66 :名無しさん@ビンキー:2010/02/09(火) 16:55:31 0
>>59の投下に触発されたので、ロック→刹那を書いてみた。
ロックの無自覚片思い状態をイメージしたらこんなお話になった。
好きな子からのメールをひたすら待ってる感覚。


※注意
力が・・・勝手に・・・トーナメントをネタにしつつ、ほぼ妄想と捏造で書かれたお話です。
原作は投げ捨てていますのでご了承ください。

登場人物はロック、テリー、ナギ(刹那のフクロウ)。ロックはテリーとアパートで二人暮しの設定。
全年齢向け、若干バレンタイン前ネタ。





夕食の片づけをしている間も、ロックはずっと外を気にしていた。
シンクで手を動かしながら、時々顔を上げてはベランダの方を見ている。

「気を散らしてると皿が割れるぜ」
「ああ、うん」

テリーに声を掛けられて、ロックは自分の手が止まっていたのに気づいた。
手にした皿を洗いかごに入れる。

「泡、流してないぞ」
「あ!」
テリーが苦笑する。
「全く…そんなに気になるか?」
「だって、大事な連絡だしさ」
「せっかくのバレンタインデイに男だけで集まる計画が、か?」
ロックは若干ふて腐れた表情になった。
「日曜日と重なってんのが悪いんだ。トーナメントも終わっちまったし、一期生で集まれる機会、減りそうなんだから」
「ふうん…?本当に気が合うんだな、あの三人と」
「気が合うっていうかさ…」

その時、コツコツコツと窓を叩く音がした。ロックはぱっと窓の方を見て、たちまち表情が明るくなる。
「来た!」
窓へ駆け寄って、鍵を開ける。
ベランダの手摺に、今やすっかり馴染みになったフクロウの姿がある。
「いつも御苦労さん、ナギ」
窓を開けると、冷たい外気がさっと流れこんできた。
寒い!と後ろから聞こえるテリーの文句を無視して、ロックはナギが咥えている紙片を受け取った。
葉書の半分くらいの大きさで、二つ折りになっているそれを開くと、墨で書かれた流暢な文字が並んでいる。
短い文を目で追うなり、ロックは深いため息をついた。

「どうした?」
「刹那、日曜はだめだって」
酷く残念そうに、ロックが言った。
「あー、まあ仕方ないな。ところで窓、早く閉めてくれ」
「あ、ごめん。ちょっと待って」
おいで、と手を伸べると、ナギはさっとロックの肩に飛び乗り、彼の耳に嘴で噛みついた。
「わっ!痛っ、わかったよ!待って」
ロックは窓を閉め、ナギを椅子の背に止まらせた。冷蔵庫からベーコンを一切れ取り出して、はい、と差し出した。
ナギは彼の手からそれをついばむと、満足したように翼を羽ばたかせた。

「すっかり慣れたなぁ。俺も触っていい?」
「やめとけよ」
ロックの忠告を無視してテリーは手を差し出し、ナギに思い切り突かれて、慌てて手をひっこめた。
「いてっ!」
「…バカ」

ロックはカードとペンを出してきて、テーブルに着いた。
(返事、なんて書こうか…)
このところ毎晩、刹那からの手紙の返事を考えるのがロックの日課になっていた。

以前、「夜に連絡する」と言われてナギがやってきたときには驚いたが、刹那いわくこれしか連絡手段を持っていないそうだ。
手紙などほとんど書いた事が無かったので初めは面倒に思ったのだが、今は白い紙に向かって短い文を書くひと時が楽しく感じられる。

改めて、送られてきた手紙を読み返す。
『申し訳ないが、都合が合わず日曜日は行けない。時間があれば顔を出したいが難しいだろう。
 次の機会があれば必ず。七夜とネームレスにも宜しく。 刹那』
これだけの文だが、最初の頃はもっと短くて素っ気ない物だった。
ロックのメッセージに『汚い 読めない』と書いて送り返してきたこともあるのだ。
その時は翌日喧嘩になったが(そしてネームレスのドリルで両成敗されたのだが)、それ以来できるだけ丁寧に書くよう努力している。
ほんの一言二言とはいえ、読んでもらえないのは寂しい気がするのだ。
努力が伝わっているのだろうか。刹那の方でも、律義に毎晩返事を送ってくるようになった。

(えーと、『残念。四人で集まるの…』)
「お、字だいぶきれいになったな」
「!」
いきなりテリーに文面を覗き込まれ、ロックは慌ててカードを手で隠した。
「勝手に見るな!馬鹿!」
「何を隠す必要があるんだよ?ラブレターじゃあるまいし」
「ふざけんな。常識だろ!」
「ははは!照れちまってぇ」
ニヤニヤ笑うテリーの顔を殴りつけようとして、さらりとかわされた。
「明日の朝飯作らないぞ!」
「うひゃぁ、そりゃ勘弁してくれ」
テリーはくすくす笑いながらシャワー室へ引っ込んでいった。


『残念。四人で集まるの楽しみにしてたけどしょうがない。
 13日の夜にバターケーキを焼くつもり。二人には翌日持っていくけど、焼きたてをナギに持たせるよ。 R』
「よーし、書けた」
誤字が無いかもう一度確認し、カードを二つに折る。
「悪いな、待たせて」
ナギはすっかり焦れた様子で椅子から飛び立ち、ロックの手からカードをひったくるように咥えた。
ロックが急いで窓を開けると、ナギは夜の空へ飛び出していった。

「…終わったかー?」
窓を閉めると、タオルを首にかけて、テリーがリビングへ入ってきた。
「やれやれ、思春期の少年は扱いが面倒だぜ」
「またそんな言い方する…」
顔をしかめてロックが言う。
「いや、恋する乙女と言うべきか?恋人が窓を叩くのを待ってる」
テリーの言葉に、ロックの顔にさっと血が上った。
「テリー!ふざけんなって言ってんだろ!」
「知ってるさ。けどそんな風に見えるぞ?」
「相手知ってるだろう!次そんな風に言ったら三日飯抜きにするからな」
ロックはテリーを押しのけてリビングを出て行った。勢い良く閉められた扉がバーン!と大きな音を立てた。
「おお、怖い怖い」
それを見送って、テリーは小さく苦笑した。






ロックの無自覚片思い状態をイメージしたらこんな話に。

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