526 :実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー:2014/07/21(月) 11:59:07.45 0
まさかレスがついてる、だと・・・?
>508の続きがなんやかんやで書けたのでコソーリ投下|・ω・)
もっとこのふたりが増えればうれしいなって(私が)

URL:www1.axfc.net/u/3280869
タイトル:無題
PASS:mugen
ネタ元&設定等:こiろiしiてiでiもiうiばiいiとiる
カップリング(登場キャラ):ソル×嘉神(扇奈、セiシiリiア)
性描写の有無:全年齢
内容注意:女子登場



※このSSには男性同士の恋愛描写が含まれます。
※間違って開けてしまった方はすぐに閉じて削除してください。



#注意#
・ソル×嘉神
・「こ|ろ|し|て|で|も|う|ば|い|と|る」をベースにしていますので当該動画のネタバレを含みます。
・CP要素薄味/妄想具現化/誰だおまえらは!/短い・・・?















 大会が開始されて一年と半年あまり。季節はめぐり、二度目の冬がやってこようとしていた。ルール上、長期戦になることは
覚悟していたものの、年を越すはめになるとは思ってもみなかった。業火剣乱は惜しくも優勝をのがしたが、成績は序列6位。
他のチームのメンツから考えれば、健闘したほうだ。ソルひとりの力では成しえなかった。それもこれも、次鋒の扇奈、副将の
セ|シ|リ|ア――そして、大将の嘉神が奮闘したおかげだと思っている。しかし、それは口が裂けても言えなかった。今後も言
うつもりはない。柄に合わないからだ。

 ソルは公園沿いの道を、嘉神とともに歩いていた。まるで祭りの後のように、辺りはしんと静まり返っている。思い出したよ
うに明滅する、電灯の頼りない明かり。顔をなでる冷たい夜気。それらがソルに二度目の冬の到来と――嘉神の別れをあらため
て感じさせた。

「おい。ここの道で合っているんだろうな?」

 ソルはいぶかしみながら訊ねる。やや遅れてついてきている嘉神が、うろんにうなずいた。顔は真っ赤に色づき、目が据わっ
ている。酔っぱらっていることは一目見てわかった。ソルは、嘉神の家がどこかなど知らない。だから本人の道案内が不可欠な
のだが、その応答も怪しい。
 閉会式後、主催者による全チーム強制参加の打ち上げとなった。ただ、その後の二次会は自由参加であったため、ソルは辞退
した。嘉神もまた辞退を申し出た。そこでようやく、ソルは嘉神の異変に気づいた。ぐったりと椅子に腰かけている嘉神は、見
るからに酔っていた。それほど飲んでいただろうかと、記憶をたぐるも、よくわからなかった。だが、自制心のかたまりのよう
な男が体調にきたすほど飲むというのも、おかしな話に思えた。
 そこで二次会に出席する扇奈から、嘉神を送ってあげるように頼まれた。

『ソルさん。帰宅するまでがチームメイト、ですからね?』

 扇奈はいって妖しげにほほえむと、嘉神を心配するセ|シ|リ|アを説得して、彼女と会場へ向かった。計画どおりとでもいいた
げなその態度から、扇奈が一枚噛んでいるのでは? とソルは疑った。どうやら彼女は、嘉神との仲を取り持とうとしているら
しく、事あるごとにソルと接触させたがろうとするのだ。だが、確証がないため追及はしないでおいた。
 結局、ソルは引き受けることにした。嘉神の具合が気がかりだったのもある。だが、それよりも、酒が回っているせいなのか、
不思議と沈んでいる奴を観察するのも悪くないと思えたのだ。

(それとも、優勝できなかったからって、ショックを受けているのか?)

 それはないと、ソルはすぐに思いなおす。業火剣乱の敗退が決まったときこそ、打ちひしがれた様子を垣間見せたものの、そ
の後の嘉神は平然としていた。打ち上げのときも、鷹揚とした笑みをいつものように湛えながら、他チームの大将としゃべって
いた。

(なら、酒に弱いだけか……)

 いずれにせよ、今のソルにとってこの男は愉快の何物でもなかった。表情にこそ出さないが、嘉神もまた、現在の自分を苦々
しく思っているにちがいない。
 ……ただひとつ不満があるとすれば、ソルのせいではない、ということ。それが最後の心残りだった。

「……ソル」

 小声で呼ばれて、ソルは物思いから覚める。ふり返ると、嘉神が立ち止まっていた。

「なんだ?」

 ソルもまた足を止める。

「ひとりで帰ってもいいのだぞ、私は、平気だ」

 虚勢を張っているのだと、すぐにわかった。
 ソルはせせら笑うように一蹴する。 

「嬢ちゃんが、帰宅するまでがチームメイトだとよ。なら、先鋒が大将の面倒を見るのが道理ってもんだろ」

 嘉神は小さく目を見開くと、くちびるを結び、深くうつむいた。  

「どうした?」

 ソルは、嘉神の様子がおかしいことに気づいた。

「ソルよ、私は……」

 嘉神は言いかけ、思いなおした様子で言葉を切る。なにかを、ひどく迷っているふうだった。
 だが、やがてかぶりを振ると、

「なんでもない。ソルは先に帰ってくれ、私は少し、酔いを醒ましたい……」

 言って、嘉神はとぼとぼと公園へ向かう。業火剣乱の命運を背負っていた大きな背中は、今はとても小さく、弱々しかった。

 (帰ってくれって……。そんなことできるかよ)

 彼の心を揺さぶったのが何なのか、ソルはわかるような気がした。しかしそうなると、腑に落ちないことがある。ならば、
この前の反応のなさは何だったのか? あれもまた虚勢だったというのだろうか?
 ソルの脳裏にとある情景が、ふっと浮かんだ。

『ソルさん。嘉神さんを、あんまりイジメちゃだめですよ?』

 あの後、入れ替わるようにしてやってきた扇奈は、含むように笑っていった。そのときは腹が立っていたせいで、ソルは深
く考えようとしなかった。もしかしたら、あれは……。
 最後の最後でふざけた真似しやがって――ソルは小さく舌打ちをして、嘉神の後を追いかけた。
 嘉神はベンチに座りこんでいた。こぼれた髪が顔をおおい、表情はまったくうかがえない。ソルは正面に立つ。立ち位置が
逆であるものの、この前の再現のようだと思った。

「おい。大将」

 呼びかけると、嘉神の肩がぴくりとはねた。

「何を拗ねてる」

 返答に間が空いた。

「……拗ねてなどいない」
「どこがだ。あんた、大将って呼ばれるのがよっぽど嫌いらしいな」
「それ以前の問題だ、もう私は大将ではない……業火剣乱はなくなった」
「淋しいと感じているんだろう」

 かすかに、息を呑む音が聞こえた。

「あのとき、あんたからの返事はなかったが……今はどうなんだ?」

 嘉神はむっとしたように口をつぐんでいる。

「教えてくれよ、大将。この頭の悪い先鋒に」

 嫌だというように、嘉神がかぶりを振る。だが、ソルは追及の手をゆるめなかった。ここで引いたら、もう二度とチャン
スが巡ってこないような、そんな予感がした。

「こっちを向け」
「断る」

 これには、きっぱりとした声が返ってきた。

「私は今、とてつもなくみじめな顔をしている」
「俺はそれが見たいんだ」

 ふっと、笑う気配がした。 

「悪趣味だな」
「ああ、そうだ。俺も自分がこんなに悪趣味だとは思ってなかった。あんたが気づかせたんだ。だから責任をとれ」
「身勝手にもほどがある」
「そういう身勝手な振る舞いをさせているのも、またあんただってことを忘れるな」

 ソルが腰をかがめるか、あるいは髪をつかんで上を向かせればいい。だが、それではだめなのだ。
 長い沈黙の後、嘉神は、やっと重い口を開いた。

「……ただの、酔っぱらいのたわ言だと思ってくれていい。たしかに、お前の言うとおりだ。私は淋しがっている。いや、
惜しいと思っている」

 まるで自分自身に言い聞かせるように、嘉神は、ぽつぽつと胸の内を明かす。

「こんなにも長い間、チームとして誰かと共にしたことがなかったからかもしれない。お前たちに情が湧いてしまったの
だろう。だが、始まりがあれば終わりがあるように、出会いがあれば別れがある。その刻がきただけのこと。いくら口惜
しもうと、それは変えられない。変えられないことをいつまでも引きずるなど栓がない。……それに」

 いって、嘉神は顔を上げる。

「いかにも私らしくないだろう?」

 そこには、大将の威厳も面影もなかった。持てあます感情に苦しみもがく、ただの男がいた。救いを求めるような目は、
今はたったひとり、ソルだけを見つめている。 

「私は馬鹿だ。永遠の別れになるわけでもないというのに。ただ、もう少しだけ皆と闘っていたかった……。ソル、お前
といたかった。それを惜しいと思っているのだ」

(ああ、本当に、らしくねぇ)

 しかし、それこそ、ソルがずっと手に入れたかったものだった。

「今のあんたは悪くない」

 嘉神は目をまたたかせると、複雑そうな顔になった。

「ならば、普段の私は悪いということか?」
「ま、そういうことになるかもな」
「つくづくお前は悪趣味なのだな」
「そんな悪趣味な奴といっしょにいたかったんだろ?」

 ソルは意地悪く言い返して、嘉神の髪をくしゃりとかき上げた。嘉神が首をちょっとすくめる。だが、ソルの手からの
がれたいというわけではないらしく、振りはらおうとしなかった。ほおに赤みが増しているのを見、ソルはいっそう愉快
な気分になる。これを扇奈がイジメだというならば、もっともっとイジメてやりたい――そう欲せずにはいられなかった。
これは当分の間、手放せそうにない。

「嘉神」

 これまで嘉神とは敵として、大勢いる味方のひとりとして、見かけたことはあった。だが、言葉を交わしたことなどな
かった。今大会がなければ、そしてチームにならなければ、ソルは一生この男を、『嘉神慎之介』として認識することは
なかっただろう。

「大会があるときでないと会えないってわけじゃねぇ。俺に会いにきたくなったら、いつでもくればいい。嬢ちゃんたち
――扇奈やセ|シ|リ|アも引き連れてな。ここは、それが許される世界なんだ」
 
 嘉神は驚いたようにソルを見つめ――そして困ったような、照れたような、いつかの笑顔を見せてくれた。

「ソルからは会いにきてくれないのか?」

 わかりきっているくせに――ソルは目元をやわらげ笑い返した。


――――――――――――――――


『嘉神さん。おはようございます』

 携帯電話の受話口から、扇奈の弾んだ声が聞こえてきた。

「……おはよう」

 嘉神はやっとの思いで声を絞り出す。扇奈が忍び笑いを漏らした。

『あらあら元気がありませんねぇ。やっぱり二日酔いになっちゃいましたか』

 嘉神は、わかっているなら電話を寄越さないでくれと胸の内でつぶやきながら、ベッドからのろのろと身を起こす。激し
い頭痛と切実な喉の渇き。そして込み上げてくる吐き気。長いこと味わうことのなかった二日酔いの症状だった。もはや上
体を起こしているだけでつらく、またもや布団の上に転がる。

「それで扇奈よ……こんな朝早くから何の用なのだ」

 電話の向こうで、扇奈が小さく吹き出した。

『嘉神さん、すっかり寝ぼけていますね。朝早くからって、もうお昼ですよ?』

 ナイトテーブルにある置時計を見やる。針は12時を指そうとしていた。あまり飲んだ覚えはないのだが、と嘉神は首を
かしげる。淋しさをまぎらわそうと、知らず知らず杯を重ねてしまったのだろうか。

「たしかにそうだな……。すまぬ、時間感覚が狂っているようだ」
『いえいえ。嘉神さんの新たな一面を発見したようで得した気分です。……それで嘉神さん』

 扇奈が、急に声をひそめる。

『お隣に、ソルさんが寝ていたりします?』

 嘉神は思わず、は? と声を上げてしまった。なぜそうなるのだろうと、嘉神が必死に思考をめぐらせていると、扇奈の
釈然とした声が聞こえた。

『ああ、ちがうんですね。残念です。じゃあソルさんは嘉神さんを襲うことなく、無事に送り届けてくださったわけですか』

 以前から感じていたことだが、どうやら、彼女はとんだ思い違いをしているようだった。男色というレッテルを張られな
いためにも、一度はっきりさせておくべきだろうが、それは今度の機会にしておく。
 嘉神は、扇奈がいらぬ想像を働かせてしまわないよう、用心しながら言葉をえらんだ。

「うむ。ソルには面倒をかけさせてしまった。あとで、きちんと礼をしておかなければ……」

 昨夜のことが突然思い出され、嘉神は思わず口ごもる。ほおがみるみる熱くなるのを感じた。酔っていた間の記憶が抜け
落ちるというマンガ的な展開はなく、嘉神は一言一句覚えていた。深酒をした場合、人には二通りの症状が出る。暴れるか、
沈みこむか。嘉神は後者のようだった。
 ずっと胸に秘めておこうと思っていた。隠しておくべきだと思っていた。それなのに。

(私はなんて醜態をさらしてしまったのだ……! どんな顔をしてソルに会えばよいのか……)

 髪をかきあげてきた、熱く大きな掌の感触がよみがえる。そして、愛しむような眼差しと微笑み。あたたかく、しびれる
ような感情が、胸の底から湧き上がってくる。

(あんなふうにも、ソルは笑えるのか……)

「嘉神さん?」

 扇奈の不思議そうな声に、嘉神はハッと意識を引きもどす。

「ああ、いや、すまぬ。思いのほか二日酔いがひどくてな……」

 不気味な沈黙が流れる。

『……嘉神さん。昨夜、やっぱりなにかあったんですね?』

 嘉神は一瞬どきりとしたが、間が空くのを恐れて、言下に返す。

「なにもない」
『声、上ずってますよ』

 扇奈はからかような調子になった。

「上ずっておらぬ」
『必死ですね』
「必死ではない」
『またまたご冗談を』
「いいかげん大人をからかうんじゃない」

 扇奈は、ふ、と小さく吐息をついた。

『これもソルさんのおかげなんでしょうか?』
「……なんのことだ」
『ムキになる嘉神さんのお姿、初めてお目にかかりました。これはさっそく、ソルさんに事情をうかがいにゆかねばなりま
せんねぇ』

 嘉神は、音を立てて血の気が引いていくのを感じた。

「ま、待て! 扇奈! それは……」

 『それではお大事に』と、一方的に通話が切られる。嘉神は弾かれたよう起き上がると、ソルの電話番号をプッシュした。
なにかあったときのためにと、ソルから大会中に聞き出しておいてよかったと思う。
 だが、受話口から聞こえてきたのは、通話中の電子音。嘉神は、目の前が真っ暗になったような気がした。扇奈のほうが
一足早かったのか。それとも、別の相手と電話しているのか……。いったん切って、もう一度かけなおす。しかし、結果は
同じだった。昨夜のうちに口止めしておくべきだったと、嘉神は頭を抱えた。

(ソルと関わるようになってから、私はどうもおかしい……)

 ソルをもっと知りたい――こんな自分を、嘉神は知らない。知らないから、どうすればよいのかもわからない。

『ああ、そうだ。俺も自分がこんなに悪趣味だとは思ってなかった。あんたが気づかせたんだ。だから責任をとれ』

 責任を取ってほしいのはこちらのほうだと、嘉神は途方に暮れた。

 後日、次大会で、業火剣乱がイベント戦のボスとして出場することが決定した。




おわり

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お粗末さまでした!

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