189 :名無しさん@ビンキー:2010/03/05(金) 01:05:04 0
流れ切ってしまいますが失礼します。
ちょいとばかし上げにくいですが、お蔵入りするのももったいないんで上げさせていただきます。
ブリス小ネタで、CPは刹那×ロック、七夜×ネームレス、リョウ×ジミー、承太郎×ケンシロウ、前田慶次×サウザー、
バルバトス×ジャギ、東方不敗×トキ、ホルホース×ラオウ、ザトー=ONE×ワラキアの夜、ゲーニッツ×ヨハンです。
エロスは微塵もないです。

書いてから気付いたけどあんまりブリスが役目を果たしてなかったでござる。



195 :名無しさん@ビンキー:2010/03/05(金) 01:46:55 0
失礼いたします。
先ほどブリス小ネタを上げた者ですが、酷い誤字を発見しましたので上げなおしました。

先ほどのssをDLしていただいた方は、申し訳ないのですがゴミ箱にぽぽいのぽいしていただけると幸いです。

恐らく考え得る中で最悪の誤字をしてしまった…ちょっとお覇王に轢かれてくるorz



注意
・このssはブリス(女体化)ネタを含みます。
・幾つかの動画のネタが混在していますが、元動画様とは一切関係ございません。
・場面は適当ですので、脳内補完していただけるとありがたいです。
・CPは、刹那×ロック、七夜×ネームレス、リョウ×ジミー、承太郎×ケンシロウ、前田慶次×サウザー、バルバトス×ジャギ、東方不敗×トキ、ホルホース×ラオウ、ザトー=ONE×ワラキアの夜、ゲーニッツ×ヨハンです。



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その1、刹那とロック


「ただいまー」

そう言って控室のドアを開けたのは刹那のチームメイトではなく、彼とよく似た服を着た少女だった。長い金髪を無造作に束ねているところは異なっていたが、赤が基調のジャケットは確かにロックと同じものだった。黒いホットパンツから覗く健康的な足が美しい。
刹那は傾けていた湯のみをテーブルに置き、部屋の中にすたすたと侵入してきた少女に、その鋭い視線を投げかける。

「誰だ、貴様は」
「あー、俺俺、ロック。ミッドナイトブリス食らっちゃってさー」

少女はそう言って刹那の向かいの椅子に腰を下ろす。手には水の入ったペットボトルを持っていた。確かにその気配は刹那の良く知っているロックのものであったから、刹那はこの少女を確かにロックだと認知した。

「……飲み物を買いに行っていたんじゃなかったのか……?」
「うん、そうなんだけど、デミトリの奴がくしゃみした瞬間にうっかり出しちまったらしくて」

色々と突っ込みたいところはあるが、そういえばもうそろそろ花粉症患者にとっては地獄の季節である。くしゃみをするのはいかな魔界の貴公子といえども仕方のない事だろう。即ちこれは不可抗力である。
そういうものかとあきらめて、刹那はすっかり可愛らしくなってしまったチームメイトをまじまじと凝視する。彼女になってしまった彼が作った差し入れのクッキーを摘みながら、なんとなく白いエプロン、それもとびきり可愛らしい、ひよこさんのアップリケのついたエプロンをして欲しいな、と刹那は思った。
刹那からのそこはかとなく熱い視線に、ロックがうっすら頬を染めている事、それから残りのチームメイトがドアの外から彼らをこっそり窺い見ている事には、普段滅多に使用しない想像力を働かせるのに脳の容量の大部分を割いている刹那は気付いていないらしかった。



結論:ロックはいいお嫁さんになれそうです




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その2、七夜とネームレス


あ…ありのまま 今
起こった事を話すぜ!
「誰かが後ろを通りがかりにくしゃみをしたと
思ったら いつのまにか俺が女になっていた」
な…何を言っているのか
わからねーと思うが
おれも 何をされたのか
わからなかった…
頭がどうにかなりそうだった…
催眠術だとか超能力だとか
そんなチャチなもんじゃ
断じてねえ
もっと恐ろしい花粉症の片鱗を
味わったぜ……

ネームレスの脳内で、ポールの様な頭をした男が、声を震わせながらそう語った。実際その通り、誰かが自分の後ろをくしゃみをしながら通り過ぎたと思ったら、自分の胸に、あるはずのないふくらみが出来ていた。あと足もとも妙にすーすーするが、こちらは見てはいけないと、己の本能が叫んでいる。
唖然とした顔で胸にあるそれを眺めているネームレスをふむ、と眺めながら、こちらはどうやら無事らしい七夜は、ネームレスに向けて、すいと手を伸ばした。

「ふーん、Cカップ位か?」
「………………………………………………………………わぁあっ!?」

もみもみと、何の遠慮も躊躇いもなく自分の胸を揉みしだく七夜に、ネームレスは思わず悲鳴を上げた。初心な反応に気を良くしたのか、にやりと笑って七夜はネームレスに覆いかぶさる。普段ならば互いに体格の差はほぼ無いはずであったが、今は何故か七夜にすっぽりと覆われる形になってしまっていた。

「なんだ、可愛い反応するな、お前」
「――っ!馬鹿か!ふざけるのも大概にしろ!」
「いやいや、是でも大真面目なんだがなぁ」

絶対嘘だ!と叫んでやりたかったが、体中をさわさわと弄られて、思わず息を詰めてしまう。ぎゅと目を瞑って固くなっているネームレスの首筋に七夜は――

「そこ、プロレスごっこは部屋でやれ、部屋で」

通りがかりのジミーがうんざりした声で言った。はーい、と気のない返事をして、流石に廊下はまずかったか、でも今控室に入りづらいんだよな、と考えながら、七夜はすっかりオーバーヒートして湯気を上げているネームレスを眺めた。



結論:Cカップ



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その3、リョウとジミー


精悍な顔立ちの女性が、10代位の少年少女+αに囲まれている。桃色の髪の少女は格好いいなー、と目を輝かせて女性を見上げ、半ズボンの少年は、どうしたらそうなるんですか!?と興味津々に問いかける。藤色の髪を三つ編みにした少女があり得ない……いやでも……と何やら混乱している横で、大柄な高校生が、学帽を目深にかぶってやれやれだぜ……と呟いてた。

囲まれているのはジミーだった。どうやらいつの間にかデミトリのミッドナイトブリスがかかっていたらしく、その姿は凛凛しい男性のものではなく、女性のものだ。何時の間にやら女の姿になっていて、これはデミトリの仕業かOK分かった一撃だな、と一人脳内で完結し、恐らく彼がいるであろう場所を、虱潰しに探していたのであった。そうして探しているうちに、七l星l祭のメンバーを見つけ、ここならいるかと思って近づいたのだが――

「お前たち、デミトリを見掛けなかったか?」

問うたジミーに、はぁとや雷は首を横に振って答える。他の者も皆一様に分からないらしく、ご丁寧にもちもち紅白饅頭までもが「わからないよ!」と声を上げた。
それなら仕方ない、他を当るかと立ち去りかけたジミーを、七l星l祭メンバーが逃がすわけがなかった。その結果が冒頭の主人公状態!である。

リョウは、きゃいきゃいと楽しそうにしているジミー(少なくとも彼にはそう見えていた)を眺め、まるで大家族のお母さんだなと思いながら、少し顔を綻ばせた。初めて彼に会った時の、あの抜き身の太刀の様な険しさは、今はもう薄らいでいた。

「リョウ」

視線に気付いたらしいジミーが此方を向いた。リョウは「なんだ?」と問いかける。

「……ほっこり顔きもちわるいな」
「なん…だと…」

どっと、幸せそうな笑い声が響いた。



結論:照れ隠し



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その4、承太郎とケンシロウ


目の前でウサギの耳がピコピコと揺れる。なんとなくいたたまれなくなって、承太郎は学帽のつばをぐいと下げた。

「どうしたんだ」
「いや、どうしたって……お前の方がどうしたんだ」
「ああ、気付いたら生えていた」
「……そっちじゃねぇんだが」

頭上に揺れるうさみみをくいくいとひっぱりながら、ケンシロウは言った。奇妙なのは彼がうさみみを着けているいる事だけではなく、彼が少女の姿でいる事もであった。普段目にする逞しい身体は、すらりとした少女のものになっていた。尤も、意志の強そうな太めの眉や、への字口はそのままで、彼の面影を留めていたが。

「なんで女になってんだよ」
「知らん」
「なんだそりゃ」
「気付いたらこうなっていた。だが秘孔を突くのに問題はない」
「そういう問題じゃねぇだろ……」

どうにも価値観のずれているケンシロウに、承太郎は本日何度目かの溜息を吐いた。それからふと、顔を上げて、ウサギの耳を見つめる。それはゆらゆらと揺れていた。

「どうしたんだ」

承太郎の視線に気づいたのか、ケンシロウは本日2度目の問い掛けをする。それに合わせてうさみみが揺れる。

「ケンシロウ、あんた昼飯は食ったか?」
「いや、まだだ」

首を横に振り、ケンシロウは答えた。承太郎は尚もうさみみを凝視しながら、言った。

「食堂にカレーでも食いにいかねーか?」

ふいに、ゆらゆらと揺れていた耳がぴこん、と跳ねた。ケンシロウの表情は変わらない。耳だけがぴこぴこと跳ねている。

「ああ、行こう」

そう言って早々と食堂に向かって行くケンシロウを眺めながら、これはこれで分かり易くて良いかもしれねーと、承太郎は思った。



結論:コミュニケーションツールにも最適!



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その5、慶次とサウザー


「あいや其処行くお嬢さん、なんだか落ち込んでるみたいだけど、俺でよければ力になるぜ?」

緩く波打つ栗色の髪を華やかな髪留めで纏めた男――前田慶次は、一人とぼとぼと歩いている女性を放っておく事はしないのだ。俯き加減に歩いている金髪の小柄な少女を見つけるや否や、彼の信念はその足を少女の方へと向かわせた。少女は肩をびくりと震わせ、猛禽類のような鋭い目で、慶次を射った。

「……また貴様か……」
「また、って、俺君に何処かで会ったっけ?」

はれ、そういえば何処かで見たような気も、でも会ったら覚えてる筈なんだけどなおかしいな、と首を傾げて考え込む慶次に舌打ちし、少女は声を荒げて言った。

「貴様、いつもいつも人に付き纏って恋だの愛だの言いたてておきながら、人の顔を忘れただと!?この聖帝を愚弄するのも大概にしろ!」
「ああ、そうだよそうだ、サウザーに似て……って、あれ?本人?」

慶次はきょとんとした眼でサウザーを見る。確かに鋭い目や、長い睫毛やら額の黒子やら、それから横柄な言葉遣いなど、共通点は幾つかあったが、そもそもサウザーは男性の筈である。目の前にいる華奢な――そのくせ一部だけ妙に発育の良い――少女と同一人物とは、とても思えはしなかった。

「いやいやそんな、サウザーは男じゃないか。でも君は女の子だろ?」
「俺だって何故こんな姿になってるのか分からんわ!くそっ、忌々しい!」
「えー……じゃあ本当にサウザーなのかい?」
「だからそうだと言っているだろう!何度言わせるつもりだ!」

獅子をも恐れさせるであろう剣幕で捲し立てられ、さしもの慶次も、彼女がサウザー本人であると認めざるを得なくなった。そういえば何時か、男性を女性にしてしまう術がある、と聞いた事がある。もしかしたらそのせいか、と慶次は内心得心した。そうと分かれば遠慮は要るまいとばかりに、慶次はサウザーを後ろから抱き締めた。

「そっかそっかサウザーかー!いやー、悪いね!いつもと雰囲気が違ったから分からなかったよ!」
「うわっ!何をする貴様!離せ!」

サウザーは顔を真っ赤にして叫んだ。慶次は何時もの事だとばかり気にせずに、柔らかい金髪をくしゃくしゃと撫でる。可愛いなー、でもどっちかと言えば何時ものアンタの方が好きだよとさり気無く吐かれた甘い言葉に、サウザーは耳まで赤くして、口をぱくぱくと、酸素の足りない水槽に入れられた金魚のように開閉する事しか出来なかった。

何処かの石油王が、鳳凰の如き高貴さと修羅の如き鬼気と、それから迸るミニお師の群れを纏いつつ、巨大なお師さんが朱槍を担いだ歌舞伎者を轢殺している所を見たのは、また別のお話。



結論:実は脈有り



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その6、バルバトスとジャギ


「ぬわあぁんじゃこりゃあああぁぁぁぁぁぁぁ!?」

今にも太陽に吠えそうな声が建物じゅうに響いた。何人かの通行人がぎょっとした表情で声の音源と思しき控室を見遣ったが、暫くして何事もなかったかのように、再び歩みを進めた。
声の主は北斗四兄弟不肖の三男、世紀末石油王と名高いジャギであった。決してジードでもジャッカルでもない。彼が叫んだ理由は簡単だ。何故かいつの間にか女になっていたのだ。おかしい、控室に戻ってきた時には何ともなかったはずだ、ちょっとボロボロになってたけど。あ、そういえば後ろでくしゃみが聞こえたような……と、混乱する頭を何とか沈めて、原因を探る。

「畜生なんの冗談だってんだよ……」

ぶつぶつと文句を言っていると、部屋に設置されている鏡が目に入った。そこに映っていたのはレザーのジャケットを着た女だ。程よく筋肉が付いているのが、露わになっている腕から見て取れた。比較的に露出部分の多い服と反比例して、その顔は、物々しい装飾の施されたヘルメットで隠されていた。なんとなく顔に違和感を感じ、ジャギは恐る恐るヘルメットを外そうとして手を懸け――

「おい、てめぇ何してやがる」
「とわったっとおおううっ!?」

突如横手から響いた声に、不思議な叫び声を上げながら、ジャギは思わず飛び退った。そこに立っていたのは最近何故か自分の部屋に帰らず、こうしてジャギの控室に入り浸っているバルバトスだった。バルバトスは普段から不機嫌そうな顔をさらに歪めて、ジャギに言う。

「何してやがるって聞いてんだよ」

あまりにも横柄な物言いであったが、あまり文句をつけてもいい結果にはならないとジャギは知っていたので、ノックぐらいしろという至極正当な主張を飲み込み、大人しく答えることにした。

「別に何もしてねぇよ、今帰ったばかりだし」

何も嘘は付いていない。きっと納得しねぇだろうなー、いてえの嫌だなーと脳内で愚痴るジャギの苦悩を知ってか知らずか、バルバトスは此方をぎろりと睨み、それから「そうか」と一言言って、置いてあったパイプ椅子にどっかと腰掛けた。
怒鳴らねぇのも気味悪りぃなぁ、と思いながらも、ジャギは、兄から寄越された急須を取って、茶を入れる準備に掛かった。何か忘れている気がしたが、気にしない事にした。



結論:外見よりも中身が大切なようです



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その7、東方不敗とトキ


「トキよ」
「はい」
「その、なんだ……それは一体何があった」
「それが、私にも分からなくて……」
「秘孔を突かれたのではないだろうな?」
「それはないはずですが」
「それにその服だが、ズボンはどうした」
「いつの間にか無くなっていて」
「それだけ足を出していては寒かろう。儂の道着の予備を貸すぞ」
「ありがとうございます」
「それからその白衣は?」
「これも気付いたら。八意殿も心当たりがないようでした」
「彼女に会ったのか?」
「ええ、こうなってしまった後に意見を伺いに行ったのですが、『今の手持ちの薬ではどうにも。でも直ぐに戻るでしょう』との事でした」
「そうか、彼女が言うならそうだろう。トキ、何か困る事はないか?」
「いえ、特には」
「そうか」
「はい」
「……」
「……」
「……」
「……マスターは」
「なんだ?」
「私が女の方が良いですか?」
「お前はお前であろう。外見など意味は成さん」
「そうですか」
「……」
「……」
「……そんな事を心配して、最初に儂の所ではなく、八意殿の所に行ったのか?」
「……お恥ずかしながら」
「もう一度言う、お前はお前だ。儂がお前を好いておる事実に、外見などは何の意味も成さん」
「マスター……」
「分かったか、トキ?」
「はい、有難う御座います」



結果:膝枕をしている所を長兄が目撃



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その8、ホル・ホースとラオウ


筋肉質な腕を組んで、不機嫌そうに座っているのは女だ。眉間に皺を寄せて、刺すような目で床をねめつけている。ホル・ホースは自分自身、女性の扱いに長けているという自覚はあったが、彼女をなだめる事は些か己にとって荷が重すぎる問題だと思った。なぜなら彼女の中身といえば、泣く子も黙る世紀末覇者拳王、北斗四兄弟が長兄、ラオウだからである。

「旦那ぁ〜、そんなに難しい顔してると皺とれなくなりますぜ?」

それでも流石に空気が重く、少しばかりの茶目っ気を込めて、ラオウに話し掛けてはみるが、彼(女)は洒落が通じる相手ではなかった。ぎろ、と此方を睨みつけ、ふんと鼻を鳴らしてから、再び視線を床へと落とした。
どう足掻いても事態が改善する見込みがあると思えず、毎度毎度兄弟の事で悲しみを背負う彼の不憫を憐れみ、彼をこんな姿にした元凶に、心の中で恨み言を吐いた。
ところで、ホル・ホースは男である。男であるので、球体に心奪われるのは抗えぬ性というものである。従って彼が今、この重苦しい空気の中、あの日に焼けた両の胸に鎮座まします双球、硬い革製の服にも押しつぶされずに存在を主張する神の与え給うた人類の至宝、それすなわちおっぱいに目を釘付けにしていたとしても、それは誰にも咎める事の出来ぬ事なのである。

「ホル・ホース」
「!? へい!何ですかい旦那?」

むっつりと黙りこんでいたラオウに急に名前を呼ばれ、意識をおっぱいから此岸へと引き戻す。ラオウは少し黙りこくって、それからゆっくり口を開いた。

「うぬは今どこを見ていた」

ラオウに嘘は通じない。彼が自白を強要させる秘孔を突く事が出来ると、ホル・ホースは知っていた。そのため、あっちゃあバレてるよこれヤバイってこれどうしよう助けてボインゴでも自分の首が圧し折れてる未来なんて見たくねーよ、という脳内を駆け巡るどうしようもない泣き事の数々を、億尾にも表に出さずにホル・ホースは、此方を向いたラオウに、凛とした顔で言った。

「いや、旦那の胸小さくなったなって――」


天に滅☆SAY!という声と、ゴシカァンという轟音が、試合会場中にしばらく木霊した。



結論:ハァーオッパイオッパイ



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その9、ザトー=ONEとワラキアの夜


おや、とワラキアの夜は、己の身体に起きた変化に気付いた。変幻自在のタタリによって形を現している彼は、自ら好んで他のものの姿を取る事はあったが、何分外的因子の影響によって姿が「変えられて」しまう事は滅多に経験しなかった。
変化の原因を究明する為に記憶の糸を手繰ると、そういえば先ほど横手から何か魔力の流れを感じたと思い出す。それからそれがくしゃみのあとに起きた事、そのくしゃみをしたのは丁度先ほどすれ違った、デミトリ=マキシモフである事まで思い返して、己が身に起きた出来事を理解した。
ワラキアが足を止めたのに気付いたか、それとも彼の足音の変化を察したか、半歩先を歩いていたザトーも、いつの間にか歩みを止めていた。

「どうした?」
「どうやら魔界の貴公子殿は、オーランドーがお好みらしい」

柳眉を歪めて苦笑をするワラキアの声が、耳馴染みの良いテノールではなく、鈴を転がすソプラノであったので、ザトーにも何が起きたか理解がついた様だった。

「元には戻れないのか?」

実に合理主義的で遊び心の無いザトーの問いを味気なく思ったワラキアは、実の所は、別段大した労もなく元の姿に戻ることも出来るのだが、ノーと答えることにした。ザトーは一言「そうか」と答えて、一歩ワラキアに近付いた。そうしてその手をワラキアの頬に沿わせ、ぽつりと零した。

「この目が見えたら好かったのだが」

ワラキアは緩やかに頬をなぜるザトーの手を取り、その手を両の手で包んで、自らの胸に当てた。それからザトーの顔を見上げて、微笑みながら言った。

「それでも、触れたならば分からないかね、ザトー。光など、我らには閑文字でしかないだろう」

手を取り合い、寄り添う男女の姿は、まるで映画のワンシーンであったが、残念な事にここは、オペラ座でもサンタンジェロ城でも、ましてセーヌ河の畔でもなく、耐神構造の、飾り気など欠片ほども無い白い壁で囲まれた、非常に庶民的な試合会場の廊下の一角である。「うわぁ」と何とも言えぬ声を上げて横を通り過ぎる、運悪く居合わせてしまった哀れな通行人は、彼らの世界に僅かな綻びすら生む事は出来なかった。


結論:恋は盲目



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その10、ゲーニッツとヨハン


赤い髪の女が一人、顔面蒼白で走って行くのを、その日何人かの人間と人外が見ていた。そのうちのさらに数名は、彼女の後を、蛇の目をした牧師が追いかけているのを見た。その中の4,5人は牧師が少女を引きずって行くのを見ており、さらに内、2,3の者が、彼らが控室に入って行くのを目撃していた。

そして今、その控室の中である。

赤毛の女はヨハン=カスパールだった。元来幸の薄い性質なのか、貧乏くじばかりを引く彼は、またしても不幸に見舞われた様だった。なにせ会場内を普通に歩いていただけで、性転換していたのである。それだけに留まらず、彼の天敵である吹き荒ぶ風のゲーニッツに、その様子を見られてしまったのであるから、これを不幸と言わずして何と言おう。
会場中を大人げなく鬼ごっこした挙句にばっちりとっ捕まり、周囲の好奇の目に晒されながら引きずられて来たヨハンは、もはや喋る気力もないのか、黙して部屋の隅にうずくまっている。

「ヨハン」

ゲーニッツが声をかけると、ヨハンはびくりと肩を震わせた。それから恐る恐る顔を上げると、此方を見ている牧師と目が合った。

「……何だ」

ぼそりと答える。ヨハンはきっとこの後何を言っても痛い目を見るんだろうな、と思いながら、とても聖職者とは思えぬ牧師を眺めていた。
ゲーニッツは、膝を抱えて座っているヨハンをまじろぎもせずに見ながら、言った。

「パンツ見えてますよ」
「!? うわぁあああ!?」

思わずみっともない悲鳴を上げて、ヨハンは正座の体勢に移行した。何時の間にやらズボンが無くなり、チャイナドレスのようになってしまった自分の服の裾を両手でおさえると、みじめさに視界が揺らいだ。涙が溢れるのを必死にこらえて、ぐすん、と鼻を鳴らす。
ふと、ヨハンは違和感を覚えた。何時もならヨハンが涙を見せるや否や飛んでくる、嬉々とした表情の外道牧師の追撃が、今回はその片鱗もなかった。あれ、と思って再びゲーニッツへと目を遣ると、彼はヨハンに見向きもせずに、本を読んでいた。

「……何ですか?」

ヨハンの視線に気付いたらしく、こちらには目もくれずにゲーニッツは言った。

「え、いや、何でもない……」
「言いたい事があるならはっきり言いなさい」
「う……その、なんか、いつもと違う気がして……」

違う?、とゲーニッツは眉根を寄せて訝しんだ。ヨハンはともすれば震えそうになる声を如何にか抑えつけながら、言葉を続けた。

「いつもだったらよのかぜが飛んでくるのに……」
「女性を傷つける訳にはいかないでしょう」

然も当然のごとく、ヨハンの言葉を遮って述べられた台詞に、ヨハンは耳を疑った。あのアルティメットサディスティッククリーチャーから、このような言葉が出て来るなどとは、夢にも思っていなかった。それから、痛い思いをしなくて済むなら、暫くこのままでも良いかな、と思った。

「ああ、でも、そのままでいるなら既成事実も作れますね」
「やっぱりやだあああああああああああ!(´;ω;`)」


結論:You can not escape……


**********************


                              (おわり)
 

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