日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




2004年に1番艦が就役した中国最新鋭のミサイル駆逐艦で、中国初の本格的長距離エリア防空艦である。本級には052C型防空駆逐艦のタイプ名が付与された。NATOコードはLuyangII class(ルヤンII型/旅洋II型)である。建造されたのは052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)と同じく上海の江南造船廠で、主設計者は052B型駆逐艦の設計も担当した第701研究所の朱英富[6]。第一バッチの二隻が2005年に就役し、それから少し時を経て第二バッチの四隻が2013年から2015年にかけて上海近海の長興島に建造された上海江南長興造船廠で建造されて中国海軍に引き渡された[6]。

中国海軍では1990年代に052型駆逐艦に続く052B型エリア・ディフェンス防空駆逐艦のスタディを開始した。このスタディの中で、新型駆逐艦はガスタービン機関搭載の排水量4000〜6000tクラスの艦として、新開発のHQ-9艦対空ミサイルを主兵装とし、管制用のフェーズド・アレイ・レーダーを実装する艦とすることが考えられた[6]。しかし、HQ-9の実用化までにはかなりの時間を要することが確実で、052B型の建造には間に合わないと判断され、1995年に、052B型にはロシアから調達した9M38M2中距離対空ミサイル「シュチーリ1」やロシア製三次元対空レーダーMR-750MAなどを搭載して早期の戦力化を目指し、HQ-9は実用化を待って052B型に続く052C型駆逐艦に搭載することが決定された。052B型と052C型が並行建造されたことについて、当初は「対潜と防空といった任務の分担」、「ハイ・ローミックス」などの意図ではないかと推測されたが、中国海軍としては早期に実用化できる052B型により海軍の課題であったエリア・ディフェンス艦欠如という状況を解消し、それから本命の広域防空艦として052C型を就役させるという二段構えの建造方針を採用したのであった[6]。

【性能】
052C型最大の特徴は艦橋構造物の四周に中国国産のH/LJG-346型(以下、346型と表記)アクティブ・フェーズド・アレイ方式の多機能レーダーを装備している事で、その外観から「中国版イージス艦/中華イージス」などと呼ばれる事もある。このレーダーの開発に当たってはウクライナの企業が協力したと言われており、第14研究所で開発され970型試験艦でテストが実施された。052C型の第一次建造艦が進水した2003年時点では同レーダーはまだ洋上試験中であり完成には至っていなかった[6]。中国海軍の兵器開発の規定では未完成の兵器システムを搭載することは想定されていなかったが、052C型については346型の開発完了を待たずに建造に着手したという点で特異な事例である。これは、第三次台湾海峡危機など緊迫する国際情勢において052C型の早期の実用化が強く望まれたがゆえの特例措置であった[6]。346型の開発は052C型第一次建造艦2隻が就役した2005年の時点では完了しておらず、引き続き洋上での運用試験と発生した初期不良の改善作業が重ねられ、最終的な開発完了は2007年まで要することになる[6]。開発完了後も戦闘能力獲得を目指したハード・ソフト面での改良が続けられ、2011年には346型のデータ処理と信号データ算出方法などの一連の問題の解決を見て、完全な運用能力を獲得した[13]。

346型はアクティブ電子走査アレイ(英: active electronically scanned array, AESA)式のレーダーで、052C型の艦橋構造物に合計4枚のアクティブ・フェーズド・アレイ・アンテナを配置して全周捜索能力を確保する。複数目標を同時に捜索・探知・追尾すると共に、HQ-9艦対空ミサイルの中間誘導も担当する多機能レーダーである。ただし、開発時期の技術的、設計、ソフトウェアの成熟段階の問題に起因する、フェーズド・アレイ・レーダーを構成する送受信モジュール(T/Rモジュール)の素材面での限界から、346型の初期の最大探知距離は300km台に留まっており、これは、イージスシステムを採用するアメリカのミサイル駆逐艦アーレイ・バーク級が装備するAN/SPY-1Dレーダーの探知距離約500kmに対して遜色のあるものにとどまっていた[13]。346型はT/Rモジュールの冷却にウクライナから技術提供を受けて開発した空冷式冷却システムを採用した。346型のフェーズド・アレイ・アンテナは湾曲したレーダーカバーで覆われており、その四隅から冷却用の空気を流し込んで配置されたT/Rモジュールを冷やす仕組みだが、このシステムではレーダーカバーが破損した場合、たとえ大半のT/Rモジュールが破壊を免れたとしても、冷却機能がダウンするのでT/Rモジュールの過熱によりレーダーが使えなくなる問題があった[6]。さらに、レドーム内の空気の循環が一様でないことで冷却効率に差が生じることもT/Rモジュールの故障に繋がる問題であった。レドームを湾曲させているのはT/Rモジュールが最も多い部分の冷却効率を上げるための工夫であるが、それでもこの問題の完全な解決には至らなかった。理論上は高出力にすればレーダーの探知距離は伸びるのだが、その分だけ高い冷却能力が求められるので、冷却能力の低さが探知距離の足かせとなってしまうことになる。この問題は、冷却システムの変更が必要との結論に達し、052C型の発展型である052D型駆逐艦は、フェーズド・アレイ・レーダーの冷却方法に液冷式を採用することになる[6]。このほか、346型はレーダー波の調整間隔が短く頻繁なアンテナ調整を要する、データ処理ソフトウェアのバグ、レーダー波の干渉問題、グラウンドクラッターの処理など、中国第一世代の艦載アクティブ・フェーズド・アレイ・レーダーとして様々な問題に直面し、それを解決していくことを余儀なくされた[13]。

346型は確かに高い能力を有する対空レーダーであったが、運用には相応の電力を消費し、連続運用すると過熱問題やコンポーネントのトラブルの発生確率が高まるなどの問題もあった。そのため、長時間の対空警戒では、艦中央部に搭載された八木アンテナ式の517Bもしくは517HA型2次元対空レーダー(NATOコード:Knife Rest/ナイフレスト)を用いる。このレーダーについては、資料によって名称が異なる。[6]では517B、[13]では517HAが使われている。517B/517HA型は旧ソ連製のP-8長距離対空レーダー(A-band)に由来する対空警戒レーダーであり、1986年に制式化されたH/LJQ-517型、その改良型のH/LJQ-517A型に続いて、2000年代初期に登場したのがH/LJQ-517B型となる。

517B型の特筆すべき特徴は、その省電力であり、380ボルトの電源で5kW、220ボルトだと3kWを発揮可能で、これは家庭用給湯器並みのエネルギー消費である[6]。操作要員は一名で、レーダーの作動には通常5分、緊急の場合は3分で立ち上げ可能で、連続24時間の対空警戒任務をこなすことが出来る[6]。517B型の最大探知距離は300kmを超え、500を超える目標の追尾が可能[6]。ただし、メートル波を用いる517B型レーダーは悪天候下の影響は少なく探知距離が長いというメリットがあるが、探知精度に劣る問題があり[6]、さらに目標の方位と距離は探知できるが高度は算出できない点も無視できない[13]。ちょうど、346型と517B型は相互に補い合う関係にあり、平時や長時間の対空警戒は517B型が担当し、侵攻作戦や脅威度の高い海域では346型を用いるという使い分けが成されている[6]。346型のレーダーを常に作動させていると、他国に同レーダーの特性を知られることに繋がるので、電子戦を考えても517B型との併用には効果がある[13]。

【戦闘システム】
米海軍が世界に先駆けて実用化した高い目標同時迎撃能力を有するイージス・システムの肝は、対空戦、対潜戦、対艦戦などあらゆる戦闘において、自動的に脅威度を判定し自艦のみならずデータリンクを通じて僚艦を含めた最適の攻撃方法を下す統合戦闘システムの存在である。052C型の戦闘システムも、イージス・システムの能力に匹敵するか否かは不明だが、中国海軍の水上戦闘艦艇としては最も高い性能を有する統合的戦闘システムを採用している。

052C型は346型レーダーの優れた目標探知・追尾能力を生かすために、強力な同時処理能力を備えた戦闘システムを採用した[6]。052C型が搭載するZKJ-5作戦指揮システムは2000年代に配備を開始した当時最新の戦闘システムであり、設計において分散システム、モジュール概念が導入されている[6]。さらに、就役後に艦隊の指揮を行う「海上編隊戦役/戦術型自動化指揮システム一型(H/ZBJ-1)」が追加搭載された[6]。各装置は光ファイバー回線で接続されており、データパスはアメリカのMIL-STD-1553Bに準拠した中国の国家標準GJB289A規格で、イーサネット構成のデータ転送速度は100Mbps[6][10]。光ファイバー回線の採用により、ケーブル重量は従来艦の7tから1.5tにまで減少しているとされる[9]。H/ZBJ-1は、対水上/対空レーダー、対潜用ソナーや電子戦機器、敵味方識別装置などと連接し、各種センサーから得られた情報を収集・統合して所定のディスプレイに表示[6]。必要に応じてデータリンク機能を利用して、僚艦や僚機、地上基地などと情報交換を実施[6]。CIC担当士官は、これらの情報を元にして、各兵器システムを指揮・管制する。H/ZBJ-1はその高い処理能力を利用して、自艦のみならず、艦隊の戦術的管制を実施することが目されている[6]。現在艦艇の標準装備の一つであるデータリンクシステムについては、西側のリンク16に相当する中国第二世代のデータリンクであるJYG10Gが採用されている[9]。JYG10Gはリンク16と同様に海軍のみならず、陸・海・空・ロケット軍といった各軍共通のリンクであり、個艦・艦対艦だけではなく、艦対空、対潜、対基地のデータ交換、共有などが可能となっている[9]。

【HQ-9対空ミサイルシステム】
HQ-9A長距離対空ミサイルは中国独自開発の長距離SAM(surface‐to-air missile:対空ミサイル)システムで、中国海軍初のVLS(Vertical Launching System:垂直発射システム)型SAMである。中国は湾岸戦争(1991年)での米軍による激しい空爆などの戦闘状況から自国の防空システムの限界を認識し、新しい防空ミサイルシステムの開発に着手した。この結果生まれたHQ-9はロシアから購入したS-300P対空ミサイル(NATOコード:SA-N-6 Grumble/グランブル)及びアメリカのパトリオット対空ミサイルの技術を参考にしたと言われている。HQ-9AはHQ-9をベースに対艦ミサイル迎撃能力の向上などの改良を加えたミサイルである。全長6.51mもしくは6.8m、ミサイル重量1,300kg、弾頭重量180kg、射程6〜125km、射高25〜18,000m、最大速度マッハ6.0、最大起動性能25G[6]。

HQ-9A用のH/AJK03型VLSは発射セル6基を円形に配置して組み合わせた形になっており、052C型は前甲板に6基、後部のヘリコプター格納庫の艦首側に2基装備している[6]。このミサイルは発射機(セル)下部から高圧ガスで打ち出され、高度18〜20mに達した後にロケット・モーターを点火するというコールドガス発射方式を採用している。コールドガス発射方式はロシアやフランスで採用されており、利点としてロケット・モーターの点火が発射機外で行われるため船体側が安全であるほか、発射機内でのブラストの処理を行う必要がないためVLSの構造の簡略化・軽量化が可能となる。H/AJK03型VLSは、外観からはロシアのS-300FM長距離対空ミサイル・システムの8連装回転式VLSと似ているが、その内実は相当異なっている。S-300Fは回転式VLSで、リボルバー式に並んだVLSが回転して一箇所の開口部から打ち出されるが、H/AJK03型VLSでは6セルのランチャーは固定式でそれぞれの場所から打ち出される点で根本的に異なる手法となっている[6]。なお、発射時にはVLSが動かないH/AJK03型であるが、再装填作業の際には特定の開口部を再装填口として、VLSを回転させながら装填用クレーンを用いてミサイルランチャーを装填していく[6]。HQ-9のVLSは舷側側に5度傾いて搭載されている[6]。これはコールドローンチで打ち上げられたミサイルが点火に失敗した場合、真下に落ちると艦体に無視し得ない損害が生じることを割けるための措置である[6]。

H/AJK03型VLSはHQ-9以外のミサイルの搭載は想定しておらず、搭載兵装の多様性という点では問題のあるVLSであった。その後、中国海軍ではアメリカのMk41 VLSの様な多種多様なミサイルの搭載を可能とするVLSの開発にシフトして、052D型駆逐艦に採用される新型多用途VLS 「GJB 5860-2006」の採用にこぎつける。

【対艦ミサイル、火砲、電子戦装備、対潜兵装】
052C型は新開発のYJ-62対艦ミサイル(C-602)4連装発射機2基をヘリコプター格納庫直前に搭載している。YJ-62は全長6.1m(ブースター付7.0m)、重量1,140kg(ブースター付1,350kg)、弾頭重量300kg(HE)。推進装置はターボファンもしくはターボジェット。最大速度はマッハ0.9、最大射程280kmと言われている(300km以上という説も)。巡航飛行時の飛行高度は30mで、攻撃時には探知を避けるため高度7mの低空飛行を行う。誘導方式はGPS+慣性誘導方式で、終末誘導にはアクティブ・レーダー誘導方式が採用されている。YJ−62はこれまでの中国の対艦ミサイルが角型発射機(ランチャー)を採用していたのとは異なり、円筒形の巨大な発射機に搭載されている。ミサイルの誘導は艦橋のレドームに収納されたMR-331「ミネラル-ME1/2」(NATOコード:Band Stand/バンドスタンド)によって行われる。艦載砲としては艦首部に87式55口径100mm単装砲(H/PJ-87)1門を搭載。同砲は、自動装填装置により発射速度は毎分最大90発、最大有効射程は対水上で17,000m、対空で6,000m。砲の管制は344型レーダー(MR-34)により行う。この砲は地上攻撃用のレーザー誘導砲弾を発射できるとの説もある。

近接防空火器は国産のCIWS(Close in Weapon System:近接防御火器システム)である730型30mmCIWSが艦橋直前とヘリコプター格納庫上に搭載された。730型CIWSは7つの銃身を持つ30mmガトリング機関砲と、レーダー/光学センサーから構成される。730型の発射速度は毎分4,600〜5,800発で最大射程3,000mとなっている。この他の対艦ミサイル防御としては、艦載ヘリ格納庫の直前に726-4型18連装デコイ発射機を片舷2基ずつ装備している。726-4型は戦闘システムと連接されており、脅威に合わせて最適なタイミングで自動的にチャフ、フレア、デコイ、擲弾、魚雷回避用音響デゴイなど発射する[6]。NRJ-6電子戦システムは中国国産だが、イスラエルからの技術供与を受けたとされている。

052C型は従来の中国駆逐艦が搭載していた対潜ロケット発射機は搭載されておらず、艦固有の対潜兵装は三連装短魚雷発射筒二基のみとなっている。搭載箇所は、YJ-62対艦ミサイル装備位置の下、両舷に324mm短3連装魚雷発射管を装備しているが、ステルス性を考慮して開口部はハッチで閉じられており、魚雷発射時のみハッチが開かれる構造になっている。搭載ヘリコプターはKa-28対潜ヘリコプター(ヘリックスA)もしくはZ-9C対潜ヘリコプター1機。ヘリコプター格納庫は上部構造物後端の右側に設置されているが、この配置は052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)の設計を踏襲したものと思われる。ただし、052B型ではヘリ格納庫が一段高くなっているが、052C型ではヘリ格納庫と隣の区画は同じ天井高とされている点が異なっている。

【船体/機関】
052C型の船体と機関部は052B型駆逐艦と同一で、052B型の船体設計を基本としつつ、そこに 346型フェイズド・アレイ・レーダーやHQ-9用VLSを組み込んだものとなっている[6]。各種システムを追加したことで、満載排水量は052B型の5850tから7000tを越えるまでに拡大している[6]。アメリカのアーレイ・バーク級イージス駆逐艦は、SPY-1Dフェイズド・アレイ・レーダーの射界確保を設計の最優先事項として、艦の全般的な配置から細部の艤装までをその制約下で決定したが[2]、052C型は052B型と共通の船体にフェイズド・アレイ・レーダーを後付で組み込んだため、レーダー・アンテナ配置の自由度はアーレイ・バーク級よりも低いものになっている[1]。052C型はフェイズド・アレイ・レーダーのアンテナを装備するために052B型よりも艦橋構造が1層高くなっているが、それでもアンテナの装備位置が低く平面捜索範囲が少なくなるデメリットを有している[6]。特に後部アンテナは船体後部の各種構造物による干渉でレーダーの射界に問題があると思われる(艦後部にヘリ搭載格納庫を増設したアーレイ・バーク級フライトIIA型は、後部構造物との干渉を避けるため後部SPY-1Dアンテナの搭載位置を上げて対応している)。

▼アーレイ・バーク級、同級フライトIIA、052C型のレーダー配置比較
アーレイ・バーク級自体の配置位置がそれほど高いものではなく、捜索範囲がタイコンデロガ級巡洋艦よりも減少している事が指摘された事があるが、052C型の搭載位置はさらに低い事が見て取れる。


また052C型は艦橋に正横方向と後方に面した窓が全く無く視界が取れない。このため艦橋上にペリスコープが取り付けられている。052B型の船体と共通化したことは、艦隊行動をとる上で性能を同じに出来ること、設計や建造の手間の節約等のメリットもあるが、052B型に比べて大型の防空システムを搭載した052C型にとってはいささか手狭であり、前述のようなフェイズド・アレイ・レーダーの位置問題に加え、対艦ミサイルの搭載数も052B型の半数に留まるなど設計上の苦労が垣間見える。

【第二次建造艦について】
052C型の前期建造艦2隻は同時期に建造された052B型と共に南洋艦隊に所属している。計画当初からの構想ではないとはいえ、結果として052C型の射程100km級のHQ-9長距離対空ミサイルと052B型の射程50km級の9M38M2中距離対空ミサイル「シュチーリ1」は、艦隊に重層式エリア・ディフェンス網を提供することを可能とした。

2番艦「海口」が進水した2003年以降、052C型の建造は確認されなかったため2隻で調達終了となるかと思われていた。しかし、この間も各種システムの完成度を高める為の研究開発が続いており、2007年までにそれらの作業は完了し、翌2008年には052C型の設計が最終的に国家承認を得ることに成功した[6]。

中国海軍では052C型の発展型として052D型駆逐艦の開発を進めていたが、その実用化には相応の時間を要することは明らかであり、それまでの駆逐艦戦力のストップギャップとして完成の域に達した052C型駆逐艦の追加建造を行うことを決定した[13]。建造は、上海近海の長興島に建設された上海長興造船廠で行われ、2010年に3番艦が進水し、累計6番艦までの建造が行われた。3番艦以降は2番艦の建造から5年以上経っているため、基本的な設計は共通している物の各種アップデートが行われることになった[6]。

建造時に取り入れられた新工法として、艦を三つの大型ブロックに分けて建造し、最終的に一体化するブロック工法を挙げることができる[6]。これにより第二次建造艦の建造期間を短縮することに成功した。第二次建造艦では進水前に多くの装備を艤装済みにしたのも大きな相違点であり、建造工程の短縮に寄与している。艦の自動化を進めたことで、乗員定数は第一次建造艦が280名だったのに対して、250名にまで削減することに成功した[6]。外観上の明確な設計変更としては、ヘリコプター格納庫の天井高さを原形よりも高くした点であり、これは、Ka-31早期警戒ヘリコプターの搭載を可能とする改修であった[11]。Ka-31は、通常の対潜ヘリよりも遥かに高い対空・対水上目標探知能力を備えており、陸上から進出する早期警戒機が展開できない外洋においても水上戦闘艦隊が自前で利用できる早期警戒機を得られるため、艦隊の戦術的柔軟性が大きく増すことになる[12]。

艦内の設計変更としては、主機をウクライナの技術支援を受けて国産化に成功したQC-280ガスタービン 2基(48,600馬力)に変更したことが先ず挙げられる。ガスタービン機関の国産化により、中国海軍の大型駆逐艦の量産を阻害する要因の一つが取り払われた形となり、その後の次世代駆逐艦の大量建造に欠かせない重要なポイントとなった。運用ノウハウが反映された変更点としては、アデン湾護衛任務に派遣された中国艦隊の教訓を反映して、艦内の生活空間の再調整が行われると共に、搭載艇をRHIB小型艇からFRP製のBH-580Aに変更され、小艇運用時に用いるクレーンの能力不足も指摘されたので、吊り下げ能力と巻き上げ速度を改善したタイプに換装された[6]。ソフトウェアの改善として、作戦指揮システムのアップグレードを行い、第一次建造艦では就役当初は未搭載であった「海上編隊戦役/戦術型自動化指揮システム一型(H/ZBJ-1)」が当初から搭載された。このほか、ヘリコプター格納庫のスプリンクラーを増設して被弾時の配管破損に備えている。後期建造艦4隻はすべて東海艦隊に配属された。

【総評】
052C型の建造は6隻で終了し、以降は改良型の052D型駆逐艦の建造に移行した。052C型は中国初の本格的な多目標同時迎撃能力を備えたエリア・ディフェンス防空艦であり、その開発と戦力獲得までには長い時間を要した。一、二番艦が就役後も、長い時間をかけて各種システムを実用化まで持って行ったことからも、052C型自体が新装備と新システムを実証するためのテストベッド艦としての役割を果たしたことが分かる。H/AJK03型VLSやYJ-63、346型レーダーなど、それ以降の駆逐艦では用いられなくなった装備が少なくないのも、同クラスでの運用実績が後継艦に反映されたことを逆接的に物語る事例だと判断し得る。

052C型の開発によって得られたノウハウと運用経験は、その後の中国海軍の防空駆逐艦の基本となるものであり、中国海軍にとって欠かすことのできない存在となったのは間違いないと言える。

性能緒元
満載排水量7,000〜7,100t
全長155.5m
全幅17.2m
吃水6m
主機CODOG 2軸
 第1次建造艦:DA-80(GAT-25000)ガスタービン 2基(48,600馬力)
 第2次建造艦:QC-280ガスタービン 2基(48,600馬力)
 全艦共通:MTU-20 V956 TB92ディーゼル 2基(8,840馬力)
速力29kts
航続距離4,500nm/15kts
乗員第1次建造艦:280名
 第2次建造艦:250名

【兵装】
対空ミサイルHQ-9A長距離対空ミサイル(海紅旗9A) / VLS(6セル)8基
対艦ミサイルYJ-62対艦ミサイル(C-602) / 4連装発射筒2基
魚雷YU-7 324mm短魚雷 / B515 324mm3連装魚雷発射管2基
87式55口径100mm単装砲(H/PJ-87)1基
近接防御730型30mmCIWS(H/PJ-12)2基
搭載機Z-9C対潜ヘリコプターもしくはKa-28対潜ヘリコプター(ヘリックスA)1機
(後期建造艦はZ-9やKa-28以外に、Ka-31早期警戒ヘリコプターの搭載も可能。)

【電子兵装】
3次元対空レーダーH/LJG-346型4基
対空レーダー364型(SR-64型)1基
2次元対空レーダーH/LJQ-517B型(517B型)もしくは517HA型(Knife Rest)1基
火器管制レーダーMR-331「Mineral-ME1/2」(Band Stand)アクティブ/パッシブレーダーSSM/砲用1基
 344型(MR-34)SSM/砲用1基
 327G型(EFR-1/Rice Lamp)CIWS用2基
戦闘システムZKJ-5作戦指揮システム1基
 H/ZBJ-1海上編隊作戦/戦術型自動式システム1基
ECMシステムNRJ-61基
チャフ/フレア発射装置726-4型18連装デコイ発射機4基
ソナーMGK-335MS-EもしくはSJD-8/9型ハル・ソナー1基
 曳航式ソナー1基
データリンクJY10G
 Mineral-ME3SSM用

同型艦
1番艦蘭州Lanzhou170上海江南造船廠で建造、2003年4月29日進水、2005年10月18日就役南海艦隊所属
2番艦海口Haikou171上海江南造船廠で建造、2003年10月29日進水、2005年12月就役南海艦隊所属
3番艦長春Chengchun150上海長興造船廠で建造、2010年11月28日進水、2013年1月31日就役東海艦隊所属
4番艦鄭州Zhengzhou151上海長興造船廠で建造、2011年6月25日進水、2013年12月26日就役東海艦隊所属
5番艦済南Jinan152上海長興造船廠で建造中、2011年12月進水。2014年12月22日就役東海艦隊所属
6番艦西安Xi'an153上海長興造船廠で建造中、2012年進水、2015年2月9日就役東海艦隊所属

▼HQ-9対空ミサイル用VLSは前甲板に4基、後部構造物上に2基配置されている。

▼HQ-9対空ミサイルを発射する#170「蘭州」

▼陣形運動中の#170「蘭州」を先頭とする艦隊

▼H/LJG 346型多機能フェイズド・アレイ・レーダー(かまぼこ状の部分は只のカバーで、中のレーダー・アンテナは板状)

▼YJ-62対艦ミサイルの4連装ランチャー。開口しているハッチ内部には魚雷発射管が見える。

▼両舷に2基ずつ配置されている多連装ランチャーは726-4型18連装デコイ発射機。YJ-62対艦ミサイルのランチャーは未搭載状態。

▼HQ-9対空ミサイル用VLSのアップ。

▼HQ-9対空ミサイル用ランチャーの搭載作業


▼動画「中国海军 东海舰队:新一代052C型驱逐舰152济南舰加入海军战斗序列」5番艦「済南」(#152)の就役を報じるニュース動画


【参考資料】
[1]世界の艦船2005年9月号「注目の中国新型艦艇3 052C型駆逐艦」(海人社編集部/海人社)
[2]世界の艦船2006年12月号「世界のイージス艦とミニ・イージス艦」(海人社編集部/海人社)
[3]軍事研究(株ジャパン・ミリタリー・レビュー)
[4]戦場文集2006年6月号(第2巻) 「碧海争鋒-中日両国駆護衛艦艇50年的発展対比與反思」(新民月報社)
[5]Chinese Defence Today
[6]MDC軍武狂人夢「旅洋-II級飛彈驅逐艦」http://www.mdc.idv.tw/mdc/navy/china/052c-pic2.htm
[7]新浪網「江南新驱近况,注意球型声呐已经安装」(2010年11月1日)
[8]新浪網「中国新型152号驱逐舰被命名济南舰 明年服役中国152号驱逐舰济南舰」(2012年5月8日)
[9]陸易「特集・現代軍艦のコンバット・システム 中国軍艦のコンバット・システム その水準は?」(『世界の艦船』2011年10月号/海人社)94〜97ページ
[10]平可夫『中国製造航空母艦』(漢和出版社/2010年)163ページ
[11]新浪網「中国新版052D舰机库变矮 舰艉甲板加长至与055相当」(2018年12月27日)https://mil.news.sina.com.cn/jssd/2018-12-27/doc-i...(2019年1月9日閲覧)
[12]天鷹「也談”鄭州”艦実兵対抗的失利」『舰载武器』2015年06月号(No.219)/中国船舶重工業集団公司/26〜30頁)
[13]巨浪「052C导弹驱逐舰的中修升级」『舰载武器』2015年06月号(No.219)/中国船舶重工業集団公司/26〜30頁)

052D型駆逐艦
052B型駆逐艦(ルヤンI型/旅洋I型)
中国海軍

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▼中国巡航ミサイル▼


























































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