ユウグス小ネタ
最終更新：ID:kI6mi9mwKw 2010年08月24日(火) 23:29:12履歴
895 ：名無しさん＠ビンキー：2010/05/17(月) 22:08:14 0
流れぶった切って失礼します。
以前ユウグス投下したものですが、自分の予想以上にレス貰えたのに調子に乗って
さらに投下させて頂きます。何の動画ネタでもないただの電波だったのに、スレの姐さん方優しすぎて涙が出てくるよ･･･
ユウキ×グスタフ（×ユウキ）、他サブでお別れ、（狼）、楓汚忍要素ありの小ネタ集
他にも書きたいカプはあるのですが、どうもこの二人は書いてて楽しいので浮気をしてしまう･･･。
・ユウキ×グスタフ（×ユウキ）小ネタ詰め合わせ
・上記カプ以外にもゲーニッツ×ヨハン、楓→汚い忍者、テリー←狼牙要素が混じっていますが基本は上記二人
・七l星l祭のメンバーが仲が良いと萌える、と作者は常々思ってます
・当然ながら七l星l祭とは何の関係もございません
・短かったり、会話文が多かったりキャラの崩壊が激しかったりします
・ユウキの広島弁は（ttp://www.aurora.dti.ne.jp/~zumi/vtatsu/）を使用して変換させていただきました
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１．某大会会場の食堂にて
グスタフは非常に困惑している。これだけ大きい困惑を彼に植え付けたのは、彼の敬愛する上司が某邪教の教祖の追っかけを始めたとき以来の事である。だが、今回の事は自分の身に降り掛かっているという意味で、上司の時よりも困惑の具合は大きい。
「あれ、どうしたんですかグスタフさん。何処か具合でも悪いんですか？」
アジフライの醤油ですか？と醤油を手渡してくるユウキに首を振ってグスタフはストップを掛けた。何故この少年が自分の好みを把握しているかについては気が付かなかった事にした。
大会会場の食堂の事である。何も不思議はないとばかりにグスタフの正面に陣取るユウキはＣ定食のちゃんぽんを啜っている。（ちなみにグスタフのアジフライはＡ定食である）
大会参加者の昼食休憩は一斉だから、この食堂にもかなりの人間が集まっているのだが、何故かグスタフとユウキ周辺のテーブルには人は居ない。誰かが「なんて斬新なツーショットだ…」と呟いたのが聞こえたが、グスタフも大いに同意する。
「おいお前」
「ユウキです。いい加減名前覚えてくださいよ」
「･･･」
これだけ付き纏われたら嫌でも覚えるわ、とは思ったが、素直にそれを口にしたらこの少年が調子に乗るのは明白なのでグスタフは黙った。そもそも何故自分がこの少年に好かれているのか皆目検討がつかない。
「おい」
「ユウキですって」
「･･･ユウキ」
「何ですか？」
名前を呼んでやった途端に目を輝かせるユウキにグスタフはこっそりため息をついた。子供かよ、と思ったがまあ子供だな、と思い直した。
「何処かに行け」
「いきなりですか！？」
「相席を許した覚えはないが」
「えーでも混んでるからいいじゃないですか」
「外にでも行けばいいだろう」
「机もない屋外で麺類はキツイです。あ、水のおかわりいりますか？」
「いらん。だが醤油をこっちに寄越せ」
「ソースも美味しいですよ？」
「アジフライは醤油だ」
＊結局一緒にお昼ご飯
２．七星組片思い同盟
「グスタフさん、好きです！」
「そうか、おたふくソースがか？」
「おたふくソースも好きですけど違いますよ！お好み焼きの話をしてるんじゃないですよ！」
「そろそろ焼けてるんじゃないのか」
「あ、本当だ。待ってくださいねグスタフさん俺がひっくり返しますからね」
「オイスター追加で」
「グスタフさん牡蠣好きですね」
「ここの美味いからな」
「天下の宮島産ですからね！高いですけど。あれ、グスタフさん焼酎空ですよ追加しますか？」
「ああ」
「すいませーん同じこの焼酎追加お願いしまーす！グラスじゃなくて瓶で」
「ところでユウキ」
「はい？」
「お前は飲まないのか」
「飲んでますよ、コーラ」
「違う」
「俺一応未成年なんですけど」
「何だ詰まらん。そんなこと言ってるが実は飲んでるんだろう」
「いや、建前というのがありましてですね。追加の牡蠣と焼酎きましたよーどうぞ」
「カルピスサワー追加で」
「飲みませんよ！？というか何ですかそのチョイス！？飲むならもっと別なの飲みますよ！」
「私の酒が飲めないのか？」
「別にグスタフさんのお酒ってわけじゃ…何でもないですいただきます」
「･･････」
「すいません気付きませんでしたお酌します。あれ？グスタフさんもしかして酔ってます？」
「酔ってない」
「酔ってる人は皆そう言うんですよ！そうですよねすでに一瓶一人で空けてますもんね」
「ああ」
「この流れなら言える！好きです超好きです！」
「そうか」
「あれなんだろうこの虚しさ」
「―――というわけなんだけど、どう思う？」
「ユウキって意外と甲斐甲斐しいね」
モカフラペチーノのクリームをがしがししながらユウキが言うと楓は苦笑してホットのカフェモカをすすった。
「で、その後はどうなったのさ」
「普通にご飯食べて帰った」
楓がガクッと体勢を崩す。
「え、それだけ？他になんかないの？」
「例えば？」
「えーと、お酒に酔った相手を送って行って自宅にお邪魔するとか？」
「そがぁなことあるわけんじゃろー。楓は想像心豊かじゃのぉー」
ユウキは遠い目をしてさらにフラペチーノのクリームをがしがしする。最早クリームの面影はどこにもなかった。
「グスタフさん、確かに酔ってたけど、意識失うほどは飲んでなかったし。俺が誘ったのに俺にお金出させてくれないしさ！だいたい俺グスタフさんの家知らないから送りようがない。なんかゲーニッツさんの家は知ってるけど」
「何で！？」
「わしにもわからん。なんかグスタフさんの誕生日とか好物とか駄目もとで聞いてみたら、家に招待されてアルバムまで見せてくれた。あと何故かヨハンさんから紅茶をご馳走になった。おいしかった。小さいグスタフさんもカッコいいね！」
「突っ込みどころがありすぎる…。ラスボスの人たちって何考えてるかわかんない…。というかユウキ肝が据わってるな…」
楓はゲーニッツ家でお茶会ｉｎユウキを想像した。あまりにもシュールだったのですぐに考えるのを止めた。
「僕が話だけ聞いてると、グスタフさん？という人もまんざらじゃないような気もするけど」
「どうかなー、名前は憶えて貰ったけど、まだ子ども扱いされてる気がするんだよな」
「子ども扱いならまだ良いほうだよ」
「ん？」
「僕なんか完全に弟扱い…？いやそれすらも怪しい･･･何？忍者さんにとって僕って何？」
↓以下楓の回想↓
「楓ってさー」
「は、はい？」
「今いくつ？」
「じゅ、十七になりますが…」
「何だ十八才未満か。なら頼めないか」
「え、どうしてですか？何か年齢に引っ掛かることなんですか？言ってください忍者さん」
「えーいいよーしょーもねーことだし」
「構いません。僕は忍者さんの力になりたいんです！」
「や、いいってホントに」
「……。」
「…怒るなよ？呆れんなよ？」
「そんな事しません」
「昨日さーテレビでやってたんだけどさー」
「はい」
「楓の所の世界というか時代のエロ本…あ、艶本っていうの？すごいらしいじゃん？」
「は？」
「ほらーやっぱりそういう反応するだろー」
「えっ、いや、思いも寄らない話が出て来てビックリしただけでそういうわけでは…。つ、艶本がどうかしたんですか？」
「すごいらしいじゃん」
「す、すごいと言われましても僕は見たこともないし他と比較した事もないのでなんとも…」
「え、見たことねぇの？今まで？一回も？」
「な、なんというか、今まで興味と縁がなかったので…」
「今も興味ねぇの？」
「い、今は興味がないこともないようなあるようなないような（何で僕はこんな地雷ギリギリの話をしているのだろうか…）」
「どっちだよ。ヴァナ産のでよければあるけど見る？」
「みっ、見ません！」
「遠慮すんなよーどうせ内藤のだし」
「内藤さんのものを勝手に持ち出して良いんですか？」
「内藤のだし良いんじゃね？最近アイツも御名方さんで充分らしくて使ってないっぽいし」
「は、はぁ…（何でこんな生々しい話に？）」
「で？」
「で？？」
「見ねぇの？」
「見ませんよ！」
「ふーん」
「……」
「……」
「……（あ、あれ？）」
「……」
「に、忍者さんは、」
「ん？」
「そ、そういうことに、興味が？」
「そういうこと？…あぁ。まぁ、あるかないかって言われれば、ないってことはないわなー」
「そっ、そうですか…」
「あぁ」
「……」
「……」
「…僕の世界では元服は十五からです」
「げんぷく？」
「こちら風に言うと成人のことです」
「へー、じゃあ楓はあっちじゃもう大人なのな」
「だから艶本買うのに何の問題もありません！」
「え？あ、いや、いいって、別にそこまで欲しかったわけじゃねぇし。言ってみただけだからさ」
「いえ！次会うときにお渡しします！」
「や、別にそこまで気合い入れなくてもいいって。でもそこまで言ってくれるんなら楽しみにしてるよ。ありがとな、楓」
「とんでもないです！！」
「えっ、それで買ったの？エロ本」
「買ったよ…」
「楓って自分で墓穴掘って自ら飛び込むよな」
「言うなああ」
うわぁぁと両手で顔を覆って泣き崩れる楓に何故かユウキも貰い泣きした。おい平日昼間にエコノミーモードだぞ何やってんの！
「それで買ってきた時の汚い忍者さんの反応は？」
「自分は良いから僕が使えって…」
「うわぁ」
何か本当に悲しくなってきたユウキは楓の肩を叩いて、よし飲もうぜと楓に杯を勧めた。中身は楓の注文したカフェモカだが。
「ははは･･･あれ、何か今日は湿度が高いなあ」
目頭を押さえるユウキと虚ろにカフェモカの水面を見つめてぶつぶつ呟く楓は傍から見れば異様な光景である。そして微妙な沈黙が続いた後、ユウキは今まで触れられなかった事項に触れようと決心する。
「ろ、狼牙？そろそろ起きないとフラペチーノ溶けるぜ！」
テーブルに突っ伏してている狼牙である。狼牙の注文したコーヒーゼリーフラペチーノは一口も口をつけられておらず、時間が経って虚しくクリームがへにゃりとくたっている。
「もう俺は駄目かもわかんねマジで俺はもうだめかもしれん」
小声でさっきからこの繰り返してある。こいつはもう駄目かもわかんね、とユウキと楓がアイコンタクトした瞬間に狼牙はがばりと起き上がる。そして手をつけていなかったフラペチーノを手元に寄せて、ストローに口をつけたが、すぐに眉をしかめて口を外した。そしてストローで中に入っているコーヒーゼリーを粉砕し始める。コーヒーゼリーがストローに詰まったらしい。目が完全に据わっていた。
「て、テリーがどうしたって？」
見かねた楓が狼牙に話題を振る。この狼牙相手にその話題は明らかに地雷だが、このままの様子の狼牙も地雷なので致し方あるまい。振られた狼牙は待っていましたとばかりに楓に詰め寄る。
「それがさあ！聞いてくれよ！」
↓以下狼牙の回想↓
「これはチャンスだ落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺」
「狼牙？何ブツブツ言ってんだ？」
「なっ！何でもねぇよ！？」
「ふーん？そういや俺とお前のタッグなんて珍しいよな」
「そっそそそうだな！」
「あれ？何お前、もしかして緊張してんのか」
「しっ、してねぇってば！」
「してる奴に限ってそう言うんだよ。大規模大会でもねぇのに珍しいのな」
「…。（アンタとのタッグだからだよ！とは言えない）」
「そうだ狼牙、ちょっとこっち来い」
「へ？」
「良いから来いって。っていうか何でそんな微妙に離れた位置にいんだよ」
「何でっつっても」
「おーい早くしろー」
「わかったよ！まったく何だ「パワーウェーブ！！」ほぅわぁっ！？」
「さあ狼牙来い！」
「来いじゃねーよ？！アンタいきなり何すんだ！」
「何って試合前の組み手」
「室内で！？つーか試合だったとしても今のはフライングだろ！」
「Round one，Fight！」
「今更口で言うな！」
「まあいいからナパームでもウルフファングでも打ち込んでこいよ。エンハンス待ってやるから」
「最後のがすげー腹立つんだけど…。望み通りフルエンハンスでウルフファングしてやるから覚悟しろよテリー！」
「おー、緊張も大分解けたみたいだな」
「え？」
「やっぱり俺は狼牙のそういう顔が好きだな」
「……………………。」
「うん？どうした？」
「……お、俺もテリーのそういうとこ、カッコいいと、思うぜ」
「「惚気かよ！！！！！！！！！」」
ユウキと楓のツッコミが綺麗にハモるなか、狼牙は机に突っ伏してごろごろくねくね気味の悪い動きで身悶える。
「マジテリーヤバイって。何がやばいってマジヤバイ」
「日本語でおｋ」
「楓楓、覚醒出ちゃってるから落ち着け」
楓が荒んだ表情でカフェモカを音を出して啜る。エロ本の心的外傷が癒えない楓は他人の惚気に耐えられるほど心穏かではなかった。そしてユウキだって同じくイラッとしたのでデレデレする狼牙にカウンターを試みる。
「はーん？でも狼牙、どうせアレだろ、あのテリーのことだからその渾身の告白をスルーされた挙句に、試合のどさくさにまぎれて押し倒しても逆に押し倒されて頭撫でられておしまいだったとかそがぁなオチじゃろ！！」
「お前エスパー！？」
がばっと起き上がる狼牙に指を突きつけてユウキはさらに捲くし立てる。
「グスタフさんだってカッコ良いしスマートだし、スーツ姿は色っぽいし、戦闘のワイヤーアクションはスタイリッシュで惚れ惚れするんだぜ！」
「グスタフってあれだろ？ゲーニッツにべったりのおっさんだろ？」
「狼牙、わりゃぁわしを怒らせた！！楓もコイツに何か忍者さんのええ所を教えちゃりんさい！そがぁな遠くを見てんで！」
「ごめん、何言ってるかわかんないけど忍者さんは可愛い人だ！」
「訛っとらんわー！」
＊愚痴大会から惚気大会に移行しました。
３．時間があれば、是非wikiで該当キャラのページを開いてみて下さい
�‐緝覆聞�スーツを着こなし
��長い黒髪をオールバックにして
�Ｇ舛�目は涼やかな切れ長
�つ垢さ咾�ら繰り出される足技はスタイリッシュである
この人も格好良いよなあと某大会の中継を見ていたら、「おい、」後ろから絶対零度の声が掛かってユウキは飛び上がるほど驚いた。実際３センチほど飛び上がった。慌てて後ろを振り替えると若干殺気立っているグスタフである。出会い頭から殺気を出しているグスタフにユウキは何かしただろうかと焦る。（そしてその後ろに何故かにやにやしているゲーニッツとヨハンも居たが、ユウキはそれどころではない）
「こ、こんにちはグスタフさん！どど、どうしたんですか？」
声を掛けてもグスタフは何も答えず視線を中継画面とユウキに交互に投げた。見下ろされる切れ長の目が何故か刺々しい。
「ユウキ、お前、スーツさえ着ていれば誰でも良いのか？」
「ええぇ！？」
いきなり何を言いだすのかこの人は、と思うのと同時にちょっとドキッとしてしまったのは秘密だ。その僅かな動揺を見逃す程グスタフは甘くなく、ユウキはグスタフにがっちり顔を掴まれた。そしてぐるりと無理矢理中継画面に顔を向けさせられる。ちょっと首がぐきっと言ったがグスタフはお構いなしだ。
「首が！首が！今ぐきって言いましたよ！」
「今、誰を、見ていた」
「誰って言うかただ試合を見ていただけ…いたたたた嘘ですごめんなさい嘘吐きました塞って人見て格好良いと思ってましたごめんなさい」
後ろの野次馬二人は俯いて笑いを堪えているが、笑われている当の二人はそれどころではない。
「ほう、理由を聞こうか」
「グスタフさんと似ているなあと思いまして」
「どこがだ！？」
珍しく声を荒げるグスタフに野次馬の一人が堪え切れず噴き出した。
「黒いスーツが似合って格好良いところとか黒髪のオールバックだったりとか手足が長い処とかです！」
「確かにそっくりだな」
「外野は黙って貰えますか」
「すまん」
にやにやしながら茶々を入れたヨハンだったが、グスタフの勢いに思わず謝った。もう一人の野次馬は腹を抱えて大爆笑している。
グスタフはギリギリとユウキの顔を掴んだ手を強める。
「ユウキ…お前以前オズワルドにも似たような事言っていただろう」
「オズさんもスマートで格好良いですよねってバリいたいです放してください！」
「誰と、誰が、そっくりだって？」
「似てるとは思いましたがそっくりとは思ってないです痛いです本当に痛いですごめんなさい！」
「あんなイロモノ邪気眼と私を一緒にするな！あんなマダオと！断じて！キャラが被ってるなど！無い！」
「失礼ですよ！？というかマダオなんて言葉何処で覚えたんですか！？あと俺そこまで言ってません！」
（気にしていたのか…）と某地味なラスボスが暖かい視線を向けていた事にグスタフが気が付かなかったのは当人にとって幸せなことかも知れない。そしてもうひとりの野次馬は笑い過ぎてむせている。
＊グスタフさんは少々悔しかったようです。そして青い服の牧師様はグスタフ≠塞の図式がツボすぎて暫くまともに部下の顔が見れませんでした。
４．卵が先か鶏が先か
「…似合わないな」
「どうせスーツに着られてますよ！」
試着室から出て来たユウキを見てグスタフは鼻で笑う。出会い頭に引き摺られて高級ブティックに連行された時には自分の場違いっぷりにびびったが、グスタフの着せ替え人形をやっているうちに開き直った。順応性を高めるのがこの世界で楽しくやっていけるコツである。
グスタフは何着かのスーツをユウキに合わせたがいまいちピンと来なかったのか首を捻った。
「おかしい…何故合わない…身長もあるし体格だってそこそこ良いのに何故こうも着せられているんだ…」
「何ででしょうねー」
間の抜けた返事をしながらユウキは実は少しうきうきしている。グスタフが何故こんなことを始めたのかは謎だが、彼が自分のためにあれやこれや考えてくれているのは気分がいい。
グスタフは何種類ものスーツをユウキに渡してくるが、どれも種類が違うらしい。ユウキにはどれも同じに見えるがグスタフには何やらこだわりがあるらしかった。そういえばここってグスタフの好きなブランドの店だよなぁということに今更ながら思い至った。
次はこれを来てみろ、と渡されたものにユウキは少し気後れした。グスタフが楽しんでいるのを見るのはユウキにとっても非常に楽しいのだが、いい加減疲れていたのも事実だった。買い物のたびにこんなことしている女の子ってすごいなぁとちょっとずれた事を思った。
「あのーグスタフさん？」
「何だ、早く着てこい」
「いやちゃんと着ますけれど。どうしていきなり俺にスーツなんですか？」
「……」
首を傾げるユウキに見つめられてグスタフはついっと視線を逸らした。
「…お前、好きだろう。スーツが」
「え？」
「何でもない。早く試着してこい」
そう言ったきりグスタフは黙してユウキを試着室に押し込んだ。もう何度目か分からない試着室でユウキは先程グスタフが呟いた意味を考える。はてはて。自分が、スーツ好き？
確かにユウキがグスタフに好意を抱くようになってからは、グスタフのトレードマークたるスーツにも惚れ込んで格好良いだのどこのブランドだの聞きまくっていたのは確かだが、特別スーツが好きというわけではないはずなのだが。
首を捻りながら新しいスーツの上着に腕を通すと、試着室の姿見がユウキを写す。グスタフは何だか頑張っている様だが、やはり自分はスーツは似合わないと思う。自分で言うのもアレだが。やっぱり世界一スーツが似合うのはグスタフさんだよねうんうんと一人で納得していたらふと脳裏に浮かんだ出来事があった。
―――スーツさえ着ていれば誰でも良いのか？
この時、ここがブティックの試着室ではなくて自分の部屋とかだったら間違いなくベッドの上とかでごろごろ悶絶していた、と後にユウキはグスタフに語る。
「グスタフさんグスタフさん！」
勢い良く試着室のカーテンから顔だけ出したユウキにグスタフはちょっとびくっとなった。ユウキは構わずまくしたてる。
「俺はスーツが好きだからグスタフさんが好きなんじゃなくて、グスタフさんが好きだからスーツが好きなんですよ」
ここでユウキがグスタフの反応を見ずに試着室に引っ込んだのは間違いなく照れからであった。ユウキはどうも言うだけ言って満足してしまうクチなので、グスタフがどう感じたのかは深く考えてないのだった。周囲から「詰めが甘い」などと言われる由縁である。
「･･･馬鹿が」
片手で顔を覆って小さく呟いたグスタフのこの言葉が、果たして誰に、何に対して向けられた言葉だったのかは、本人のみぞ知る。
＊スーツはユウキにプレゼントされました
おしまい。
流れぶった切って失礼します。
以前ユウグス投下したものですが、自分の予想以上にレス貰えたのに調子に乗って
さらに投下させて頂きます。何の動画ネタでもないただの電波だったのに、スレの姐さん方優しすぎて涙が出てくるよ･･･
ユウキ×グスタフ（×ユウキ）、他サブでお別れ、（狼）、楓汚忍要素ありの小ネタ集
他にも書きたいカプはあるのですが、どうもこの二人は書いてて楽しいので浮気をしてしまう･･･。
・ユウキ×グスタフ（×ユウキ）小ネタ詰め合わせ
・上記カプ以外にもゲーニッツ×ヨハン、楓→汚い忍者、テリー←狼牙要素が混じっていますが基本は上記二人
・七l星l祭のメンバーが仲が良いと萌える、と作者は常々思ってます
・当然ながら七l星l祭とは何の関係もございません
・短かったり、会話文が多かったりキャラの崩壊が激しかったりします
・ユウキの広島弁は（ttp://www.aurora.dti.ne.jp/~zumi/vtatsu/）を使用して変換させていただきました
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１．某大会会場の食堂にて
グスタフは非常に困惑している。これだけ大きい困惑を彼に植え付けたのは、彼の敬愛する上司が某邪教の教祖の追っかけを始めたとき以来の事である。だが、今回の事は自分の身に降り掛かっているという意味で、上司の時よりも困惑の具合は大きい。
「あれ、どうしたんですかグスタフさん。何処か具合でも悪いんですか？」
アジフライの醤油ですか？と醤油を手渡してくるユウキに首を振ってグスタフはストップを掛けた。何故この少年が自分の好みを把握しているかについては気が付かなかった事にした。
大会会場の食堂の事である。何も不思議はないとばかりにグスタフの正面に陣取るユウキはＣ定食のちゃんぽんを啜っている。（ちなみにグスタフのアジフライはＡ定食である）
大会参加者の昼食休憩は一斉だから、この食堂にもかなりの人間が集まっているのだが、何故かグスタフとユウキ周辺のテーブルには人は居ない。誰かが「なんて斬新なツーショットだ…」と呟いたのが聞こえたが、グスタフも大いに同意する。
「おいお前」
「ユウキです。いい加減名前覚えてくださいよ」
「･･･」
これだけ付き纏われたら嫌でも覚えるわ、とは思ったが、素直にそれを口にしたらこの少年が調子に乗るのは明白なのでグスタフは黙った。そもそも何故自分がこの少年に好かれているのか皆目検討がつかない。
「おい」
「ユウキですって」
「･･･ユウキ」
「何ですか？」
名前を呼んでやった途端に目を輝かせるユウキにグスタフはこっそりため息をついた。子供かよ、と思ったがまあ子供だな、と思い直した。
「何処かに行け」
「いきなりですか！？」
「相席を許した覚えはないが」
「えーでも混んでるからいいじゃないですか」
「外にでも行けばいいだろう」
「机もない屋外で麺類はキツイです。あ、水のおかわりいりますか？」
「いらん。だが醤油をこっちに寄越せ」
「ソースも美味しいですよ？」
「アジフライは醤油だ」
＊結局一緒にお昼ご飯
２．七星組片思い同盟
「グスタフさん、好きです！」
「そうか、おたふくソースがか？」
「おたふくソースも好きですけど違いますよ！お好み焼きの話をしてるんじゃないですよ！」
「そろそろ焼けてるんじゃないのか」
「あ、本当だ。待ってくださいねグスタフさん俺がひっくり返しますからね」
「オイスター追加で」
「グスタフさん牡蠣好きですね」
「ここの美味いからな」
「天下の宮島産ですからね！高いですけど。あれ、グスタフさん焼酎空ですよ追加しますか？」
「ああ」
「すいませーん同じこの焼酎追加お願いしまーす！グラスじゃなくて瓶で」
「ところでユウキ」
「はい？」
「お前は飲まないのか」
「飲んでますよ、コーラ」
「違う」
「俺一応未成年なんですけど」
「何だ詰まらん。そんなこと言ってるが実は飲んでるんだろう」
「いや、建前というのがありましてですね。追加の牡蠣と焼酎きましたよーどうぞ」
「カルピスサワー追加で」
「飲みませんよ！？というか何ですかそのチョイス！？飲むならもっと別なの飲みますよ！」
「私の酒が飲めないのか？」
「別にグスタフさんのお酒ってわけじゃ…何でもないですいただきます」
「･･････」
「すいません気付きませんでしたお酌します。あれ？グスタフさんもしかして酔ってます？」
「酔ってない」
「酔ってる人は皆そう言うんですよ！そうですよねすでに一瓶一人で空けてますもんね」
「ああ」
「この流れなら言える！好きです超好きです！」
「そうか」
「あれなんだろうこの虚しさ」
「―――というわけなんだけど、どう思う？」
「ユウキって意外と甲斐甲斐しいね」
モカフラペチーノのクリームをがしがししながらユウキが言うと楓は苦笑してホットのカフェモカをすすった。
「で、その後はどうなったのさ」
「普通にご飯食べて帰った」
楓がガクッと体勢を崩す。
「え、それだけ？他になんかないの？」
「例えば？」
「えーと、お酒に酔った相手を送って行って自宅にお邪魔するとか？」
「そがぁなことあるわけんじゃろー。楓は想像心豊かじゃのぉー」
ユウキは遠い目をしてさらにフラペチーノのクリームをがしがしする。最早クリームの面影はどこにもなかった。
「グスタフさん、確かに酔ってたけど、意識失うほどは飲んでなかったし。俺が誘ったのに俺にお金出させてくれないしさ！だいたい俺グスタフさんの家知らないから送りようがない。なんかゲーニッツさんの家は知ってるけど」
「何で！？」
「わしにもわからん。なんかグスタフさんの誕生日とか好物とか駄目もとで聞いてみたら、家に招待されてアルバムまで見せてくれた。あと何故かヨハンさんから紅茶をご馳走になった。おいしかった。小さいグスタフさんもカッコいいね！」
「突っ込みどころがありすぎる…。ラスボスの人たちって何考えてるかわかんない…。というかユウキ肝が据わってるな…」
楓はゲーニッツ家でお茶会ｉｎユウキを想像した。あまりにもシュールだったのですぐに考えるのを止めた。
「僕が話だけ聞いてると、グスタフさん？という人もまんざらじゃないような気もするけど」
「どうかなー、名前は憶えて貰ったけど、まだ子ども扱いされてる気がするんだよな」
「子ども扱いならまだ良いほうだよ」
「ん？」
「僕なんか完全に弟扱い…？いやそれすらも怪しい･･･何？忍者さんにとって僕って何？」
↓以下楓の回想↓
「楓ってさー」
「は、はい？」
「今いくつ？」
「じゅ、十七になりますが…」
「何だ十八才未満か。なら頼めないか」
「え、どうしてですか？何か年齢に引っ掛かることなんですか？言ってください忍者さん」
「えーいいよーしょーもねーことだし」
「構いません。僕は忍者さんの力になりたいんです！」
「や、いいってホントに」
「……。」
「…怒るなよ？呆れんなよ？」
「そんな事しません」
「昨日さーテレビでやってたんだけどさー」
「はい」
「楓の所の世界というか時代のエロ本…あ、艶本っていうの？すごいらしいじゃん？」
「は？」
「ほらーやっぱりそういう反応するだろー」
「えっ、いや、思いも寄らない話が出て来てビックリしただけでそういうわけでは…。つ、艶本がどうかしたんですか？」
「すごいらしいじゃん」
「す、すごいと言われましても僕は見たこともないし他と比較した事もないのでなんとも…」
「え、見たことねぇの？今まで？一回も？」
「な、なんというか、今まで興味と縁がなかったので…」
「今も興味ねぇの？」
「い、今は興味がないこともないようなあるようなないような（何で僕はこんな地雷ギリギリの話をしているのだろうか…）」
「どっちだよ。ヴァナ産のでよければあるけど見る？」
「みっ、見ません！」
「遠慮すんなよーどうせ内藤のだし」
「内藤さんのものを勝手に持ち出して良いんですか？」
「内藤のだし良いんじゃね？最近アイツも御名方さんで充分らしくて使ってないっぽいし」
「は、はぁ…（何でこんな生々しい話に？）」
「で？」
「で？？」
「見ねぇの？」
「見ませんよ！」
「ふーん」
「……」
「……」
「……（あ、あれ？）」
「……」
「に、忍者さんは、」
「ん？」
「そ、そういうことに、興味が？」
「そういうこと？…あぁ。まぁ、あるかないかって言われれば、ないってことはないわなー」
「そっ、そうですか…」
「あぁ」
「……」
「……」
「…僕の世界では元服は十五からです」
「げんぷく？」
「こちら風に言うと成人のことです」
「へー、じゃあ楓はあっちじゃもう大人なのな」
「だから艶本買うのに何の問題もありません！」
「え？あ、いや、いいって、別にそこまで欲しかったわけじゃねぇし。言ってみただけだからさ」
「いえ！次会うときにお渡しします！」
「や、別にそこまで気合い入れなくてもいいって。でもそこまで言ってくれるんなら楽しみにしてるよ。ありがとな、楓」
「とんでもないです！！」
「えっ、それで買ったの？エロ本」
「買ったよ…」
「楓って自分で墓穴掘って自ら飛び込むよな」
「言うなああ」
うわぁぁと両手で顔を覆って泣き崩れる楓に何故かユウキも貰い泣きした。おい平日昼間にエコノミーモードだぞ何やってんの！
「それで買ってきた時の汚い忍者さんの反応は？」
「自分は良いから僕が使えって…」
「うわぁ」
何か本当に悲しくなってきたユウキは楓の肩を叩いて、よし飲もうぜと楓に杯を勧めた。中身は楓の注文したカフェモカだが。
「ははは･･･あれ、何か今日は湿度が高いなあ」
目頭を押さえるユウキと虚ろにカフェモカの水面を見つめてぶつぶつ呟く楓は傍から見れば異様な光景である。そして微妙な沈黙が続いた後、ユウキは今まで触れられなかった事項に触れようと決心する。
「ろ、狼牙？そろそろ起きないとフラペチーノ溶けるぜ！」
テーブルに突っ伏してている狼牙である。狼牙の注文したコーヒーゼリーフラペチーノは一口も口をつけられておらず、時間が経って虚しくクリームがへにゃりとくたっている。
「もう俺は駄目かもわかんねマジで俺はもうだめかもしれん」
小声でさっきからこの繰り返してある。こいつはもう駄目かもわかんね、とユウキと楓がアイコンタクトした瞬間に狼牙はがばりと起き上がる。そして手をつけていなかったフラペチーノを手元に寄せて、ストローに口をつけたが、すぐに眉をしかめて口を外した。そしてストローで中に入っているコーヒーゼリーを粉砕し始める。コーヒーゼリーがストローに詰まったらしい。目が完全に据わっていた。
「て、テリーがどうしたって？」
見かねた楓が狼牙に話題を振る。この狼牙相手にその話題は明らかに地雷だが、このままの様子の狼牙も地雷なので致し方あるまい。振られた狼牙は待っていましたとばかりに楓に詰め寄る。
「それがさあ！聞いてくれよ！」
↓以下狼牙の回想↓
「これはチャンスだ落ち着け俺落ち着け俺落ち着け俺」
「狼牙？何ブツブツ言ってんだ？」
「なっ！何でもねぇよ！？」
「ふーん？そういや俺とお前のタッグなんて珍しいよな」
「そっそそそうだな！」
「あれ？何お前、もしかして緊張してんのか」
「しっ、してねぇってば！」
「してる奴に限ってそう言うんだよ。大規模大会でもねぇのに珍しいのな」
「…。（アンタとのタッグだからだよ！とは言えない）」
「そうだ狼牙、ちょっとこっち来い」
「へ？」
「良いから来いって。っていうか何でそんな微妙に離れた位置にいんだよ」
「何でっつっても」
「おーい早くしろー」
「わかったよ！まったく何だ「パワーウェーブ！！」ほぅわぁっ！？」
「さあ狼牙来い！」
「来いじゃねーよ？！アンタいきなり何すんだ！」
「何って試合前の組み手」
「室内で！？つーか試合だったとしても今のはフライングだろ！」
「Round one，Fight！」
「今更口で言うな！」
「まあいいからナパームでもウルフファングでも打ち込んでこいよ。エンハンス待ってやるから」
「最後のがすげー腹立つんだけど…。望み通りフルエンハンスでウルフファングしてやるから覚悟しろよテリー！」
「おー、緊張も大分解けたみたいだな」
「え？」
「やっぱり俺は狼牙のそういう顔が好きだな」
「……………………。」
「うん？どうした？」
「……お、俺もテリーのそういうとこ、カッコいいと、思うぜ」
「「惚気かよ！！！！！！！！！」」
ユウキと楓のツッコミが綺麗にハモるなか、狼牙は机に突っ伏してごろごろくねくね気味の悪い動きで身悶える。
「マジテリーヤバイって。何がやばいってマジヤバイ」
「日本語でおｋ」
「楓楓、覚醒出ちゃってるから落ち着け」
楓が荒んだ表情でカフェモカを音を出して啜る。エロ本の心的外傷が癒えない楓は他人の惚気に耐えられるほど心穏かではなかった。そしてユウキだって同じくイラッとしたのでデレデレする狼牙にカウンターを試みる。
「はーん？でも狼牙、どうせアレだろ、あのテリーのことだからその渾身の告白をスルーされた挙句に、試合のどさくさにまぎれて押し倒しても逆に押し倒されて頭撫でられておしまいだったとかそがぁなオチじゃろ！！」
「お前エスパー！？」
がばっと起き上がる狼牙に指を突きつけてユウキはさらに捲くし立てる。
「グスタフさんだってカッコ良いしスマートだし、スーツ姿は色っぽいし、戦闘のワイヤーアクションはスタイリッシュで惚れ惚れするんだぜ！」
「グスタフってあれだろ？ゲーニッツにべったりのおっさんだろ？」
「狼牙、わりゃぁわしを怒らせた！！楓もコイツに何か忍者さんのええ所を教えちゃりんさい！そがぁな遠くを見てんで！」
「ごめん、何言ってるかわかんないけど忍者さんは可愛い人だ！」
「訛っとらんわー！」
＊愚痴大会から惚気大会に移行しました。
３．時間があれば、是非wikiで該当キャラのページを開いてみて下さい
�‐緝覆聞�スーツを着こなし
��長い黒髪をオールバックにして
�Ｇ舛�目は涼やかな切れ長
�つ垢さ咾�ら繰り出される足技はスタイリッシュである
この人も格好良いよなあと某大会の中継を見ていたら、「おい、」後ろから絶対零度の声が掛かってユウキは飛び上がるほど驚いた。実際３センチほど飛び上がった。慌てて後ろを振り替えると若干殺気立っているグスタフである。出会い頭から殺気を出しているグスタフにユウキは何かしただろうかと焦る。（そしてその後ろに何故かにやにやしているゲーニッツとヨハンも居たが、ユウキはそれどころではない）
「こ、こんにちはグスタフさん！どど、どうしたんですか？」
声を掛けてもグスタフは何も答えず視線を中継画面とユウキに交互に投げた。見下ろされる切れ長の目が何故か刺々しい。
「ユウキ、お前、スーツさえ着ていれば誰でも良いのか？」
「ええぇ！？」
いきなり何を言いだすのかこの人は、と思うのと同時にちょっとドキッとしてしまったのは秘密だ。その僅かな動揺を見逃す程グスタフは甘くなく、ユウキはグスタフにがっちり顔を掴まれた。そしてぐるりと無理矢理中継画面に顔を向けさせられる。ちょっと首がぐきっと言ったがグスタフはお構いなしだ。
「首が！首が！今ぐきって言いましたよ！」
「今、誰を、見ていた」
「誰って言うかただ試合を見ていただけ…いたたたた嘘ですごめんなさい嘘吐きました塞って人見て格好良いと思ってましたごめんなさい」
後ろの野次馬二人は俯いて笑いを堪えているが、笑われている当の二人はそれどころではない。
「ほう、理由を聞こうか」
「グスタフさんと似ているなあと思いまして」
「どこがだ！？」
珍しく声を荒げるグスタフに野次馬の一人が堪え切れず噴き出した。
「黒いスーツが似合って格好良いところとか黒髪のオールバックだったりとか手足が長い処とかです！」
「確かにそっくりだな」
「外野は黙って貰えますか」
「すまん」
にやにやしながら茶々を入れたヨハンだったが、グスタフの勢いに思わず謝った。もう一人の野次馬は腹を抱えて大爆笑している。
グスタフはギリギリとユウキの顔を掴んだ手を強める。
「ユウキ…お前以前オズワルドにも似たような事言っていただろう」
「オズさんもスマートで格好良いですよねってバリいたいです放してください！」
「誰と、誰が、そっくりだって？」
「似てるとは思いましたがそっくりとは思ってないです痛いです本当に痛いですごめんなさい！」
「あんなイロモノ邪気眼と私を一緒にするな！あんなマダオと！断じて！キャラが被ってるなど！無い！」
「失礼ですよ！？というかマダオなんて言葉何処で覚えたんですか！？あと俺そこまで言ってません！」
（気にしていたのか…）と某地味なラスボスが暖かい視線を向けていた事にグスタフが気が付かなかったのは当人にとって幸せなことかも知れない。そしてもうひとりの野次馬は笑い過ぎてむせている。
＊グスタフさんは少々悔しかったようです。そして青い服の牧師様はグスタフ≠塞の図式がツボすぎて暫くまともに部下の顔が見れませんでした。
４．卵が先か鶏が先か
「…似合わないな」
「どうせスーツに着られてますよ！」
試着室から出て来たユウキを見てグスタフは鼻で笑う。出会い頭に引き摺られて高級ブティックに連行された時には自分の場違いっぷりにびびったが、グスタフの着せ替え人形をやっているうちに開き直った。順応性を高めるのがこの世界で楽しくやっていけるコツである。
グスタフは何着かのスーツをユウキに合わせたがいまいちピンと来なかったのか首を捻った。
「おかしい…何故合わない…身長もあるし体格だってそこそこ良いのに何故こうも着せられているんだ…」
「何ででしょうねー」
間の抜けた返事をしながらユウキは実は少しうきうきしている。グスタフが何故こんなことを始めたのかは謎だが、彼が自分のためにあれやこれや考えてくれているのは気分がいい。
グスタフは何種類ものスーツをユウキに渡してくるが、どれも種類が違うらしい。ユウキにはどれも同じに見えるがグスタフには何やらこだわりがあるらしかった。そういえばここってグスタフの好きなブランドの店だよなぁということに今更ながら思い至った。
次はこれを来てみろ、と渡されたものにユウキは少し気後れした。グスタフが楽しんでいるのを見るのはユウキにとっても非常に楽しいのだが、いい加減疲れていたのも事実だった。買い物のたびにこんなことしている女の子ってすごいなぁとちょっとずれた事を思った。
「あのーグスタフさん？」
「何だ、早く着てこい」
「いやちゃんと着ますけれど。どうしていきなり俺にスーツなんですか？」
「……」
首を傾げるユウキに見つめられてグスタフはついっと視線を逸らした。
「…お前、好きだろう。スーツが」
「え？」
「何でもない。早く試着してこい」
そう言ったきりグスタフは黙してユウキを試着室に押し込んだ。もう何度目か分からない試着室でユウキは先程グスタフが呟いた意味を考える。はてはて。自分が、スーツ好き？
確かにユウキがグスタフに好意を抱くようになってからは、グスタフのトレードマークたるスーツにも惚れ込んで格好良いだのどこのブランドだの聞きまくっていたのは確かだが、特別スーツが好きというわけではないはずなのだが。
首を捻りながら新しいスーツの上着に腕を通すと、試着室の姿見がユウキを写す。グスタフは何だか頑張っている様だが、やはり自分はスーツは似合わないと思う。自分で言うのもアレだが。やっぱり世界一スーツが似合うのはグスタフさんだよねうんうんと一人で納得していたらふと脳裏に浮かんだ出来事があった。
―――スーツさえ着ていれば誰でも良いのか？
この時、ここがブティックの試着室ではなくて自分の部屋とかだったら間違いなくベッドの上とかでごろごろ悶絶していた、と後にユウキはグスタフに語る。
「グスタフさんグスタフさん！」
勢い良く試着室のカーテンから顔だけ出したユウキにグスタフはちょっとびくっとなった。ユウキは構わずまくしたてる。
「俺はスーツが好きだからグスタフさんが好きなんじゃなくて、グスタフさんが好きだからスーツが好きなんですよ」
ここでユウキがグスタフの反応を見ずに試着室に引っ込んだのは間違いなく照れからであった。ユウキはどうも言うだけ言って満足してしまうクチなので、グスタフがどう感じたのかは深く考えてないのだった。周囲から「詰めが甘い」などと言われる由縁である。
「･･･馬鹿が」
片手で顔を覆って小さく呟いたグスタフのこの言葉が、果たして誰に、何に対して向けられた言葉だったのかは、本人のみぞ知る。
＊スーツはユウキにプレゼントされました
おしまい。
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