日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




H-6(轟炸6)は旧ソ連ツポレフ設計局製の爆撃機Tu-16(NATOコード:Badger/バジャー)の中国におけるライセンス生産機。中国空・海軍の核攻撃や長距離攻撃を担う重要な機体である。

中国は1957年9月にソ連から相互援助条約の一環としてTu-16のライセンス生産権を取得した。これに基きまず1959年2月に機体に関する各種データが中国に渡され、さらに2機の見本機が引き渡されている。このうちの1機は完全に分解された機体見本で、もう1機はノックダウン生産用パーツであったといわれる。このノックダウン生産用パーツはハルビン航空機工場(現HAMC)で組み立てられ、1957年9月に中国での初飛行を行った。その後中国はライセンス生産の工作治具の製造に着手、技術的な問題に悩まされたが1964年にそれを整えると機体の製造を開始した。こうして完全に中国国内で生産されたTu-16はH-6(轟炸6)と命名され、1968年12月に初飛行した。これが最初の量産型H-6Aで、機体は基本的にTu-16バジャーAと同じだが、エンジンは中国が国産化した渦噴8(WP-8)を搭載している。このH-6Aは1969年2月から部隊に配備された。

また生産作業中の1963年には最初にソ連から引き渡されたTu-16のうちの1機を改修し、H-6への核爆弾搭載能力付与に関する研究「21-511計画」が西安航空機工業によって開始された。西安は1964年9月に研究を完了、1965年5月に機体の改修作業を終えている。このH-6は胴体内爆弾倉に20キロトンの核爆弾1発を搭載できるようになり、中国は1980年までに7回投下実験を行い、空軍に配備された。

H-6は1973年に60号機が完成した時点で製造作業が一旦停止されたと思われていたが、1975年から主翼にミサイルを搭載できるようにする研究が続けられ、H-6Dとして生産が続けられる事になった。このH-6Dの初号機は1981年8月に初飛行し、同年12月にミサイル発射実験を実施、目標に命中し成功を収めた。このH-6Dは機首下面の大型レドーム内に245型捜索追跡レーダーを有し、自動操縦装置や自動ミサイル攻撃システムも備えている。245型レーダーは高度9,000mで150km離れた海上の目標を探知する事が可能。これらのアビオニクスの増加のために重量の関係から23mm機関砲は全廃された。H-6Dは主翼下にYJ-6対艦ミサイル(C-601/CAS-1 Kraken)2発を携行する。YJ-6対艦ミサイルはHY-2地対艦ミサイルから発展した空中発射ミサイルで、セミアクティブ・レーダー誘導によりマッハ0.9の速度で120km先の艦船を攻撃する事が出来る。爆弾倉はそのままになっており、従来通り自由落下型爆弾を搭載する事が出来る。H-6Dは1984年から中国海軍に配備され、長距離対艦攻撃ミッションに就いている。

H-6A/Cは1990年代から近代化改修を受けている。最も大きな改修点はドップラー航法レーダーとGPS、レーザー慣性航法装置を統合した航法システムを搭載した事で、これにより全天候下で自動攻撃を行う事が可能になった。このタイプはH-6Fと呼ばれ運用されているが、精密攻撃用の長距離誘導兵器は運用する事が出来ず、比較的防空能力の低い海上の艦船攻撃任務に使用されている模様。

H-6Hは1990年代末から生産され始めた巡航ミサイル搭載型で、胴体後部にミサイル-機体間のデータリンクに使用するレドームが装備されている。本機は主翼下に2発のKD-63空中発射型巡航ミサイルを搭載可能で、その為の機器を搭載するためにH-6Dと同様に23mm機関砲を全廃している。KD-63巡航ミサイルはYJ-6対艦ミサイルに似た形状で、200km先の目標を攻撃する事が可能。推進装置はターボファンエンジンで、最高速度はM0.9。中間誘導には慣性航法装置とGPSを併用し終末誘導にはテレビ誘導装置を使用する。H-6Hは1998年12月に初飛行し、2002年11月にKD-63巡航ミサイルの発射実験に成功した。2004年から中国空軍に配備が始まっている。

2002年の珠海航空ショーではH-6GとH-6Mという二種類の派生型の存在が明らかにされた。H-6Gは海軍航空隊のH-6Dの更新用に開発された対艦攻撃型でYJ-83K空対艦ミサイル4発を翼下のパイロンに搭載する[3]。H-6Mは空軍向けの巡航ミサイル搭載型でCJ-10K4発を翼下パイロンに搭載するもので、後述のH-6Kが実用化するまでのストップギャップとして開発されたと考えられている[3]。H-6GとH-6Mはそれぞれ少数機が海軍航空隊と空軍に配備されている[3]。

現在確認されているH-6の最新の派生型は巡航ミサイル搭載型のH-6Kである[4][9]。H-6Kの設計にはコンピュータによる電子設計が全面的に取り入れられた。機体構造に複合材を使用する割合を増やし、エンジンも従来のWP-8(渦噴8)からロシア製のD-30KP-2ターボファンエンジンに換装され、推力の30%増と燃料消費率は20%向上した。これに伴いエンジンの吸気口の形状も変化している。なお、搭載エンジンについては異説もある。H-6Kの主兵装は射程1,500〜2,000kmともいわれるCJ-10Kで翼下に6発の搭載が可能。主兵装は主翼パイロンに搭載する様になったが、爆弾倉も維持されているので必要な場合には通常爆弾や空中投下機雷を投下する事が可能[3]。機首は再設計され地上捜索レーダーを内蔵するレドームとされた[3]。元々レドームがあった機首下部には新たに赤外線/光学電子サイトやECMアンテナが搭載された。アビオニクスは一新され、コックピットには6つのMFD(Multi Function Display:多機能表示器)が設けられている。乗員は正副操縦手と兵器システム士官の3名で、座席にはHTY-6F射出座席が採用されている[3]。従来搭載されていた23mm機関砲は全廃されている。

H-6Kは2007年1月5日に初飛行に成功[4]。H-6Kの開発はメーカーのプライベートベンチャーとして行われ、BC-1「戦神」という輸出用名称も付与された[4]。2009年には、ロシアのNPO Saturn社が中国との間で、IL-76MD輸送機とH-6K爆撃機用のD-30KP-2エンジン55基を2012年までに納入する契約が調印されたことが報じられ、H-6Kが量産されることが明らかになった[10]。2011年1月にはH-6Kが制式採用され、同年5月には部隊配備の開始が報じられた[9]。

H-6Kの生産機数については不明であるが、2012年10月には、NPO Saturn社と中国との間でD-30KP-2エンジンの第二次輸出に関する契約が結ばれ、2014年までに72基を中国に引き渡すことが取り決められており[11]、これらのエンジンはIL-76MDのエンジン換装とH-6Kの量産に当てられるものと思われる。

Tu-161957年9月初飛行ソ連から2機送られたノックダウン生産型
H-6A1968年12月初飛行量産型。中国国内でライセンス生産したもの
H-6E H-6Aを改修した核攻撃専用型
H-6B 偵察機型
H-6C 電子戦装備などアビオニクスを強化した改良型
H-6D1981年8月初飛行YJ-6空対艦ミサイルを運用可能にした海軍型。主翼下に合計二発のYJ-6を搭載。後にH-6G仕様に近代化される。一部の機体は空中給油機H-6UDに改修。
H-6F H-6A/Cの近代化改修型
H-6H1998年12月初飛行巡航ミサイル母機。KD-63空対地ミサイル(空地63/鷹撃63)2発を搭載する。
H-6Iエンジンを英国製スペイ512-5W×4に換装した機体。エンジン調達難から試作のみに留まる
H-6U1990年初飛行空中給油機型。新造機で空軍所属。
H-6UD空中給油機型。H-6Dを改修して製造。海軍航空隊所属。
H-6G2002年の珠海兵器ショーでその開発が明らかにされた。翼下にYJ-83K空対艦ミサイル4発の搭載が可能。H-6Dの後継機として開発され、2005年から海軍航空隊での運用が開始[3][12]。就役後のアップグレード改装によりYJ-12空対艦ミサイルの運用能力が付与されている[12]。
H-6M2002年の珠海兵器ショーでその開発が明らかにされた機体。翼下にCJ-10K4発の搭載が可能。現在少数機が空軍に配備されている[3]
H-6K/BC-1「戦神」2007年1月5日初飛行巡航ミサイル搭載型。翼下に6発のCJ-10Kの搭載が可能。エンジンは従来のWP-8からロシア製のD-30KPターボファンエンジンに換装され、航続距離も延伸された。機体構造やアビオニクスにも改良が施されている
H-6J「海神」H-6Kをベースに開発された洋上対艦攻撃型[12]。主翼下に合計8箇所のパイロンを装備し、YJ-12空対艦ミサイル4発とYJ-83K空対艦ミサイル2発、電子戦ポッド2基の搭載が可能。

性能緒元
重量38,530kg
全長34.8m
全幅34.2m
全高9.85m
エンジン渦噴8(WP-8)/RD-3M-500 93.17kN ×2
最大速度1,041km/h
巡航速度786km/h
航続距離6,000km
上昇限度13,100m
武装NR-23 23mm連装機関砲×3
 自由落下型爆弾9トン
 KD-88空対地ミサイル(空地88)
 YJ-6空対艦ミサイル(C-601/CAS-1 Kraken)(H-6D)
 YJ-83K空対艦ミサイル(H-6G)
 KD-63空対地ミサイル(空地63/鷹撃63)(H-6H)
 CJ-10K空対地巡航ミサイル(H-6M/H-6K)
 LT-2レーザー誘導爆弾(雷霆2型)
 LS-6滑空誘導爆弾(雷石6)
 FT-1/3誘導爆弾(飛騰1型/3型)
乗員5名

▼空軍のH-6H。機体後部下面にデータリンク用のレドームが見える

▼空軍のH-6H。両翼下に1発ずつKD-63長距離空対地ミサイルを搭載している

CJ-10K巡航ミサイルを搭載したH-6M

▼海軍航空隊のH-6D

▼H-6K試作機(機体番号861)


▼南海艦隊所属のH-6H動画。低空での洋上侵攻、爆弾投下、夜間着陸など


【参考資料】
[1]Jウイング特別編集 戦闘機年鑑2005-2006(青木謙知/イカロス出版)
[2]Jane's Defence Weekly
[3]Chinese Military Aviation「H-6G/H-6H/H-6M/H-6K」
[4]Chinese Defence Today「Hong-6 Bomber」
[5]Kojii.net
[6]航空世界
[7]空軍世界「轰-6轰炸机」
[8]私的備忘録
[9]空軍世界「轰-6K战神轰炸机」
[10]China Defense Mashup「Russia’s NPO Saturn will supply D-30KP-2 engines to China」(Johnathan Weng/2009年12月4日)
[11]ITAR-TASS通信電子版「НПО "Сатурн" поставило в Китай первую партию двигателей Д-30КП-2」(2012年10月18日)
[12]新浪网-军事「中国海军又甍貳森卻賤器 轰6J导弹轰炸机列装部队」(2018年10月13日)(2018年10月13日)https://mil.news.sina.com.cn/jssd/2018-10-13/doc-i...年10月14日閲覧)

【関連項目】
H-6U空中給油機(轟油6/H-6DU)

中国空軍
中国海軍

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