最終更新:ID:7XJZ2xgi5Q 2010年04月02日(金) 23:45:56履歴
195 :名無しさん@ビンキー:2010/03/26(金) 03:01:49 0
流れ切ってすみません。今日もまた書けたので投稿。
エイプリルフールネタに滾ったんだ……休むんじゃなかったっけ私?
バルジャギで短め。
SS集みたくしようと思ったんだが時間が足りなかったんで個別にした。
予定としては師匠×トキ(執筆中)、ラオホル、承ケン承の北斗一家やるつもり。
皆、オラにネタを分けてくれ……!
248 :名無しさん@ビンキー:2010/03/27(土) 02:15:11 0
流れ切ってすみません>>195でエイプリルフールネタ上げたものだが次が出来たので投稿しとく。
ちなみに”東方不敗”は称号であって名前はマスター・アジアなわけだが、こっちのほうが違和感なかったので。
明日は流石に残業あるし休む……多分、きっと。
250 :名無しさん@ビンキー:2010/03/27(土) 03:29:03 0
エロホルの動かしやすさは異常。
明日は流石に休むよ、うん。
322 :名無しさん@ビンキー:2010/03/28(日) 14:42:44 0
流れ切ってすみません。北斗一家でエイプリルフールネタ投稿してた者ですが完成したので投稿しにきました。
1,2,3も一緒に纏めて+α。改めましてバルジャギ、師匠トキ、ラオホル、承ケン承です。
本番なし。ほのぼ…の?
前SSは削除してもらえると助かります。保管庫にも此方を保存で。
承太郎とケンシロウはどっちが上でも萌える。
※エイプリルフールネタ。
※バルジャギ、師匠トキ、ラオホル、承ケン承
※仲良し北斗一家
※ホル・ホースが普通に北斗家に居候しています。
※ジャギとバルバトスが普通に同棲済み。
※キャラ掴めてない人もいるので偽者注意。
※甘々。つ【砂吐き袋】or【お塩】
※SS集。
その他諸々ひっくるめてどんと恋!な方のみ↓スクロール
【AM4:08 北斗家 裏庭の修行場にて。】
「兄者達、家が火事だぞ。」
「「……、は?」」
北斗神拳伝承者候補にあるまじき間抜けな声を兄二人から出させたのはケンシロウの意味不明な一言だ。棒読みにもほどがあるその言葉と、常の鉄面皮ながらもどこか愉しげな末弟にラオウとトキは思わず顔を見合わせた。
「それは……嘘か?」
「そうだ。」
「突然何だ、ケンシロウ。」
「今日はエイプリルフールだから、俺も嘘を吐いてみた。定番の嘘といえばこれだとジャギから聞いたのだが。」
「……成る程。」
確かに今日は四月一日で、所謂四月馬鹿とか万愚節と呼ばれる、親しいもの同士で嘘を吐きあう日だ。
納得した二人に満足したのか、はたまた嘘を吐いたのに満足したのか、ケンシロウはともあれ満足げな表情で二人に言った。
「それじゃあ鍛錬を始めようか、兄者。」
【AM7:34 ジャギ宅 リビングにて。】
朝食も片付けも終わり、特に予定も無く緩やかに過ぎていく時間。
シンクの前で水を飲んでいたジャギは、ふと壁にかかったカレンダーへ目をやるとあることに気が付いてヘルメットの下、双眸を細めた。
本日の日付は4月1日。
「おい、バルバトス!」
ゴキゲンな声で呼びかけつつソファで新聞を広げていたバルバトスの方へつま先を向ける。顔を上げたバルバトスはといえば、愉しげなジャギにまた何かくだらないことでも思いついたかと胡乱な視線をやった。
「何だ。」
「今日が何の日かは知っているな?」
「……、…………『エイプリルフール』。嘘を吐く日か。」
新聞の日付と三面記事のうち一つに目を走らせつつの返答だったが「そういうこった。」上機嫌なジャギは気にしない。
バルバトスの横まで歩み寄ったジャギは新聞を上から奪い取ると行儀悪くテーブルに腰掛け、足を高く組み猫背を丸めるとにやりと笑って言った。
「”好き”だぜ、バルバトス?」
常なら絶対に口が裂けても言わない言葉。しかしその正しい意味とジャギの思惑を察したバルバトスは――ゆっくりと口の端を持ち上げた。
「ほお?」
「テメェのその傲慢ちきな態度が”好き”だ。すぐに暴力に訴える短気なところも”好き”だし、ヒトの都合を考えねぇ手前勝手さには”惚れ惚れする”ぜ。」
ニヤニヤと、仮面の下で口元を歪めてジャギが言う。紡がれる言葉の意味を正しく理解しながらもバルバトスの機嫌は下がらない。悠然と口元に笑みを湛えながら、愉しげに歪んだジャギの双眸を見つめて喉を鳴らし哂った。
「それだけか?」
「まだまだあるぜ? そのいつでも余裕たっぷりな態度も”大好き”だしいつだって自分が優位だと思ってるような眼つきにゃ”うっとりする”よ。テメのルールを強要する押し付けがましいところなんざ、”最高にイかしていて”眩暈がするね。」
猫なで声で甘ったるく、一語一句はっきりと舌に乗せてジャギは双眸をうっとりと眇めた。吊り上げた口内に赤い舌が覗く。
その挑発的な態度が、表情が、動作が、どれほど目の前の男を煽っているのかも気づかずにジャギは笑っている。
「フン……それじゃあ次は俺の番だな。」
「あん?」
胡乱な声を出したジャギは、突然伸びてきた腕に腕を引かれ僅かに体勢を崩した。そのまま力任せにバルバトスと向き合うようにして膝立ちの格好で据わらされる。「ッおい!」不機嫌に怒鳴ったジャギは、瞬間ヘルメット越しに与えられたゴヅッという衝撃に目を瞑った。
「なんっ」文句と同時に瞼を開けば眼前に紫色があって息を呑む。獲物を嬲って弄ぶような眼差しに背筋が粟立った。
「好きだぜ、ジャギ。」
「――ッ!」
低く、それでいて甘く、囁かれて肩が震える。
「テメェのその曖昧な態度も、虚勢も、くだらねぇ自尊心も、好きだ。可愛くてしょうがねぇ。」
ジャギを真似てゆっくりとバルバトスが言葉を紡ぐ。
「ジャギ、テメェの声が好きだ。口付けた時に絡み付いてくる舌が好きだ。すぐ赤くなる耳も、傷だらけの身体も、噛み付きたくなるほど好きだ。」
「ちょッ、待て…ッ!」
予想していなかった空気の変化に気づき慌ててジャギが静止をかけるが黙殺される。
バルバトスが言葉を発する度に唇を吐息が撫ぜて、その淫靡さにひくりと喉が引き攣った。
「触れただけで震えるところも、抱きしめると戸惑うところも、名前を呼ぶとすぐに振り向くところも、最高だ。俺だけにだろう? そんな反応するのは。」
「それはッ、」
「目を逸らすなよ。ジャギ、テメェのその目に見られるのが一番好きなんだぜ、俺は。」
「〜〜ッ!!!」
羞恥心と、それ以外のもので身体が小刻みに震える。教え込まれた雄の匂いに中心へ熱が集まるのを自覚してジャギは泣きたくなった。
睦言が嘘かどうかなんて、こんな目をされたら嫌でもわかってしまう。
「お、俺はッ!嘘を言ったんだぞ!? 今日は、四月馬鹿の日で…!」
「だから何だ? 貴様は嘘が大嫌い…なんだろう?」
「ばッ、そ、そういう話じゃねぇッ!」
「関係ねぇなァ、俺は自分のやりたいようにやる。いつだって、な。」
「――畜生ッ…!!」
噛み潰すような敗北宣言に、くつりと喉を鳴らしたバルバトスの手が腰を撫で、上着の中へ上っていった。
当然のことながら、今は朝だという突込みなどバルバトスには不要である。
――――――バルバトス、WIN。
【AM10:12 東方不敗宅 縁側にて。】
「今度、結婚することになった。」
東方不敗……シュウジ・クロスの発した言葉に、ピシリ、と、音を立てて世界が凍りついた。
頭の中が真っ白になったトキは横で彼と同じように庭へ足を投げ出し縁側に腰掛ける恋人を振り向いたままの表情で十数秒見つめ……ヒュッと、肺が酸素を求めて思考と共に止まっていた呼吸を再開した。
ぱちぱちと、二度瞬きをする。まだ思考は回復していない。
「(今……この人は何と言った?)」
自問すれば脳内で冒頭の言葉が再生されて、それでもまだ意味が理解できなかった。
「(けっこん……そう、けっこんすると言った。けっこんとは、何だ。)」
否、本当は理解しているのだ。その言葉を聴いたその瞬間に、意味など。だからこそ、心は彼の言葉を理解することを拒んでいる。
回らない思考に、とにかく何か言わなければと気ばかりが急くけれど言葉は浮かばず、トキは結局困ったように微笑み首を傾げた。
それをどう解釈したのか、東方不敗がもう一度口を開く。
「今度、結婚することになったのだ。」
「………………は、」
繰り返された言葉に漸く麻痺していた思考回路が動き出す。結婚することになった、という事は相手は勿論自分ではなく、つまりこれは別れ話というものか。
この人に二度と触れられなくなる。理解した瞬間、目の前が真っ暗になった。
「……ぁ…………そう、ですか。」
戦慄く唇が力無い音を吐き出す。それは言葉ではない。トキは今、何も考えていなかった。
酷い絶望感に五官が遠のく。指先が震えていることにさえトキは気が付かない。焦点の定まらない瞳で、それでも微笑を作り音を発っした。
「それは、お……おめでとう…ご、ざいます。式には、ぜひ……ッッ」
唐突に、胸が詰まった。酷い痛みに呼吸が出来なくなる。全身の血が逆流するような激しい感情の波が押し寄せて両目から涙が溢れ出た。
怒りと嘆きと誰とも分からない相手への憎悪が混ざり暴れる。なんとか一呼吸だけ息を吸えば、自分は愛する人の幸せさえ願えないのかと自己嫌悪に吐き気がした。
「すみ…ま…せ、ん…か、顔を、洗って…!」
「トキ!」
片手で顔を隠し、立ち上がろうとした腕を掴まれた。身体が傾き、短い浮遊感の後、何かに包まれて目を瞬く。三度目で、自分が今東方不敗に抱きしめられているのだと気づいて目を瞠った。
「……すまん。」
「そんな…っ、謝らないで下さい、私は、今まで……本当に幸せで、」
「違う、違うんだ。……嘘なんだ。」
「…………、…………………………………………は…?」
長い、長い沈黙の後に漸く搾り出した声は非常に間抜けだったが、そんなことよりも今、何て。
トキの疑問符に、抱きしめる腕を緩め、まっすぐ視線を合わせた東方不敗が繰り返す。
「嘘だ。今日はエイプリルフールだろう? それで少し悪戯心を起こしたのだが……すまない。本当にすまなかった。」
「………ぁ、」
そういえば、今日は四月一日ではないか。朝、師範の稽古場で会った何人かに他愛ない嘘を吐かれたことを思い出し、すっかり失念していた自分が恥ずかしくなって顔に朱が上る。他の人の嘘はすぐに分かったというのに。
「は……は、ははは、はは…」
騙された自分が可笑しくてトキは笑った。その両目からは変わらず涙が溢れ続けている。「…トキ?」気遣う声に、額をその肩へ押し付けた。
嗚咽が漏れそうになって堪える。ぼろぼろと大粒の涙が彼の服に染みを作った。そこにきて漸くトキは自分が可笑しくて笑っているのではないことに気が付いた。
安堵感に、涙が止まらない。
「トキ、大丈夫か、トキ!?」
「もう……本当に、貴方という人は……!」
いつもいつも、自分を振り回して。此方の身にもなって欲しい。
「――……寿命が縮みましたよ、どうしてくれるんですか…!」
「すまん。」
「許しません…っ!」
強くしがみつく。困ったように背中で揺れる手に気が付いたけれど、気遣えるほどの余裕は今のトキに無かった。
涙に濡れた引き攣る声で、叫ぶ。
「抱きしめてください…ッ! 許して欲しいなら、強く……抱きしめてください、シュウジ…ッ」
「……、」
無言で、強く抱きしめられて息が詰まった。けれどそれは一瞬で、すぐに密着した胸から伝わる鼓動に身体の力が抜ける。最後の涙が頬を伝って落ちたけれど、トキは縋りつく腕の力を弱めなかった。
他愛ない嘘に心が壊れかけるほど自分はこの人を愛している。その事実はぞっとするほど怖ろしかったけれど、同時に何よりも幸福な事だとトキは思った。
他人より低い二人の体温も、溶け合えばこんなに暖かい。
「――愛しているぞ、トキ。」
「…………私もですよ、シュウジ。」
応えたトキは、恋人の腕の中で蕩けるように微笑んだのだった。
――――――トキ、WIN。
【AM11:38 北斗家母屋 居間にて。】
そわそわと、ホル・ホースは落ち着き無く時計へと目をやった。もうじき正午。今日は折角のエイプリルフールだというのに、ラオウ以外の家人が皆出払ってしまっているのもあり一度も嘘を吐けていない。
エイプリルフールというのはあまり知られていないが嘘をついてイイのは午前までで、午後にネタばらしをする、というルールがある。つまり嘘をつけるのはあと二十分程度というわけだ。
居間にはホル・ホースの他にラオウが座禅を組んで座っている。本人曰く胡坐をかいているだけらしいのだがぴんと伸ばされた背中には隙が無い。きっと自分の一挙一動なんて気配で手に取るようにわかるんだろうなぁと、ホル・ホースは感歎の息を吐き出した。
そんなことを考えている間にも時間は経過していて、落ち着き無く身体を揺らしたホル・ホースは、ふいに何か面白いことを思いつきました、という顔をラオウへ向けた。
「なぁなぁ、拳王の旦那ァ」
「どうした。」
「今さ、俺、旦那にすごく構って欲しくない。」
「……?」
にこにこと、楽しそうに言われてラオウの眉間に皺が寄る。だったら話しかければいいだろうと言おうとして今日が何の日かを思い出した。
ホル・ホースが身体を捻ってラオウに向き合い、上目遣いで言葉を続ける。
「旦那のこと見たくないし、旦那に見て欲しくない。旦那に触って欲しくもない。」
その意味を正確に把握して、ふ……と目元を緩めたラオウの手がホル・ホースの頬に触れた。嬉しさに双眸を眇めて擦り寄って、その太い指へ舌を伸ばす。微かに戸惑いを表し揺れた手を、舌を突き出し丁寧に舐め、口に含んでやわく歯を立てた。くちゅり、と、卑猥な水音が響く。
しばらくそうしていると、唐突にずるりと手を引っ込められて、行為に酔っていたホル・ホースは「ちぇ、」唇を突き出した。が、見上げるラオウの目に拒絶の色が無いのを確認すると甘ったるく呼びかける。
「旦那ぁ、」
四つん這いの姿勢でラオウへ近づき、組まれた膝へ手を添える。そこを支点に体重をかけて懐にもぐりこみ下から覗き込んで、ゆっくりと舌なめずりして見せた。
「キス、して欲しくないなー」
「…………まったく、貴様は、」
呆れたように小さく溜息を吐き出したラオウの手がホル・ホースの腕を掴む。そのまま引きずり上げられ乱暴に唇を合わせられて、しかも舌を伸ばせばすぐに応えてくれて。嬉しさにホル・ホースの頬が上気した。
「んぅ…んんっ…む……はぁ、旦那ぁ、もっと……じゃなかった、ええと…」
「フン、」
「んむぅ、」
要求を汲み取ってくれたラオウがまた口付けてきて、愉悦に濡れた双眸を眇める。挑発するようにわざと水音を立てて舌を絡めれば目の前の黒が微かに揺れた。
両腕を太い首に回し、密着した腰をこすりつけるようにしてゆっくり揺らす。咎めるような手が腰に触れたとき、だ。
ぼーん、ぼーん、ぼーん………
壁に掛けられた振り子時計が正午を知らせた。口付けたままちらりと視線をやって確認すればどちらからともなく唇が離れていって。「はぁ…」熱い息を吐き呼吸を整えたホル・ホースは、至近距離でラオウの目を覗き込むとにったり笑いながらとっておきに卑猥で甘い声を作って囁いた。
「……抱いてくれよ、ラオウの旦那ァ………もう、我慢できねぇよ。」
「――――いいだろう、このラオウを煽ったこと、後悔させてやる。」
覇王の凄味ある笑みにぞくぞくと背筋があわ立つ。それは勿論恐怖でなく、これから与えられる快感への期待ゆえに、だ。
首筋へ舌を這わされながら、ホル・ホースは淫靡にラオウの唾液にまみれた自身の唇を舐めたのだった。
――――ホル・ホース、WIN?
【AM14:23 某大会会場 選手控え室へ続く廊下にて。】
「承太郎」
抑揚の少ない低い呼び掛けに振り返ったその目が声の主を見とめて微かに微笑んだ。その穏やかな表情は彼を知る者たちが見れば目を疑うだろうほどで。
承太郎の一歩手前で立ち止まったケンシロウは、まっすぐその目を見つめた。
「どうした、ケンシロウ。」
「おまえの家が火事だぞ。」
「………………。」
棒読みの台詞に、返ってきたのは沈黙だ。探るようにケンシロウの目を見つめ……口を開く。
「…四月馬鹿か?」
「そうだ。」
あっさり頷かれて承太郎が苦笑を浮かべた。承太郎にこんな表情をさせられるのはケンシロウだけではないだろうか。そんな柔らかさのある微笑交じりの苦笑だった。
「今時それで騙される奴はいないだろう。他に思いつかなかったのか?」
「ロックは信じたが。」
信じたのか。
「エイプリルフールといえばコレだろう。それに、こういう時どういう嘘を吐けばいいのか思いつかないんだ。」
「さっきアデルには吐けていたじゃねぇか。」
「見ていたのか。あれは――」
笑み混じりの言葉に一時間ほど前を振り返る。それはこことは違う廊下でのことだ。
『やぁ、ケンシロウ。』
『アーデルハイドか、何か用か?』
『人に聞いたんだが、お兄さんが結婚するらしいね。おめでとう!』
『あぁその話か。耳が早いな。式には是非父親ともども来て欲しい。』
『………………え?』
『エイプリルフールだ。』
『!!!(しまった…!)』
「――アーデルハイドが先に仕掛けてくれたからな。」
「北斗神拳伝承者がカウンターか。」
「MUGEN故致し方ない。それに此処での俺は伝承者では無いぞ。」
「そうだった。ところで、ケンシロウ。」
「?」
「今晩、家に泊まらないか?」
なんでもない口調での唐突な誘いに、ケンシロウは僅かに眉間をひくつかせた。探るように承太郎の双眸を覗くけれど、返答を待つその眼差しに潜むのは獲物が飛び込んでくるのを待つ肉食獣の獰猛にして冷静な熱だけだ。
「……エイプリルフールか?」
「さぁな。」
見詰め合ったまま時間が流れる。臨戦時に似た緊張感と無音下の駆け引きが続き――フ、と、ケンシロウが微笑った。
「どちらが上だ?」
「どちらでも構わねぇよ。アンタが手に入るのなら、な。」
壮絶な雄の色香を纏わせて承太郎の腕がケンシロウを引き寄せ歩き出す。
「……だったら、じゃんけんでもするか。」抵抗することなく並んで歩き出したケンシロウの提案に、名案だと承太郎は微笑ったのだった。
――――NO WINNER(TIME UP)
END(一番バカップルは誰だ。)
流れ切ってすみません。今日もまた書けたので投稿。
エイプリルフールネタに滾ったんだ……休むんじゃなかったっけ私?
バルジャギで短め。
SS集みたくしようと思ったんだが時間が足りなかったんで個別にした。
予定としては師匠×トキ(執筆中)、ラオホル、承ケン承の北斗一家やるつもり。
皆、オラにネタを分けてくれ……!
248 :名無しさん@ビンキー:2010/03/27(土) 02:15:11 0
流れ切ってすみません>>195でエイプリルフールネタ上げたものだが次が出来たので投稿しとく。
>185さんのネタを使用させていただきました。無断で申し訳ない。師匠×トキ。切な甘?
ちなみに”東方不敗”は称号であって名前はマスター・アジアなわけだが、こっちのほうが違和感なかったので。
明日は流石に残業あるし休む……多分、きっと。
250 :名無しさん@ビンキー:2010/03/27(土) 03:29:03 0
>284ですもういっちょ書けたんで投稿。続けてすまん。エイプリルフールネタでラオホル。甘いです。
エロホルの動かしやすさは異常。
明日は流石に休むよ、うん。
322 :名無しさん@ビンキー:2010/03/28(日) 14:42:44 0
流れ切ってすみません。北斗一家でエイプリルフールネタ投稿してた者ですが完成したので投稿しにきました。
1,2,3も一緒に纏めて+α。改めましてバルジャギ、師匠トキ、ラオホル、承ケン承です。
本番なし。ほのぼ…の?
前SSは削除してもらえると助かります。保管庫にも此方を保存で。
承太郎とケンシロウはどっちが上でも萌える。
※エイプリルフールネタ。
※バルジャギ、師匠トキ、ラオホル、承ケン承
※仲良し北斗一家
※ホル・ホースが普通に北斗家に居候しています。
※ジャギとバルバトスが普通に同棲済み。
※キャラ掴めてない人もいるので偽者注意。
※甘々。つ【砂吐き袋】or【お塩】
※SS集。
その他諸々ひっくるめてどんと恋!な方のみ↓スクロール
【AM4:08 北斗家 裏庭の修行場にて。】
「兄者達、家が火事だぞ。」
「「……、は?」」
北斗神拳伝承者候補にあるまじき間抜けな声を兄二人から出させたのはケンシロウの意味不明な一言だ。棒読みにもほどがあるその言葉と、常の鉄面皮ながらもどこか愉しげな末弟にラオウとトキは思わず顔を見合わせた。
「それは……嘘か?」
「そうだ。」
「突然何だ、ケンシロウ。」
「今日はエイプリルフールだから、俺も嘘を吐いてみた。定番の嘘といえばこれだとジャギから聞いたのだが。」
「……成る程。」
確かに今日は四月一日で、所謂四月馬鹿とか万愚節と呼ばれる、親しいもの同士で嘘を吐きあう日だ。
納得した二人に満足したのか、はたまた嘘を吐いたのに満足したのか、ケンシロウはともあれ満足げな表情で二人に言った。
「それじゃあ鍛錬を始めようか、兄者。」
【AM7:34 ジャギ宅 リビングにて。】
朝食も片付けも終わり、特に予定も無く緩やかに過ぎていく時間。
シンクの前で水を飲んでいたジャギは、ふと壁にかかったカレンダーへ目をやるとあることに気が付いてヘルメットの下、双眸を細めた。
本日の日付は4月1日。
「おい、バルバトス!」
ゴキゲンな声で呼びかけつつソファで新聞を広げていたバルバトスの方へつま先を向ける。顔を上げたバルバトスはといえば、愉しげなジャギにまた何かくだらないことでも思いついたかと胡乱な視線をやった。
「何だ。」
「今日が何の日かは知っているな?」
「……、…………『エイプリルフール』。嘘を吐く日か。」
新聞の日付と三面記事のうち一つに目を走らせつつの返答だったが「そういうこった。」上機嫌なジャギは気にしない。
バルバトスの横まで歩み寄ったジャギは新聞を上から奪い取ると行儀悪くテーブルに腰掛け、足を高く組み猫背を丸めるとにやりと笑って言った。
「”好き”だぜ、バルバトス?」
常なら絶対に口が裂けても言わない言葉。しかしその正しい意味とジャギの思惑を察したバルバトスは――ゆっくりと口の端を持ち上げた。
「ほお?」
「テメェのその傲慢ちきな態度が”好き”だ。すぐに暴力に訴える短気なところも”好き”だし、ヒトの都合を考えねぇ手前勝手さには”惚れ惚れする”ぜ。」
ニヤニヤと、仮面の下で口元を歪めてジャギが言う。紡がれる言葉の意味を正しく理解しながらもバルバトスの機嫌は下がらない。悠然と口元に笑みを湛えながら、愉しげに歪んだジャギの双眸を見つめて喉を鳴らし哂った。
「それだけか?」
「まだまだあるぜ? そのいつでも余裕たっぷりな態度も”大好き”だしいつだって自分が優位だと思ってるような眼つきにゃ”うっとりする”よ。テメのルールを強要する押し付けがましいところなんざ、”最高にイかしていて”眩暈がするね。」
猫なで声で甘ったるく、一語一句はっきりと舌に乗せてジャギは双眸をうっとりと眇めた。吊り上げた口内に赤い舌が覗く。
その挑発的な態度が、表情が、動作が、どれほど目の前の男を煽っているのかも気づかずにジャギは笑っている。
「フン……それじゃあ次は俺の番だな。」
「あん?」
胡乱な声を出したジャギは、突然伸びてきた腕に腕を引かれ僅かに体勢を崩した。そのまま力任せにバルバトスと向き合うようにして膝立ちの格好で据わらされる。「ッおい!」不機嫌に怒鳴ったジャギは、瞬間ヘルメット越しに与えられたゴヅッという衝撃に目を瞑った。
「なんっ」文句と同時に瞼を開けば眼前に紫色があって息を呑む。獲物を嬲って弄ぶような眼差しに背筋が粟立った。
「好きだぜ、ジャギ。」
「――ッ!」
低く、それでいて甘く、囁かれて肩が震える。
「テメェのその曖昧な態度も、虚勢も、くだらねぇ自尊心も、好きだ。可愛くてしょうがねぇ。」
ジャギを真似てゆっくりとバルバトスが言葉を紡ぐ。
「ジャギ、テメェの声が好きだ。口付けた時に絡み付いてくる舌が好きだ。すぐ赤くなる耳も、傷だらけの身体も、噛み付きたくなるほど好きだ。」
「ちょッ、待て…ッ!」
予想していなかった空気の変化に気づき慌ててジャギが静止をかけるが黙殺される。
バルバトスが言葉を発する度に唇を吐息が撫ぜて、その淫靡さにひくりと喉が引き攣った。
「触れただけで震えるところも、抱きしめると戸惑うところも、名前を呼ぶとすぐに振り向くところも、最高だ。俺だけにだろう? そんな反応するのは。」
「それはッ、」
「目を逸らすなよ。ジャギ、テメェのその目に見られるのが一番好きなんだぜ、俺は。」
「〜〜ッ!!!」
羞恥心と、それ以外のもので身体が小刻みに震える。教え込まれた雄の匂いに中心へ熱が集まるのを自覚してジャギは泣きたくなった。
睦言が嘘かどうかなんて、こんな目をされたら嫌でもわかってしまう。
「お、俺はッ!嘘を言ったんだぞ!? 今日は、四月馬鹿の日で…!」
「だから何だ? 貴様は嘘が大嫌い…なんだろう?」
「ばッ、そ、そういう話じゃねぇッ!」
「関係ねぇなァ、俺は自分のやりたいようにやる。いつだって、な。」
「――畜生ッ…!!」
噛み潰すような敗北宣言に、くつりと喉を鳴らしたバルバトスの手が腰を撫で、上着の中へ上っていった。
当然のことながら、今は朝だという突込みなどバルバトスには不要である。
――――――バルバトス、WIN。
【AM10:12 東方不敗宅 縁側にて。】
「今度、結婚することになった。」
東方不敗……シュウジ・クロスの発した言葉に、ピシリ、と、音を立てて世界が凍りついた。
頭の中が真っ白になったトキは横で彼と同じように庭へ足を投げ出し縁側に腰掛ける恋人を振り向いたままの表情で十数秒見つめ……ヒュッと、肺が酸素を求めて思考と共に止まっていた呼吸を再開した。
ぱちぱちと、二度瞬きをする。まだ思考は回復していない。
「(今……この人は何と言った?)」
自問すれば脳内で冒頭の言葉が再生されて、それでもまだ意味が理解できなかった。
「(けっこん……そう、けっこんすると言った。けっこんとは、何だ。)」
否、本当は理解しているのだ。その言葉を聴いたその瞬間に、意味など。だからこそ、心は彼の言葉を理解することを拒んでいる。
回らない思考に、とにかく何か言わなければと気ばかりが急くけれど言葉は浮かばず、トキは結局困ったように微笑み首を傾げた。
それをどう解釈したのか、東方不敗がもう一度口を開く。
「今度、結婚することになったのだ。」
「………………は、」
繰り返された言葉に漸く麻痺していた思考回路が動き出す。結婚することになった、という事は相手は勿論自分ではなく、つまりこれは別れ話というものか。
この人に二度と触れられなくなる。理解した瞬間、目の前が真っ暗になった。
「……ぁ…………そう、ですか。」
戦慄く唇が力無い音を吐き出す。それは言葉ではない。トキは今、何も考えていなかった。
酷い絶望感に五官が遠のく。指先が震えていることにさえトキは気が付かない。焦点の定まらない瞳で、それでも微笑を作り音を発っした。
「それは、お……おめでとう…ご、ざいます。式には、ぜひ……ッッ」
唐突に、胸が詰まった。酷い痛みに呼吸が出来なくなる。全身の血が逆流するような激しい感情の波が押し寄せて両目から涙が溢れ出た。
怒りと嘆きと誰とも分からない相手への憎悪が混ざり暴れる。なんとか一呼吸だけ息を吸えば、自分は愛する人の幸せさえ願えないのかと自己嫌悪に吐き気がした。
「すみ…ま…せ、ん…か、顔を、洗って…!」
「トキ!」
片手で顔を隠し、立ち上がろうとした腕を掴まれた。身体が傾き、短い浮遊感の後、何かに包まれて目を瞬く。三度目で、自分が今東方不敗に抱きしめられているのだと気づいて目を瞠った。
「……すまん。」
「そんな…っ、謝らないで下さい、私は、今まで……本当に幸せで、」
「違う、違うんだ。……嘘なんだ。」
「…………、…………………………………………は…?」
長い、長い沈黙の後に漸く搾り出した声は非常に間抜けだったが、そんなことよりも今、何て。
トキの疑問符に、抱きしめる腕を緩め、まっすぐ視線を合わせた東方不敗が繰り返す。
「嘘だ。今日はエイプリルフールだろう? それで少し悪戯心を起こしたのだが……すまない。本当にすまなかった。」
「………ぁ、」
そういえば、今日は四月一日ではないか。朝、師範の稽古場で会った何人かに他愛ない嘘を吐かれたことを思い出し、すっかり失念していた自分が恥ずかしくなって顔に朱が上る。他の人の嘘はすぐに分かったというのに。
「は……は、ははは、はは…」
騙された自分が可笑しくてトキは笑った。その両目からは変わらず涙が溢れ続けている。「…トキ?」気遣う声に、額をその肩へ押し付けた。
嗚咽が漏れそうになって堪える。ぼろぼろと大粒の涙が彼の服に染みを作った。そこにきて漸くトキは自分が可笑しくて笑っているのではないことに気が付いた。
安堵感に、涙が止まらない。
「トキ、大丈夫か、トキ!?」
「もう……本当に、貴方という人は……!」
いつもいつも、自分を振り回して。此方の身にもなって欲しい。
「――……寿命が縮みましたよ、どうしてくれるんですか…!」
「すまん。」
「許しません…っ!」
強くしがみつく。困ったように背中で揺れる手に気が付いたけれど、気遣えるほどの余裕は今のトキに無かった。
涙に濡れた引き攣る声で、叫ぶ。
「抱きしめてください…ッ! 許して欲しいなら、強く……抱きしめてください、シュウジ…ッ」
「……、」
無言で、強く抱きしめられて息が詰まった。けれどそれは一瞬で、すぐに密着した胸から伝わる鼓動に身体の力が抜ける。最後の涙が頬を伝って落ちたけれど、トキは縋りつく腕の力を弱めなかった。
他愛ない嘘に心が壊れかけるほど自分はこの人を愛している。その事実はぞっとするほど怖ろしかったけれど、同時に何よりも幸福な事だとトキは思った。
他人より低い二人の体温も、溶け合えばこんなに暖かい。
「――愛しているぞ、トキ。」
「…………私もですよ、シュウジ。」
応えたトキは、恋人の腕の中で蕩けるように微笑んだのだった。
――――――トキ、WIN。
【AM11:38 北斗家母屋 居間にて。】
そわそわと、ホル・ホースは落ち着き無く時計へと目をやった。もうじき正午。今日は折角のエイプリルフールだというのに、ラオウ以外の家人が皆出払ってしまっているのもあり一度も嘘を吐けていない。
エイプリルフールというのはあまり知られていないが嘘をついてイイのは午前までで、午後にネタばらしをする、というルールがある。つまり嘘をつけるのはあと二十分程度というわけだ。
居間にはホル・ホースの他にラオウが座禅を組んで座っている。本人曰く胡坐をかいているだけらしいのだがぴんと伸ばされた背中には隙が無い。きっと自分の一挙一動なんて気配で手に取るようにわかるんだろうなぁと、ホル・ホースは感歎の息を吐き出した。
そんなことを考えている間にも時間は経過していて、落ち着き無く身体を揺らしたホル・ホースは、ふいに何か面白いことを思いつきました、という顔をラオウへ向けた。
「なぁなぁ、拳王の旦那ァ」
「どうした。」
「今さ、俺、旦那にすごく構って欲しくない。」
「……?」
にこにこと、楽しそうに言われてラオウの眉間に皺が寄る。だったら話しかければいいだろうと言おうとして今日が何の日かを思い出した。
ホル・ホースが身体を捻ってラオウに向き合い、上目遣いで言葉を続ける。
「旦那のこと見たくないし、旦那に見て欲しくない。旦那に触って欲しくもない。」
その意味を正確に把握して、ふ……と目元を緩めたラオウの手がホル・ホースの頬に触れた。嬉しさに双眸を眇めて擦り寄って、その太い指へ舌を伸ばす。微かに戸惑いを表し揺れた手を、舌を突き出し丁寧に舐め、口に含んでやわく歯を立てた。くちゅり、と、卑猥な水音が響く。
しばらくそうしていると、唐突にずるりと手を引っ込められて、行為に酔っていたホル・ホースは「ちぇ、」唇を突き出した。が、見上げるラオウの目に拒絶の色が無いのを確認すると甘ったるく呼びかける。
「旦那ぁ、」
四つん這いの姿勢でラオウへ近づき、組まれた膝へ手を添える。そこを支点に体重をかけて懐にもぐりこみ下から覗き込んで、ゆっくりと舌なめずりして見せた。
「キス、して欲しくないなー」
「…………まったく、貴様は、」
呆れたように小さく溜息を吐き出したラオウの手がホル・ホースの腕を掴む。そのまま引きずり上げられ乱暴に唇を合わせられて、しかも舌を伸ばせばすぐに応えてくれて。嬉しさにホル・ホースの頬が上気した。
「んぅ…んんっ…む……はぁ、旦那ぁ、もっと……じゃなかった、ええと…」
「フン、」
「んむぅ、」
要求を汲み取ってくれたラオウがまた口付けてきて、愉悦に濡れた双眸を眇める。挑発するようにわざと水音を立てて舌を絡めれば目の前の黒が微かに揺れた。
両腕を太い首に回し、密着した腰をこすりつけるようにしてゆっくり揺らす。咎めるような手が腰に触れたとき、だ。
ぼーん、ぼーん、ぼーん………
壁に掛けられた振り子時計が正午を知らせた。口付けたままちらりと視線をやって確認すればどちらからともなく唇が離れていって。「はぁ…」熱い息を吐き呼吸を整えたホル・ホースは、至近距離でラオウの目を覗き込むとにったり笑いながらとっておきに卑猥で甘い声を作って囁いた。
「……抱いてくれよ、ラオウの旦那ァ………もう、我慢できねぇよ。」
「――――いいだろう、このラオウを煽ったこと、後悔させてやる。」
覇王の凄味ある笑みにぞくぞくと背筋があわ立つ。それは勿論恐怖でなく、これから与えられる快感への期待ゆえに、だ。
首筋へ舌を這わされながら、ホル・ホースは淫靡にラオウの唾液にまみれた自身の唇を舐めたのだった。
――――ホル・ホース、WIN?
【AM14:23 某大会会場 選手控え室へ続く廊下にて。】
「承太郎」
抑揚の少ない低い呼び掛けに振り返ったその目が声の主を見とめて微かに微笑んだ。その穏やかな表情は彼を知る者たちが見れば目を疑うだろうほどで。
承太郎の一歩手前で立ち止まったケンシロウは、まっすぐその目を見つめた。
「どうした、ケンシロウ。」
「おまえの家が火事だぞ。」
「………………。」
棒読みの台詞に、返ってきたのは沈黙だ。探るようにケンシロウの目を見つめ……口を開く。
「…四月馬鹿か?」
「そうだ。」
あっさり頷かれて承太郎が苦笑を浮かべた。承太郎にこんな表情をさせられるのはケンシロウだけではないだろうか。そんな柔らかさのある微笑交じりの苦笑だった。
「今時それで騙される奴はいないだろう。他に思いつかなかったのか?」
「ロックは信じたが。」
信じたのか。
「エイプリルフールといえばコレだろう。それに、こういう時どういう嘘を吐けばいいのか思いつかないんだ。」
「さっきアデルには吐けていたじゃねぇか。」
「見ていたのか。あれは――」
笑み混じりの言葉に一時間ほど前を振り返る。それはこことは違う廊下でのことだ。
『やぁ、ケンシロウ。』
『アーデルハイドか、何か用か?』
『人に聞いたんだが、お兄さんが結婚するらしいね。おめでとう!』
『あぁその話か。耳が早いな。式には是非父親ともども来て欲しい。』
『………………え?』
『エイプリルフールだ。』
『!!!(しまった…!)』
「――アーデルハイドが先に仕掛けてくれたからな。」
「北斗神拳伝承者がカウンターか。」
「MUGEN故致し方ない。それに此処での俺は伝承者では無いぞ。」
「そうだった。ところで、ケンシロウ。」
「?」
「今晩、家に泊まらないか?」
なんでもない口調での唐突な誘いに、ケンシロウは僅かに眉間をひくつかせた。探るように承太郎の双眸を覗くけれど、返答を待つその眼差しに潜むのは獲物が飛び込んでくるのを待つ肉食獣の獰猛にして冷静な熱だけだ。
「……エイプリルフールか?」
「さぁな。」
見詰め合ったまま時間が流れる。臨戦時に似た緊張感と無音下の駆け引きが続き――フ、と、ケンシロウが微笑った。
「どちらが上だ?」
「どちらでも構わねぇよ。アンタが手に入るのなら、な。」
壮絶な雄の色香を纏わせて承太郎の腕がケンシロウを引き寄せ歩き出す。
「……だったら、じゃんけんでもするか。」抵抗することなく並んで歩き出したケンシロウの提案に、名案だと承太郎は微笑ったのだった。
――――NO WINNER(TIME UP)
END(一番バカップルは誰だ。)
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