756 :名無しさん@ビンキー:2010/04/04(日) 04:46:09 0
ほのぼのの流れにすいません
5スレ目に投下したルガゲニ短文の社長サイド書いたので置いておきます
元々バレンタインネタから出来たので、花見の話題が出るこの季節に
雪が云々とか寒さがどうとかありますが…よかったらどうぞ


あーゲニにじっそうこくされてダウンした所にアレクの膝喰らいたい











注意書き

・5スレ目にて投下した「人でなしの恋」のルガール視点

・時間軸は前作の1・2時間前で、ラストで繋がる仕様

・前回同様ルガ→ゲニ(→ヨハ)の一方通行ですが今回もヨハンは出てきません

・やっぱり短い

・不親切な文章

・性描写なし

・甘さなし

・キャラ崩壊・矛盾点などあると思います

・それでも宜しければ↓














ろくでなしの愛










姿を目にした時は驚いた
頭に積もった雪を払いもせずに、ふらふらと歩いていたのだから

仕切りに辺りを見回す所作と、見た事の無い表情(まるで迷子の様だ)と、左手に提げた小さい紙袋で
目的も思惑も、そしてそれらが全て空回りに終わっている事も、全部声を掛ける前から解った
自分の声に振りかえったその男の愚かさは、ずっと前から知っていた

「…見なかった事にして差し上げますから、早く消えなさい」
「随分寛大じゃないか、何か良い事でもあったか?」
「両目とも抉った覚えはありませんが。ああ、老眼ですか」
「そうかもな。年を取ると寒さが身に沁みるなぁ、お互いに」
「一緒にしないで下さい」
「唇と服の色が同じ奴に言われたくないな」
「…」
「…」 

返す言葉が無い、と言うよりも、言い返すのが面倒になったようだ
視線を逸らした顔は疲労の色が濃く、気力も感じられない
今日一日無計画に歩き回っていたのだろうか。御苦労な事だ
何かと詰めの甘い目の前の男は、白い溜息に混ぜて一言言う

「…では」
「この時間、この天気で出歩いてるとは思えんな」
「…」

ふらつく足で踵を返そうとする体を支える姿は酷く滑稽だ
此方を睨む顔は険呑ではあるが、拗ねた子供のそれと変わらない

「明日出直すという手もある」
「…今日じゃなきゃ、だめなんですよ」

やはり愚かだ

「…そのままでは今日明日どころか2・3日はベッドで過ごす事になるぞ」
「うるさいですね」
「そう思うのは自分でも解っているからだろう?」

勝手の良い外面のおかげで、他人に全く掴ませないこの男の腹の底は、案外、割ってみれば単純で脆いものだ
きっと、嫌悪している人間達とも、そう違わない

「…」
「早く帰れ」
「…似非紳士、ちょびひげ、自爆オチ」
「で?」
「…一晩泊めなさい」
「よかろう」

どうせ碌な説明もしないで出てきたのだろう。この時間に雪まみれで帰ったとして、
家で待つ娘はまだしも、有能な部下の目を誤魔化すのは骨だ
と言っても、それをただ避けるのは単なる先延ばしにしかならない事は解っているだろう
しかし何かしらのフォローさえ入れる余裕がこの男には無い
何故無いのか?
家も知らない思い人を求めて一日中歩き回ったからだ
そして見つからず途方に暮れている
もう日付も変わる

(全く、愚かだ)

外したマフラーを男の首に掛けてやりながら思う

(その一途さを、上手く思い人に伝えられないこの男が)
(自分の首を絞めていると知らずに無理をするこの男が)

少し低い位置にある、二つ揃った青い目が、一つしかない自分の目を見上げてくる
行き場の無い思いを溜めたそれは、さながらガラス玉の様だった

(ああ、なにより)
(こうなると解っていて声を掛けた私が、)
(自分だったら、そんな事も、そんな思いもさせないのに、と
 そう思っている私が、)
(一番)










「そんなに私と会いたくないんですかね、あのへっぴり腰は」

隣に座る男はそう零すと、何杯目かのグラスを空けた
温まるようにと、度の高い酒だったはずなのだが、まるで水を飲むかのように呷る
愚痴を聞かされている自分のグラスは、元々の量も少ないが、一滴も減っていない
さほど時間は経っていないが、手の中にある所為で温くなり始めているだろう
ふ、と短く息を吐いて、男は空のグラスを置く
注いでやろうと瓶に手を伸ばすと、男がぽつりと呟いた

「…寂しいんですよ」

急に頼りなくなった声がすぐそこに投げ出され、縋る手を求めている
待ち侘びた様に、グラスの氷が手の中で音を立てた










おわり

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