ゆらぎの神話百科事典

2-64名前の無い二人の姉妹　　「姉」「妹」

【爛熟蝶々】　【双子】　


1-64シャクニティエ亡き後に誕生した二人一組の姉妹。
こういった事例は他に一代目の写像を常に傍においていた3-46ペリグラント・アベルの他には彼女らにしか見られない（注：著者が記録した現時点で）。
脱皮する能力を持つ虫の魔女であったが、脱皮した後の抜け殻が姉となり、新たに生まれた蝶々が妹になった。
両者は仲睦まじい姉妹であり、危険があると妹は安全な姉の中に隠れてしまう。

多くの姉妹が便宜的な名前を与えようとしたが、当の本人たちがその名前を覚えられないのでどんな名前で呼びかけても反応が返って来ることはまれ。
他の魔女たちにも理解できない彼女ら独自の価値観によって行動する、変わった姉妹。

その燐粉に触れたものはたちまち石になってしまうと言う。


美の神ミエス＝リヴァ?の使いである。
深紅の空?による七回目の世界更新の時のことだった。丁度世界を一度滅ぼして創生し直そうとしていたアルセスと、紀元神群を間違って消去してしまい、あわてて作り直したのはいいが度忘れして誰かが足りなくなってしまってパニックになったアレは偶然にも同じタイミングでとりあえず自分の存在を同じ隔離領域（外部メモリ）に保存したのだが、データ容量の関係で二人のデータが入りきらず、バックアップは失敗してしまった。
それに気付かずに二人は自分ごと世界を全消去してしまい、深紅の空は世界を更新しようとする直前で消去されてしまった。
結果三つの神格が消滅し、バランスが崩壊したゼオータイル領域は混乱に陥った。
一方で以前の世界のデータが一切残されていないという事実を重く受け止めたミエス＝リヴァ?は、上位世界にこの失態を気取られまいと不祥事の火消しに必死になっている他の神格を尻目に独り世界の再生を試みた。

ミエス＝リヴァは自分が以前の世界で創造された時の記憶を必死で掘り返した。
今でこそ上位世界での権限を保有する自分ではあるが、そもそもは彼女はただの蝶?であり、妖精族?の亜種でしかないのである。
ならば神格の一柱たる自分にも世界の紀録は残されているはずだった。
ミエス＝リヴァは自己の写像を無数に展開すると、それぞれを永劫線の海?へと解き放った。残留した前世界の紀が残っているのではないかと考えたのである。
上位神による下位世界の消去とはいえ、紀は世界のレイヤーを【縦】方向に貫く概念である。
上位から下位への干渉記録もひょっとしたら残されているかも知れなかった。
下位世界の残骸すら漂わぬ永劫の海。圧倒的に広大な無の中で、彼女はそれを発見した。

紀元槍。

完全に消去された世界の要素の中で、それだけが唯一残されていた。
しかしいかにミエス＝リヴァが上位神格とはいえ、彼女自身の管理権限はアルセスらより下であった。
彼女に紀元槍に干渉する術は無い。
だが、紀元槍には元々の世界でのルールとして触れたものに管理権限を与える、という情報が刻まれていたはずであった。世界が失われたとはいえ、ルールそのものは紀元槍に残っているはず。
紀元槍に触れ、その機能を作動させれば世界を復旧させることも不可能ではないはずだった。
ミエス＝リヴァは自分の写像たちを無数に放つと、紀元槍の内部構造にアクセスした。
大半のミエス＝リヴァたちが脱落していく中、パンゲオン・ザ・ダンジョンと呼ばれる無数の防御プロテクトを突破した最後のミエス＝リヴァの写像は遂に紀元槍の内部に残留していたパンゲオン世界のデータを元に世界を再生することに成功した。
同時に紀元神群やアルセスらも復活し、世界は正常に更新された。

一方、紀元槍内部に取り残されたミエス＝リヴァの写像は紀元槍に触れた事で紀人となったのだが、元の素体であるミエス＝リヴァ自体が紀人であり、そのデータの性質上そのまま紀人昇格プロセスが実行されてしまえばデータの上書きが起こってしまう危険があった。
危険の回避の為、ミエス＝リヴァ（写像）はその場所から尤も近い位置に存在した紀なるモノに自らの存在を割りこませることで自己の存在を「ミエス＝リヴァではない何か」として隔離した。

内部に強制介入された当時のキュトスの姉妹2-64はそうして自己の存在を改変され、ミエス＝リヴァの写像に侵食された元姉妹に成り果てた。
こうしてキュトスの姉妹64番は名前を無くし、姉妹でありながら紀人のコピーが紀人化したモノが融合したよくわからない存在になってしまったのである。