43 :名無しさん@ビンキー:2009/09/27(日) 19:09:40
ヨハン受が主流のなかゲニ受をかいた自分はきっと異端。
魔女裁判かけられたら一発で火刑行きなのは確定的に明らか。

乱筆乱文、御目汚し失礼いたします。
801ss増えますようにー!!



!注意

※尖兵動画ベースの二次創作です。本編とは一切関係が有りません。
※キャラ崩壊、嘘設定、やおい要素を多分に含んだ代物です。
※男性同士の性描写があります。不快に感じる方はファイル削除をお願いします。
※ヨハン×ゲーニッツです。逆カプの姐さん方は逃げてーーーっ!

※時間軸的には尖兵動画六話その1ぐらい。





***********************************






頬を風が撫でる。
ゲーニッツが居るのは室内であるが、先ほど唐突に勃発した戦闘で能力を最大限に発揮させた結果、
戦闘の終わった今ですら、暴風の名残が部屋の空気を動かしていた。
ほんの少し前まで身体を失い、魂のみになっていたゲーニッツは、
『身体という器が風の動きを感じる』という感覚に、改めて感慨深く眼を細めた。

「祭祀様…御身体は」

「大丈夫ですよ。まぁ、全てが以前と変わらないとは行きませんが、こればかりは慣れでしょう」

心底心配そうに見遣ってくるグスタフに、ゲーニッツは笑みを浮かべ、答えを返す。
それでも、グスタフの顔は晴れない。
大丈夫だというゲーニッツの言葉を疑うわけではない。
しかし、復活したての不安定な状態での戦闘は、
確実に身体に負担を掛けているはずだ。とグスタフの中に不安の影を落とす。
かといって、必要とされていないのに手を伸ばすことなど、グスタフには出来ない。
それはゲーニッツの言葉を信じていないと示すことに他ならず、
復活の立役者にして、ゲーニッツの盲信者である彼には酷くハードルの高い行為だった。
葛藤の所為か、動くことすら出来ず立ち竦む部下に、ゲーニッツは人知れず苦笑する。

「…あまり貴方に心配をかけてもいけませんね。今日はもう休むことにしましょう」

自身の復活に当り、尽力を尽くした彼に感謝していないわけではない。
ゲーニッツは声に出さず心配だと告げてくる部下にささやかな助け舟を出した。
思わぬ言葉に眼を見開きながら、それでもグスタフは大きく首肯した。

「では、貴方も下がっていいですよ」

「はっ」

下命にグスタフは頭を垂れ、確かな足取りで去っていくゲーニッツを見送った。




―――と、言ったはいいが。




「…これは…少々、まずいですね…」

無人の廊下に、ゲーニッツの呟きが落ちる。
視線は前を向き、足取りこそ、確りしているように見えるが、
その実、ゲーニッツの身体は続け様の戦闘で悲鳴を上げていた。
体調だけを考えれば、グスタフを下がらせるのは得策ではなかったが、
ゲーニッツに狂信とも言える感情を抱く部下は、度を越すと持て余す対象に成り下がる。
一族だろうが敵だろうが、ゲーニッツにとってすべての他人はオロチ復活の為の駒でしかない。
そして駒に対して求めるのは利便性と絶対的な能力値だけであり、
グスタフのように必要以上の感情を向けられるのは望むところではないのだ。

…最も、先ほどの戦闘はゲーニッツが望んで行ったものであり、
現在の不調も自業自得であると自覚している。
グスタフ自身になんら落ち度のない事柄で、その存在を無碍にするほど堕ちてはいないし、
気遣いが分からないほど無知でも無粋でもない。
結局のところ、あの場でグスタフを下がらせる以外の選択肢はゲーニッツの中で存在しなかった。

「―――…ッ」

そんなことを考えているも、無視し続けた不調は、
業を煮やしたように脚へと下がり、不意にゲーニッツを襲った。
持ち主の意に反し、足から力が抜けていき、グラッと身体の重心がぶれる。
部屋の扉が視認できるところまで来て、と内心で舌打ちし、
倒れまいと壁へと手を伸ばすが、その手は僅かに届かず空を切る。
間近へと迫る床に衝突を覚悟したが、次の瞬間ゲーニッツは倒れることなく抱きとめられた。

「……?」

受けるはずだった衝撃以上に予想外の事態に、ゲーニッツの思考に疑問符が浮かぶ。
一瞬、下がらせたはずの部下が不調を察知して尾行していたのかと脳裏を過ぎったが、
さすがに同族の気配が読めないほど弱っているわけでもないと、即座に否定する。

「…何をしているんだ、ゲーニッツ」

吐かれた言葉と視界の端に映る紅衣。
疲労した身体を叱咤し、緩々と顔を上げれば、視界に先刻に『本気』で闘った男を捕らえた。
確か、ヨハンという名だったと思い起こし、いつものように笑みを浮かべ礼を言った。

「ありがとうございます。助かりました」

抱きとめられた腕に手を掛け、改めて脚に力を入れる。
しかし、どれだけ力を込めろと命令しても、身体は正直に不調を訴えてゲーニッツに逆らう。
意思に沿わぬ我が身が忌々しく、いっそ切り刻めば命令を聞くだろうかと、
ゲーニッツには珍しく現実味のない思案をする。
そんな様子を黙って眺めていたヨハンは離れようとする身体に、改めて腕を回し
ふん、と息を零しして、誘導するようにゲーニッツの部屋へと歩を進めた。

「ッ…ヨハン、……さん?」

急な動きに着いていけず、脚は震えるように蹈鞴を踏む。
下手を打てば脚から崩れるほど不安定だが、ヨハンの腕に支えられているため、
ゲーニッツの身体が地に沈むことはなかった。
ヨハンは人間一人を支えているとは思えないほど器用に部屋の扉を開け、
真っ直ぐにベッドへと向かい、無造作にゲーニッツから腕を離した。
身体を支えるように回されていた腕の拘束が解かれると、
ゲーニッツは重力に従いベッドへと沈む。
上質なベッドの感触に満足気な吐息を漏らし、同時に、想像以上に蓄積されていた疲労を自覚した。
ベッドに懐くゲーニッツの姿にヨハンは人知れず苦笑して、唇をからかうように歪めて見せた。

「もう似合わん無理はするなよ」

まるで諭すような言葉に、不調がバレていたか。とゲーニッツは嘆息する。
流石に拳を交わして闘った相手に隠し通せるものでもないかと諦め、素直に浅く顎を引いて頷いた。

「…肝に銘じておきましょう。このような体たらく、そう何度も見せられるものでもありませんからね」

言いながら、ゲーニッツの思考は如何に早く以前の状態に戻れるかと思案を開始する。
復活したての身体は、時間を置けば確実に回復するだろうが、それでは遅い。
全てはもう止めようもなく動き出しているのだ。それこそ、ゲーニッツが肉体を失う以前から。
そんな中で、時間を掛けて回復する暇はないし、効率を求めるゲーニッツにはする気もない。


手早く、効果的かつ能率的な方法は何か。


悩むまでも無く、思考が記憶を引っ張りだし、
経験に基づいて最も手早く効果的かつ能率的な方法をはじき出す。
最大にして唯一の問題点と言えば、生け贄ともいえる『相手』は何処から調達するかということだが、
ゲーニッツの視線はすでに格好の獲物を捕らえていた。


――――悪くない――――


ゲーニッツの唇が弓形に反るが、眼だけは笑みを浮かべず獲物を絡めとる。
表面上は穏やかさを装っているが、その奥には心根の弱い者が見たら、
魂まで縛られ息も吐けず、硬直するのではないかという危うい色が息を潜めていた。
まるで、風下で飛び掛る隙を狙っている捕食者のように。
そして、そんな危険生物が身近に迫っていると気付けるか否かが、獲物の運命を決める。
無論、眼の前にいるのは、どう見ても獲物という風体ではないが、
生け贄を必要としているゲーニッツにとっては然したる問題では無い。
ひっそりと狙いを付けられたヨハンは、思惑に気付くことなく、
自分の仕事は終わったとばかりに極自然にゲーニッツに背を向けた。

「では、精々療養するんだな」

「お待ちください」

その背に声を掛け、同時に腕を掴む。
疲労による不調を身体が訴えていようが、握力は落ちていない。
簡単には振り解けない力で掴まれ、ヨハンの眼が不審げに細められる。

「…?」

「少々、ご協力願いたいことがあるのですが」

「…協力?」

掴まれた腕を見下ろし、ベッドに座っているゲーニッツへと視線を転じる。
ヨハンの視線を得て、表面上はにこやかに言葉を続けた。

「手早く、効果的かつ能率的な回復の為には、是非とも貴方のご協力が必要なのです」

「――…私が、か?」

「ええ、……貴方が、です」

厳密に言えば、特にヨハンである必要はないが、それを言う気は更々無い。
腕を捕まえる手に力を入れたまま緩やかに引けば、特に抵抗せずヨハンはベッドへと腰掛けてきた。
ゲーニッツの不調を目の当たりにしたからか、ここまで自信有り気に語る『方法』に興味を
持ったのかは知らないが、どちらにせよゲーニッツには都合が良かった。
ゲーニッツ自身も身体を起こし、座位を保つ。
その折、微かに揺れた体躯にヨハンは腕を伸ばし、自然な動作でゲーニッツを支えた。

「それで?」

水を向けられ、ゲーニッツの頬が緩む。
獲物までの距離が理想的で、なおかつ相手は危険に気付いていない。
あとは包囲網を狭めていくだけだと、ゲーニッツは口を開いた。

「オロチとは本来、地球上に存在する精神力と同義なのです」

ゲーニッツは説明口調で言葉を吐くが、唐突な切り口にヨハンの眉間に皺が寄った。
考え込むように顎に手を掛け逡巡するが、意味が分からないと間を置かず白旗を挙げる。

「…どういう意味だ?」

「オロチの力の源も兼ねる、と言うことですよ。延いては一族である私自身にも」

「回りくぞいぞ、ゲーニッツ」

「……貴方から欲情、と言う負の感情を貰おうと思いまして」

「―――――――」

事も無げに吐かれた言葉に、ヨハンの表情が凍りつく。
想像もしていなかっただろう展開に、脳が凄まじい回転を始めるが
回転を始めるまでもなく現状が危険すぎることをようやく自覚する。

「如何しました?」

知らず知らずの内に形成されていた包囲網に気付き、ヨハンの頬が引き攣った。
笑みを浮かべているゲーニッツの瞳の奥に妖しげな色を見つけてしまい、
ヨハンは自身の迂闊を盛大に呪った。

「…………断る。男相手なんぞ御免だ」

言い捨て、ヨハンがベッドから退くように腰を浮かした。
しかし、狙いをすませた捕食者に背を向けることは愚行に他ならず、
さらに言うなればこの距離で獲物を逃がすようでは、捕食者ではない。
ゲーニッツは掴んだままの腕を強引に引き寄せ、
ヨハンの体躯をベッドに沈めることに成功した。
急転した視界にヨハンの身体が一瞬硬直する。
その瞬間を逃さず、ゲーニッツは正に風のように素早く行動した。

「ッ、おい、ゲーニッツ!?」

狼狽を露わに、名を呼ぶヨハンを無視し、ゲーニッツはヨハンを押し倒す。
動揺しているヨハンの隙をつき、手早く着衣を寛げると、
陰茎を引きずり出して、それを躊躇いなく口腔へ迎えいれた。

「お前……っ!」

文句をつけようとするヨハンの声を無視し、咽喉の奥まで一息に飲み込み、
粘膜全体を絡めて扱けば、口内の雄は容易く反応を見せてくる。
ヨハンの体躯を自重で押さえ付けながら、武骨な指で睾丸に指を沿わせて捏ね上げ、
陰茎全体にねっとりと舌を絡ませ、ヨハンの熱を煽り、高めていく。

「―――ッ」

柔らかく生暖かい舌と粘膜で追い立てられ、ヨハンは息を詰めた。
ゲーニッツは、緩やかに勃ち上がり、成長を見せる様と、
口腔に拡がる苦味に気を良くし、窪みを玩ぶように舌先を閃かせる。
舌先に乗った雄の味を味わい、微かに咽喉を鳴らすゲーニッツにヨハンは言い知れぬ熱を覚えてしまう。
ゲーニッツの長い舌は器用で、裏筋を細かく擽り、亀頭の括れを茶化して生々しい水音を立てる。

「……知らんぞ…ッ」

既に勃起してしまっている身体を顧みて、納まりがつかないヨハンは抵抗する気配が薄れていく。
それでも、性急に雄に懐いてくるゲーニッツを諦めの目で見下ろしながら、悪態を吐いた。
視線に気付いたのか、はたまたヨハンの反応が見たかったのか、
陰茎を口に含んだままのゲーニッツと視線が合う。
熱を帯びたゲーニッツの瞳は縦長の瞳孔が常より細く、まるで獣のようだった。

「…ど…っです…?…」

口腔で肥えた熱源はゲーニッツの声を阻んでいるはずなのに、しっかりとヨハンの耳に届いた。
くぐもった声が、ジリ、とヨハンの鼓膜を灼く。
身体に溜まってしまった熱と、咥え込まれた程度で勃起してしまった自身が情けなく、
ヨハンは重く誤魔化すように深い息を吐いた。
そうしている間にも、ゲーニッツは音を立てて奉仕を続けヨハンを高めていく。

「…ハッ…ぅ…―――は、」

ヨハンを高めることでゲーニッツの身体の中の熱も高まっているのか、
単純に息苦しいのか、眼が水分を含み息が荒い。
その息遣いが酷く甘く聞こえ、ヨハンの思考を壊していく。
記憶を遡れば、二人が対峙し、闘っていたときから一時間と経過していない。
酷薄な笑みを浮かべながら風を操り、烈風を持って相手を切り裂く、吹き荒ぶ風を冠するに相応しい姿と、
今まさにヨハンの股間に顔を埋め陰茎に必死に舌を絡ませている姿を照らし合わせ、
その違いすぎる二つの顔にヨハンに潜む支配欲が、のそりと身じろいだ。

「――ん、……ふ…ッ」

ごくり、と。
唾液と先走りの混ざった液体を、ゲーニッツが嚥下する音が響く。
その音に、獣は跳ね起き、ヨハンを突き動かした。
ゲーニッツの髪を掴んで、無理やり陰茎から引き剥がすと、
その逞しい体躯を押さえ付け、性急に服を剥ぐ。
脱がせると言うより「暴く」に近い行為は暴力的な意味合いを孕んでいて、
一瞬見えたゲーニッツの唇が楽しげに歪んだ。
クソ、と内心で吐き捨てながら、ヨハンはゲーニッツを肥えた熱で貫く。

「―――――ッ!!」

「っく」

あまりの衝撃に、余裕を保っていたゲーニッツの眼が見開き、指がシーツを掻き乱す。
本能的な衝動に身を任せたヨハンも、異物を拒むキツい締め付けに眉を顰めたが、
ゲーニッツの陰茎に指を絡ませ、硬直した身体を解そうと中心を摩擦し始める。

「ッ…ぁ…ん……く…」

衝撃に凍り付いていたはずの身体は、前に与えられる愉悦に息を合わせ、力を抜いていく。
腹の中に凶器を埋められているにも関わらず、
身体を自ら開こうとするゲーニッツにヨハンは心中で驚いた。
もっと気遣って進めるべきところを、萎えても仕方ない方法で推し進めたと自覚している分、
快楽に従順な反応を見せる身体に意図せず脳髄が灼ける。
一度、力を抜いてしまえば、突き立てた凶器を拒むことなく、
柔らかく包みこもうとする内壁に、ヨハンの咽喉が心地よさそうに鳴る。
男など御免だと言っていた自分は何処へ行った、と冷静な自分が囁くが、
それさえ思考に留まらず、熱に流され眼下にある体躯に口付けを落とす。
酷くしたことを詫びるように、首筋や耳裏に舌を這わせゲーニッツの息が整うのを待った。
しかし、陰茎に絡む内壁の熱を意識すると、微かな内壁の蠕動まで感じ取ってしまい、
ゲーニッツを気遣う余裕が瞬く間に尽きそうになる。まるで魔性のようだ。

「―――ハッ…ぐ……ずぃ…ッぶん、楽し…そう…です…ね…、ッ」

ゲーニッツはアチコチへと口付けを落として気遣う素振りを見せるヨハンを、睨みつけるように笑った。
後孔に雄を受け入れても、優位に立とうとする矜持の高さは流石だが、
慄くように引き攣る呼吸も、嬌声を奥歯で噛み殺す仕草も、余裕とはかけ離れた姿だと苦笑を返す。
しかし、それを目敏く見つけ、ゲーニッツはわざとらしく体内に咥え込んだ熱を締め上げた。
喰い千切れられそうな締め付けに、ヨハンの苦笑が崩れて消える。
耐えるように息を詰め、熱の篭った呼気を吐くヨハンの眼は、飢えを自覚した獣のそれに変わる。

「――――ハ、…ハッ…」

何処か客観的に、追い詰められて啼いている自分自身をゲーニッツは笑う。
肺が軋む音を立てるほど、呼吸が荒い。
触れ合う肌も、受け入れた熱源も、堕ちてくる視線も、思考を灼くほど熱い。
武骨な指が絡む陰茎も、極限まで高められ、すぐにでも爆ぜそうだ。
追い詰められて、肌を灼かれ、蹂躙される。


―――――だが、それはヨハンにも当て嵌まる。


気遣いが多分に含まれた指先が、ゲーニッツを貫く熱源が、欲を彩る赤い眼が、物語る。
追い詰められている、灼かれている、蹂躙されている。
ゲーニッツを抱いているヨハンに、どんな退路も弁明も許されない。
腹の中で脈打つ凶器に、笑みさえ歪められながら、それでも、ゲーニッツは楽しげに笑った。
うっそりとした笑みに背筋に薄ら寒いものを感じながら、ヨハンはゲーニッツの性腺を抉ってくる。
流石に、即物的な刺激には太刀打ちできず、ゲーニッツは体を大きく戦慄かせた。
掌で硬度を増した熱源に煽られ、その手つきにヨハンの限界が近いことを自覚する。

「は、ぅ……ッ…ぁ…―――――ッ!」

指を絡め緩急をつけて摩擦され、狙ったように感じ入る所を穿たれると、
大きな波に意識を浚われ、ヨハンの手中でゲーニッツは果てた。
同時に、体内に収まっていた陰茎を勢い良く引き抜かれ、擦れた悲鳴が咽喉の奥で上がる。
喪失感に引き攣る後孔に構わず、ヨハンはゲーニッツの腹部に熱を吐き出した。
腹に熱いものがぶちまけられ、ゲーニッツの腹が白く汚れる。
お互いを追い詰めた熱に追いつけず、暫く、室内に二人分の荒い息遣いが零れる。

「……ぁ、…はぁ――…」

ゲーニッツは首を振り、脳裏に掛かっていた靄を払う。
性行為に没頭したことで、当初の目的である回復は確かにしたが、
熟れた後孔は、得られるはずだった爛れた熱を求めて浅ましく蠕動を繰り返してしまう。
肺は酸素を求め荒い呼吸を繰り返し、今まで自身に覆いかぶさり、強いていた男を視界に捕らえる。
息を整えたヨハンは、ハッとしたようにゲーニッツの上から退くと乱れた紅衣を正す。
何処か居心地の悪そうなヨハンの顔に喜色を覚え、同時に理由のない苛立ちが込み上げてくる。
断りもなく勝手に終わりにしようとするヨハンの姿に、ゲーニッツの眼が細まり、唇が弧を描く。
眼の前のご馳走を、口にする瞬間に取り上げた不届者に視線は殺意すら帯びていくが、
それに気付かず、ヨハンはベッドから立ち上がった。

「気が済んだなら、――…私はもう部屋に戻る。お前も休んだほうがいいだろう」

彷徨う視線は動揺を隠しきれていないものの、何もなかったように割り切って、
去ろうと背を向けたヨハンに、ゲーニッツの手が伸びる。
狙うは赤い長い髪。上体を僅かに起こし、髪に指を絡ませて。

「―――――ッ!?」

毛根から何本か抜けるんじゃないかと思うほど手加減なく引っ張り、寝台へと引きずり倒した。

「―――ッ、ゲーニッツ!!」

背に当たるベッドの感触以上に、頭皮に与えられた打撃にヨハンの眼が険を孕む。
ゲーニッツの指には、何本か赤い髪が絡んでいた。
しかし、ゲーニッツはそんな些細な事に一切の頓着を見せず、
さっきとは逆転した体勢でヨハンを見下ろし、微笑む。

「―――あれだけ好きにしておきながら、面白いことをしてくれますね」

ヨハンの体躯を素晴らしい手腕で押さえつけながら、これ見よがしに腹に撒かれた白濁を掬って見せた。
ゲーニッツとヨハン、二人分の精液は腹を汚し、重力に従い下へと流れていく。
全裸に等しい姿で唇を舐めるゲーニッツに、色の濃い殺意を見つけ、ヨハンのこめかみに汗が伝う。

「…誘ってきたのはお前だろう。私を責めるのは」

「ええ、誘ったのは私です」

ヨハンの言葉尻を奪い、穏やかに肯定する。
凄艶を纏いながら、視線だけは爬虫類の得体無さを秘めた眼に、眉を顰めた。
そんなヨハンに構うことなく、ゲーニッツは笑み深く、耳元で囁く。

「そして、乗ったのは貴方です」

「―――ッ」

ヨハンの頬が引き攣る。
字面だけを見れば、反論のしようがない事実である。
誘ってきたのがゲーニッツだとしても、抱いたのはヨハンなのだ。
ぐうの音も出ないヨハンに、酷薄に微笑み、その手が整えられた服を再び乱していく。
間近に感じる圧倒的な性の匂いに咽かえりそうだった。

「―――私が満足するまで……付き合っていただきますよ」

見下ろす顔が一部の隙の無い笑顔であったことと、
鎮められたはずの熱を叩き起こしてくる手際の良さにヨハンの顔が青ざめた。


その顔色に一層笑みを深めたゲーニッツは宣言どおり、自らが満足するまでヨハンを離さなかった。













明けて翌朝。
昨日の不調が嘘のように軽い足取りで廊下を歩くゲーニッツは、
見慣れた黒髪を見つけ頬を緩ませた。

「おはようございます、グスタフ」

「お早う御座います、祭祀様」

尊崇する祭祀に声を掛けられ、グスタフは自然な動作で頭を下げた。
そして、ゲーニッツの変わりない様子に、密かに安堵の息をつく。
復活したての身体で連戦を重ねたのだ、万が一と言うこともあるだろう。
けれど、グスタフの心配を知ってか知らずか、ゲーニッツは常と変わらず笑みを浮かべている。

「ところで、グスタフ。彼はどうしました?」

尋ねられた言葉に、思い浮かべるのは昨日ゲーニッツが本気で戦った赤髪。
グスタフは眉を顰め、困ったように首を振った。

「…今日はまだ…」

「そうですか」

さして気にしていない風のゲーニッツの言葉に、グスタフは息を吐く。
同時に、せっかく祭祀様が気に掛けてやっているのに、
あの男は何処をほっつき歩いているんだと理不尽な怒りを密かに燃やした。

「あれは、本当に扱いにくい男でして…」

「確かに、私より早く起きてしまうとは思いませんでしたが……」

忌々しさを隠そうともせず零すグスタフを他所に、
ゲーニッツは穏やかに微笑んで、独り言のような呟きを空に向ける。

「……は?」

「いえ、」

噛み合わぬ言葉にグスタフは困惑を浮かべ、同時に首を傾げた。

「中々、楽しめる人でしたよ。是非、今後とも円滑な関係でいたいですね」

「そう…ですか?」

「ええ」

首を傾げるグスタフに、ゲーニッツは笑顔で言い放つ。
ヨハンに対する事実上の死刑宣告に等しい言葉にも、グスタフにとっては、
そんなに昨日の闘いが琴線に触れたのかと、的の外れた思考しか呼び起こさない。


もしも、この場にヨハンが居て、ゲーニッツの狡猾な笑顔を見ることができたなら、
冗談じゃないと声高く否定しただろうか。
それとも、昨夜の手練手管と強制的に覚えこまされた甘美な味に、顔を歪めるだけに留めただろうか。



問いの答えはヨハンにしか――――
             ……実は、ヨハンにも解らない。

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

どなたでも編集できます