626 :群青の空を超えて1 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:07:11 ID:XLcmYiWw0
●OHPの紹介文(一部改変)
『群青の空に』の舞台は微妙に異なる歴史を歩んできた近未来の架空日本。
主人公の父親、萩野憲二は政治・経済的に閉塞感漂う中、新時代の社会モデルとして、日本を政治的には分割し、経済的には逆に極東アジア全体を統合する『円経済圏構想』を提唱する。(ヨーロッパ・EU型の超国家圏社会)
折からの地方分権熱と、変革に伴う経済効果を期待する勢力にも押され、議論のすえこの提案は受け入れられる。
ほどなく各地域に広域行政府が発足。
日本は順調に新時代にふさわしい社会システムに移行し得たかに見えた。
だが、新制度発足後間もなく、関東圏行政府は突然、これは旧来と同様の国家単位だとして独立を宣言する(直前に、萩野憲二は暗殺される)。
あくまで、政治システムの分割に過ぎないと考えていた他地域は、激しくこれに反発した。
関東の独立は、経済利益を目的とした一部政財界の私欲に満ちたものだったからである。
利己的な独立を許すくらいなら、旧日本を維持すべきと関西・西日本を中心に指揮された機動隊・一部自衛隊が関東に進出。
独立を阻止しようと、強権的な統治を開始する。
これに対し、様々な自由権を制約された学生が反発。
予備生徒制度を発足させ、レジスタンス運動を開始する。(反日米安保の学生運動に酷似)
東アジア団結を夢想する活動家の扇動、EU型大規模経済圏の成立を望む欧州の密かな軍事支援などもあり、その組織は急速に拡大した。
主に学校単位で編成された予備生徒はやがて、武装蜂起して第一次独立闘争を開始する。
内戦への備えのなかった関西系自衛隊勢力は不意をつかれ敗走。
関東は独立状態を回復する。
同時にアメリカ・ロシアを主とした国連軍が介入。富士川・糸魚川を中心に中立地帯が成立する。
627 :群青の空を超えて2 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:08:39 ID:XLcmYiWw0
この戦争は非常に奇妙な形で推移していた。
戦争そのものに至った表向きの理由は荻野憲二が提唱した理論を巡るイデオロギーの違いだが、本質は利権争いにある。
双方の世論は高速道路や発電所等の大規模インフラに手を出す事を許さず、敵であれ味方であれ民間人に被害が出ることを激しく非難していた。
故に戦闘そのものは兵士同士のみで行われ、戦闘域や戦術は極めて限定せざるをえない状況が続き、それが戦線が膠着した原因でもあった。
……そのまま、戦況が膠着状態に陥って数年。
戦闘は越境しゲリラ活動を行う関東・関西の一部のレンジャーと、停戦監視団の目を盗んで示威行為を行う双方戦闘機の間で交わされるのみになっていた。
その夏、関東政府にとっては独立のシンボル的存在である萩野憲二の息子、萩野社は筑波航空学校に通い、授業と訓練に忙殺される毎日を送っていた。
彼は予備生徒の中でも主戦力扱いされる一種予備生徒に選ばれ、T-2(戦闘機の一種)による実習を終え、年下の水木俊治とペアを組んで、いよいよ念願のグリペン(関東政府の主力戦闘機の1つ)に乗れるようになったのだ。
しかし、悪化する戦況にベテランパイロットは不足がちであり、二人がグリペンで満足な訓練を受けることは難しかった。
その状況を危惧した筑波戦闘航空団司令・吉原大嗣は、目の負傷をきっかけにパイロットを退役して前線に赴いていた教え子、渋沢美樹を呼び寄せ、彼らの指導を依頼する。
飛行予備生徒の一期生として、数々の激戦をくぐり抜けてきた美樹の指導は厳しかったが、社、俊治とも特に選ばれた飛行予備生徒であり、すぐにその教えを吸収していった。
二人は次第に本物の戦闘機パイロットとして鍛え上げられていく。そして、予備生徒の活躍ぶりを報道する為に派遣されたきた報道カメラマン、澤村夕紀を後席にのせ、ついには初の実戦を経験する。
628 :群青の空を超えて3 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:09:45 ID:XLcmYiWw0
数年ぶりに筑波に戻った渋沢美樹には、一つの気がかりがあった。
怯えと躊躇いを乗り越え、かつての恋人であり相棒でもあった日下部諒の仏前に線香を供えに訪れた美樹は、その妹、加奈子と再会する。
加奈子にとって諒は自慢の兄であり、美樹にとって加奈子は諒が最後まで気にかけていた妹だった。
兄を自分から奪ったと、加奈子は美樹を恨んでいたが、美樹は諒に代わって加奈子を大切にしたいと願っていた。
加奈子は整備の手伝いをしに筑波戦闘航空団に出入りしていた。
パイロットの中でも、兄と同じ一種飛行予備生徒として実戦に参加する社は、もっともその立場が諒とよく似ていた。
同級生・俊治をきっかけに、加奈子は次第に社に戦死した兄の面影を追い求めていく。俊治の気持ちに気づかぬままに。
美樹にとって、社と俊治は初めて得た生徒だった。
諒を失って以降、望んで危険ばかり引き受けてきた美樹にとって、教官役は想像以上に意義のある任務だった。
訓練にはげむ二人に、ついかつての自分と諒を重ね合わせてしまう美樹。
二人を庇ってカメラマン、澤村夕紀と反目してしまうのも、自分が一次闘争の英雄とマスコミにまつりあげられ苦労したが故だった。
629 :群青の空を超えて4 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:15:52 ID:XLcmYiWw0
一方、水木若菜は同級生であり、弟・俊治の相棒である萩野社に対して、複雑な感情を抱いていた。
それは主にその父親・憲二の存在が理由だった。
両親は憲二に心酔しており、家庭を顧みない二人に反発する若菜には、逆に印象が悪かったからである。
また社自身も、偉大な父親を持ったエリートのパイロット候補生として見なされ、クラスでは浮いた存在だった。
だが、ささやかなきっかけから、若菜は社やその友人、藤川達也と大賀忠則たちに誘われ、文化祭で一緒に演劇をする事になる。
仮初めの停戦であるにもかかわらず……否、実質的な戦争状態だからこそ、筑波航空学校の文化祭は華やかで盛大だった。
明日の判らない日々に、誰もが想い出を求めていた。一度かぎりの夏を楽しむ蜻蛉のように。
社や俊治、クラスメートの久我聡美、さらには俊治の同級生の日下部加奈子らと一緒におこなうのは、芝居マニアの達也が選んだチェーホフ『かもめ』だった。
密かに演劇に興味があった若菜は、ヒロインの一人として舞台の練習に熱中した……相手役である社と、否応なしに心を通わせながら。
社たち有志による文化祭での演劇は大成功だった。
だがその頃、海の向こうでは、九月第一月曜日の労働祭(LaborDay)を皮切りに、米大統領本選が本格化していた。
その動向は関東と関西の小競り合いに多大な影響を与える。
上層部が本格的な戦いの予感に戦慄する中で……夏が終わり、政治の季節が訪れたのだ。
630 :群青の空を超えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:17:05 ID:XLcmYiWw0
水木若菜シナリオ1
文化祭も終わり、かつてなく社を意識するようになった若菜。
けれどグリペンを駆って何度も支援任務に赴いていた社は直ぐ身近に死を感じていた。
己の未熟さゆえに味方の足を引っ張る事を恐れた社は、持ち得る時間を技量向上に捧ぐ事を誓い、故に若菜の好意を断らざるをえなかった。
落ち込む若菜に、自己嫌悪に苛まれながら荒れる社。
だがその直後の任務で、予想外の地点から対空ミサイルの不意打ちを受けた社のグリペンは撃墜され、彼は行方不明となる。
動揺する俊樹、若菜、美樹達。
一方、社は負傷しながらも何とか生き延びていた。
近くに敵が潜んでいる事を感知した彼は待機して救援を待つのを止め、自力で稜線まで移動する事を選び、体を引き摺りながら移動し始めた。
数日後、懸命の捜索にもかかわらず社は見つからず、生存は絶望視される。
最後のフライトサーチに同行する若菜。
無情にも日が暮れて引き返す時間となった時、天の導きか万に一つの幸運か、彼女は倒れている社を発見する。
死に掛けた事で吹っ切れたのか社は若菜の気持ちに応え、2人はあっという間に親密な仲となった。
戦争の中で一パイロットとして死ぬと呟く社に、その時は一緒だと微笑む若菜。
彼女は社の部屋に同棲するようになり、この恋の行方に未来がないと分かりながら、それでも2人はやがてくる死という名の現実に抗するかの様に体を重ねる。
そんなある日、戦いの転機が訪れる。
偵察機が映し出す情報に関西軍の大部隊が動員された痕が見つかったのだ。
それが大規模侵攻を見据えたものである事は明らかだった。
総力をかけた戦争が始まろうとしていた。
そんな中、俊樹は当初の理想から堕した関東政府の現状に、何のために人を殺して戦い続けるか、明確な理由を求めて悩み、その末に社に懇願する。
自分が社の分まで戦って死ぬから、グリペンを下りて若菜と共に逃げ出す事を。
その申し出を拒絶した社は己の志と信ずるイデオロギーと仲間達の為に最後まで殉じると俊樹に語る。戦争も戦争に参加する自分達も、本当は私利私欲の為に戦っている事を悟りながら。
631 :群青の空を超えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:17:36 ID:XLcmYiWw0
水木若菜シナリオ2
遂に西日本政権(関西政府)との本格戦争が始まった。
彼らは東京に潜りこませていた地上部隊の精鋭たちを使って、都内の主要施設を制圧。
政府要人を失った事を悟った吉原大嗣は筑波戦闘航空団を臨時総司令部として、関東自治共和政府の全軍の指揮権を掌握し、両軍が激突した。
開戦と同時に行われた大規模航空戦、その最中で社とペアを組んでいた俊樹が死亡する。
弟の死に嗚咽する若菜とパートナーの死に唖然とする社。それでも戦いは止まらない。
地上戦を目前に控え、物量と諸外国との後ろ盾の差で勝ち目のない事を自覚しながらも美樹や大嗣は戦線を構築した。
次々と突撃玉砕して散っていく予備生徒達。
最終局面が迫る中で、元自衛隊士官であり、地上部隊の指揮を執っていた岸田徳治一佐と香坂恵実は時間稼ぎと幕引きの為に最前線へと赴く。
筑波の陥落を明日、明後日に控え、パイロットに戻った美樹は社に若菜を連れて蝦夷共和国(作中では東北と北海道はそれぞれ独立している)に逃げるように諭すが、友と己の背負った志に殉じる事を決めていた社はそれを拒絶。
彼の胸には理屈では表せない不転位の衝動とも言うべきものが渦巻いていた。
そんな社に、若菜は最後まで共に在る事を願い、加奈は戻ってきて欲しいと泣きじゃくる。
戦争終結の日、社とペアを組む事になった美樹は、自分と社が生き残らなければ騒乱を引きこしたスケープゴートとして別の人間が裁かれると告げ、苦笑した社はできる限り生き延びる努力をする事を誓った。
だがそれは、たとえ生き延びる事があろうとも、若菜とは会えなくなる事を意味していたのである。
632 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:26:35 ID:XLcmYiWw0
○水木若菜シナリオ ラスト
敵味方入り混じった空の激戦。
圧倒的な不利に立たされ次々と沈んでいく関東軍のグリペン達。
そしてあわや美樹のグリペンまでもが敵機の機銃を浴びて撃墜される直前、吉原大嗣は降伏を宣言した。
ここに、数年間続いていた関東と関西の戦いは、終わった。
安堵と空虚と疲労と無念など様々な感情を抱えながら百里(筑波のすぐ傍に在る基地)に帰還しようとする美樹と社。
しかし到着直前に彼女のグリペンは失速して高度を落としていく。
美樹は既に内蔵をやられ、そして目が見えていなかったのだ。
社の励ましも空しく、彼の前で水柱が上がり、彼女のグリペンは百里の滑走路を目の前にして海の中に消えていった。
十数年後、戦いの首謀者の1人として牢屋に閉じ込められていた社は恩赦によって釈放される。
気がつけば彼の足は筑波へ。そこにはもう基地は無く、彼はロードワークに使っていた道で「カモメ」を演じる少女に出会う。
彼女の名は紗那。あの時に妊娠した若菜と社の娘だった。
若菜と再会した社は、戦後の軌跡を辿り、あの戦いの意義を歴史に問い直すために活動すると言うと、彼女の手を取って、もう一度一緒に居て欲しいと告げる。
そんな社を抱きしめると、若菜は今度こそ死ぬまで共に在ると囁いた。
今更ながら題名の間違いに気が付いた。 orz
639 :名無しさん@初回限定 :2006/01/12(木) 18:59:56 ID:pqoxVYyP0
群青乙であります。
しかし途中から俊治が俊樹になってますよ。
教官とまじっちゃったんだろうけど
641 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:10:28 ID:gJbOVfL30
日下部加奈子 シナリオ1
整備予備生の忠則に頼って整備班の手伝いをするうちに、志願兵となって正式な訓練を受ける事になった加奈子。
そんな彼女の心には文化祭後に亡くなった兄と同じくらい大切な存在となった社の姿があった。
どんなに思っても祈っても願っても兵士達は死んでいく。ならば自分も銃を手に取り、グリペンの整備をして社の役に立ちたいと彼女は、自らの身を戦場に置いた。
やがて社と俊治が自らの手を離れた事を悟った美樹の元に新たなる辞令が舞い込む。
彼女はそれに従って高高度を飛行する戦略偵察機(情報収集が専門なので戦闘機よりもGの影響が少ない)のパイロットとして百里へと向かった。
一方、若菜は官制班の一員に選ばれる。
だが彼女の親友の久我聡美(2種飛行予備生徒→パイロットの卵)はそれを喜びながらも、激戦になれば真っ先に狙われるのが官制だという事を伝え、悔いのない日々を送るように若菜を諭した。
戦力不足を少しでも補うために、訓練用のT−2を実戦様式に換装して聡美や達也たち2種飛行予備生徒に与えるというプランが持ち上がり、故に聡美は迫り来る死の影を感じていたのだ。
ある日、味方の制空権内で突如ゲリラの対空ミサイルに襲われた社のグリペンが墜落。
社は脱出に成功するものの、再びグリペンに乗れるかどうかも分からぬ重傷を負った。
付きっ切りで看病する加奈子。
しかしリハビリに励む中で、社の心には何のために自分や加奈子を含めた学生達が戦っているのか悩み始めていく。
果たして学生達が戦うことで誰が喜び、誰が得をするのか。しかし、そう悩む中で社は己の心に死に対する恐怖が芽生えている事を知った。
社が墜落してから一ヵ月半が過ぎても彼の下肢は殆ど動かなかったのだ。そして社の回復が戦場復帰に繋がる事を知る加奈子は密かにそれを喜んでいた。
642 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:11:31 ID:gJbOVfL30
情背が緊迫する中で見舞いに来た夕紀は加奈子が訓練だけでなく任務に就いている事を社に伝える。
関東政府は関東を焦土化しても戦い、その果てに会津か函館に司令部を移す事を画策し、徹底抗戦の姿勢を崩さない。
その為に飛行予備生徒の中の志願者には全員T−2が与えられ、彼らは絶望的な生存率を覚悟しながらも戦場へと赴く事になった。志願兵の中には聡美や達也の名前もあった。
一方、関西の攻勢は熾烈を極め、俊治らグリペンのパイロットは常に機体の近くに待機して、その傍らで眠る生活を強いられる。
状況の悪化を肌で感じる忠則ら整備班は加奈子に社を連れて疎開する事を勧めるが、みんなを残して逃げられないと即答される。
その同時期に大嗣から社に除隊申請書が渡された。趨勢が関東の敗北で定まりかけている以上、今度の大規模交戦に間に合わなければ社の出番はない。
それを知り、更に予備生の肩書きがなくなれば戦後に捕虜になることもない為に美樹が大嗣に社の除隊を頼み込んだのだ。
そして遂に第二次独立闘争が開戦した。
それを知った社は死への恐怖に縛られて戦いを忌避していた己に強い怒りを覚え、友人達の命が失われる事に恐怖する。
日下部加奈子シナリオ2
数日後、社の病室を訪れた達也は聡美の死を彼に告げ、疎開も現役復帰もせずに病室に閉じこもる社を糾弾する。
その直後、T−2に乗った達也は撃墜され、死んだ。
開戦から二週間後。T−2を与えられた予備生徒の殆どは既に撃墜されて鬼籍に入っていた。
淡々とそれを告げる俊治の態度に激昂する社だが、俊治は自分もこの戦いで死ぬのだから罪悪感を感じる必要などないと冷たく吐き捨てた。
達也の死で恐怖を振り切って現役復帰の手続きをする社に、俊治は社だけでも加奈子を連れて蝦夷に行ってくれないかと懇願する。
関東にいる数万の予備生徒達が絶望的な戦いに命を散らそうとしている現状。その切欠を作った父親。
その事実は社の心から逃げる気持ちを奪っていた。
その晩、加奈子を抱いた社は、寝ている加奈子の傍に蝦夷行きのチケットを置いて去っていく。
それは加奈子との永訣を覚悟した彼なりの身の処し方だった。
643 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:12:28 ID:gJbOVfL30
日下部加奈子シナリオ3
秦野管区から恵実が筑波へとやって来た。
彼女は殆どの戦闘機が撃墜されて仕事の少なくなった整備班を地上部隊として徴用しに来たのだ。
徴用された大多数は戦死する事が確実な最前線への出兵。
一方、美樹は生還が最優先とされる偵察を繰り返して、何度も僚機の危険を見捨てざるをえない己の任務に強い苛立ちを感じていた。
翌日、ほぼ完璧に体調を戻した社は囮役としてT−4に乗る事を志願した。
だが社の行方を探し回っているうちに整備班の徴用に巻き込まれた加奈子は忠則達と共に地上部隊に加えられてしまう。
T−4で出撃を繰り返しては俊治の助けもあって奇跡的に生還し続ける社と、最前線で目の前で次々に仲間の死を目の当たりにする加奈子。
肉片や脳漿の散乱する地上戦の凄惨さは予備生徒達の中から平常心と覚悟を奪い去り、代わりに恐怖を死を与えていく。
それでも恵実は容赦なく彼らを死へと駆り立てた。全員が敵陣に向かって銃剣突撃、逃亡者は射殺。戦場に銃声が木霊するたびに、無数の命が消えた。
そして筑波では敗北が色濃く漂う中、筑波の管制に加わった若菜はパイロット達に迎撃進路を指示して、彼らを死地へと追いやっていた。
何度目かの戦闘で損傷したT−4を最前線に不時着させた社はそこで忠則と加奈子に再会する。
グリペンとT−4の出現に歓喜する予備生徒達。
地上部隊にとって戦闘機の援護は百軍にも優る希望そのものなのだ。
被弾したT−4を廃棄する事を知った俊治は加奈子に、社にはもう飛ぶ機体がないから彼を守って一緒に脱出してくれと頼み、加奈子は遂にそれを承諾する。
だが日の出と共に出撃しようとする俊治を殴り倒した社は、加奈子に想いを告げると、自らグリペンに乗り込んで群青の空へと飛び上がっていった。
644 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:27:30 ID:gJbOVfL30
日下部加奈子シナリオ ラスト
決定的な敗北を前に偵察任務の終焉を悟った美樹は、空の高みから地上で戦う自分達の矮小さを自嘲しながら、恋人の敵(一条貴子)に遭遇。
彼女に一騎打ちを挑んで空に散った。
その直後、若菜は己のいる筑波の地下深くに造られた管制施設を潰しに、地下施設用大型爆弾を搭載した戦闘機の空襲を察知。
多くのパイロットを戦術指示によって死地へと追いやる役目を果たし続けていた自分に、最期が訪れた事を知る。
恐怖に震え、視界がぼやけ、それでも涙声で筑波官制班が全滅する事を関東全域の施設に告げ終わると、若菜の体は一瞬で紅蓮の炎に焼き尽くされて死亡した。
壊滅状態に陥った地上部隊。敵軍から降伏が呼びかけられる中で、忠則と重傷を負った恵実は、加奈子と俊治を逃がすために囮役となった。
社の生死は相変わらず不明なまま、しかし彼らの犠牲で2人は辛うじて蝦夷最北部、紋別へと脱出する事が出来たのだ。
だが社を待ち続ける加奈子はぼんやりと生きた屍の様になってしまっていた。
それを見守り続ける俊治。
虚しさと儚さが去来する中で、買い物の為に街に行こうと扉を掛けた時、ダイヤモンドの輝きの中に人影が映っていた。
立ち尽くす俊治と駆け出す加奈子。
雪原を駆け抜けてその影に抱きつく加奈子の後姿を見届けると、俊治は胸を締め付けるような荒々しい衝動に駆られて、銃を手に取ると独り静かに去っていった。
残された全ての役目が終わった事を悟り、もはやこの地に自分の居場所がなくなったことを理解して。
※
美樹(早期降伏)シナリオ、加奈子(徹底抗戦)シナリオ、若菜(両者の中間)シナリオをクリアするとサブシナリオが見られるようになる。
645 :名無しさん@初回限定 :2006/01/13(金) 13:38:59 ID:+UVL5/Zv0
651 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/14(土) 14:52:53 ID:ms2jDjd/0
●澤村夕紀・長田圭子共通シナリオ
文化祭の後に夕紀と一緒にダンパに参加する社。
話しているうちに彼女が筑波に来る前も最前線にカメラマンとして帯同していた事を知る。
後日、社は彼女から萩野憲二の晩年の愛弟子であり、現在は円経済原理主義者(現在の関東政府の理想から堕した姿を正すために破壊活動も辞さぬテロ組織)の一員でもある長田圭子の保護を頼まれる。
圭子はテロ活動に異を唱え、仲間内から命を狙われ、彼らの手の及ばぬ筑波に逃げ込んでいたのだ。
反発する社に、あなたも殺人者だろうと指摘する夕紀。ショックを受けた彼は結局それを承知する。
敵兵に狙撃され、撃墜される直前に脱出した社は、重傷を負って入院。
見舞いに来た夕紀から圭子と会う段取りを教えられ、退院後に社は予備生徒に変装した圭子と会って、彼女を自分の部屋に匿う事になる。
それゆえに社は仲間から男を部屋に引っ張り込んだホモだと誤解される事になってしまう。
圭子との生活が始まり、そこで社は彼女の口から父・憲二の人柄や彼の理論の目指した先を聞かされる。
彼女の話は社が昔憲二から聞かされた話でもあった。
萩野憲二の目指したEU型の共同通貨が使われる大規模経済圏が環太平洋圏に成立すればアジアからは戦争がなくなる、その理想は利権屋や政治家に歪められ、現実には関東平野は戦死した兵士の血を吸い続けている。
それを理解しているからこそ戦争に反発する圭子と、死んだ者達の信じた理想が間違っていると公言できずに戦い続ける社。
圭子との生活を送る中で夕紀に彼女の様子を報告しに行った社は夕紀から昔、前線で死亡した恋人のカメラマンの話を聞かされた。
人は国家や民族に帰属するのではなく、人を生かすシステムとして国家があると主張しながら第一独立闘争に帯同した夕紀の恋人はそこで死んだのだ。
その話を聞き、現状が理想から出している事を知りながらも、敗北して『絶対悪』のレッテルを貼られない為にも戦い続けるしかない社。
この戦いそのものの無意味さを知りながらも、決してそれを仲間に漏らすことができなくとも、立ち止まる事だけは出来なかったから。
完全悪がいて善がそれを打ち倒す、そんな単純な御伽噺はどこにも存在しないのだ。
652 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/14(土) 14:53:49 ID:ms2jDjd/0
●澤村夕紀シナリオ
やがて圭子と社が周囲に悟られずにそれにうまく生活できている事を知った夕紀は、社と体を重ねた後に、再び最前線に赴く事を告げた。
かつて彼女が取材していた少年兵の死が伝えられた事が夕紀に決意を促したのだ。
真面目に戦うものほど命を落とし、利権を守る為に彼らを扇動して死地へと駆る者が生き残る。
その構造こそがこの戦争の真実であり、そこに奇麗事は存在しなかった。
触れ合った記憶と真実の声を互いの肉体に刻み込み、圭子を社に託すと彼女は去っていった。
血と硝煙と銃声と死の跋扈する最前線に向かって。
●長田圭子シナリオ
社と圭子が同居する事になってから20日。
圭子を匿ってる事が何とはなしに漏れ、社が女を部屋に囲ってるという噂が流れる。
その裏に何らかの深い事情がある事を察した若菜は社と直接言葉を交わして、彼が匿っている人間が関東政府に知られてはまずい人物である事を察した。
若菜と俊治の口から噂を知った社は、いずれ圭子の事が上層部にも知られると悟る。
帰宅してからそれを伝えると、圭子は翌日筑波を出て停戦活動の為に東京に行くと言い出した。
自殺行為だと憤る社。そんな彼に圭子は、社ならば自殺行為だと思っても任務を捨ててグリペンを下りられるのか、と問い返す。
その言葉にあらゆる説得が通じない事を悟る社と、彼に自分の思いを伝え、それでも旅立つと告げる圭子。
社の瞳に映る、停戦のためにはテロも辞さずと微笑む圭子の姿に、たとえ人殺しになっても理想を貫こうと笑う予備生徒達の姿が重なった。
彼女を抱き、そのまま同じベッドで眠りについた社が目を覚ますと、既に圭子の姿はなかった。
圭子は戦いを停めるために東京へ潜入し、社は劣勢に立たされながらグリペンを駆って死神の待ち受ける空を舞う。
その果てに再び巡り合える事を信じて。
653 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/14(土) 14:56:58 ID:ms2jDjd/0
サブシナリオでは戦争の決着については言及されません。
反戦という立場を取る人間の視点から戦争を語る事に終始します。
またメインシナリオ・サブシナリオを全てクリアすると最終章のグランドルートに入れるようになります。
でも短く書こうとすると、もの凄く時間が掛かるのでこれ以上は無理かも。
663 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:36:27 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート1
圧倒的優勢に立った関西は戦後を見据えた方針を模索しつつあった。
だが故・萩野憲二の恩師、藤谷幸一郎と関西空軍のエースパイロット、一条貴子は戦後の国家のあり方に深い憂慮を抱いていた。
アジア共同体の成立はアメリカのグローバリズムを阻害する悪夢であり、それを阻止するためならば、彼の国は容赦なく円経済圏構想を潰すという事が分かっていたからだ。
文化祭直後、社は事前に言い渡されていたある極秘任務についた。
数ヶ月に一度、ランダムに行われる捨て身も作戦。
それは若狭湾に低空侵入して、敦賀の原発を爆撃。近畿地方に一千万人の死をばら撒く事だった。
無論、関西の航空部隊はその迎撃の為に常時大軍を戦略的な価値の薄い場所に置かざるををえず、それこそが関東の狙いであった。
その為に数々のパイロットがランダム関数によって選ばれ、誰にも知られぬままにその任務に就いて命を落としていた。
そして社も、同級生にもパートナーの俊治にも告げぬままグリペンに乗って死地を駆け抜け、撃墜されて関西軍に囚われる。
病院に収容された社は一命を取り留めるものの、パイロットとしての現役復帰は不可能な体となっていた。
予備生徒達が何を思って戦うかを以前から知りたがっていた一条貴子は頻繁に彼を見舞い、言葉を交わしていく内に少年兵達の理念を知るようになっていく。
664 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:37:34 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート2
やがて存在を公表できない社を自宅に引き取った貴子は耕一郎と接触して自宅の鍵を渡す。
それを手にした耕一郎は極秘裏に社と会って、円経済圏構想と理想と大勢が踊らされた裏事情を激しく語り合った。
関東の予備生徒達は今の関東の理想を信じずともその遥か先に在る理想を信じて戦っている、だからこそ自分も戦うのだと主張する社に憲二の姿を見た耕一郎は、
憲二がどうして円経済圏を構想するだけでなく実現させようとして革命じみた運動を始めたのか、その真の理由を語った。
大規模経済圏の成立は同時にNATOの様な大規模軍事共同体の成立を可能にする。そして軍事共同体が正式発足すれば域内の戦争は減少し、息子の社が理不尽な死を被る事もないだろう。
それが憲二の願いであり、そして彼の死後に関東と関西が至った戦争と社の志願こそが憲二最大の誤算だったのだ。
全てを知り、それでもこの戦争は正しいのかという命題を突きつけられた社は何としてもこの戦争にけりをつけると決心した。
そんなある日、社は酒を飲みながら号泣する貴子を見た。
その日、彼女は前線で戦前は操縦技術を指導したこともある関東の自衛官パイロットが、同じく彼女が指導した教え子に撃墜された事を知ってしまったのだ。
泣き崩れる彼女の姿は唯のか弱い女性そのものだった。
社が消息を絶ってから一ヶ月後。
筑波には彼の死が事故だと隠蔽されて伝わり、重苦しい空気に包まれていた。
665 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:38:28 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート3
一方、社は耕一郎の連絡役となった圭子に出会う。
ポケベルを渡された社は耕一郎と連絡を取り合い、停戦の手段を探っていく。耕一郎は関東にも関西にも属さぬ独自活動をするグループを全国各地に組織していた。
彼らは関西側の主戦力である航空機を抑える事でなし崩し的に戦争を停止状態に追い込むクーデターを企んでいたのだ。
停止状態に持ち込んだ上でマスコミを通じて関西・関東の双方に反戦を呼びかけて世論の支持を得る、それが計画の概略だった。
それを打ち明けられた貴子は危惧を抱きながらも参加を誓う。
その裏には戦後の経済権益の分割を視野に入れた政治取引が首相や欧米の政府首脳との間で交わされていた。
戦う者達の背後では密かに政治的な裏取引が交わされて、利益の確保を巡って綱引きが行われている。それに嫌悪感を抱きながらも貴子は社のバックアップを約束したのだ。
その頃、筑波には妙な噂が流れ始めていた。
敗北せずに戦争を終わらして歪められた円経済圏を正しい形で実現するためには、関東政府の抱えている既得権益を手放せばいいと。
だがそれは関東政府に対する反逆に近い思想でもあった。
そして関西では社と圭の間で、筑波航空団を味方につけようと働きかけるために、筑波の予備生徒の誰かに社の生存を打ち明ける計画が持ち上がっていた。
それから程なくして社のいる小牧に若菜がやってくる。
社の生存を確認した若菜は筑波との窓口として働き始め、計画は本格的に動き出していった。
密かに政財界の支持を取り付けるために奔走する社・貴子・若菜。
筑波の予備生徒達の間には社達の企む計画が少しずつ回り始め、かなりの人数が協力を確約する。
だが美樹と大嗣は何故か参加を拒否。涙ながらに懇願する俊治を抱きしめると、次に空で出会った時には自分を撃ち殺せと告げた。
666 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:50:13 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート ラスト
計画が最終段階に入り、真優(社の母)は数兆単位の金を動かして国際相場を混乱させて、関西政府の足を引っ張り始めていた。
けれど筑波戦闘航空団司令・吉原大嗣が動かぬ事を知った若菜は、予備生徒達を鼓舞するために社の声を携えて筑波へと帰還する。
そして公安のマークが厳しくなり、各所へ手が回った事を肌で感じた社達は関東へのを決意する。
だが脱出直前に追っ手に見つかった社と圭を逃がすために耕一郎は殿に立ち、(おそらく)死亡。
社達は戦闘機に乗り込むと関東へと旅立った。
一方、筑波に戻った若菜は予備生徒達の指揮を取って、社の援護体制を整えていた。
だが大嗣と美樹はあえて社の方針に異を唱える者達の受け皿となって状況をコントロールしようと社と袂を別った。
そして日の出と共に関東政府に反旗を翻した予備生徒達のグリペンと、関西政府のやり方に異を唱える貴子ら空自のF−15は社の反戦演説を邪魔させぬように関東・関西双方の残存勢力と熾烈な航空戦を繰り広げていく。
遥か高みの群青の空の彼方に、戦いを宿命付けられた翼を広げて。
その中で丹沢に辿り着いた社は、俊治らグリペンと徳治ら地上部隊の精鋭に守られて演説開始の刻限を待つ。
その頃、大嗣に呼び出された夕紀は、過去の犠牲を諦められずに戦いを続ける者や素直に円経済圏を受け容れられない者達が振り上げた拳を下ろさせるために大義名分を作り出すために彼が命を絶つ姿を見てしまう。
遂に社の演説が衛星回線を通じて関東・関西双方に伝えられていく。
彼を守り、戦争を停めるために、空には予備生徒達が、地上では歩兵達が次々に死を与え、或いは命を散らす。
彼らの犠牲と血に支えられ、社の演説は無事終わった。
補足
結局グランドルートで戦争がどう決着したのか、社や若菜達の生死については一切不明。
戦後について判明している情報は、俊治と聡美は生き残った事。
日本という国が消滅して代わりに円経済圏がアジア規模で成立した事くらい。
これで全部終わりです。
製造メーカーはlight。
円経済理論や詳しい舞台背景が掲載されているOHPアドレスは ttp://www.light.gr.jp/
●OHPの紹介文(一部改変)
『群青の空に』の舞台は微妙に異なる歴史を歩んできた近未来の架空日本。
主人公の父親、萩野憲二は政治・経済的に閉塞感漂う中、新時代の社会モデルとして、日本を政治的には分割し、経済的には逆に極東アジア全体を統合する『円経済圏構想』を提唱する。(ヨーロッパ・EU型の超国家圏社会)
折からの地方分権熱と、変革に伴う経済効果を期待する勢力にも押され、議論のすえこの提案は受け入れられる。
ほどなく各地域に広域行政府が発足。
日本は順調に新時代にふさわしい社会システムに移行し得たかに見えた。
だが、新制度発足後間もなく、関東圏行政府は突然、これは旧来と同様の国家単位だとして独立を宣言する(直前に、萩野憲二は暗殺される)。
あくまで、政治システムの分割に過ぎないと考えていた他地域は、激しくこれに反発した。
関東の独立は、経済利益を目的とした一部政財界の私欲に満ちたものだったからである。
利己的な独立を許すくらいなら、旧日本を維持すべきと関西・西日本を中心に指揮された機動隊・一部自衛隊が関東に進出。
独立を阻止しようと、強権的な統治を開始する。
これに対し、様々な自由権を制約された学生が反発。
予備生徒制度を発足させ、レジスタンス運動を開始する。(反日米安保の学生運動に酷似)
東アジア団結を夢想する活動家の扇動、EU型大規模経済圏の成立を望む欧州の密かな軍事支援などもあり、その組織は急速に拡大した。
主に学校単位で編成された予備生徒はやがて、武装蜂起して第一次独立闘争を開始する。
内戦への備えのなかった関西系自衛隊勢力は不意をつかれ敗走。
関東は独立状態を回復する。
同時にアメリカ・ロシアを主とした国連軍が介入。富士川・糸魚川を中心に中立地帯が成立する。
627 :群青の空を超えて2 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:08:39 ID:XLcmYiWw0
この戦争は非常に奇妙な形で推移していた。
戦争そのものに至った表向きの理由は荻野憲二が提唱した理論を巡るイデオロギーの違いだが、本質は利権争いにある。
双方の世論は高速道路や発電所等の大規模インフラに手を出す事を許さず、敵であれ味方であれ民間人に被害が出ることを激しく非難していた。
故に戦闘そのものは兵士同士のみで行われ、戦闘域や戦術は極めて限定せざるをえない状況が続き、それが戦線が膠着した原因でもあった。
……そのまま、戦況が膠着状態に陥って数年。
戦闘は越境しゲリラ活動を行う関東・関西の一部のレンジャーと、停戦監視団の目を盗んで示威行為を行う双方戦闘機の間で交わされるのみになっていた。
その夏、関東政府にとっては独立のシンボル的存在である萩野憲二の息子、萩野社は筑波航空学校に通い、授業と訓練に忙殺される毎日を送っていた。
彼は予備生徒の中でも主戦力扱いされる一種予備生徒に選ばれ、T-2(戦闘機の一種)による実習を終え、年下の水木俊治とペアを組んで、いよいよ念願のグリペン(関東政府の主力戦闘機の1つ)に乗れるようになったのだ。
しかし、悪化する戦況にベテランパイロットは不足がちであり、二人がグリペンで満足な訓練を受けることは難しかった。
その状況を危惧した筑波戦闘航空団司令・吉原大嗣は、目の負傷をきっかけにパイロットを退役して前線に赴いていた教え子、渋沢美樹を呼び寄せ、彼らの指導を依頼する。
飛行予備生徒の一期生として、数々の激戦をくぐり抜けてきた美樹の指導は厳しかったが、社、俊治とも特に選ばれた飛行予備生徒であり、すぐにその教えを吸収していった。
二人は次第に本物の戦闘機パイロットとして鍛え上げられていく。そして、予備生徒の活躍ぶりを報道する為に派遣されたきた報道カメラマン、澤村夕紀を後席にのせ、ついには初の実戦を経験する。
628 :群青の空を超えて3 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:09:45 ID:XLcmYiWw0
数年ぶりに筑波に戻った渋沢美樹には、一つの気がかりがあった。
怯えと躊躇いを乗り越え、かつての恋人であり相棒でもあった日下部諒の仏前に線香を供えに訪れた美樹は、その妹、加奈子と再会する。
加奈子にとって諒は自慢の兄であり、美樹にとって加奈子は諒が最後まで気にかけていた妹だった。
兄を自分から奪ったと、加奈子は美樹を恨んでいたが、美樹は諒に代わって加奈子を大切にしたいと願っていた。
加奈子は整備の手伝いをしに筑波戦闘航空団に出入りしていた。
パイロットの中でも、兄と同じ一種飛行予備生徒として実戦に参加する社は、もっともその立場が諒とよく似ていた。
同級生・俊治をきっかけに、加奈子は次第に社に戦死した兄の面影を追い求めていく。俊治の気持ちに気づかぬままに。
美樹にとって、社と俊治は初めて得た生徒だった。
諒を失って以降、望んで危険ばかり引き受けてきた美樹にとって、教官役は想像以上に意義のある任務だった。
訓練にはげむ二人に、ついかつての自分と諒を重ね合わせてしまう美樹。
二人を庇ってカメラマン、澤村夕紀と反目してしまうのも、自分が一次闘争の英雄とマスコミにまつりあげられ苦労したが故だった。
629 :群青の空を超えて4 ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:15:52 ID:XLcmYiWw0
一方、水木若菜は同級生であり、弟・俊治の相棒である萩野社に対して、複雑な感情を抱いていた。
それは主にその父親・憲二の存在が理由だった。
両親は憲二に心酔しており、家庭を顧みない二人に反発する若菜には、逆に印象が悪かったからである。
また社自身も、偉大な父親を持ったエリートのパイロット候補生として見なされ、クラスでは浮いた存在だった。
だが、ささやかなきっかけから、若菜は社やその友人、藤川達也と大賀忠則たちに誘われ、文化祭で一緒に演劇をする事になる。
仮初めの停戦であるにもかかわらず……否、実質的な戦争状態だからこそ、筑波航空学校の文化祭は華やかで盛大だった。
明日の判らない日々に、誰もが想い出を求めていた。一度かぎりの夏を楽しむ蜻蛉のように。
社や俊治、クラスメートの久我聡美、さらには俊治の同級生の日下部加奈子らと一緒におこなうのは、芝居マニアの達也が選んだチェーホフ『かもめ』だった。
密かに演劇に興味があった若菜は、ヒロインの一人として舞台の練習に熱中した……相手役である社と、否応なしに心を通わせながら。
社たち有志による文化祭での演劇は大成功だった。
だがその頃、海の向こうでは、九月第一月曜日の労働祭(LaborDay)を皮切りに、米大統領本選が本格化していた。
その動向は関東と関西の小競り合いに多大な影響を与える。
上層部が本格的な戦いの予感に戦慄する中で……夏が終わり、政治の季節が訪れたのだ。
630 :群青の空を超えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:17:05 ID:XLcmYiWw0
水木若菜シナリオ1
文化祭も終わり、かつてなく社を意識するようになった若菜。
けれどグリペンを駆って何度も支援任務に赴いていた社は直ぐ身近に死を感じていた。
己の未熟さゆえに味方の足を引っ張る事を恐れた社は、持ち得る時間を技量向上に捧ぐ事を誓い、故に若菜の好意を断らざるをえなかった。
落ち込む若菜に、自己嫌悪に苛まれながら荒れる社。
だがその直後の任務で、予想外の地点から対空ミサイルの不意打ちを受けた社のグリペンは撃墜され、彼は行方不明となる。
動揺する俊樹、若菜、美樹達。
一方、社は負傷しながらも何とか生き延びていた。
近くに敵が潜んでいる事を感知した彼は待機して救援を待つのを止め、自力で稜線まで移動する事を選び、体を引き摺りながら移動し始めた。
数日後、懸命の捜索にもかかわらず社は見つからず、生存は絶望視される。
最後のフライトサーチに同行する若菜。
無情にも日が暮れて引き返す時間となった時、天の導きか万に一つの幸運か、彼女は倒れている社を発見する。
死に掛けた事で吹っ切れたのか社は若菜の気持ちに応え、2人はあっという間に親密な仲となった。
戦争の中で一パイロットとして死ぬと呟く社に、その時は一緒だと微笑む若菜。
彼女は社の部屋に同棲するようになり、この恋の行方に未来がないと分かりながら、それでも2人はやがてくる死という名の現実に抗するかの様に体を重ねる。
そんなある日、戦いの転機が訪れる。
偵察機が映し出す情報に関西軍の大部隊が動員された痕が見つかったのだ。
それが大規模侵攻を見据えたものである事は明らかだった。
総力をかけた戦争が始まろうとしていた。
そんな中、俊樹は当初の理想から堕した関東政府の現状に、何のために人を殺して戦い続けるか、明確な理由を求めて悩み、その末に社に懇願する。
自分が社の分まで戦って死ぬから、グリペンを下りて若菜と共に逃げ出す事を。
その申し出を拒絶した社は己の志と信ずるイデオロギーと仲間達の為に最後まで殉じると俊樹に語る。戦争も戦争に参加する自分達も、本当は私利私欲の為に戦っている事を悟りながら。
631 :群青の空を超えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:17:36 ID:XLcmYiWw0
水木若菜シナリオ2
遂に西日本政権(関西政府)との本格戦争が始まった。
彼らは東京に潜りこませていた地上部隊の精鋭たちを使って、都内の主要施設を制圧。
政府要人を失った事を悟った吉原大嗣は筑波戦闘航空団を臨時総司令部として、関東自治共和政府の全軍の指揮権を掌握し、両軍が激突した。
開戦と同時に行われた大規模航空戦、その最中で社とペアを組んでいた俊樹が死亡する。
弟の死に嗚咽する若菜とパートナーの死に唖然とする社。それでも戦いは止まらない。
地上戦を目前に控え、物量と諸外国との後ろ盾の差で勝ち目のない事を自覚しながらも美樹や大嗣は戦線を構築した。
次々と突撃玉砕して散っていく予備生徒達。
最終局面が迫る中で、元自衛隊士官であり、地上部隊の指揮を執っていた岸田徳治一佐と香坂恵実は時間稼ぎと幕引きの為に最前線へと赴く。
筑波の陥落を明日、明後日に控え、パイロットに戻った美樹は社に若菜を連れて蝦夷共和国(作中では東北と北海道はそれぞれ独立している)に逃げるように諭すが、友と己の背負った志に殉じる事を決めていた社はそれを拒絶。
彼の胸には理屈では表せない不転位の衝動とも言うべきものが渦巻いていた。
そんな社に、若菜は最後まで共に在る事を願い、加奈は戻ってきて欲しいと泣きじゃくる。
戦争終結の日、社とペアを組む事になった美樹は、自分と社が生き残らなければ騒乱を引きこしたスケープゴートとして別の人間が裁かれると告げ、苦笑した社はできる限り生き延びる努力をする事を誓った。
だがそれは、たとえ生き延びる事があろうとも、若菜とは会えなくなる事を意味していたのである。
632 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/11(水) 19:26:35 ID:XLcmYiWw0
○水木若菜シナリオ ラスト
敵味方入り混じった空の激戦。
圧倒的な不利に立たされ次々と沈んでいく関東軍のグリペン達。
そしてあわや美樹のグリペンまでもが敵機の機銃を浴びて撃墜される直前、吉原大嗣は降伏を宣言した。
ここに、数年間続いていた関東と関西の戦いは、終わった。
安堵と空虚と疲労と無念など様々な感情を抱えながら百里(筑波のすぐ傍に在る基地)に帰還しようとする美樹と社。
しかし到着直前に彼女のグリペンは失速して高度を落としていく。
美樹は既に内蔵をやられ、そして目が見えていなかったのだ。
社の励ましも空しく、彼の前で水柱が上がり、彼女のグリペンは百里の滑走路を目の前にして海の中に消えていった。
十数年後、戦いの首謀者の1人として牢屋に閉じ込められていた社は恩赦によって釈放される。
気がつけば彼の足は筑波へ。そこにはもう基地は無く、彼はロードワークに使っていた道で「カモメ」を演じる少女に出会う。
彼女の名は紗那。あの時に妊娠した若菜と社の娘だった。
若菜と再会した社は、戦後の軌跡を辿り、あの戦いの意義を歴史に問い直すために活動すると言うと、彼女の手を取って、もう一度一緒に居て欲しいと告げる。
そんな社を抱きしめると、若菜は今度こそ死ぬまで共に在ると囁いた。
今更ながら題名の間違いに気が付いた。 orz
639 :名無しさん@初回限定 :2006/01/12(木) 18:59:56 ID:pqoxVYyP0
群青乙であります。
しかし途中から俊治が俊樹になってますよ。
教官とまじっちゃったんだろうけど
641 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:10:28 ID:gJbOVfL30
>>639指摘サンクス。
日下部加奈子 シナリオ1
整備予備生の忠則に頼って整備班の手伝いをするうちに、志願兵となって正式な訓練を受ける事になった加奈子。
そんな彼女の心には文化祭後に亡くなった兄と同じくらい大切な存在となった社の姿があった。
どんなに思っても祈っても願っても兵士達は死んでいく。ならば自分も銃を手に取り、グリペンの整備をして社の役に立ちたいと彼女は、自らの身を戦場に置いた。
やがて社と俊治が自らの手を離れた事を悟った美樹の元に新たなる辞令が舞い込む。
彼女はそれに従って高高度を飛行する戦略偵察機(情報収集が専門なので戦闘機よりもGの影響が少ない)のパイロットとして百里へと向かった。
一方、若菜は官制班の一員に選ばれる。
だが彼女の親友の久我聡美(2種飛行予備生徒→パイロットの卵)はそれを喜びながらも、激戦になれば真っ先に狙われるのが官制だという事を伝え、悔いのない日々を送るように若菜を諭した。
戦力不足を少しでも補うために、訓練用のT−2を実戦様式に換装して聡美や達也たち2種飛行予備生徒に与えるというプランが持ち上がり、故に聡美は迫り来る死の影を感じていたのだ。
ある日、味方の制空権内で突如ゲリラの対空ミサイルに襲われた社のグリペンが墜落。
社は脱出に成功するものの、再びグリペンに乗れるかどうかも分からぬ重傷を負った。
付きっ切りで看病する加奈子。
しかしリハビリに励む中で、社の心には何のために自分や加奈子を含めた学生達が戦っているのか悩み始めていく。
果たして学生達が戦うことで誰が喜び、誰が得をするのか。しかし、そう悩む中で社は己の心に死に対する恐怖が芽生えている事を知った。
社が墜落してから一ヵ月半が過ぎても彼の下肢は殆ど動かなかったのだ。そして社の回復が戦場復帰に繋がる事を知る加奈子は密かにそれを喜んでいた。
642 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:11:31 ID:gJbOVfL30
情背が緊迫する中で見舞いに来た夕紀は加奈子が訓練だけでなく任務に就いている事を社に伝える。
関東政府は関東を焦土化しても戦い、その果てに会津か函館に司令部を移す事を画策し、徹底抗戦の姿勢を崩さない。
その為に飛行予備生徒の中の志願者には全員T−2が与えられ、彼らは絶望的な生存率を覚悟しながらも戦場へと赴く事になった。志願兵の中には聡美や達也の名前もあった。
一方、関西の攻勢は熾烈を極め、俊治らグリペンのパイロットは常に機体の近くに待機して、その傍らで眠る生活を強いられる。
状況の悪化を肌で感じる忠則ら整備班は加奈子に社を連れて疎開する事を勧めるが、みんなを残して逃げられないと即答される。
その同時期に大嗣から社に除隊申請書が渡された。趨勢が関東の敗北で定まりかけている以上、今度の大規模交戦に間に合わなければ社の出番はない。
それを知り、更に予備生の肩書きがなくなれば戦後に捕虜になることもない為に美樹が大嗣に社の除隊を頼み込んだのだ。
そして遂に第二次独立闘争が開戦した。
それを知った社は死への恐怖に縛られて戦いを忌避していた己に強い怒りを覚え、友人達の命が失われる事に恐怖する。
日下部加奈子シナリオ2
数日後、社の病室を訪れた達也は聡美の死を彼に告げ、疎開も現役復帰もせずに病室に閉じこもる社を糾弾する。
その直後、T−2に乗った達也は撃墜され、死んだ。
開戦から二週間後。T−2を与えられた予備生徒の殆どは既に撃墜されて鬼籍に入っていた。
淡々とそれを告げる俊治の態度に激昂する社だが、俊治は自分もこの戦いで死ぬのだから罪悪感を感じる必要などないと冷たく吐き捨てた。
達也の死で恐怖を振り切って現役復帰の手続きをする社に、俊治は社だけでも加奈子を連れて蝦夷に行ってくれないかと懇願する。
関東にいる数万の予備生徒達が絶望的な戦いに命を散らそうとしている現状。その切欠を作った父親。
その事実は社の心から逃げる気持ちを奪っていた。
その晩、加奈子を抱いた社は、寝ている加奈子の傍に蝦夷行きのチケットを置いて去っていく。
それは加奈子との永訣を覚悟した彼なりの身の処し方だった。
643 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:12:28 ID:gJbOVfL30
日下部加奈子シナリオ3
秦野管区から恵実が筑波へとやって来た。
彼女は殆どの戦闘機が撃墜されて仕事の少なくなった整備班を地上部隊として徴用しに来たのだ。
徴用された大多数は戦死する事が確実な最前線への出兵。
一方、美樹は生還が最優先とされる偵察を繰り返して、何度も僚機の危険を見捨てざるをえない己の任務に強い苛立ちを感じていた。
翌日、ほぼ完璧に体調を戻した社は囮役としてT−4に乗る事を志願した。
だが社の行方を探し回っているうちに整備班の徴用に巻き込まれた加奈子は忠則達と共に地上部隊に加えられてしまう。
T−4で出撃を繰り返しては俊治の助けもあって奇跡的に生還し続ける社と、最前線で目の前で次々に仲間の死を目の当たりにする加奈子。
肉片や脳漿の散乱する地上戦の凄惨さは予備生徒達の中から平常心と覚悟を奪い去り、代わりに恐怖を死を与えていく。
それでも恵実は容赦なく彼らを死へと駆り立てた。全員が敵陣に向かって銃剣突撃、逃亡者は射殺。戦場に銃声が木霊するたびに、無数の命が消えた。
そして筑波では敗北が色濃く漂う中、筑波の管制に加わった若菜はパイロット達に迎撃進路を指示して、彼らを死地へと追いやっていた。
何度目かの戦闘で損傷したT−4を最前線に不時着させた社はそこで忠則と加奈子に再会する。
グリペンとT−4の出現に歓喜する予備生徒達。
地上部隊にとって戦闘機の援護は百軍にも優る希望そのものなのだ。
被弾したT−4を廃棄する事を知った俊治は加奈子に、社にはもう飛ぶ機体がないから彼を守って一緒に脱出してくれと頼み、加奈子は遂にそれを承諾する。
だが日の出と共に出撃しようとする俊治を殴り倒した社は、加奈子に想いを告げると、自らグリペンに乗り込んで群青の空へと飛び上がっていった。
644 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/13(金) 12:27:30 ID:gJbOVfL30
日下部加奈子シナリオ ラスト
決定的な敗北を前に偵察任務の終焉を悟った美樹は、空の高みから地上で戦う自分達の矮小さを自嘲しながら、恋人の敵(一条貴子)に遭遇。
彼女に一騎打ちを挑んで空に散った。
その直後、若菜は己のいる筑波の地下深くに造られた管制施設を潰しに、地下施設用大型爆弾を搭載した戦闘機の空襲を察知。
多くのパイロットを戦術指示によって死地へと追いやる役目を果たし続けていた自分に、最期が訪れた事を知る。
恐怖に震え、視界がぼやけ、それでも涙声で筑波官制班が全滅する事を関東全域の施設に告げ終わると、若菜の体は一瞬で紅蓮の炎に焼き尽くされて死亡した。
壊滅状態に陥った地上部隊。敵軍から降伏が呼びかけられる中で、忠則と重傷を負った恵実は、加奈子と俊治を逃がすために囮役となった。
社の生死は相変わらず不明なまま、しかし彼らの犠牲で2人は辛うじて蝦夷最北部、紋別へと脱出する事が出来たのだ。
だが社を待ち続ける加奈子はぼんやりと生きた屍の様になってしまっていた。
それを見守り続ける俊治。
虚しさと儚さが去来する中で、買い物の為に街に行こうと扉を掛けた時、ダイヤモンドの輝きの中に人影が映っていた。
立ち尽くす俊治と駆け出す加奈子。
雪原を駆け抜けてその影に抱きつく加奈子の後姿を見届けると、俊治は胸を締め付けるような荒々しい衝動に駆られて、銃を手に取ると独り静かに去っていった。
残された全ての役目が終わった事を悟り、もはやこの地に自分の居場所がなくなったことを理解して。
※
美樹(早期降伏)シナリオ、加奈子(徹底抗戦)シナリオ、若菜(両者の中間)シナリオをクリアするとサブシナリオが見られるようになる。
645 :名無しさん@初回限定 :2006/01/13(金) 13:38:59 ID:+UVL5/Zv0
>>644「ダイアモンドの輝き」→「ダイアモンドダストの輝き」ね
651 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/14(土) 14:52:53 ID:ms2jDjd/0
●澤村夕紀・長田圭子共通シナリオ
文化祭の後に夕紀と一緒にダンパに参加する社。
話しているうちに彼女が筑波に来る前も最前線にカメラマンとして帯同していた事を知る。
後日、社は彼女から萩野憲二の晩年の愛弟子であり、現在は円経済原理主義者(現在の関東政府の理想から堕した姿を正すために破壊活動も辞さぬテロ組織)の一員でもある長田圭子の保護を頼まれる。
圭子はテロ活動に異を唱え、仲間内から命を狙われ、彼らの手の及ばぬ筑波に逃げ込んでいたのだ。
反発する社に、あなたも殺人者だろうと指摘する夕紀。ショックを受けた彼は結局それを承知する。
敵兵に狙撃され、撃墜される直前に脱出した社は、重傷を負って入院。
見舞いに来た夕紀から圭子と会う段取りを教えられ、退院後に社は予備生徒に変装した圭子と会って、彼女を自分の部屋に匿う事になる。
それゆえに社は仲間から男を部屋に引っ張り込んだホモだと誤解される事になってしまう。
圭子との生活が始まり、そこで社は彼女の口から父・憲二の人柄や彼の理論の目指した先を聞かされる。
彼女の話は社が昔憲二から聞かされた話でもあった。
萩野憲二の目指したEU型の共同通貨が使われる大規模経済圏が環太平洋圏に成立すればアジアからは戦争がなくなる、その理想は利権屋や政治家に歪められ、現実には関東平野は戦死した兵士の血を吸い続けている。
それを理解しているからこそ戦争に反発する圭子と、死んだ者達の信じた理想が間違っていると公言できずに戦い続ける社。
圭子との生活を送る中で夕紀に彼女の様子を報告しに行った社は夕紀から昔、前線で死亡した恋人のカメラマンの話を聞かされた。
人は国家や民族に帰属するのではなく、人を生かすシステムとして国家があると主張しながら第一独立闘争に帯同した夕紀の恋人はそこで死んだのだ。
その話を聞き、現状が理想から出している事を知りながらも、敗北して『絶対悪』のレッテルを貼られない為にも戦い続けるしかない社。
この戦いそのものの無意味さを知りながらも、決してそれを仲間に漏らすことができなくとも、立ち止まる事だけは出来なかったから。
完全悪がいて善がそれを打ち倒す、そんな単純な御伽噺はどこにも存在しないのだ。
652 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/14(土) 14:53:49 ID:ms2jDjd/0
●澤村夕紀シナリオ
やがて圭子と社が周囲に悟られずにそれにうまく生活できている事を知った夕紀は、社と体を重ねた後に、再び最前線に赴く事を告げた。
かつて彼女が取材していた少年兵の死が伝えられた事が夕紀に決意を促したのだ。
真面目に戦うものほど命を落とし、利権を守る為に彼らを扇動して死地へと駆る者が生き残る。
その構造こそがこの戦争の真実であり、そこに奇麗事は存在しなかった。
触れ合った記憶と真実の声を互いの肉体に刻み込み、圭子を社に託すと彼女は去っていった。
血と硝煙と銃声と死の跋扈する最前線に向かって。
●長田圭子シナリオ
社と圭子が同居する事になってから20日。
圭子を匿ってる事が何とはなしに漏れ、社が女を部屋に囲ってるという噂が流れる。
その裏に何らかの深い事情がある事を察した若菜は社と直接言葉を交わして、彼が匿っている人間が関東政府に知られてはまずい人物である事を察した。
若菜と俊治の口から噂を知った社は、いずれ圭子の事が上層部にも知られると悟る。
帰宅してからそれを伝えると、圭子は翌日筑波を出て停戦活動の為に東京に行くと言い出した。
自殺行為だと憤る社。そんな彼に圭子は、社ならば自殺行為だと思っても任務を捨ててグリペンを下りられるのか、と問い返す。
その言葉にあらゆる説得が通じない事を悟る社と、彼に自分の思いを伝え、それでも旅立つと告げる圭子。
社の瞳に映る、停戦のためにはテロも辞さずと微笑む圭子の姿に、たとえ人殺しになっても理想を貫こうと笑う予備生徒達の姿が重なった。
彼女を抱き、そのまま同じベッドで眠りについた社が目を覚ますと、既に圭子の姿はなかった。
圭子は戦いを停めるために東京へ潜入し、社は劣勢に立たされながらグリペンを駆って死神の待ち受ける空を舞う。
その果てに再び巡り合える事を信じて。
653 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/14(土) 14:56:58 ID:ms2jDjd/0
サブシナリオでは戦争の決着については言及されません。
反戦という立場を取る人間の視点から戦争を語る事に終始します。
またメインシナリオ・サブシナリオを全てクリアすると最終章のグランドルートに入れるようになります。
>>646 >>647少し手短にしてみた。
でも短く書こうとすると、もの凄く時間が掛かるのでこれ以上は無理かも。
663 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:36:27 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート1
圧倒的優勢に立った関西は戦後を見据えた方針を模索しつつあった。
だが故・萩野憲二の恩師、藤谷幸一郎と関西空軍のエースパイロット、一条貴子は戦後の国家のあり方に深い憂慮を抱いていた。
アジア共同体の成立はアメリカのグローバリズムを阻害する悪夢であり、それを阻止するためならば、彼の国は容赦なく円経済圏構想を潰すという事が分かっていたからだ。
文化祭直後、社は事前に言い渡されていたある極秘任務についた。
数ヶ月に一度、ランダムに行われる捨て身も作戦。
それは若狭湾に低空侵入して、敦賀の原発を爆撃。近畿地方に一千万人の死をばら撒く事だった。
無論、関西の航空部隊はその迎撃の為に常時大軍を戦略的な価値の薄い場所に置かざるををえず、それこそが関東の狙いであった。
その為に数々のパイロットがランダム関数によって選ばれ、誰にも知られぬままにその任務に就いて命を落としていた。
そして社も、同級生にもパートナーの俊治にも告げぬままグリペンに乗って死地を駆け抜け、撃墜されて関西軍に囚われる。
病院に収容された社は一命を取り留めるものの、パイロットとしての現役復帰は不可能な体となっていた。
予備生徒達が何を思って戦うかを以前から知りたがっていた一条貴子は頻繁に彼を見舞い、言葉を交わしていく内に少年兵達の理念を知るようになっていく。
664 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:37:34 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート2
やがて存在を公表できない社を自宅に引き取った貴子は耕一郎と接触して自宅の鍵を渡す。
それを手にした耕一郎は極秘裏に社と会って、円経済圏構想と理想と大勢が踊らされた裏事情を激しく語り合った。
関東の予備生徒達は今の関東の理想を信じずともその遥か先に在る理想を信じて戦っている、だからこそ自分も戦うのだと主張する社に憲二の姿を見た耕一郎は、
憲二がどうして円経済圏を構想するだけでなく実現させようとして革命じみた運動を始めたのか、その真の理由を語った。
大規模経済圏の成立は同時にNATOの様な大規模軍事共同体の成立を可能にする。そして軍事共同体が正式発足すれば域内の戦争は減少し、息子の社が理不尽な死を被る事もないだろう。
それが憲二の願いであり、そして彼の死後に関東と関西が至った戦争と社の志願こそが憲二最大の誤算だったのだ。
全てを知り、それでもこの戦争は正しいのかという命題を突きつけられた社は何としてもこの戦争にけりをつけると決心した。
そんなある日、社は酒を飲みながら号泣する貴子を見た。
その日、彼女は前線で戦前は操縦技術を指導したこともある関東の自衛官パイロットが、同じく彼女が指導した教え子に撃墜された事を知ってしまったのだ。
泣き崩れる彼女の姿は唯のか弱い女性そのものだった。
社が消息を絶ってから一ヶ月後。
筑波には彼の死が事故だと隠蔽されて伝わり、重苦しい空気に包まれていた。
665 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:38:28 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート3
一方、社は耕一郎の連絡役となった圭子に出会う。
ポケベルを渡された社は耕一郎と連絡を取り合い、停戦の手段を探っていく。耕一郎は関東にも関西にも属さぬ独自活動をするグループを全国各地に組織していた。
彼らは関西側の主戦力である航空機を抑える事でなし崩し的に戦争を停止状態に追い込むクーデターを企んでいたのだ。
停止状態に持ち込んだ上でマスコミを通じて関西・関東の双方に反戦を呼びかけて世論の支持を得る、それが計画の概略だった。
それを打ち明けられた貴子は危惧を抱きながらも参加を誓う。
その裏には戦後の経済権益の分割を視野に入れた政治取引が首相や欧米の政府首脳との間で交わされていた。
戦う者達の背後では密かに政治的な裏取引が交わされて、利益の確保を巡って綱引きが行われている。それに嫌悪感を抱きながらも貴子は社のバックアップを約束したのだ。
その頃、筑波には妙な噂が流れ始めていた。
敗北せずに戦争を終わらして歪められた円経済圏を正しい形で実現するためには、関東政府の抱えている既得権益を手放せばいいと。
だがそれは関東政府に対する反逆に近い思想でもあった。
そして関西では社と圭の間で、筑波航空団を味方につけようと働きかけるために、筑波の予備生徒の誰かに社の生存を打ち明ける計画が持ち上がっていた。
それから程なくして社のいる小牧に若菜がやってくる。
社の生存を確認した若菜は筑波との窓口として働き始め、計画は本格的に動き出していった。
密かに政財界の支持を取り付けるために奔走する社・貴子・若菜。
筑波の予備生徒達の間には社達の企む計画が少しずつ回り始め、かなりの人数が協力を確約する。
だが美樹と大嗣は何故か参加を拒否。涙ながらに懇願する俊治を抱きしめると、次に空で出会った時には自分を撃ち殺せと告げた。
666 :群青の空を越えて ◆l1l6Ur354A :2006/01/15(日) 15:50:13 ID:jXTA1XxQ0
●グランドルート ラスト
計画が最終段階に入り、真優(社の母)は数兆単位の金を動かして国際相場を混乱させて、関西政府の足を引っ張り始めていた。
けれど筑波戦闘航空団司令・吉原大嗣が動かぬ事を知った若菜は、予備生徒達を鼓舞するために社の声を携えて筑波へと帰還する。
そして公安のマークが厳しくなり、各所へ手が回った事を肌で感じた社達は関東へのを決意する。
だが脱出直前に追っ手に見つかった社と圭を逃がすために耕一郎は殿に立ち、(おそらく)死亡。
社達は戦闘機に乗り込むと関東へと旅立った。
一方、筑波に戻った若菜は予備生徒達の指揮を取って、社の援護体制を整えていた。
だが大嗣と美樹はあえて社の方針に異を唱える者達の受け皿となって状況をコントロールしようと社と袂を別った。
そして日の出と共に関東政府に反旗を翻した予備生徒達のグリペンと、関西政府のやり方に異を唱える貴子ら空自のF−15は社の反戦演説を邪魔させぬように関東・関西双方の残存勢力と熾烈な航空戦を繰り広げていく。
遥か高みの群青の空の彼方に、戦いを宿命付けられた翼を広げて。
その中で丹沢に辿り着いた社は、俊治らグリペンと徳治ら地上部隊の精鋭に守られて演説開始の刻限を待つ。
その頃、大嗣に呼び出された夕紀は、過去の犠牲を諦められずに戦いを続ける者や素直に円経済圏を受け容れられない者達が振り上げた拳を下ろさせるために大義名分を作り出すために彼が命を絶つ姿を見てしまう。
遂に社の演説が衛星回線を通じて関東・関西双方に伝えられていく。
彼を守り、戦争を停めるために、空には予備生徒達が、地上では歩兵達が次々に死を与え、或いは命を散らす。
彼らの犠牲と血に支えられ、社の演説は無事終わった。
補足
結局グランドルートで戦争がどう決着したのか、社や若菜達の生死については一切不明。
戦後について判明している情報は、俊治と聡美は生き残った事。
日本という国が消滅して代わりに円経済圏がアジア規模で成立した事くらい。
これで全部終わりです。
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