476 :実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー:2014/01/27(月) 22:45:06.23 0
久しぶりにゲニヨハ、と思いつつスレの過去ログを読み返していたら、「ゲニは飴を覚えるべき」との声が沢山あったのでやってみた。
ヨハンさんが飴を舐めるだけの非常にKENZENなSSで御座います。

URL:www1.axfc.net/u/3156219
タイトル: 無題
PASS:mugen
ネタ元&設定等: 暴l君lのl嫁l探lし
カップリング(登場キャラ):ゲーニッツ×ヨハン
性描写の有無:全年齢
内容注意:甘々



※このSSには男性同士の恋愛的描写が含まれます。
※キャラクターの性格や口調が違う場合があります。



嫌な予感がした方は、何も見なかったことにしてファイルを削除していただけるとお互い幸せになれると思います。












コンコン、とノックの音がして呼び掛ける声。

「ヨハン」

某大会の控え室のソファに座って寛いでいたヨハンは、安らぎの一時の終了を告げる声にビクリと身を竦ませた。
ドアを開けてゲーニッツが入って来る。直視することも完全に視界から外すことも怖くて伏せがちに向けた視線に映る黒いブーツ。

「……お帰り」
「ええ。ただいま」

答える声は何故か酷く機嫌が良さそうだ。嫌な予感に、それだけで息が苦しくなる。

「ヨハン」
「な、何だ」
「飴が有るんですけど、何味が良いですか?」

ガサリとビニールの鳴る音。ヨハンが少しだけ視線を上げると、ロッククライミングが趣味だと言うゴツイ手に、短い棒の付いた丸い飴が摘まれていた。見た限り、ゲーニッツの手首に掛かっているビニール袋には、同じ形の飴が沢山詰まっているようだった。

「……いちご、有るか」
「えぇ。有りますよ」

頷いて、ゲーニッツはビニール袋の中からピンク色の包装の飴を取り出し、小さい文字で書かれたフレーバーを確認してビニールを剥いだ。

「相変わらず、子供みたいな物が好きなんですね」
「だって、仕方が無いだろう。子供の頃はこんな駄菓子、食べさせて貰えなかったんだから」

言い訳がましく呟くヨハンに、ゲーニッツは目を細める。

「それは、それは」

曖昧に微笑んで、ヨハンの隣に腰を降ろし、飴を差し出して来る。

「……あ、ありがとう」

飴を受け取ろうと棒を持つが、ゲーニッツの手は動かない。

「ゲーニッツ……?」

訝しく思ってゲーニッツを見遣り、その笑顔で何となく意図を悟ってしまった。

「いや、自分で食べるから……」

ぐ、と手の力を強める。と、

「ね、ヨハン」

ゲーニッツの空いていた方の手が、ヨハンの手に触れる。

「甘やかされるのと、『いつも通り』にするの、どちらが良いですか」

途端、火にでも触れたようにヨハンが手を引っ込めた。

「……うぅ」
「さぁ……どうぞ、ヨハン」

ちらりとゲーニッツを見上げて、青い爬虫類の眼球と視線が合うと、慌てて逸らす。
牧師の発するプレッシャーに負け、逃げるに逃げられず、ヨハンはおずおずと口を開き、ピンク色の飴を迎え入れる。
予期して覚悟していたが、喉の奥まで飴玉を突き込まれるようなことは無かった。

「……ん」

斜め下に視線を逃がしながら飴を舐る。
こんな時でも飴はシンプルにただ甘い。安っぽくて毒々しさすら感じるフレーバーでも、甘い物は幸せだ。
もっと安らげる状況なら……例えばしばらく帰っていない自宅で、使用人も下がらせて、行儀悪くベッドに寝転がってテレビか雑誌でも眺めながら頬張れば、きっとこの上無い。
だと言うのに、この状況は何だろう。

「ぅ……」

口の中で、飴がゆっくりと、自分の意志でなくゴロリと回されるから、どうしても、その質量を意識してしまう。

「美味しいですか?」

尋ねられて小さく頷く。ゲーニッツの視線は肌を焦がして穴を開けてしまいそうなほど強いが、身を隠せる物は無い。
小さな甘い球体に拘束されて、逃げられない。
せめて、少しでも早く逃げられるようにと唾液を絡めて深く咥え込む。
唾液を飲み込む音ですら頭の中に響き渡って、追い立てられるような気分だ。
一瞬だけゲーニッツに視線を向けて、青く涼やかな筈の瞳の余りの温度に慌てて俯く。

「―――はっ…………はぁ…………」

恐怖に我知らず涙が滲む。引き攣る呼吸をどうにか宥めながら、飴玉に舌を這わせる。
その姿を喰い入るように見つめていたゲーニッツも、ヨハンと同等以上に必死になって、自身の荒れ狂う衝動を宥めていた。
微かに香る甘ったるい匂いが精神を煽る。
内側から弾け飛んでしまいそうな程に上がった内圧を僅かにでも逃がせるように、深く息を吐いた。
ゲーニッツの呼吸に併せて下がった飴を追って、ヨハンが俯く。顔にかかった前髪が邪魔に感じられて、指先で掬い上げて耳に掛ける。
角度が変わって露わになったヨハンの襟元からタートルネックの中へ続く首筋のラインに、ゲーニッツの指に力が入り、握り潰されるように棒が折れた。
それにビクリ反応したヨハンが反射的に口を閉じる。
ガリッ、と。脆くなった飴玉の砕ける音に、ゲーニッツは我に返った。

「あ……あぁ。もう、食べ終わったのですね」

ヨハンの口から引き抜かれた棒に、もう飴は残っていない。
おどおどと見上げるヨハンから顔を逸らし、彼の膝の上に飴の入ったビニール袋を乗せる。

「……残りも差し上げます。好きになさい」

目を合わせようとしないまま立ち上がったゲーニッツの様子を怪訝に思いながら、ヨハンは顔を上げた。

「え、あ、ゲーニッツ?」
「少し外の空気を吸って来ます。ここは……熱い……」

彼は目元を覆って呟き、踵を返して控え室を立ち去る。
青い衣装の背を呆然と見送り、ヨハンは今日はまだ痛いことされてないなぁ。と独り語ちる。
恐怖の名残か、まだ心臓が強く脈打っているが、不快には思わなかった。
いつもこうならもっと……

「……ん?」

もっと、何だろう。自分の脳裏を過りかけた思いは指の間を擦り抜けてしまった。
その影に思いを馳せて、ヨハンは首を傾げた。

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