日本の周辺国が装備する兵器のデータベース




H-6U(H-6UD/HY-6/轟油6)空中給油機は、H-6爆撃機の空中給油機型。これまでに12〜20機程度が生産/改造されたと見られている。

H-6Uは1988年に北京で初めて公開され、1989年に完成して1990年に初飛行を行った。開発にはイスラエルやイギリスの技術的援助が行われたといい、イランの関与も噂されている。H-6UとJ-8D戦闘機との最初の給油訓練は1993年に行われた。H-6Uはプローブアンドドローグ方式の空中給油システムを採用しており、主翼下に搭載された2個の給油ポッドにより、同時に2機のJ-8Dに給油する事が可能。しかし給油を受けるには高度な技術が必要で、その技術を持つ中国軍の戦闘機パイロットは極めて少数だといわれる。J-8Dは空中給油を受ける事で先頭行動半径を800kmから1,200kmに延伸する事が出来る。これにより、中国軍の南シナ海における制空能力を大幅に向上させることに成功した。

H-6はJ-8DのほかにJ-10にも給油することが出来るが、給油システムの異なるSu-30MKKには給油できない。このため中国軍は新型のIL-78給油機をロシアから購入することを決定した。しかし、ロシアとの間で調達価格などをめぐる紛糾が発生したためにIL-78の調達は紆余曲折を経て頓挫。最終的にウクライナからIL-78が調達されたが調達機数は3機に留まり、当面の間はH-6Uが中国の空中給油機の数的主力の地位を占め続ける事になる[3]。

H-6Uは37tの燃料を搭載し、そのうち18.5tを中国で開発されたRDC-1空中給油システムで給油する事ができる。またアビオニクスは基本的にH-6A爆撃機と同じだが、給油作業のためにINS航法システムとTACAN航法システム、機首下に全天候気象レーダーを装備しており、また夜間給油用の無線/信号装置も搭載している。H-6爆撃機では後部銃座があった箇所には空中給油オペレーターが搭乗している。爆撃機と同じくレーダー警報装置とチャフ・フレアディスペンサーも装備しているが、これは有事の際には空中給油機であっても自己防衛の必要が高いと判断されて搭載された装備(アメリカ空軍の空中給油機は絶対制空権下での運用を想定しているので、この種の装備は搭載していないとのこと)[3]。

標準的な運用では、2機のH-6Uが12機のJ-8Dと組み合わされて運用される。J-8Dは4機づつ3個編隊を編制。基地から1200kmまでの空域に3つの哨戒域を形成する。J-8Dは戦闘行動半径(空中哨戒の場合は約800km)に達した時点でH-6Uからの空中給油を受ける。もし給油に失敗しても、この時点であれば残存燃料で安全に基地に帰還する事が出来る。給油に成功した場合は、J-8Dは所定の哨戒空域に向かい、H-6Uは基地に帰還することになる[1]。

H-6Uシリーズは、湖南省の耒陽に展開する空軍部隊が約10機(H-6U/HY-6)、海南省の陵水に展開する海軍航空隊の部隊が3機(H-6DU/HY-6D)を運用している。なお、空軍のH-6Uは新造機であるが、海軍航空隊のH-6DUはH-6D爆撃機を改装した機体である。

性能緒元
重量72,000kg
全長34.8m
全幅34.0m
全高9.85m
エンジン西安WP-8(Mikulin AM-3M-500) ×2
最大速度1,014km/h
巡航速度786km/h
航続距離6,000km
上昇限度13,100m
給油燃料搭載量18,500kg
乗員3名

▼空軍所属のH-6U(HY-6)。H-6UDとの識別点としては、機首下部のレドームが廃止、機首のガラス窓の多くが潰されている点などがある。

▼海軍航空隊所属のH-6UD(HY-6D)。


▼給油ポッド



【参考資料】
[1]Chinese Defence Today
[2]新浪網「轟油六可譲中国空軍戦機作戦半径範囲覆蓋西沙南沙」(東方網/2008年11月5日)
[3]徐臻豪「中国空中加油能力回顾与展望」『兵工科技』2019年01月号(兵工科技杂志/6-12ページ)

H-6爆撃機(轟炸6/B-6/Tu-16)
中国空軍
中国海軍

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