫌った印を持つ彼女が幸せに生きる為には、
妹である上月和菜は邪魔な存在であった
だというのに、和菜は自分を手に掛けようとした姉を許し、三人で幸せになろうと説得する
犯した罪を償い、幸せになろうと
彼女の言葉を受け入れ、由良は和菜を自分の許に呼び寄せた
瞬間、由良は和菜の首元に刃を向ける
由良には許せなかった、罪を認めることも、和菜が自分を許そうとしていることも
だからこそ、この時でさえも和菜に手を掛けようとした
しかし、それは一発の銃弾によって阻まれた、秋五の手によって
事件が真に解決をし、和菜は海外留学の話を悩んでいた
自分が夢を求め続ける幸せを得て良いのかと
秋五は彼女に「由良の憧れであり、嫉みであり続けろ」と話す
また、「今も眠り続ける由良は今度こそ守るから」とも
その言葉に力を貰った和菜は、夢を叶えるべく、しっかりと自分の道を歩んでいった -終-


[抜け殻end]
上野猟奇連続殺人犯であり、学園のシスターでもあった深水薫
彼女は子を産めない身体であり、その事実に妄執していた
だからこそ、「子宮を食せば自分も出産出来る様になる」そう狂信し、多くの者を手に掛けた
しかし、孤独な殺人犯は「トモダチ」を欲した
そこで「秋五をペットにする」と言う
一方的に脚を切り落とされ、激痛に意識が飛ぶ秋五
目を覚ますと地下室に鎖で繋がれ、脚を失い、逃げ出せない状況であった
「ペットにエサをあげる」言葉と共に秋五の目の前にシチューを置く薫
それが禁忌たるヒトの肉である事は自明の理である
頑なに食事を拒む秋五
だが心身は疲弊し、空腹に襲われる
ついには都合良く作り上げた凛の幻を見て、ヒトを食してしまう
彼の人間たる意識は失われかけていた
薫のペットとして数日を過ごしたのち、唐突に七七が現れ薫を拘束する
そして救出された秋五は病院に搬送される
彼の精神は完全に衰弱していた
療養の為に郊外へ移送されるが、心は元には戻らなかった
いつしか見舞い客も訪れなくなり、抜け殻の男が出来上がる
七七はこの瞬間を待っていた
満足に動くことすら叶わない秋五に跨り、性交を行う七七
彼女は兄を深く深く愛していた
邪魔する者はもう居ない、抜け殻の様な兄を乗せた車椅子を押し歩みながら、七七は幸せに微笑む -了-


[初音end]
雪白での世話係として甲斐々々しく秋五の世話をしていた初音
以前より慕っていたものの、行動に移せなかった彼女が突然秋五をデートに誘う
デート中に字の練習の為に絵本を買って貰う初音
その絵本は温かく幸せな家族を描いたものだった
そうしてデートを楽しく終えるはずだった……が、初音の様子がおかしいことに秋五は気付く
問い質すと初音は一週間後に遊女として店にあがるという事
そして純潔は秋五に奉げたい事を語る
悩む秋五だが、初音の強い想いを受け、願いを叶える決断をする
初音を抱いた秋五は、「彼女がこんなにも大切な存在であるのか」と理解する
翌朝、初音に一緒になろうと話す秋五だが、彼女は首を横に振る
「孤児だった自分を育ててくれた雨雀さまに恩返しをしないといけないから」
彼女の意志は固かった
面食らう秋五だが、雨雀に初音を身請けしたいことを頼み込む
雨雀は初音を幸せにする覚悟を確認した後、快く二人を送り出す
由良の捜索は中途で終わってしまうが、それでも和菜も二人を祝福した
そして、雨雀の斡旋した教職に就き、雪白の面々とも疎遠になってしまったが、
娘をもうけ、貧しいながらも幸せな日々を過ごす秋五と初音
いつか見た絵本の様な温かい家庭が、そこには在った -了-


[崩壊end]
各界に強い影響力を持つ家の許に生まれた楼子は、相応しい様に振舞っていた
だが政略結婚の話の中、秋五に再び出会うことで憧れと恋慕の情が強くなる
その告白を秋五は受け止める
そして二人は身体を重ね、幸せな一時を過ごす
「また明日も会おう」そんな言葉を雪降る夜に交わしながら
しかし幸せは長く続くことはなかった
楼子が誘拐され、遺体として発見されたのである
更に最後に会っていた秋五に嫌疑が掛かる
旧体質然とした取調べに心を蝕まれる秋五
ついに彼は知らぬ罪を認めてしまう
だが不思議なことに、罪を認めた後は彼は留置所の中に置き去りにされる
拷問に蝕まれた心が、孤独に耐えられるはずも無かった
彼の心は壊れた
人一人居ない虚構のセカイを徘徊し、怯え、微かな音に救いを求め歩いてゆく
音を辿り行き着いたボロボロの部屋
それはあまりに懐かしい光景だった -了-


[解決、未解決end]
和菜を大切に想う故に、危険には巻き込みたくない秋五は、彼女を拒絶する
その言葉に傷ついた和菜は、飛び出していってしまう
これで良い、そう自分を騙しながら秋五は由良の捜索に当たる
一方、千里教内部で離反が発生する
幹部であった詞草時子が、度を過ぎた千里教の真実を知ろうと企てたのだ
彼女は傷を負い、本殿から逃亡する
衰弱しきった彼女を見つけた秋五は、追っ手から彼女を匿うことにする
同時期、誰に知られることも無く和菜が何者かに誘拐される
時子を匿った翌日、千里教信者のリストを手に入れた冬史と会い
リストを眺めると、そこに赤尾生馬の名を見つける
訝しむ二人は、赤尾の真意を探るべく、アトリエを訪れる
アトリエを訪ねた秋五は、赤尾に発破を掛け本意を曝け出させる事に成功するが
冬史と組み、二対一の形になるも赤尾を取り逃がしてしまう
また、アトリエには誘拐された和菜の姿もあった
離れていても和菜に危険が及ぶ、ならば傍で守ろうと考えを改める秋五
和菜を送り届けた後、秋五が自室に戻ると不意に時子に背後から強打される
「やらなければいけないことがある」そんな言葉を聞きながら意識を失ってゆく
目を覚ますと、全ては終わっていた
千里教本殿は焼失し、本殿には時子と赤尾の遺体が
本殿裏には上月由良の遺体が埋められていた
あまりに呆気無い幕引きに釈然としない秋五
だが、確かに連続殺人事件と由良の捜索は終りを迎えたのだ
由良の捜索が終わり、以前より話の出ていた海外留学に向かうことにした和菜
大切に想う彼女を見送り、秋五は覇気の持てぬ日々を送るようになる
幾らかの日が過ぎた或る日、秋五が家に戻ると何者かが家の前に佇んでいた
「ずっと、お待ちしておりました」
そこには、確かに上月由良が居たのだ -了-

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