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▼军迷天下「最新画面!东部战区公布运油-20空中加油全过程!」2023年8月9日の演習で空中給油を行うYY-20A空中給油機 YouTube

YY-20A空中給油機「鯤鵬」(運油20A)は、Y-20A「鯤鵬」(運輸20A)をベースに開発された空中給油機[1]。その存在が初めて公にされたのは2021年11月28日に台湾近海で行われた軍事演習に関する報道であった[2][3]。この際には、YY-20Aが、2機のJ-16戦闘機に連続して空中給油するシーンが報じられた[3]。その後、2022年の長春空軍開放日/長春航空展において初の地上展示が行われ、同年11月には2022年珠海航空ショーにおいて展示飛行が行われ、給油用ドローグを展開する様子も披露された[1]。

戦略空軍化を目指す中国軍にとっては、航空機の航続距離延伸に不可欠な装備でありフォース・プロバイダー(戦力倍増装置)の一つである空中給油機は重要な存在である[2][1]。中国空軍ではすでに、H-6U空中給油機(轟油6/H-6DU)IL-78空中給油機(マイダス)という二種類の空中給油機を運用しているが、H-6Uは量産開始が1950年代に遡るソ連のTu-16爆撃機がベースであり機体規模も小さいことから空中給油機としての能力には限界がある。IL-78は大型輸送機を基にしているので性能としては十分であるが、調達機数はウクライナから調達した中古機三機のみに留まっており、中国空軍の規模を考えるとその需要を満たすことは不可能であった。それゆえ、国産輸送機Y-20Aを基にして十分な能力を有する空中給油機であるYY-20Aの実用化が切望されたのである。

なお、Y-20Aについてはエンジンを国産のWS-20に変更した発展型Y-20Bの開発が進んでいるが、空中給油機についてもY-20BベースにYY-20B(運油20B)が開発中であり、2024〜25年中に実現予定のY-20Bの量産化と軌を一にしてYY-20Aの生産をYY-20Bに切り替えると見られている[4]。

【性能】
YY-20Aの性能は基本的にはベースとなったY-20Aを踏襲しているので本項ではYY-20Aの特徴を中心に記述する。相違点としては空中給油機化にあたって胴体格納庫を燃料タンク搭載区画として転用。同クラスの空中給油機であるIL-78を参考にすると、格納庫に18t入りタンク×2を積んでいると推測されている[1]。77.5tの機内燃料と合わせて合計110〜113.5tの燃料を搭載し得ると見られており、これはJ-20やJ-16といった大型戦闘機でも10機以上に空中給油するに十分な搭載量である[1][2]。IL-78Mの場合、作戦行動半径1,000kmで最大給油可能量69,2t、同2,000kmで50t、3,500kmで20.7tとされており、これを参考にするとYY-20Aは1,000km./90t、2,000km/70t、3,500km/41.5tの燃料供給が可能との試算が挙げられている[2]。最も遠距離に当たる3,500kmの作戦行動半径においても4機の重戦闘機(J-16やJ-20クラス)に給油を行うだけの積載量を備えていることになる[2]。

空中給油方式は中国空軍の標準方式であるプローブ&ドローグ方式[1]。これは、米空軍のフライング・ブーム方式と比較すると、時間当たりの供給燃料では不利になるが、複数機に同時給油できる点で有利[1]。YY-20Aは、主翼下部に合計2か所の空中給油ポッドを吊り下げ搭載しており、胴体後部ランプに組み込んだドローグと合わせて、合計三箇所のドローグを展開して給油作業を行う[1]。給油ポッドは新型のRDC-3で、これがH-6U空中給油機のRDC-1をベースに開発されたと見られている[4]。三つのドローグのうち、中央のドローグについては左右のものより全長が長く、パイプ自体もより多くの燃料を流せるものが使われている。これはフライング・ブーム式には及ばないものの、大量の燃料を必要とする爆撃機や哨戒機といった大型機への給油を想定して少しでも供給量を増やすための措置と考えられている[1]。

YY-20Aは、空中給油任務に合わせて各部に小改造が施されている。まず、降着装置を収納する胴体側面のスポンソンの最後部の形状がY-20Aより鋭くとがったものに変更された[1]。これは機体後部に流れる気流を調整して、給油活動の際に支障になるのを抑えるための措置と見られている[1]。機体下部には、空中給油の際に機体の位置を確認するために多数の航空灯やテープライトが装着されており、自機と空中給油機との距離を測るのに利用される。ライトは意思疎通にも用いられ、黄緑色ライトが上下いずれかで点灯すると給油可を意味し、赤色灯が付くと給油不可を意味する。これによりいちいち無線を使わずに基本的な意思疎通を交わすことが出来る[1]。胴体ランプのドローグの付け根には光学/電子センサーが装備されており、機体後方の視界を確保するだけでなく、レーザー測距装置を用いて自機と給油対象との正確な距離を算出し、不測の事故を防ぐとともに、最適な距離、ドローグの展開長などの調整に活用される[1]。

YY-20Aの後部ドアの機能はY-20Aのものと共通しており、必要に応じて空中給油の関連機器を取り外して輸送機として用いることが出来る[1]。逆に言えば、通常のY-20A輸送機についても小改造を施すことで空中給油機化することも可能である[1]。ただし、空中給油機として用いる場合は胴体格納庫が燃料搭載区画となるので、A-300MRTTやKC-45といった近年の旅客機ベースの空中給油機と異なり人員/貨物輸送と空中給油を同時にこなすことは出来ない[1]。

【発展型YY-20Bについて】
前述の通り、YY-20Aの生産と並行して、Y-20Bをベースに開発が進められているのがYY-20Bであり、今後の中国空軍の空中給油機の主力は本気が占めることになるとみられる。

YY-20Bはエンジンをロシア製D-30KP2やその国産版WS-18から、中国国産のWS-20ターボファンエンジンに変更するのが最大の特徴。これにより、機体に比べて推力不足であったY-20A以来の問題を完全に解消することが可能となる。D-30KP2搭載型Y-20Aはパワー不足から最大離陸重量が179tに制約されており[5]、推力が少し向上したWS-18搭載型ではこれが200tにまで向上していた[6]が、Y-20B/YY-20Bでは当初の要求値である220tでの離陸が可能となり、ペイロードも55tから66tにまでアップするとされている[5]。これによりYY-20BはYY-20A以上の燃料搭載が可能となり、さらに燃費の良い高バイパスエンジンであるWS-20を使うことでより多くの燃料を空中給油に用いることが出来るようになる。

YY-20Bの試製一号機は2020年11月に初飛行に成功し、その後2021年末までに合計4機の試作機が確認されている[7]。2023年3月には中国軍での評価試験中と思われる写真も登場している[7]。試作機の写真の分析では、胴体ドローグが未搭載の機体もあるとされ、その意図が考察されている[7]。この点からも推し量れるが、本機の性能はまだ不明な点も多く今後の情報が注目される所である。

【今後の展望】
中国空軍は、遠距離戦力投射において不可欠な存在である空中給油機の配備を重視している。YY-20A/Bの配備が進めば、中国航空戦力が第一列島線を越えて西太平洋で活動するための基盤として機能するようになり、その遠距離作戦能力を大きく改善することになると見込まれている[4]。J-20戦闘機の場合、一度の空中給油により航続距離を8,000km延伸し得るので、その遠距離作戦能力を大きく伸ばすことが出来る[2]。

Aviation Week誌は、YY-20Aの生産は8機目で完了してYY-20Bの生産に移行し、2020年代は年間6機ペースで、2030年からは年産8機になると推測している[4]。Y-20Bの生産ペースを6機と見積もっているのと比べて、輸送機よりも空中給油機の方が優先されるという見通しである[4]。同誌によると、2033年にはY-20A/B合計で100機、さらに空中給油機型のYY-20A/B合計で75機を超える機数が就役し、IL-76輸送機、H-6U/IL-78空中給油機は全て退役してY-20ファミリーが中国空軍の輸送機/空中給油機戦力の中核を構成することになると予測している[4]。

YY-20A/Bの今後の改良について注目されるのはフライング・ブーム式空中給油システムの採用である[8]。中国では以前から同方式の研究を行っており、空中給油制御盤のシミュレーターでJ-20にフライング・ブームによる空輸を行うシーンが報じられたこともある[8][9]。前述の通り、フライング・ブーム方式は大型機への短時間・大量の燃料補給に有利なため、J-20やJ-16といった戦闘機や、今後実用化されるH-20戦略爆撃機やY-20B大型輸送機といった大型機で同方式を採用する可能性も指摘されている[8]。プローブ&ドローグ給油ポッドの分当たりの給油量は1,500Lから2,000Lとされるが[8][3]、フライング・ブーム方式だと理論上はその3〜4倍にあたる毎分6,000Lの給油が可能とされる[9]。これは約二分間でJ-20の機内燃料を満たし得る送油量とされ、その送油能力の高さが分かる[9]。ただし、フライング・ブーム方式は一機一システムの搭載に限定されるので、将来的にYY-20へのフライング・ブーム方式の空中給油装置が採用される場合はA330MRTTやKC-46のように、胴体後部にフライング・ブームを搭載し、両翼にプローブ&ドローグ式給油ポッドを搭載すると考えられている[8]。

【参考資料】
[1]安东「展现中国力量—运-20A、运油-20A首次齐聚珠海」『兵工科技2022.23—2022珠海航展(上)』(兵工科技杂志社)49-53頁
[2]林富士夫「中国、大規模地上軍の長距離軌道展開が可能に 徹底検証!その性能値と運用方法 超大型戦略輸送機”Y-20”実戦配備」『軍事研究』2016年12月号(ジャパン・ミリタリー・レビュー/43-
60頁)
[3]知乎「敏感时刻,中国空军又一款“重磅军机”正式公开!」(大伊万/2022年8月2日) https://zhuanlan.zhihu.com/p/548887272

[4]Aviation Week「Y-20 Revolutionizes China’s Airlifter And Tanker Capacity」(Bradley Perrett/2023年10月4日)https://aviationweek.com/defense-space/aircraft-pr...
[5]小新「”脉动式生产线”让中国运-20也能”下饺子”」『兵工科技―细看歼-15舰载机』2023.23(兵工科技杂志社/44-48頁)
[6]宇平「换发!换发!--细数运-20动力系统的变迁」『兵工科技―运-20最新全集』2021.8(兵工科技杂志社/75-77頁)
[7]Chinese Military Aviation「Y-20B Kunpeng/Roc」http://chinese-military-aviation.blogspot.com/p/tr...
[8]洛凡「战略空军的空中“加油站”」『兵工科技―运-20最新全集』2021.8(兵工科技杂志社/81-86頁)
[9] 澎湃新闻「运油-20给歼-20硬管加油?」(媒体:航空知识/2022年2月9日)m.thepaper.cn/baijiahao_16632354

Y-20A「鯤鵬」(運輸20A)
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