211 :名無しさん@ビンキー:2010/04/12(月) 15:09:31 0
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ヴぁ←ユダいいと思います!
目の肥えた妖星さえ魅了するヴぁーんさんは本当にお美しいお方。


流れをぶったぎってすみません、以前話題に上った吸血ネタに萌え滾って書き殴ってしまった。
影二つ、ザトワラでエロスは全力でいくえ不明。何か頭の悪いラブラブを書きたかった。
ネタがネタだけに流血表現を含みます、ご注意ください。
…次こそは書き出しで止まってる男の娘をどうにかするんだ…


上とは全く関係ない与太話。自分の中でワラキアは夜の知識もばっちり完備のイメージだったけど、
唐突に耳年増なばかりで経験値のない奥手インテリワラキーを受信してしまった。
芝居がかった甘ったるい台詞を交わすまでは平気だけど、いざ色っぽい雰囲気になると恥ずかしくなって霧散して逃げるとか。
逃げた後自己嫌悪して頭抱えるとか。その耳が真っ赤っかだとか。
エディでもザトー様でも「…あれ?」って肩すかし食らえばいい。フラグ立てて捕まえて押し倒すまでちょっとは苦労すればいいんだ。
とか真剣に考えた自分の脳みそは一回取り外して大胆に水洗いするべきだと思いました(作文










*影二つで吸血ネタ
*流血表現を含みますので、苦手な方はご注意
*原作・設定は投げ捨てるもの(キリッ

NG項目のある方はお手数ですがファイル削除をお願いします










***


 You win.

 タッグで望んだ試合を辛くも勝利で終えたザトーとワラキアは、コールを聞くと熱戦の余韻を楽しむのもそこそこに、ステージを降りた。
 後にした会場は、次の試合が控えていることもあり、ようとして冷めやらぬ熱気に包まれている。暫くはざわめき興奮した空気が背後から追いかけてきたが、そこから遠ざかるにつれ、人気の無い通路の静けさが連れ立って歩く二人を包んでいく。

「……今回は辛勝だった。やられたな」

「あぁ。……傷の具合はどうだね?」

「見くびるな。自分の足で医務室へ行くくらい、どうということはない」

 歩みを止めぬままザトーが竦めた右肩には、真新しい傷が開いている。
 一方、着衣の乱れも無く――裂かれたり焼かれたりしたところで一瞬の間に復元する程度はお手の物だ――涼しい顔でその隣を進むワラキアは、そのポーカーフェイスの下で、先程から一向に治まらずいや増していくばかりの欲を持て余していた。

 濃い血の香りに本能が掻き乱されて、喉が渇く。

 気功や刃物どころか魔法、銃弾、ミサイル、荷電粒子砲まで飛び交う異種格闘技(?)戦に臨む以上、流血を伴う痛手を受けることはけして珍しくない。
 しかし今回は、相手方の一方がデミトリ・マキシモフであったことが何よりいけなかった。
 この手の届きそうな距離で、しかし助けることは叶わず、ザトーが血を啜られる様を見せ付けられて。
 その瞬間、怒りよりも嫉妬が心を占めた。
 その激情は、試合を終えた今でもまだ尾を引いている。否、それは既にかつて感じたことのない程の飢餓に姿を変えて、ワラキアを苛んでいた。

 嗚呼―――喉が渇いて、仕方が無い。

 ふるり、身体が戦慄いた。
 臓腑の底から沸き上がってくる衝動に吐き気を覚えて、息が詰まる。

「何だ。お前こそ、何処か怪我でも……」

 気配の変化に気付いたのだろう、ザトーがワラキアの肩に指を掛ける。その瞬間、我慢が限界点に達した。

「っ?!」

 添えられた手を上から包む様に掴み、そのまま強い力でその腕を引き、丁度背にしていた扉の中へ引きずり込んだ。
 倉庫代わりに使われているらしい、壁際に段ボールや椅子が雑多に積み上げられた空き部屋は埃っぽく、微かに黴の据えたにおいがして、その空気は何処か墓場に似ている。
 マントがぞろりと蠢き、大袈裟な音を立てて元通りに扉を閉める。そうして外界から切り離された空間で、ふたりきりだ。邪魔する者は、居ない。
 しかし此処に至ってもまだ、ワラキアの中では相反する意識が鬩ぎ合っている。成り立ての屍鬼か何かのように血に餓える本能と、冷静に徹しようとする理性。後者の不利は明らかで、それが白旗を上げるのは最早時間の問題だった。身体を構成する影を霧散させ、誘惑の前から逃げることすら儘ならない。

「……どうした、ワラキア」

 ザトーはワラキアの突然の暴挙に驚きはしたが、酷く強い力で掴まれた腕を振り払うことはしない。ただ俯いたままの彼の身を案じて、低い声で問いかけた。
 他者にはようとして見せない優しさの込められた響きに自己を繋ぎ留められ、ワラキアはともすれば跡形もなく消えてしまいそうな最後の理性をかき集める。

「……ザトー。私を……」

 ―――わたしを、ころせ。
 音に成らない程微かなその囁きに、ザトーの表情が強張る。「何を馬鹿な、」とその唇が否定の言葉を紡ぐ前に、ワラキアは強い語調で続けた。

「この写し身を壊しても、私は夜の訪れと共に君の元へ戻って来ることが出来る。……この儘では、私は血に餓え、君に牙を突き立ててしまう。だから、」

 一言を発する間にも、距離が近くなった分より濃くけぶる血の匂いに惹かれ、我を忘れてしまいそうだった。苦しげに柳眉を歪ませながら、ザトーの両手を取り己の首へと誘う。

「すまないが……もう、自制が、効かないのだ」

「ワラキア」

「さあ、……早く……!」

 僅かな時間も惜しんで、掠れた声で叫ぶ。
 首元に添えられた指先からザトーの戸惑いが伝わってくる。しかしその感情の波もやがて凪ぎ、少しずつ力が込められる。そのまま鋭利な影に首をはねられ、四肢を引き裂かれるのを期待して、ワラキアは安堵の表情を浮かべた。
 愛する者の血を穢しその魂を歪ませるくらいなら、壊される方がましだ。

 ―――しかし、そうはならなかった。

 首に掛けられた両手の感触がふっと離れたかと思うと、次の瞬間には有無を言わせぬ力で抱きしめられていた。

「……くれてやる」

 厳かな囁きを聞いて、ワラキアの身が驚愕に引き攣った。
 それに構わず、ザトーの手がワラキアの首の後ろを掴み、もはや蒼白になった顔を己が傷口へと押し付けようとする。

「私の血を飲め。我慢することは無い」

「愚かな、事を……私に血を吸われることが何を意味するか、君も知らぬ訳ではないだろう?」

 震える声で問い質すと、ザトーが声も無く笑う気配がした。

「ああ、まだ自我を失いたくはない。だから噛み付いてはくれるなよ」

 鼻腔を満たす血のにおいに眩暈がして、渇いた喉が喘ぐ様に鳴った。
 背中に回されたザトーの掌が、子供を宥める様に上下する。
 それに促されて、震える舌を、まだ新しい傷口へと伸ばした。

「……っ……」

 乾きかけた血を溶かし舐め取れば、甘ささえ感じるその味がワラキアを一瞬にして酔わせ、脳髄まで蕩かしてしまう。抑制しようにも、止まらない。牙を突き立てぬようにするのが精一杯だ。

「ん…っ、……は、ァ…」

 足りない、もっと、この美酒を。
 裂けた皮膚の隙間、桃色の肉を尖らせた舌先で抉れば望み通り鮮血が滴る。その甘露を求め、ザトーの背中に腕を回して縋って、舌を鳴らし水音を立てるのも厭わず夢中で血を舐め続ける。

 そのように傷を刺激される度、ザトーには当然鋭く痺れるような痛みが走る。しかしそれ以上の妖しい熱が、ワラキアから伝染したかの如く、傷口から身体を侵食してゆく。
 古今東西、吸血鬼による"食事"が"餌"に快楽を齎すという話は数多ある。どうやらその例に漏れなかったようだ、とザトーは考えた。
 熱を帯びた吐息が首元を這い、生ぬるい舌が膚の上を滑る感触も、背中に立てられる爪の痛痒も、閨事を連想させるには充分だ。下世話な話、このまま押し倒してしまいたいだけの欲もあるにはあったが流石に今ここでそれをする訳にもいかない。そう思う程度にはまだ、理性と余裕が残されている。
 何より、ワラキアが自身を殺してくれと懇願するほど飢餓に苛まれ切羽詰まる様を曝すのは初めてだ。というよりも、思えば大食であったというワラキアが血を求める素振りを感じさせることすらなかった、と今更気付く。
 そうしてみると彼の吸血鬼らしさといえばその眼窩に流れ瞼に封をされた血と、神出鬼没さくらいのものだ。
 とすれば、今のワラキアの状態はかなり異常なのだろう。平素の態度を装うことも出来ない程に。
 餓えを満たす為、思うさま噛み付き啜りたいだろうに、それに耐えてもどかしい程少しずつ滲む血を舐めるその様子を案じて、指通りの良い髪を撫でながら問い掛ける。

「……少しは、足しになるか?」

「……っふ……くク、ハハッ……」

「ワラキア?」

 苦悶の呻きかと思われた吐息は、低く震えた笑い声だった。
 ザトーがそれを訝る間も無く唐突に、その姿形に似合わぬ剛力で引き倒される。咄嗟に受け身を取ろうとしたものの、足元に蹲る二人分の影は互いに干渉しあって用を為さず、結果殆ど無防備に背中を床板へ打ち付ける羽目になった。一拍遅れ、がつんと嫌な音を立てて後頭部も埃っぽい床へと着地する。
 痛みの為かそれとも己の不様さを恥じてか、声も無く悶絶するザトーの腰の上に陣取ったワラキアの口元は裂けんばかりに吊り上がり、狂気めいた笑みを刻んでいる。それ自体が群生する無数の生命であるかのようにうごめく外套で下敷きにした身体を押さえつけ、僅かな身動きの余地すら奪ってから、その鋭い爪をザトーの首筋へと這わせた。

「ッ、」

 眼帯の下で、ザトーの眉が歪む。痛みから一拍遅れ、新たに刻まれた傷から真紅の血が溢れ出た。
 声を呑みこんだのは何も悲鳴を堪えただけではない、すぐさま非難を口にしようとしたその舌が、奇妙に痺れて言葉を生さなくなってしまったからだった。

「……君の血は、甘い」

 兇器たる己が爪に付着した血を舐め取りながら囁くワラキアの声色は、陶酔に溺れて甘やかだ。

「君が与えた赦しは蛇の誘惑にも勝る。―――嗚呼、全く以て君の血は、たった一雫で永久の楽園と引き換えルにも充分過ギタ! 甘露ニシテ鴆毒、我ガ脳髄ノ苦痛快楽劣情妄想全テ旁魄セシメシ命ノ水ヨ! 愛シキ君ノ血ヲコノ身ニ招キイレルコト、何ト至福デアルコトカ!」

 天を仰ぎ哄笑するワラキアの、見開かれた瞼の下から溢れた真紅が散って、生温い雫がぱたぱたと床を、ザトーの膚や衣服の上を叩く。

「……私の枷を外したのは君だ、ザトー。月並みな科白で申し訳無いが、責任は取って貰うとしようか」

 その一頻りの狂態の後、ふらりと倒れる様に身体を預け、己が爪で刻んだ傷口に唇を寄せて、うっとりと蕩けた表情でワラキアは謳う。
 くすくす、けたけたと耳元で鳴るその笑い声に、ザトーの意識はかき乱されて濁っていく。
 おかしい、たかがこの程度の失血で、気が遠のく筈が無い。ザトーがそう訝しんでも、意識が沈んでいくのを止められない。
 酔い潰れる様に曖昧になっていく意識の中で、次々と膚の上に刻まれる傷の痛み、その上を這う舌の熱さだけが、奇妙にまざまざと感じられた。





***





 次に意識を取り戻した時、ザトーは己が何処にいるのか理解するのに少し時間がかかった。
 仰向けの身体を支える柔らかさからして、ベッドの上だ。掛けられたシーツ以外に、布を纏っている感触はない。
 視覚以外の感覚を総動員して探ってみれば、そこは他ならぬ自分の部屋、自分の寝台の上だった。
 夢でも見ていたかとも考えたが、少し身じろいだ瞬間に引き攣る様な感覚が身体のそこかしこを走ったことで思い直す。顔を顰め、指で探ってみればやはり、皮膚が薄く盛り上がった治りかけの傷痕が縦横無尽に走っていた。それこそ胴も四肢も問わず、刻めるだけ刻みましたといわんばかりに。
 傷が癒着し血が止まっているのは吸血鬼なりのアフターケアなのだろうか。試合でついた右肩の傷を含め、この様子だと2、3日で痕も残らず治るだろう。しかしそんな事よりも、一体何時の間に会場の空き部屋から自室まで連れ帰られたのか、どの段階で全裸に剥かれたのか、全く記憶に無いことがうすら寒く感じられた。
 吸血鬼の渇血にも遜色ない醜態を晒した気がして、ずきずきと頭が痛む。

「ワラキアめ……やりすぎだ」

 取り敢えず責任を相手に押し付けて精神の安寧を図るザトーの耳に、部屋の扉がゆっくりと開く音が飛び込んできた。

「やあ、目が覚めたようだね」

 すっかり普段通りに落ち着いた、というより何処となくとぼけた様な声色をベッドの上へと投げるワラキアは、粥の皿と水差しを乗せたトレイを手にしている。更に言えば白いエプロンも身につけていたが、もしザトーの目が見えていてかつもっと余裕のある精神状態であったなら「マントの下に前掛けをして何の意味があるんだ」と呆れ混じりに尋ねていただろう。
 ともかくそのトレイをベッドサイドのテーブルに置いたワラキアは、水差しからグラスへと冷えた水を注ぎながら全く悪気の無い様子でザトーの方を窺う。

「まずは水分を摂ると良い。それに粥と、食べられるようならば造血に効果的な料理を作ってあるが、どうかね?」

「……他に言うことはないのか?」

「うん? ……ああ、失礼。私としたことが、忘れていた」

 億劫げな動作で上体を起こしたザトーの低く地を這うような言葉を受けて、一度は首を傾げたワラキアは少し間を置いてからにこりと奇麗に微笑んだ。

「量より質、という言葉を食事で実感したのは久方振りだったよ。御馳走様」

「…………開き直ったな」

 ワラキアが余りに悪びれないものだから、ザトーも毒気を抜かれてしまう。

「ふふ。一度禁断の果実を口にしてしまったからにはもう、後戻りは出来ないだろう? ……ああ。安心してくれ給え、成り立ての屍鬼の如く餓えて襲う様な真似は二度としないさ。君が毎晩欠かさずに、その血の一雫をくれるならばね」

「責任は取ってもらう、だったか」

「覚えてくれていたようで何よりだ」

 吐息に笑みを滲ませるワラキアに、記憶の中の苦悶に喘ぐ彼を重ね合わせる。あのような苦しみを二度と味あわせてやらずに済むのならば安いものかと、口には出さずに考えた。
 かつてこれほど他人の為に心を砕いたことがあったろうかと自問しても、答えは否。つまりはそれ程惚れ込んでいるのだと再確認して、こそばゆい様な、何ともいえない心持ちがする。
 肺の中の空気を全て追い出すような、長々とした溜息がザトーの唇から漏れた。
 そうしてから、ワラキアが掲げ持ったままのグラスを引っ手繰る様に奪い、注がれた水を一気に飲み干す。
 渇いた身体に沁みる心地の良い潤い。空になったグラスを乱暴にサイドテーブルへ置き、もう一度大きく息を吐いた。

「粥はどうするかね? 私が食べさせようか」

 何が楽しいのか、声を弾ませ銀の匙へ手を伸ばすワラキアのその腕を捕まえて、強く引く。
 呆気なく―――それこそあるべき重みすら無視した軽さでザトーの上に着地したワラキアは、微笑んだまま首を傾げた。

「冷めてしまうよ。折角の作りたてなのだが」

「後で温め直せば良いだろう。……水や食事より、欲しいものがある」

 傲慢に言い捨てて、ワラキアの返事を待たずに唇を塞いだ。
 ザトーが思い出したのは、意識を失う直前の遣り取りだけでは無く、奪われた血と同じだけ与えられたその欲を発散するに遠慮する要素は今此処に一つもないのだから。
 ワラキアの抵抗は、無い。その両腕がゆるりと首の後ろへ回されて、薄く開いた白い歯列の隙間からまろび出たぬるい舌が交吻に応える。

「……此度は君が餓え、私が貪られる番というわけだ」

 キスの合間、酷く愉快そうなワラキアの呟きが空気を震わせた。

「楽園を追われた先、君の腕の中こそが、私の安寧の褥だよ」

 謳う唇を今度こそ深く塞いで、至高天へと堕ちていく。














fin.

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