607 :名無しさん@ビンキー:2011/02/27(日) 23:50:18.56 0
流れを切って失礼します。
いろんなキャラの誕生日祝い作品を読みながら、誕生日不明のキャラじゃお祝いが出来ない悲しみをぶつけてみました。

URL: ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/209630
タイトル: sora.1
PASS: mugen
カップリング(登場キャラ): 七夜×ネームレス、白レン
性描写の有無: 全年齢
内容注意: ネームレス誕生祝いもどき。女の子注意、原作カプ(七夜と白レン)が好きな方にはお勧めできません。

作品年齢ネタを見ながら「誕生日が無いならゲームの発売日で祝えばいいじゃない」と思いついた代物です。
間に合わなくてごめんよ名無し…





※七夜×ネームレス(+白レン)です。
 原作設定の半端な取り込み、捏造設定、女の子注意。
 二人の仲は白レン公認です。

ハッピィィバァァースデェイ!!(某会長のノリで)








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 ――初めて自分の足で地上を歩いた日を覚えているか
   初めて本物の青空を見上げた日を覚えているか
   初めて自然の重力を、厚く濃密な大気の圧力を、その身に受けた日を覚えているか
   俺は覚えている、決して忘れない――



***



 ネスツでは構成員の誕生日を組織ぐるみで祝う事は無い。

 公にはされていないが、秘密結社ネスツがMUGEN入りする際、何らかの要因で組織の蓄積してきたデータベースの多くが紛失、膨大な情報が破壊されたり行方不明となった。
 これは組織にとって大きな痛手であり、現在でも復旧作業が行われている。半分程度のデータは取り戻せたのだが、復元不可能なファイルも相当数に上ると見られる。
 データベース紛失の影響は組織全体の運営から、些細な事にまで影響を及ぼした。
 失われたファイルの中には、当然、構成員の個人情報やクローン体に関する実験観察のレポートも含まれる。
 つまり、記憶を操作された戦闘員のパーソナルデータ――本名や出身地、生年月日が解らなくなっているという事だ。
 クローン体の戦闘員についても、正確な活動開始日とその期間が不明となったまま。


 「――要するに、誕生日が解らないままの人間が多いから祝えないんだ」
 炬燵の向かい側、猫のように背を丸めている七夜に向かって、ネームレスは言った。七夜の傍らでは白レンが丸くなってうとうとしている。
 七夜の住むアパートの部屋は四畳半、炬燵が床の半分を占めてしまうほど狭い。
 ここ数日は春のような陽気が続いていたが、一転今日は雪模様だ。実のところ、ネームレスは先日七夜と約束をして七夜宅の炬燵を仕舞う手伝いに呼ばれていたはずなのだが、結局温かいお茶と雑談をお供に炬燵で温まっている。暖房を仕舞える日はまだ先になるだろう。
 「ふーん?一応、お前みたいなのに配慮はされてるんだな」と七夜は返事をする。
 「一応、な。こちらではクローン体の戦闘員もひとりの人間として真っ当な扱いを受けてる」ネームレスはどことなく遠い所を見ながら言葉を続ける。
 「少なくとも俺は、『誕生日が解らず祝えない者が気の毒だから』なんて、別にそんなことまで配慮する必要は無いと思うんだが…」とネームレスは溜息を吐いた。
 「ところで七夜」
 「ん?」
 「どうして唐突にそんな話題なんか振ってきたんだ。俺に誕生日が無いのは知ってるだろう?」
 「…そうだな、なんとなく、かな。最近は周りで誕生祝いが多かったような気がしてさ。ネスツじゃ季節の祭日は簡単にしか祝ってないが、通過儀礼はどうなのかと思ってね」
 「そうか。まあ、今話した通りだ。解る者で祝いたければ個人的に済ませてる」
 「寂しいもんだな…デリカシーの無い真似をして悪かったよ、名無し」
 「いや…気にするまでもないさ。それに…」
 「それに?」
 「促成培養の開始日や終了日なんか、俺にとって何の意味も無い。それよりずっと大切な日を覚えているから」
 そう言って、ネームレスは七夜にふと笑いかけた。
 「実はさ、七夜…。ダイモス研究所に保管されていたデータは、かなり前に復元が完了しているんだ」
 「え?それなら…」
 七夜は背筋を伸ばして身を乗り出した。ネームレスは続けて話をする。
 「プロジェクトЖのレポートはほぼ完ぺきに残されていた。俺個人に関するデータも見つかった。ゼロは俺に"生年月日"と"実年齢"を伝えてきた。でも、俺はそれを自分の歳や誕生日だとは認めないし、思いたくない」
 ネームレスはそこで一度言葉を切り、改めて七夜と視線を合わせた。
 「七夜、初めて空を見上げた日を覚えてるか?」
 「空…?」
 問いかけられて、七夜は自分の記憶を探ってみる。覚えている限り最も古い空の記憶は、やはり例の『きれいなつき』だ。七夜は首を振った。
 「俺は覚えているんだ。2年も前の出来事だけど、明確に思い出せる」
 「ほんの2年前、ではなくて?」
 いつの間にか白レンが目を覚まし、体を伸ばしていた。
 「いつから起きてんたんだ」と七夜は言った。気を削がれて少し不機嫌な様子だ。
 「初めから眠り呆けてなんていないわ。このまま狸寝入りを続けてたら盗み聞きみたいでいい気分はしなかったの」
 でも、と白レンはネームレスを振り返った。
 「内緒話にお邪魔なら私は席を外しましょうか、ジョン=ドゥ?」
 ネームレスはちょっと困った様子で前髪を掻き上げた。
 「いや、構わない。秘密にしておくような事でもないんだ。いままで誰にも話す機会が無かっただけで」
 七夜は白レンを軽く睨んでいる。
 「なあ、こいつに向かって『ほんの2年』は無いだろう。お前とは2年間の価値が違うんだから」 
 「あら、そうだったわ。ごめんなさい」
 白レンはネームレスにちょこんと頭を下げた。頭のリボンが大きく揺れた。気にしない、とネームレスは片手を上げて示し、再び口を開く。
 「ええと…俺にとって、初めて空…地球の青空を見上げた日は、俺が初めて地球に『帰還』した日なんだ」
 ネームレスの脳裏に、一つの情景がよみがえる。


 輸送船が着陸した、海の側
 ハッチが開く
 流れ込む空気の塊
 未知のにおいを肺いっぱいに吸い込んで
 咽返った

 「火星の重力は地球の38%、大気圧は170分の1しかない。研究室で同じ重力と圧力は体験していたけれど、初めて地球の自然環境にさらされた時は、凄まじい力で地面に押しつけられるような気がした。――恐ろしくて、膝が砕けそうで、これ以上立っていられないと思った時」
 
 強い風が吹いている
 無造作に切られた髪がいっそう乱れて
 もどかしさに首を振った
 その先には空
 雲の帯の上に深い青色が
 
 「………あの時の感情を言葉で言い表すのは難しいが…。『驚いた』かな。一瞬驚いた後には、もう恐怖が消えていた。
 そして"イゾルデ"を掲げて、その色と雲の色が同じだと確かめた」

 同じ水のはずなのに
 海は青く
 雲は白い
 水と空気は違うのに
 海は青く
 空も青い

 「生まれて初めて訪れた場所だったはずなのに、俺は自分が地球に『帰還した』と確信したんだ。あの瞬間が、俺が地球で経験した中で最も印象的な出来事だった。だから、俺はその日を自分の記念日にしたいと思うんだ」

 そこまで話してから、ネームレスはちょっと恥ずかしそうに俯いた。
 「下らないだろう?」
 「いいや…」と七夜は首を振る。
 「素敵じゃないの」と白レンは微笑んだ。
 「それで、その記念日はいつ?」
 白レンが訪ねると、ネームレスはすぐに答えた。
 「2月26日」
 それを聞くなり、七夜はえっ!と声を上げた。
 「もう過ぎてるじゃないか…どうしてもっと早く教えてくれなかったんだ…」
 そうして、七夜は残念そうに頭を抱えてしまった。
 「すまない七夜、俺個人が勝手に特別な日だと思っているだけだから、特に言うまでも無いと…」
 「有る!大有りだったよ!この馬鹿名無し」
 七夜はそう言ってから、隣の白レンにちょっと目をやった。彼女はその視線を受け、ツンと顔を背け、炬燵から這い出した。
 「やっぱり私はお邪魔猫のようね。お望み通り退散するわ」
 七夜は心底済まなそうに、白レンに向かって手を合わせた。
 「御免、2分でいいから」
 「ご心配なく、ご主人様。しばらく遊んでくるつもりよ」
 襖に手を掛け、白い少女が少年二人を振り返った。
 「ごゆっくり」
 白レンはふわりと微笑んで、踊るような足取りで四畳半を後にした。

 玄関扉の蝶つがいが軋む音を聞きながら、七夜は大きなため息を吐いた。
 「後で絞られるかな…」
 「悪夢が怖いならわざわざ追い出さなくてもよかっただろう」
 ネームレスは少々呆れながら言った。
 「いいや。夢で地獄八景を渡らされようと、俺にはこっちが大切さ」
 そう言って、七夜は炬燵を出て、ネームレスの横に座り、彼の肩を抱いた。ネームレスは少々戸惑いながらも、自然と体を七夜にゆだねた。
 「大切な親友かつ恋人の記念日にお祝いの言葉一つも贈れないようじゃ、立つ瀬が無い」
 「またそんな恥ずかしい事を…」とネームレスは顔を赤くした。
 「いつもの事だろ」と七夜は悪びれず微笑んだ。
 七夜の掌がネームレスの頬を包む。ネームレスはその掌を冷たいと感じた。きっと自分が上せているせいだと考えた。
 「…遅くなったけど、おめでとう、ネームレス。今この時間と空間をお前と共有できて、嬉しく思う」
 七夜の言葉に、俺も、と返事をしようとした、ネームレスの唇を七夜のそれがふさいだ。



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白レン「二人とも夢の中で爆発させちゃおうかしら」

おそまつさまでした。

 

このページへのコメント

蛇足ですが、2年前(2009年)の2月26日はPS2版KlOlFl0l2lUlMの発売日でした。
あと、白レンの人気に嫉妬。

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Posted by 作者 2011年03月01日(火) 11:11:57 返信

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