難易度


難易度とは

ゲームデザインにおいて難易度の設計は重要な項目である。
人は難しい課題を克服した時に強い達成感を感じる。そのためゲームにおいては、序盤から終盤へ向けて難易度は上昇する。プレイヤーの習熟にともなって徐々に困難な課題を提示し、プレイヤーに自分の上達を実感させ、より強い達成感を与えることができる。

また難しい障害があるとプレイヤーは先に進めなくなったり、そこで死んでリトライすることになる。すなわち難易度設計は、ゲームの進行を制御するための手法と言える。

難易度の緩急


ただし一直線に難易度が上がる難易度設計は、良いデザインではないと考えられている。
なぜなら単調変化は退屈であり、過度なストレスがずっと持続する事はプレイヤーにとって苦痛である。物語に緩急があるように、ゲームの難易度も緩急があることがセオリーとされる。前段階としてのストレスとそこからの解放(リリース)がゲームの快感原則の1つである。

古典的な例として宮本茂氏の師匠に当たる横井軍平氏のゲームウォッチの難易度曲線がある。100点までは難易度が上昇していき、そこを超えるといったん難易度が落ちる。その後、次の100点では難易度の上昇量が上がる。100点ごとに難易度が上がっていったん下がってを繰り返し、ノコギリ状に難易度が上がっていく。



無論この手法が完璧という事ではなく、各社、各人の考える理想的な難易度曲線があり、メーカーによっても個性がつけられる所である。ゲームの操作法についても、難易度の上昇と共に徐々に教えていくやり方もあれば、逆に序盤で多くの情報を教え、それらを使いこなせないと先に進めない難易度設定をするやり方もある。後者の方法はゲームの操作を使いこなせる快感を最大化するものの、取っつきにくいゲームになりがちである。

ざるの会が発行した『ゲームデザイン入門』では、業務用ゲームにおいてゲート(関門)型の難易度曲線を提案している。同書では難易度設計を、勝つ快感の供給量の設計と定義している。ゲート型は、関門以外の所で「勝つ」快感を供給し、関門でプレイヤーが負けるように難易度をグッと上げる設計である。ボスで殺すゲームはこの難易度パターンに分類できる。

難易度設計の歴史


初期のゲームには、明確な終わりが無く、明確な面構成が無く、エンドレスに続くゲームが多かった。ゲームの使用できる容量が小さく、同じリソースを使ってゲームを構成する必要があり、全体的に難しいゲームが多かった。プレイヤーを「あともう少しで行けたのに……」と巧妙に悔しがらせ、何度も遊ばせる設計がゲームデザイナーに求められた(再挑戦性)。やや大げさな表現かもしれないが、難易度の緩急は小説や映画におけるストーリーの感情曲線と言っても過言ではなかった。

容量の増加や処理性能の進歩につれて、固定画面のゲームは減ってスクロール型のゲームが増えていった。またエンドレスゲームは減り、ステージ構成を持ったゲームが多くなった。それに伴い、ゲームに世界観、背景となるストーリー、エンディングが導入されていき、ゲームの進行を難易度以外のもので表せるようになった。画面の変化は多くのプレイヤーにとってわかりやすく、スクロール型のゲームが主流になっていき、ゲームに占めるストーリーの割合も増えていった。

ゲームブームによってプレイヤーの人数が増えると、やがてプレイヤーの腕前にばらつきが多くなり、どれぐらいの腕前のプレイヤーに照準を合わせるかが重要な課題になっていった。プレイヤーに難易度を選択させるゲームや、何度も失敗しているとパワーアップアイテムを付与する等、プレイヤーを補助するゲームが登場し始めた。

またゲーム内の表現が高度になると、多くのゲーム開発者は自分達の作った要素をたくさんのプレイヤーに見てもらいたいと考えるようになり、ある程度試行錯誤を続ければ、先に進める難易度になっていく。また難しいゲームはプレイヤーが途中で投げ出してしまい、評価や売上に響くようになったため、プレイヤーのスキルを評価するゲームよりも時間さえ掛ければ誰でもクリアできる、プレイヤーの遊んだ時間を評価するゲームが主流になっていった。

日本におけるRPGブームは、アドベンチャーゲームのように行き詰まることなく、アクションゲームと違って誰でもクリアできる点が大きかった。80年代後半から2000年代前半まで、日本においてRPGは最も人気のジャンルとして君臨し続けた。アクションゲームでもRPGのような成長システムを導入するゲームが増えた。時間を掛けてレベルアップすれば、プレイヤーが有利になり、下手なプレイヤーでも先へ進めるようになった。

ストーリー主導型のゲームでは、ほとんど誰でも物語を終えられるようになって、難易度はプレイヤーに緊張感を与えるための装置として機能するようになっている。ハリウッドのアクション映画のようにクライマックスでは、たくさんの敵、巨大な敵と戦い、手に汗握る戦闘が展開することで、物語の主人公とプレイヤーの一体感を高めていく手法が取られる。またラスボスは多段階の変身を遂げる事もある。ただし最終戦闘はプレイヤーの盛り上がった気持ちを醒めさせないように、最終一歩手前より難易度が下がっている例もある。

ゲーム制作者の思想


上述したように難易度は時代と共に潮流がある。
しかし結局はゲーム制作者自身の考え方や好みが強く反映される。ゲームにおける作品性は、近年では他のメディアと同じような評価軸(ストーリー、世界観、描くテーマ)によって語られがちだが、難易度設計はゲーム制作者のゲーム観が反映され、作り手の個性が発揮される部分である。

難易度の調整


難易度の調整は制作スタッフ自身がプレイして行うが、インタラクティブなメディアであるゲームでは、より客観的な立場からの意見を重視する。そのために開発の途中、そして終盤に「モニター」を取る。モニターの人員は、チーム外のメンバー、チューニングおよびデバッグのスタッフ、事務系の社員や社員の家族(女性や子供)、社外からの募集によって行う。

一般的には、難易度の評価と修正/再構成を試みる。まずプレイヤーの達成度(スコア、到達ステージ、ミス回数、等)と感想(難しいと感じたか)を元に難易度を評価する。次に難易度を下げる/上げる修正を行う。あるいは難しいステージを後半に配置し、簡単なステージを前半に持ってくるといった要素の再配置を行う。

参考

BBX News:宮本茂氏のゲーム作り(3)
ABAの日誌: 単調シューティングをランクで味付け
ゲームのマボロシ:性能が向上するからと言って、ゲームが難しくなるのではないはず
発熱地帯:瞬発力と持続力(2) ゲームの「持続力」
ゲームデザイン入門 3)難易度
2007年02月12日(月) 03:47:25 Modified by ID:mXOncN0ddw

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Uploaded by gamedesign123 2007年02月03日(土) 20:51:18



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