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人物 魔法使い

新板魔法使いリスト?NO.109
【人類最初の医者】【痛みの奪還者】【痛みを味わうモノ】

痛みを表現する語彙を作り、人間が人間へ痛みを訴えひいてはその治療を求めるという慣習を作り出した魔法使い。

かつて、痛みは神々のものであった。
痛みは神々が人間に下した試練であり、またそれは死への道行きのための過程であった。
人の手で癒せぬ病や怪我は、神の下した罰や天の国へ迎えられるための通行手形と捉えられ、人々はただ痛みを受け入れ、それと共に生きるしかなかったのだ。

だが、やがてそれを受け入れぬものが現れた。
その者こそが、ガァデス、いや後にガァデスと呼ばれるようになった男であった。
彼は大層な自信家であり、いかなる怪我も病も人間の手で治せぬものは無いという固い信念を持っていた。

ガァデスは神官もしくはまじない師の家系の出身であったと言われているが、彼はそれをやめ、人類で初めて「医者」を名乗った。
そして瀉血(しゃけつ)を始め様々な治療法を開発し、神に見放されたとされる多くの病人や怪我人をその手で救ったのだという。
そう、ある一人の患者に出会うまでは・・・・・・・・。

ガァデスが出会った患者、それは、一人の白い少女であった。
当時の発音でミート・ランまたはメルト・アンと呼ばれたその少女は、神に捧げられた生け贄であり、その病は神の意志であると言われていた。
病で死んだ時、彼女は神の身許に迎えられる、その病は彼女が「神のもの」である証なのだと。

ガァデスは、決意した。
神の意志など何ほどのものか。
必ずやその病を治し、彼女を救わんと。
だが、その誓いは果たせなかったのだ・・・・・・・・。

その悲劇を発見したのは、ガァデスにとって唯一の親友であった人物だったという。
その朝は、少女がガァデスのもとを訪れてから半年ほど後のことであった。
その日は、少女が埋葬されることになっていた日であり、彼は親友であるガァデスを慰めるために、魔法使いの診療所へ足を運んだのだ。

そう、治療は失敗した。
ガァデスの治療は、当時最先端の知識と技術に基づいていたが、原因不明の衰弱と発熱を続ける少女の病を完全に治すことは出来なかったのだ。
魔法使いは、あらゆる伝承と記録を漁り、自分を実験台にしてまで新たな薬や治療法を多く発見したが、それでも彼女を救うことは出来なかった。
長い治療期間を通じてガァデスと親しくなった少女は、神ではなく魔法使いの手によって殺されることを望んだが、医者であることをその存在意義とするガァデスは、その望みに応えられずにいた。

だからその朝、親友が見るのは、落ち込むガァデスと安らかに「神のもとへ行った」少女の遺体だけ・・・・・・・・そのはずであった。

だが、彼が見たのは、予想外に恐ろしく、そしておぞましいものであった。
ガァデスは、発狂していた。
彼は、少女の身体を自分の体に縫い付け、四本の腕と脚、二つの顔と八つの眼を持つ怪物となっていた。
そして、親友の前で、神に敵対し全ての痛みをこの世から消し去ること誓った魔法使いは、それまでの名を捨てて新たな名「ガァデス」を名乗り、まだ日が差さぬ闇の中に消えていったのだという。

一説によると、その後彼は、たくさんの痛みそのもの、人にとりつき生命をすする化け物と成り果てたとも言われている。

また別の言い伝えによれば、いつの日か少女が人の手によって癒やされる時、彼も救われ解放されるのだという。
だが、少女は神々の時代の人物であり、とうの昔に死んでいる。
彼が救われることは、もう無いのだろう。

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