921 :名無しさん@ビンキー:2010/04/07(水) 02:48:25 0
>920
覚えてるのが此処にいるぞ!というわけで乙です!早速読んできます!
あと読む側からすればネタが何スレ前のだろうがマイナーだろうが嬉しいので、気にしなくてよいのでは?
宣言も別に私は気にならない。っていうか前に私もやったし。とりあえず、どっちもめっちゃ楽しみにしています。

……で、
私も書けたので投稿。バルジャギで、>>699の続き。
ヤンデレ紳士なバルバトスに陥落するジャギ様、です。


……バルジャギ は 甘々ヤンデレバカップル に 進化 した!







※バルジャギ。
※ヤンデレ×ヤンデレ。
※極悪の華設定で死後MUGEN界へケンシロウより先に堕ちて来たジャギ様がバルバトスに惚れられて強姦された後に監禁され中。という設定。
※>>699の「君想檻捕」の設定を引き継いでいます。
※死亡描写注意。若干グロ。痛いです。でも最後はハピーエンドなのでそこは安心してくださ、い?
※超ドシリアス。でも今回は甘いよ!
以上了承の上で、↓スクロールお願いします。














 世界から隔絶されて今日で……何日目か。
 枕に頬を寄せながら薄ぼんやりとした青に染まる外を眺めてジャギは数えた。
 もう三ヶ月にはなるか。
 身体を起こし、隣で眠るバルバトスへ目をやった。紫色の双眸が寝そべったまま此方を見ていて、睨む。

 ――あれから何度か肌を合わせたが、バルバトスと繋がったのは監禁される前日だけだ。

 手と、舌と、視線だけでジャギに何度も欲望を吐き出させながらもバルバトスは無理矢理ジャギを犯さなかった。強く拒絶すればその行為さえ止める。
 馬鹿な男だと思う。それだけの力があれば何だって手に入るだろうに、バルバトスは力以外でジャギを陥落しようとしている。
 …………絆されて口や手で奉仕してやる自分も、大概馬鹿か。自虐的に胸中で呟いて、白いシーツの上に広がる銀青色の長い髪に触れた。

 波打つ髪は見た目に反して硬く、枝毛が目立つ。指に絡めて少し力を込めて引っ張れば、バルバトスの眉間が僅かに動いて手首を掴まれた。
 拳を解けば、引き寄せられて手首を食まれる。

「……今日は被らねぇんだな。」
「…………後で被るさ。」

 バルバトスの言葉が、いつもなら朝起きて真っ先に被るヘルメットを被ろうとしないことを差しているのだと気づき目を泳がせつつ答えた。バルバトスの瞳の中に映る自分の素顔は相変わらず醜くて、直視したくない。
 そうか、と、頷いたバルバトスが手を離す。

「キスさせろ。」
「………。」
「嫌ならせん。」
「………………いい、ぜ。」

 目を合わせないまま蚊の鳴く様な声で囁いた返事を聞いてバルバトスが起き上がった。右手が頬に触れ、左手で顎を捉えて引き寄せる。唇が味わうように何度も角度を変えてジャギの唇に触れ、満足すると今度は舌がゆっくりと口内を順番に蹂躙していく。
 乱暴ではない。が、優しいというには少し手荒な動作は、牙を立てたいのを堪える肉食獣のようで少し可笑しかった。
 舌を伸ばせば、ねっとりと絡み付いてくる。目の前で紫色が危うく揺れたのを見て、馬鹿な野郎だと胸中で零した。

 無理矢理組み敷いて存分に歯を突き立てればいい。好きなように貪りつくせばいい。欲望のままに、力を振りかざせばいい。そうすれば、欲しいものなど簡単に手に入るだろう。なのにこの男はソレをしない。それでは手に入らないと言う。自分が欲しいのは、そんなことをして手に入るようなモノでは無いと言って、力も欲望も封じている。
 人をこんな場所に三ヶ月も監禁しておいて、どの口がモノを言うのか。
 …………それでも確かに、必死で理性を保ち牙を隠すバルバトスは紳士的だった。

「ん…ふゥっ……はぁ、は…ぁ、」
「チッ……そんな顔するんじゃねぇよ。押し倒すぞ。」
「はぁ……は、ハッ、この顔に欲情できるなんざ、テメェは心底変態野郎だぜ。普通萎えるだろ、こんな汚ネェ顔見たらよォ。」
「フン、確かに綺麗ではないな。」
「ッ、」

 自分で振った話題のはずなのに、口角を吊り上げていったバルバトスの言葉にズキリと胸が痛む。顔を歪めたジャギに笑みを深めて、バルバトスはもう一度顔を寄せると吐息が触れる距離で囁いた。

「だが、俺は好きだぜ。」

 熱を持つ言葉にひゅっと細く喉が鳴る。目を瞠るジャギを愉しげに眺めながらバルバトスは唇に唇を押し付けた。短い接吻に、ちゅっ、と音がして、ジャギの顔が朱に染まる。

「ば…! …っかじゃねぇの。目玉腐ってンぜ。」
「仮に、腐ってるとすりゃぁ頭の方だな。テメェの全てが可愛くて、愛しくて、仕方がネェ。」
「だからッ、こんなツラ相手によくそんな…!」
「照れてる顔も可愛いぜ?」
「―ッ!」

 赤い顔にさらに熱が上るのを感じてジャギは咄嗟に俯いた。ぎゅっと瞼を瞑れば気配が動き、すっぽり包むように抱きしめられてどうしようもなくなる。
 唇が大嫌いな傷跡に何度も触れる。ぞくぞくと身体が震えるけれど、嫌悪感は無い。
 こうして触れるバルバトスの唇や吐息や指や腕は吐き気がするほど甘ったるくて、どうすればいいのか判らなくなる。心拍数が無意味に上昇し、思考は混濁して胸の辺りによくわからないモノが溜まっていくのだ。

 最初の頃はそんな感覚を気持ち悪いと……怖ろしいと、思った。
 けれど今はどうだろう。震える腕はバルバトスに触れたくて仕方が無い。
 ――抱きしめ返して縋りつき、愛してると告げたらこの男はどんな顔をするのだろうか。
 傲慢にも満足げに笑うのか、意外にも普通に驚くのか、それとも……手に入れた途端、態度を翻して陥落したジャギを嘲笑うのだろうか。

 空っぽだった身体の内側の奥深く、根を張り胸を満たそうとするのは狂おしいような恋情。
 この男が永遠に自分を見ていてくれるならば、外の世界なんて要らない。死ぬまでこの檻の中にいたい。それか、逆にこの男を檻に閉じ込められればいいのにと、一人のときはそんなことばかり考えている。


 いっそこの手で殺してしまえば、自分は満たされるのだろうか。
 永遠にバルバトスという男を手に入れて、幸せになれるのだろうか。


 ――――………思ったのは一瞬だ。しかし色濃く煙った殺気にバルバトスが気づかないはずが無い。
 愛撫を止めたバルバトスが、その眦へ愛しげに唇を寄せてからまっすぐジャギの双眸を見据えた。理性と欲と殺意で揺れる黒を見つけて、くつりくつりとバルバトスが哂う。

「俺を殺したいか。」

 相変わらず飾り気の無い問いに、ごくりとジャギが唾を飲む。

「…………あぁ、殺したい。」

 お前が欲しいんだと、告げそうになって唇を噛む。逸らされた視線に双眸を眇めて、バルバトスは身体を離すとジャギの手を掴んだ。
 ――掴まれた両手がバルバトスの首へ押し付けられて、ハッと顔を上げたジャギが目を瞠る。

「なん、」
「殺せ。」
「…………、あ…?」
「俺が欲しいのだろう? 否定しても無駄だぞ。目を見れば分かる。…俺と同じ目をしている。俺を殺すことで貴様が俺を手に入れるというのならば、それは俺が貴様を手に入れるのと同議だ。だから、殺せ。命一つで貴様が手に入るなら安いものだ。」
「おい、テメェ…意味わかって言っているのか。」
「貴様は俺が分かっていないと思っているのか?」
「……、」

 理解している。どこまでも貪欲に我欲を追求し突き進むこの男は、その行動とは裏腹に酷く理性的だ。理性的に、己の欲しいものだけを取捨選択し躊躇無く他を捨てる。その結果、誰を傷つけても、何を壊しても、この男は何とも思わない。
 どこまでも理性的に欲望だけを選んで生きるバルバトスは、戦闘狂などと呼ばれているけれどその実まったく狂ってなどいないのだ。
 ただ、壊れている。人間として、社会に集団に適応し生きていくために必要な、重要な何かが完膚なきまでに壊れてしまっている。彼は狂っているのではなく、壊れているのだ。

 そんなバルバトスは、だから、結果も意味も理解した上でジャギに本気で言っているのだ。自分を殺せと。自分を殺して自分に囚われろと、そう言っているのだ。

 眩暈がした。ぶっ壊れたバルバトスという男の存在に……では、無い。
 神さえ殺せる男が、ジャギなどに殺される。殺されることを望んでいる。ジャギを手に入れるそれだけの為に。その事実に胸中へ甘いものが広がった。それが優越感か、嗜虐感か、何なのかはよくわからない。ただこの男を――バルバトスを、殺せるのだという幸福感に眩暈がした。
 ドクドクと、煩く脈打つ心臓の音が聞こえる。自分の意思で太い首を掴めば同じくらいの速さで脈打つ音を聞いて驚いた。
 紫色の双眸に死への恐怖は無い。まっすぐジャギだけを見つめながら、その目は死を焦がれている。ジャギを手に入れる瞬間を、焦がれている。
 ぐっと、体重を乗せれば抵抗も無くバルバトスの身体がベッドに沈んだ。ばさり、と青銀色の髪が広がったのを見てうっそりと双眸を眇める。……ゆっくりと、ジャギの指に力が込められていった。

 秘孔を突くのでは味わえない、手のひらの中の”生”の感触に唾を飲む。手の平に伝わる熱と指を揺らす規則的な振動。緩やかな圧迫感にバルバトスの顔が苦痛に歪んだけれど、その目と口は嬉しげに哂っていた。
 バルバトスの瞳の中で、ジャギもまた無音で哂っている。
 手の平の中でぎりぎりと骨が軋む。唾液交じりの泡が口の端を伝い、バルバトスの目が眇められる。



 ぱきゃり、と、手の中で首が歪んだ。



 ぐるん、とバルバトスの両目が白目を剥く。口の端の泡に血が混じって、皮膚を突き破った骨の端がジャギの手を切った。
 ゆっくりと、ジャギの両手がねじれた首から離れていく。離れて、バルバトスの両頬を包んだ。親指の腹で口の端を拭って、吐息だけで呟いた。

 ああ、死んだ。

 くつりと、その肩が揺れる。
 断続的に吐息を吐き出し肩を揺らしたジャギは、唐突に弾けるように笑い出した。

「ギャーッハッハハハッハハハハハハアハハハッハハハハハハハ!!!! 殺した! バルバトスを!! 俺がッ! この、俺が! は、ハハははハハハハはハハッ!! 殺した! すげぇ、俺が殺したんだ! ハハハハ、ひゃはハはははハハはッ」

 裏返り、甲高く引き攣った哄笑が寝室に響く。
 窓から差し込む朝の光が室内に斜影を作り、ベッドで哂い続けるジャギを照らした。
 その両目から溢れるモノが光を返す。

「ハッハハハハァッハ、ハハハ、ハはハハハ、ハ、ハハッ、ハッァ、ぁ、ははは、は、あははは、あは、は、ははは、ひ、は、あ、あ、は、ひ、あ…ぅ、あ、あああ、ああああああ゛あ゛ぁぁああ゛ああぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!!!!!」

 嗚咽が混じった哄笑は、途中から悲鳴に流転する。動かないバルバトスを抱きしめて、気がつけばジャギは只管悲鳴を上げ続けていた。
 溢れる涙で何も見えない。抱きしめる腕の中で、バルバトスの身体はどんどん冷たくなっていく。
 当たり前だ。だって自分が殺したのだ。この男を手に入れるために、自分がこの手で殺したのだから。


 ――――愛しい人の死がどれほど苦しく悲しく痛ましくこの胸を抉るか、今更思い出したジャギはただ泣き喚いた。


 どうして忘れていたのだろうかと、己を恨む。そうだ、彼女を失ったときも、自分はこんなふうに悲しんだのだ。死は、こんなに辛いものなのだ。それをあの時自分は知ったはずではなかったのか。
 他者の死で得られるものは、空虚感だけだったではないか。

「あ゛ああ、あ、ひっく、バルバトス、あ、あ、うあっあ、あ゛あ゛あ゛あ、バルバトス、バルバトス、あ、あああ、バルバトス…!」

 強く死体を抱いて何度も何度も名前を叫ぶ。けれどバルバトスは動かない。二度と名前を呼んでくれない。抱きしめてはくれない。
 だって自分が殺したのだ。
 絶望感に目の前が真っ暗になった。

「あ……ぁ、は、はは、ひ、ひひ、は…は…………、」

 笑い声も泣き声も止んだ室内に沈黙が落ちる。
 ゆっくりと、ジャギはバルバトスを抱きしめていた腕を解いた。
 上体を起こしたジャギの両目からは途切れることなく涙が伝っている。
 くつくつと、吐息で哂ったジャギは焦点の合わない目を虚空へ投げかけ囁いた。

「……テメェの思い通りだよ、バルバトス。テメェを殺して気づいちまった。俺はテメェを、愛してる。どうしようもねぇくらいに愛してる。………あぁ…馬鹿みてぇだ。惚れた女も守れなくて、今度は惚れた男を殺しちまった。でも、テメェの思惑通りだよ。―――もう、アンタ無しじゃ生きられネェ。」

 その右手がゆるゆると持ち上がり、自身の胸に触れる。
 位置は、心臓の真上。



「今から死んだら、テメェに追いつけるかな。」



 呟いて、指が胸板に食い込んだ。

「そりゃァ無理だな。もう帰って来ちまった。」
「!?」

 声と同時に腕を掴まれ、無理矢理指を引き抜かれる。驚きに声も無く顔を上げるけれど涙で前が見えなかった。瞬きをしている間にむくりと起き上がる気配があって、嘘だ、と、思わず呟く。

「なんで、テメェ、だって、確かに、死んで…!」
「死んだら生き返っちゃ悪いのか?」
「誤魔化すんじゃねぇ!!!」

 揶揄する声に怒鳴りつける。止まらない涙に苛立ちながら、掴む腕をたどって抱きついた。
 耳を押し付けた胸からは、確かに心臓の音が聞こえている。

「どういう事だよ……本当に、生き返ったって言うのか。」
「正確に言えば違うがな。――俺は、元々生きていない。」
「……あ?」
「俺は血肉を持って彷徨う亡霊だ。肉体が何度死んでも戦いへの妄執が俺を甦らせる。」
「…………何だよ、それ。何だよそれ。なんだよ、テメェ、そんっ、そん、な…!それなら、そうと、先に…!」

 言いやがれ、と、続けるはずだった言葉は嗚咽に代わりそうになって飲み込んだ。溢れ続ける涙がバルバトスの胸を濡らす。

「フン、先に教えていたらこうはならなかっただろうが。それでは殺される意味が無い。―――理解したのだろう? 俺無しではもう、生きられないと。」
「ばかやろう…っ!」

 引き攣る声で返しながら抱きしめる腕に力を込めた。肩口に顔を埋め、背中に爪を立てる。
 あぁ、こんなふうに誰かを抱きしめるのはいつ以来だろうか。誰かに抱きしめ返されるのは、誰かをこんなにも愛しいと欲するのは?
 記憶はあまりにも遠すぎる。だが、だからこそ余計にそれが叶う今この瞬間が、幸せで、胸が痛い。


「――――貴様はもう、俺のモノだ。」


 耳元で昏く甘く囁かれた睦言に何度も頷く。
 そんなジャギを愛しげに抱きしめるバルバトスの顔は満足げに笑っていた。
 どこまでも傲慢に凶悪に幸福そうに、静かに笑うその顔を見る者がいれば震え上がっただろう。
 慈愛に満ちて美しく、狂気に満ちておぞましく、相反するはずの二つが矛盾無く存在するその笑みをジャギが見ることは無い。
 今は、まだ。
 


END
(その顔を見たならば、きっと彼も同じように笑うのだろう。)

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