「うー……」
 しわがれたうめき声を上げながら、エリは小さく身を揺らした。
酷く汚れた彼女の身体――――全身がきしきしと痛み、
ところどころに白いものがこびりついているエリの身体は、息を吸い、吐くことさえ億劫に感じるほど疲れ切っていた。
 ゆるやかに上下する胸が掴まれる。むに、と形を変える白い肉。
「ぁぁ……」
 身をひねり、拒絶の言葉を発しようとしたのだが、喉からはまともな音が出なかった。
一晩中悲鳴を上げ続けたためだろう――――風邪をひいた時のようないがいがした感触が、
エリの口の中からまとわりついている。
 口をすすぎたい。お風呂に入りたい。かなうことのない欲求を脳裏に浮かべながら、
エリは身体を転がしてうつぶせになり、縛られた両手をシーツに押し当てた。
じくじくとした痛みが走る両手首をどうにかしたかったのだが、
痛みはたいして和らぐことなく、暗い赤が白を侵食していくだけだった。
「いたい……よぉ……」
 幾度となく暴れ、ベッドの端にぶつけたためだろう。縛られた両手は、細かい擦り傷が沢山できている。
かすれた声で泣きごとを口にした瞬間、肩を掴まれて無理やり身体を仰向けにされる――――涙でぼやけきってしまった視界の中、
暗い肌色が近づいてきた。青臭い、吐き気を呼ぶ匂いがするそれに向けて、エリは小さく口を開ける。
「んっ……むぐ……」
 肩を掴んでいた手は離れていったが、代わりに前髪を掴まれてエリの上半身は無理やりに起こされた。
そのまま、性器を口内にねじ込まれる。赤ん坊のように座っていない首が前後にがくがくと揺れたが、
『彼』は気にする様子を見せなかった。腰を振り、快楽を得るためにエリの口内を犯しはじめる。
「ううっ……んぐっ……じゅる、んくっ……」
 亀頭が口の中で動き、エリの頬の形がわずかに歪む――――が、予想よりも圧力は無かった。
幾度となく精液を放出したためだろう。ひどく柔らかい『彼』のモノは、
少し力を入れたのなら噛み切れてしまうかもしれないと思うほどだった。
(……噛み切っちゃ、おうかな)
 ――――そうしてしまえばこの辛い夜は終わるのだろう。
 だが。
(そんなこと…………できないよ)
 『彼』に語りかけるように否定して、エリは口を犯すモノの動きが少し緩やかになったのを機に、
懸命に舌を動かし始めた。半分ほど皮がかぶった亀頭を舌で擦る様に舐め、
唇で陰茎をしごくように吸い上げる――――割れ目から染み出ている液体と唾液が混ざり、卑猥な水音が漏れだす。
「……くうっ」
 仕上げにずずずと音を立てて口の中の液体を全て飲み込むと、『彼』は気持ち良さそうに小さくうめいた。
心なしか『彼』のモノも固さを回復したような気がして、少しだけ安堵するエリ。
 だが。
「うぐっ!?」
 次の瞬間、喉の奥まで無理やりに性器を突っ込まれ、声なき悲鳴が漏れる。
新たな失望がエリの胸に生まれると同時に、こみあげてくる強い吐き気――――それを
ぎりぎりのところでこらえ、彼女は『彼』の動きを妨げないように身体を弛緩させた。
 ごり、ごりと固さを取り戻した亀頭が喉に擦りつけられていく。
口で『彼』のモノを加えたのは今日だけで三度目だったが、ここまで深く侵入されたのは初めてだった。
痛みと、吐き気。そして何よりも『彼』が自分にこんなことをしているという事実が大粒の涙が生み出し、
視界をさらにぼやけさせていく。
 ――――もう、いやだ。
 何度もそう思ったのに、どうして終わらないんだろう。
 涙と口の端からあふれ出したよだれが顎を伝い、首筋、胸元まで垂れていく。
そのうちのいくらかは、エリの整った椀の形をした胸の先端に引っかかった。
それみてだろうか。『彼』はぬめりを帯びててらてらと光る乳頭を指先で掴んだ。
そのまま、少し伸びた爪を使われて、引きちぎれるのではないかと思うほど強くつねられる。
 快楽など感じるわけもなく、ただただ強い痛みがエリの体を痺れさせた。
「うっー……」
 新たな涙がシーツに沈むと同時に、『彼』の動きがより早くなった。
射精が近い。そう思って、エリは唇をすぼめ、『彼』のモノを強く吸い込んだ、その瞬間。
 口の中の性器が、大きく震えた。
「うぐっ! ……うげっ、ごほっ、こほっ……こほ、けふっ」
 その衝撃で喉奥を刺激されえずいてしまい、『彼』のモノがエリの口から飛び出す。
口の中に充満していた唾液も吐き出され、大きな水音とともにシーツにぶちまけられた。
 新たにできたしみの中央に手をついて、エリが四つん這いの姿勢で呼吸を整えはじめると……
「ひゃ!」
 熱く、生臭い液体がエリの右頬にかけられた。小指の先ほどの量もない精液は、
もはや全く白濁していなかったが、液体から香る匂いだけは頭がふらつくほどに強烈だった。
「あ……ご、ごめ……ごめんなさい……」
 『彼』の精液を受け止められなかったことを謝りながら、
エリはゆっくりと起き上がり、再びモノを口にくわえようとした。
 ――――頑張って気持ち良くしてあげたら、小波君はやめてくれるかもしれない。
 満足して、おちついたら、あやまってくれるかもしれない。
 きっとそうだ。きっと、きっと、きっと――――
「あっ……」
 口を開けたところで、振り払うように押されてベッドに転がされる。
呆然と動きを止めて天井を見つめるエリ――――数秒後、足首を掴まれ、強い痛みが走った。
瞬きで涙を瞳から追いやり、視線を痛みのもとへ向ける。
「ひっ……やだ、やだぁ……」
 『彼』がエリの股間に頭を寄せていた。痛みが走ったのは、無理やり股を広げられたためだろう。
身じろぎして拒絶の意思を示すが、全く止まる様子はない。
「やだぁぁぁ……」
 指で大きく広げられた花弁、その中央からどろりと赤の混じった精液が垂れ落ちた。
『彼』はそれに鼻先を寄せた後、花の香りでも嗅ぎとるかのように、慎重に吸い込んだ。
(……どんな匂いがするんだろ)
 羞恥でおかしくなりそうな頭に、そんな疑問が浮かぶ。
疲労と痛みで鈍くなっている口を動かして、エリは行為をやめるように懇願しようとした……が、
『彼』の行動がそれを許さない。淫猥な色に輝く濡れた肉を掻き分け、『彼』の中指と人差し指が、
エリの膣内にずぶずぶと侵入していく。指が少し曲がっているのは、
エリに快楽を与えるためだろうか――――そうなのだとしたら、
その目論見は全く成功していない。今となってはもう、痛いだけだ。
「……痛いよぉ。すんっ、ぐす……痛いの、やだ。痛いの、もうやだぁ……」
 痛い。痛い。と口と心で何度も叫ぶ。幾度となく指よりも非常に太いものを挿入されたとはいえ、
傷口を直接弄られて、痛みを感じないはずもない。新たな血があふれ出して、『彼』の二つの指が深紅に染まる。
「……ふぇ」
 『彼』の動きが止まって、エリはわずかな期待を抱きながら目を開いて『彼』を見た。
苦しそうな表情で、指についた血を眺める『彼』――――その顔が反省しているように見えて
エリは喜びに胸を震わせた。
「こなみくん……」
 名を呼んで、エリは上半身をわずかに起こし、縛られた両手を『彼』に伸ばした。

 このてがとどけば、きっとこなみくんはこんなことをやめてくれる。
 ごめん。っていってくれる。やさしくしてくれる。

 そう願っていたのに。

 その手は届く前に振り払われた。
ベッドにバウンドするエリの身体。間をおくことなく、『彼』の身体が重なった。
エリの背中に『彼』の手が這いずり、肌と肌が密着して体温が移り、
心臓の鼓動が重なる――――状況さえ違えば途方もなく嬉しいはずなのに、今は恐怖しか感じない。
「……や、やだ。やだよ……もう、いやぁ!」
 もがくエリを身体で押さえつけ、『彼』は男根を秘所にあてがった。
泣き叫ぶんでいるエリを苦悶の表情で見つめながらも、迷うことはせずに腰を下ろしていく。
 膨張して皮が剥けた桃色の雁首が、二人の体液で濡れたエリの花弁――――その中央に、沈む。
「やだ……助けて……やだよ……やだぁ!」
『彼』の雁首よりは少し明るい桃色の肉壁は、貪欲に蠢きながら『彼』の分身を包み込んでいった
「もう、やだぁぁぁぁぁ!!」
 悲しみで張り裂けた胸を震わせて、エリは短く絶叫する。
全身を襲う苦痛。それから逃げるように、エリはこの夜の始まりを思い出していた。








 本来ならば放出されていくはずの熱が押しとどめられ、肺の中に入る空気が熱を帯びていた。
熱帯夜とはまた違う、身体の内側が燃えているような寝苦しさに、エリはたまらず目を覚ました。
「ん……」
 一度ぐらい、すっきりと目を覚ましてみたいな。などと思いつつゆっくりと意識を確かなものにしていく。
(……あれ。ここって、こなみくんのへや……だよね?)
 眠る直前の状況を思い出すと同時に、エリは小さな違和感を覚えた。
身じろぎしながら、違和感の正体を探る――――まずは、真っ暗で何も見えないということだ。
震える『彼』がエリの腕の中で眠りについて、それにつられてエリも眠ってしまったのだが、
その時は部屋の電気はついたままだった。『彼』が一度起きて、電気を消したのだろうか?
 ――――それにしてはおかしい。電気を消しただけならば、うっすらと部屋の輪郭ぐらい見えてもいいはず。
それなのに、今は何も見えなかった。その代わり――――というのは、
正しくないかもしれないが――――妙な圧迫感が両目の周りにある。
「んー……」
 手を動かして顔に触れる。何かが瞳の上に巻きついていた。
触感からすると……布、なのだろう。品質の良いとは言えない、ざらざらとした布。
「……あいぉぇ」
 なにこれ。エリはそう呟いたつもりだったのだが、口からは妙にくぐもった音しか漏れない。
不思議に思い、瞳にあてていた手を口元に伸ばす。
瞳と同じだ――――布の裏地のような、さわり心地の良くない布に覆われている。
 何が起きているんだろう。胸に浮かんだ疑問は、次の瞬間に吹き飛ぶことになる。
「……え?」
 突如、胸元から布が裂ける音がした。
何が起こったか分からずに硬直するエリの身体。それは、服を切り裂いている人物にとって好都合だったのだろう、
あっという間に彼女のシャツは、原形をとどめなくなる。
 はらりと布が舞い、ふるりと両の胸が揺れた。
「…………うーーーーー!!」
 胸元にたまっていた熱気が解放され、上気した肌に冷たい風が染みこんでくる。
そこでようやく異常事態に気づき、エリは唸り声を上げながら逃げだそうとした。
身体をひっくり返し、四つん這いになって軋むベッドを這いずろうとする――――が、
ベッドの端に手が届いた瞬間、背中にのしかかられて、身動きが取れなくなってしまった。
「うぅっ……んー! んんー!」
 精一杯叫びながら暴れ続けるエリだったが、背中に乗っている人物をはねのけることはできなかった。
彼女はもとより筋力のあるほうではないし、体重だけでなく、筋力も使って抑え込まれているのだから当然と言えるだろう。
 ――それから数分。叫び、暴れ続けたエリが疲れ、動きを止めたところで、陰鬱な、湿った響きをもった声が耳に届いた。
「エリが、悪いんだからな」
 それは、エリが恋している人の声だった。
諦めることを知らず、どんな苦難をも乗り越えてきた人には似つかわしくない、疲れ果てた声だった。
「いくら心配だからって」
 びりり、『彼』の声に交じって布が裂けていく音が聞こえて、背中に冷んやりとした空気が触れた。
身体を覆っていた熱が放出されていき、変わりに羞恥心による新たな熱が身体の内から生まれていく。
(やぁ……触ってる……背中……)
 そして、『彼』の手が滑るように寝汗で濡れた背中を這いまわる。
肌に浮かんだ汗の球が一つずつ潰されていき、むずかゆい感触がエリの身を襲う――――身もだえしつつも、
エリは『彼』の言葉を聞くことに集中しようとした。『彼』がなぜこんなことをしているのか、それがどうしても知りたかったから。
「男と一緒のベッドで寝るなんて……ただの、バカじゃないか」
 バカじゃないか。『彼』がそう呟いたことに、エリは強いショックを受ける。
『彼』の手が下着の紐を引きちぎり、脇の下に侵入してきてさえ暴れるのを忘れるほどに。
(小波くんは……あたしのこと、バカにするの?)
 『彼』の動きが止まって、背中にのしかかる重圧も軽くなる。
だが、エリは動けずにいた。最もバカにされたくないと思っていた人物に罵られたショックから、静かに涙を流していた。
「だから……」
 小さな金属音のあと、衣擦れの音がした。そしてなんとも形容しがたい、
エリが今まで嗅いだ事のない匂い――いってしまえば、男の匂いが部屋に立ち上る。
 『彼』が自らの衣服を脱いだということに気づくと同時に、エリは自分の体が震え始めていることにも気づいた。
 怖い。
 エリは今まで何度もそう思ったことがあった。
男性に対してそう思うことは非常に多かったし、宇宙人との戦いでも常に怖がっていた。
 だが……声が出せなくなるほどの恐怖というものは、初めてだった。
「何されたって、かまわないんだろう?」
 耳元に口を近づけられて、囁かれる。
 ――――確かに、そうだ。
 エリは何をされてもいいと思っていた。抱かれることを望んでいたと言っても過言ではない。
中学三年生にもなって、男女一緒に眠るということがどういう意味をもつか知らないはずもないのだから。
 けれど。
「う……けほっ、ごほっ……」
 顔を少し動かすと、口元を覆っていた布が外れた。
もともと強くは縛っていなかったらしい――――完璧に防音処置がとられているこの部屋で、
泣いても、叫んでも外には決して聞こえないことを知っているからなのだろう。
 肺にしみこむ新鮮な空気を痛みが走るほど吸い込んだエリは、顔だけを振り向かせて、『彼』に懇願し始めた。
「ちがうの…………けほっ。ひっく」
 唾液が気管支へと落ちて、まともに言葉を発することができない。
それどころか、完全な暗闇と押し倒されているという二つの恐怖心から、
嗚咽と共にしゃっくりまで出てしまう始末だ。
 そして。
「ちがう、ちがうの……ぃっく。こんなの、こんなのやだぁ……」
 どうにか口にすることができた言葉は、非常に中途半端なものだった。
こんな形で抱かれることは望んでいないという、はっきりとした拒絶。
それ自体はエリの伝えたいことの一つではあったが、それよりも。
 優しくしてほしい。そう言いたかったのに。
「ひゅう……ふぁ……」
 肺に貯めた酸素が空になってしまって、エリは荒い呼吸を始めた。
拒絶の言葉の続き、受け入れるという言葉を口にすることができないままに十数秒が経過して。そして。
「もう、いいだろ?」
 その僅かな時間が、『彼』との意志疎通を妨げる決定的なものになってしまった。
「けほっ……ふぅ……ひっ! や、やだ……」
 『彼』が動き出す。エリの体にわずかにまとわりついていたシャツと下着がはぎ取られ、
汗ばんだ胸が露になる――――二つの丘がふるりと揺れて、汗の粒をシーツにはじいた。
 胸に触られるのを守ろうと、エリは縛られたままの両腕を胸元に寄せ、身体を縮めようとするが、
それを見越してだろう。『彼』は、エリの下半身へと手を伸ばしてスカートのすそを握りしめてきた。
「だ、駄目! や、破っちゃやだよ!」
 冷たく、固い物をぴたりと押し当てられる感触に、エリは必死に暴れ始めた。
彼女のスカートは簡単に脱がせることのできる構造ではあったのだが、
それが『彼』には分らなかったのだろう――――破ると決めたらしく、裾を引っ張ってくる。
「や、やめてよぉ……おねがい、おねがいだから……やめて……」
 尻を振り『彼』の動きを阻害しながら、懸命に訴え続けるエリ――――そのスカートは、
エリが一番気に入っていたものだったのだ。お小遣いを少しずつ貯めて買った、
友人たちにもよく似合っていると誉められた、白いスカート。
「破かないで…………ふぇぇ……」
 必死の訴えが通じたのか、『彼』がスカートから手を離す。
 止めてくれた。そう思って安堵して、エリが力を抜いた瞬間。
「……破かないと、脱がせないじゃないか」
 布の裂ける音は、なぜか聞こえなかった。あり得るとするのなら、
聞きたくなかったから聞こえなかったのかもしれない――――ともあれ、スカートは無残に切り裂かれた。
 それを認めたくないエリだったが、ただの布きれと化したスカートの残骸が背中にばらまかれて、
嫌でも現実を知ってしまう。
「あ……ああ……うう……」
 身にまとっているものすべてを奪われたエリに訪れたのは羞恥などではなく、絶望だった。
全身の力が抜けて、抵抗する気力が少しずつ削れていく――――それを感じ取ったのだろう、
『彼』がエリの目隠しを外す。柔らかい光が瞳に差し込んできたが、涙でぼやけて何も見えないままだった。
「やだ……やだやだぁ……やだよぉ……」
 身体は動かせないにしても、エリの口からは拒絶の言葉が漏れ続けていたのだが、
『彼』がそれを気にする様子はなかった。エリの身体を仰向けに転がし、
エリの胸へと手を伸ばしてくる――――ぐに、ぐにと歪む、エリの年齢としてはやや大きめの二つの丘。
「すげぇ……」
 『汗臭くて、やだな』現実逃避をしてにそんな事を考えているエリが眉をひそめている様は、
汗の粒が光が反射して輝いている様子と合わせて、どこか淫猥な雰囲気を生み出す――――さらに、
荒い呼吸で揺れている二つの胸。その先端で凛と自己主張している桜色が、『彼』の本能の猛りをどこまでも高めていく。
「はぁっ、ひゃっ……や、やめてよ、やめてよぉ……」
 快楽を与えてくるわけではないが、本能のまま動くかのような荒々しい動きが、
『彼』の興奮が乗り移るかのように、エリの興奮も否が応でも高めていく。
 若く瑞々しい肌にふさわしい弾力で犯す指を跳ね返しながらも、
手のひら全体に吸いついてくる感触が気に入ったのか『彼』はしばらくの間指だけで胸をいじり続けた。
「あぅ! あ、ああ! な、なめ……なめて……うぅっ」
 時間にして数分――エリにとっては永遠に続くのではないかと思った数分の後、
『彼』は突如胸に齧り付いてきた。柔らかく生暖かい舌で薄く敏感な肌を舐めまわされ、
エリの背筋に今まで経験したことのない感覚が走る――――気分が落ち着かなくなるようなむず痒さと、
いつまでも浸っていたくなるような温かさが混じった、不思議な感覚。
それは不快なものではなかったが、耐えきれず縛られたままの両手を『彼』の頭に押し当てる。
 少しだけ行為を止めてくれるのではないかと期待したのだが。
「ひゃんっ!」
 止めるどころか、乳首に強く歯をたてられて、思わずエリの口から大きな嬌声が漏れる――――はっとして
口を噤むのだが、『彼』はその声を聞き逃さなかった。意地の悪い笑みをエリに向けた後、さらに激しく胸を犯し始める。
 わざとびちゃびちゃと音を立てられながら、胸の形が『彼』の望むように変わっていく。
押しつぶされ、引っ張られ、二つに分かれてしまうのではないかと思うほど強く握られ、跡が残るほどに強く吸いつかれる。
「あ、う、う……ふぁ、ふあ……や、やめて……」
 胸をいじられるたびに、わずかながらも快楽を感じてしまうエリ。
自分が堕落してしまう予感のおぞましさに、エリは抵抗しようと手を振り上げた。
「やめてぇ! ……あんっ!」
 手を振り下ろし、『彼』の頭に叩きつける。一度、二度、三度目に叩いた瞬間、
『彼』はエリの両胸の突起を口と手で刺激してきた。ぐりぐりと指で弄られる右の乳首と、喰らうように食まれる左の乳首。
固く隆起した両の乳首を『彼』はとても気に入ったのか、
ひたすたにしつこく責めてくる――――じわじわと熱が身体全体にしみわたっていき、胸全体がじくじくと疼き始める。
「やだ、やだぁ……ちくび、やだよぉ……ひぁっ!」
 何かに飲み込まれそうな感覚に精一杯抗議しながら、『彼』を叩き続けるエリだったが、
『彼』の手がエリの股の間に割ってこようとしたことで、手の動きが止まってしまう。
誰にも触られたことのないエリの大切な部分に、『彼』の指が触れた。
「あ゛っ!? ああぁ!!」
 その瞬間、痺れに似た衝撃が襲ってきて、エリはびくりと身体を痙攣させた。
濡れた吐息が口から漏れ始め、うるんだ瞳に情欲の熱が宿る――薄く生えている毛をなぞり、
閉じている秘裂をこじ開けようと動く『彼』の指。それがエリの中に入ってくる直前。
 ゆっくりと、エリは両拳を大きく――先ほどよりも、大きく、早く、振り上げた。
「んー!」
 そのまま全力で振り下ろす。ごん、と鈍い音。拳をきちんと握っていなかったためか、
右手に強い痛みが走る。打撲で痛みあ残るかもしれないほど強く叩きつけた甲斐あってか、
どうにか『彼』を退けることには成功した。殴られた箇所を抱えて呻き、『彼』がエリから離れる。
 その隙に、エリはベッドを勢いよく蹴って『彼』の下から抜け出した。
視界はややぼやけていたが、先ほどとは違い何も見えないほどでもない。
エリは手を伸ばしてベッドの背もたれを握りしめた――金属製だったため、
冷房で痛いほどに冷えていたのだが、指が白くなるほど強く握りしめて、
エリは自分の身体をベッドの外に引きずろうとした。
「……痛いなぁ」
 上半身がベッドから落ち、床に手が触れた瞬間。『彼』の呟きが聞こえた。
わずかに遅れて足首を掴まれて、ベッドの上に引きずり戻される。
じたばたと暴れるのだが、その甲斐なくエリは再び仰向けに転がされた――――先ほどと違うのは、
『彼』がエリに馬乗りの形になったことだ。ちょうどエリの臍の上に、ぴんと天井を向いた男根が揺れている。
 頭をさすりながら、『彼』がエリを見た。
「……酷いやつだなぁ。エリは」
 聞こえてきた声は、強い怒りを孕んだものだった。
エリの身体が恐怖に震え始める――――殴ったんだから、殴られるかもしれない。
そんなことが思い浮かんで、エリはせめて顔だけは守ろうと両手で顔を覆い隠した。
「ご、ごめ……ごめんね……ふぇ……ふぇぇ……」
 謝ってはいけない。逃げ出そうとするのなら、抵抗しようとするのなら、
決して謝ってはいけないはずだったのに。エリの口からは、謝罪の言葉が出てしまった。
そして、その謝罪の言葉が、『彼』の心に強い嗜虐心を生んでしまうことになる。
「悪い子は、お仕置きしなくちゃな」
 『彼』はそう呟くと、後ろ手でベッドの上を探り何かを――――どうやら
エリのスカートの残骸らしいが――――掴み、それを使ってエリの両手がさらに強く縛ってきた。
 ぎり、ぎりと縛り付けられた両手首に走る痛み。
「あ……ぅ……」
 呆然とその様子を見ていたエリは、逃げられなくなったということを悟り、小さな吐息を漏らした。
 諦めと、わずかな肉欲の混じった、熱のこもった吐息だった。
「四つん這いになって、尻をこっちに上げろ」
「……え?」
「聞こえなかったのか? 四つん這いになれって言ったんだ」
 恐怖に押しつぶされ、麻痺した感覚の中聞こえてきた声。
それに逆らう余裕もなく、エリはゆっくりと身体を動かし始める。
すぐに手を突いて四つん這いになることはできたのだが、
どうしても恥ずかしくて尻を上げることができずに、
うずくまってしまう――それを見てだろうか。『彼』が突然ベッドから降りる。
「ひっく……?」
 バネがきしむ音の後、ひたひたと床を歩く音が聞こえ――――ぱちり、小さな音の後に、
非常に強い光がエリの網膜を焼いた。
「ひっ! や、やだ。電気つけないで!」
 眩んでろくに見えない視界の中、エリは胸を隠そうとシーツに上半身を押し当てた。
自然と、尻が持ち上がる形となり、『彼』に向けて彼女の恥ずかしい部分が丸見えとなる。
寝汗はもう引いていたのだが、暴れた際に出た新たな汗が――――芳醇と表現したくなるほど、
甘く、魅惑的な香りを持つ汗が彼女の白い尻を薄く光らせていた。
 見られていることに気づたエリは身体を小さく縮めるが、すでに遅かった。
大股で三歩。『彼』は走るようにベッドに近寄った後、エリに飛びかかってきた。
「や! や、やだあああああ!」
 両手を縛られていることも忘れて、逃げ出そうとしたエリだったが、
立ち上がることすらできずに、『彼』に両の尻を鷲掴みにされた。
そのまま尻の割れ目を大きく開かれる――――性器だけではなく、後ろの穴まで見えてしまう格好。
「すげえ……こんな風になってるのか」
 汗と汗ではない淫らな液体で濡れた秘裂を、興奮した口調で呟きながら覗き込んでくる『彼』。
何者の侵入も許したことのないそこは、ぴったりと閉じていながらも、ひくひくと何かを誘うように蠢いていた。
それどころか、裂け目からはぬらぬらと光る液体がじわじわと漏れ出して、太ももに伝っている。
「ひっ! ……や、やだ……こわい、こわいよ……」
よほど興奮しているのか、荒い鼻息がエリの秘所に直撃してくる。
加えて背中がくすぐられているようなこそばゆい感触が全身に走る――――が、
その感触が意識の隅に追いやられてしまうほどに強い羞恥が、エリの喉から絶叫が産みだした。
「み、見ちゃヤダ。だめ、だめだめ……だめえええ!」
 エリは懸命に足を動かし、『彼』の顔を離そうとしたのだが、それは全く意味をなさなかった。
熱気のみで構成されているのではないか。そう思えるほどに熱い吐息がエリの秘所に吹きかかるたびに身体に走る衝撃が、
エリの力を奪い去っていたのだ。
「エリのここ、すげえエロい…………開いてみるか」
「やだ、見ないで……やだやだやだやぁ……ひゃぁ!」
 『彼』の人差し指が中指が、濡れそぼった肉の裂け目を開いた。
愛液で濡れて光る、腫れているのではないかと思うほどぷりぷりとした桜色の肉でできた細い穴からは、
どうしようもなく淫猥な女の匂いが、湿気を帯びた熱気とともに漂ってくる。
「に、匂い嗅がないでよぉ……」
 ふん。ふん。ふん。と音を立てるように匂いを嗅がれていることに気づいて、エリは涙ながらに訴える。
『彼』は一旦息を吸い込むのを止めて――それでも決して裂け目から眼を放そうとはせずに――呟いてきた。
「なんかすごく、汗臭いな。ちゃんと洗ってるのか?」
「あ、あらってるもん……ひっく、ぐすっ、ぐすっ……ふぇ、ふぇ……
 あんまりと言えばあんまりな言葉に、エリの瞳からボロボロと涙があふれる。
――もっとも、夏場で蒸れている女性器が、汗臭いという感想だというのは、
ずいぶんと柔らかい表現ではあるのだが。
 ともあれ、『彼』はエリのの匂いを嫌っていないようだった。
若干口調を柔らかくして囁いてくる。
「いや、でもすごくいい匂いだから泣く必要はないぞ。舐めたくなる」
「ふぇ……?」
 聞き間違えたのではないか。そう思ったエリに彼女の人生の中で最大級の衝撃が走る。
「ひんっ!」
 べろん。
 そんな音が聞こえたはずもないのだが、柔らかく、温かく、濡れた物体――――『彼』の舌が、
彼女の秘裂をなぞったことで、エリの頭にそんな擬音が浮かぶ。
戸惑うエリに襲い来る刺激――――身体がぶるると震え始め、びちゃびちゃと蠱惑的な音が部屋に響いていく。
(うそ! ……舐めてる? え、えええ?)
 状況をたしかにつかむことができ、混乱するエリ。
彼女の身体を襲う未知の感覚が、調子の外れた楽器のような、それでいてどうにも艶の混じった
色っぽい音を、彼女の口から生み出していく。
「あっ、あんっ! ああん! や、やだあっ!」
 左手でエリの尻をがっしりと掴んで束縛し右手と口で秘裂をひたすらに弄ぶ『彼』は、
本能の赴くままに舌を動かしているようだった。むっ、っとしたエリの熱が『彼』の顔全体にまぶされているはずなのだが、
『彼』は息継ぎすらせずに舌をひたすら動かしてくる――――蜜穴の入口に舌先をさしこみ、
口を大きくあけ陰裂ごと加えこむかのようにかぶりつき、
薄ら生えている陰毛をこそぎとるかのように柔丘にしゃぶりついてくる。
 性的な快楽にほとんどなれていないエリにとって、痛みを伴う『彼』の動きは拷問に等しかった。
涙は際限なく瞳からこぼれ、肺に空気が満たされることがないほどに呼吸が激しくなり、
身体が弛緩してエリの口端から唾液がこぼれ始め出す。
「ふぁぁぁ……きもち、いの、いやぁ……」
 そして『彼』は、エリがもっとも反応する部分――十分に興奮し、すっかり隆起している桜色の肉豆に攻めを集中させてきた。
「そ、そこ……いたいの、こわい……やあっ!」
 覆う皮をこそぎとるかのように強く舌を押し当て、歯先を小突くように当て、吐息を集中してぶつけて。
「ふぁ!? や、んんんっ〜〜〜〜!」
 飲み込もうとするのではないかと思うほどに強く吸いつかれた瞬間。
びりり、とした痺れと、傷口をこねくり回されるような痛みが同時にエリに襲いかかり、
彼女は絶叫しながらシーツを握りしめた――――口から音が漏れるたびに襲い来る消失感に耐えきれず、
大きくあけた口を閉じ、濡れたシーツに噛みついた。

 ――――舌が舌がくりとりすをつぶしてぐちゅぐちゅが指がうっすらと生えてる毛を掴むように爪が
左のお尻に食い込んで痛いはずなのが変な気分にびりびりびりびりする痺れる身体が
駆け巡る頭の中が白黒にぐるぐると点滅して怖くて怖くて気持ち良くて怖くて怖くて怖くて――――

 錯乱していく精神。そのなかで妙な音が聞こえた。
「ぷはぁ。……ん? なんだ?」
「ひっく、ひっく……」
 『彼』の顔が股間から離れていくことには気づくことはできたが、
逃げよう。となど思えるほどにまともな思考はできなかった。
ただ、少しでも息を整えようと荒い呼吸を繰り返すエリ。
「うぇぇぇぇ……」
 強い吐き気がこみあげてきたのだが、口からは唾液しかこぼれない。
加えて、身体中に満ちる熱が脳を焼き尽くしたとでもいえばいいのか、
まともに考えることさえできなくなってしまっていた。
「ひっく……ぐすん……」
「ほら、エリの携帯が鳴ってるぞ。ユイからだってさ」
 嗚咽を漏らし、涙と鼻水を垂れ流していたエリに、
『彼』の気配が再び近寄ってくる――ぎしりとベッドのきしむ音の後、
尻を優しくさすりながら、『彼』は携帯をエリの目の前に放り投げてきた――――母親に買ってもらった
ばかりの真新しい白い携帯電話は、折りたたんでも小さなディスプレイが見えるデザインになっている。
『彼』が電話をかけてきた人物を知ることができたのは、それを見たからだろう。
 もっとも、エリは涙のせいで液晶の文字を読むことはできなかったが。
「ほら、出ろよ」
 目の前の携帯電話に手を伸ばすことすらせずにただ泣いていると、
『彼』はそれを掴み、エリの顔に押し付けてきた。
同時に脇腹をくすぐる様に触ってくる――甘い、抵抗できない痺れが全身に広がり始める。
「ひっく……?」
「電話に出ろって言ってるんだ」
 今にも通話ボタンを押しそうな『彼』の言葉と態度に、エリは震えながら首を大きく横に振る。
脇腹を探る指が臍へと移動して、エリを攻め立てるようにつねってきたが、
それでもどうにか否定の言葉を口にする。
「ひっく、やだ、やだ、っく」
 短い時間で喉を酷使したためか、エリの口から出たのは、掠れたものだった。
さらに子供のように首をぶんぶんと何度も何度も大きく左右に振ると、
エリの肩まで伸ばした髪が揺れて、口元に髪の毛が一本まとわりついてきた。
 汗で涙で濡れた黒い糸が頬に張り付くさまは、狂おしいほどの色情を纏っていた。
「さっきから、嫌だってしかいってないじゃないか。
一度ぐらい、俺の言うこと聞いてくれてもいいんじゃないか?」
 そうかもしんない。
 『彼』の屁理屈を一瞬だけ肯定したくなり、エリは携帯電話に手を伸ばしかけた……が、
すんでのところで理性を取り戻し、携帯電話の代わりに二人の体液で撓んだシーツを掴む。
臍をいじっていた手が下腹部に移動してきたが、それに奥することはせずに。
「や、だ!」
 懸命に絞り出した否定の言葉。
「俺が電話に出てもいいのか?」
 それはすぐに返されて、否定できない状況に追い込まれる。
『彼』が電話に出る。そうなれば恐らく自分は解放されるだろう。
でも、それだけは。それだけは止めないと――――
 ――――どうして、知られちゃダメなんだっけ。そんなの、おかしいのに。
「ほら」
 臀部をなでる『彼』の手が止まり、もう一度携帯電話が頬に押し付けられる。
思考するのと止め、力なくいやいやと首を振る――――もう少ししたら、
ユイがあきらめるかもしれない。それに賭けたのだ。
「出ないなら」
 言葉と同時に、『彼』はエリを背後から抱き締めるように覆いかぶさり、
ぬるりとして、熱い何かが臀部に押し付けてきた――――『彼』の固い陰毛がちりちりと尻をくすぐる感触が、
エリの背筋に恐怖を走らせて。
「ひっ! な、なにこれぇ……あ……あつい……」
 ぴとりと、固く、脈打つモノがエリの秘所にあてがわれる。
その興奮しきったった性欲の塊は、爆発する寸前の熱を放っていた。
「なにって、知ってるだろ? 保健体育の授業で習ったはずだし」
 ゆっくりと腰を前後に動かし、『彼』はモノを擦りつけてくる。
勃起して皮が剥けた男性器がエリの裂け目に先走った体液を塗りたくり、
唾液と愛液でどろどろに溶けたエリの性器と、がっしりと掴まれた右胸の突起と、
『彼』の胸板と密着しているエリの背中が、溶けてしまいそうなほどに熱を帯びる。
「うそ……うそっ! ……や、やだ、いれないで!」
「挿れないから安心しろって。……ただし、電話に出なかったら挿れるけど」
 ずりずりと愛液を尻に塗りたくる様に動く『彼』のモノは、今すぐ暴発しそうな気配を纏っていた。
「うぅ……ひっく、ぐすっ……」
 逆らえないことを理解し、エリは携帯電話を両手で掴む。
ディスプレイに表示されている『ユイ♪』の文字に理不尽な怒りを覚えつつ、通話ボタンを押した。
「もしも……ひゃっ!」
 耳に押し当てて言葉を発した瞬間、『彼』は先ほどよりも勢いよくモノを秘裂に擦りつけ、
そのまま前後に腰を動かし始めた。素股、という言葉をエリは知らなかったが、その行動が性行為の一端であることは
理解できた――――モノが肉豆を擦るたびに身体に走る電気と、
今すぐにでも挿れられてしまいそうな不安感に思わず吐息が漏れる。
「あ、やっと出た! どうしたのエリ。みんな待ってるよー!」
「ま、待ってるって……なに?」
 幸いなことに妙な声を出したことには追及されず、ユイはがやがやとうるさい喧噪を背に、
苛立つほどに明るい声で話しかけてきた。ずるり、ずるりとエリの股をなぞり動く
『彼』のモノが与えてくる刺激に耐えながら、エリは返事をする。
「何、って。祝! 宇宙人撤退パーティだよ! メール送っていろんなところ探したのに、
エリったら全然見当たらないんだからさー……あれ、なんか具合悪そうだね?」
「え? げ、げんきだよ?」
「そう? なんか息が荒いみたいだけど」
 できる限り携帯電話にあえぎ声が届かないように、
エリはがんばっていたのだが、ユイをごまかすことはできなかったようだった。
もちろん、エリが何をされているかまではわからなかったようだが。
「うん……ちょ、ちょっと、具合悪くて」
「あ、そうなんだ……って、元気じゃないじゃん!」
「う、うん。……ひゃ!」
 散漫な意識の中、どうにか会話をつづけるエリを、『彼』は容赦なく攻め立ててくる。
エリの首筋に生暖かい息を吹きかけながら時折舌を伸ばし汗を舐めとり、
左手でふるふると揺れる胸を苛めながら右手で秘裂をなぞる男根をサポートし、
どうにかして猥らな吐息を出すまいと耐えるエリを虐めてくる。
「ホントに具合悪いそうだね……って今どこにいるの?」
「い、今……? じ、自分の部屋だよ」
 嘘を吐いた、その瞬間。
「嘘吐き」
「う゛っ!」
 『彼』の囁きと共に、みち、みちと肉と肉が絡み合う音を立てながら、『彼』の肉棒がエリの中へ埋没していった。
全部ではない――――全体の四分の一すら入っていないだろう。
だが、傷口が押し開かれるような鋭い痛みがエリを襲い、彼女の口からは鈍い悲鳴が漏れだす。
「あれ、そうなんだ。扉が壊れそうなぐらい何回もノックしたんだけど……ってエリ、大丈夫?」
 さすがのユイも妙に感じたらしく、少々物騒な返事の後、やや慌てた口調で問いかけてくる。
『彼』のモノがさらにエリの中へ完全に入ってしまったのなら、それに返事をすることはできなかっただろう。
だが、『彼』はゆっくりと腰を動かして、エリの中から肉棒を引き抜いた。
 ずぽりと、音が鳴る。
「っく……だ、だいじょぶ、だから……っん!」
 もちろん、『彼』のモノが抜けていったからとはいえ安心はできるはずもない。
中から引きずり出されるように飛び出た愛液を塗りたくるかのように、
『彼』のモノは再びエリの秘裂を擦り出す――――処女が奪われるかもしれないという恐怖感が現実味を増し、
身体にさらなる熱が生まれる。その熱を吐き出したくて、エリは携帯電話の通話口を手でふさぎ、
後ろを振り向いた。ニタニタと笑っている『彼』に向けて抗議の視線を送る。
「さっき言っただろ。悪い子はオシオキだって」
「あ、あたし、何も悪く……」
「嘘を吐いたじゃないか。嘘吐くのは、悪いことだ」
「う、うぅぅぅ……」
 相も変わらず屁理屈をエリに語りかけてくる『彼』――――屁理屈なのは確かなのだが、
エリが反論することができない以上、その言葉はどうしようもない力を持っていた。
だんだんとエリの頭の中も、自分が悪いことをしたというイメージに塗られていく。
「……なんだか、ほんと具合悪そうだね。お薬持っていこうか?」
 何も聞こえなかったことを不審に思ったらしく、
ユイが椅子を蹴とばすような音とともに、そんな提案をしてくる。
背筋が凍る感触――それさえも快楽の味付けとなってしまっていたが――に身を震わせながら、
エリは通話口をふさいでいた手をどけて、ユイに語りかけた。
「え? い、いいよ! んっ……も、もうだいぶ楽になったから」
「そんなに息荒く言われても、あんまり説得力無いけどなぁ〜」
 疑わしげなユイをどうごまかせばいいか。エリは必死にそれを考えようとするのだが、
『彼』の動きによる刺激がそれを許さない――――胸を、尻を、腹を、背中を、足を、
エリの全てをまさぐり弄る指がどうしようもなく心地よく、意識を白く染めていく。
「だ、大丈夫だって……ふぁ……ねたら、なおるからぁ!」
「それじゃあ、今から薬を持って……て、あ! ちょっと、何やってるの!?」
 エリの言葉を聞くことなく、ユイはこちらに来ると決めたようだったが、
どうやら向こうで何か見過ごせないことが起きたようだった。罵声とともに、ガラスの割れる音や、何かが壊れる音が、
一段と大きくなった喧噪とともに携帯から聞こえだす。
「んっ……ユ、ユイ」
「あ、ごめん。今すぐそっちに……」
「お、おやすみ!」
「え? ちょっとま」
 叫び、無理矢理に会話を終わらせて電話を切り、エリは携帯を遠くに放り投げた。
眠ったことにすれば、部屋に来られても大丈夫かもしれない。そう考えたのだ。
 思いのほか甲高い音が部屋に響き、闇へと消える。
「ぇっく……ひっく、ふぁ……」
 会話している間ずっと我慢していたしゃっくりと嗚咽をエリは一度に吐きだした。
からからに乾いて痛む喉に唾を流し込み、安堵に身を委ねようと身体と意識を弛緩させ、
「ひゃ! や、だ。やだ!」
 気絶する寸前、再び身を裂くような痛みが下半身に響いて、驚き振り返る。
らんらんと色欲に輝く瞳が、エリを射抜いていた。
「誰が電話を切っていいって言った? ……オシオキだな」
 冷たい、それこそ『彼』の口から出たものとは思えないほど人間味のない言葉。
それが聞こえると同時に、エリの秘所に『彼』の右手が触れた。
「ひっ! や、やだっ! う゛……あんっ!」
 細い。細いのだが、確実に痛みをもたらす何かがエリの膣内に侵入してくる。
「ゆ、ゆび、ゆびやだぁぁ!!!」
 その正体を悟り、エリは絶叫して顔をシーツに押し付ける。
人差し指と薬指で押し開かれた花弁から侵入してくる中指は、
狭くキツイ穴を拡張するかのように、膣壁をぐり、ぐりと押してくる。
濡れた肉穴の中を指で掻きまわされ、まるで頭の中までもが掻きまわされているような感覚が走る。
 あまり感覚が鋭くない部分とはいえ、精神的な刺激は気が狂いそうになるほど強く、
エリの身体はだんだんと猥らな――――『彼』のモノを受け入れる準備が出来上がるほどに猥らなものへと変化していく。
「や、やだ、やだよぉ……なんか、変だからぁ、やめて……あんっ!」
 自らの身体に起こる変調に戸惑いながらも、エリは必死に抵抗しようとした。
何度も、何度も何度も『嫌だ』と、『やめて』と言って、止めようとした。それなのに、その思いは届くことなく。
「誰が止めるか。……ここら辺かな?」
「んっ! あ、だ、め……だめぇ!」
 『彼』の動きはさらに激しさを増し、エリが反応した部分を集中して攻めてきた。
強くなる快楽の波にあらがえず、エリの意識が白んでいき、そして。
「やああああああっ!」
 陰核のちょうど裏側に『彼』の指先が当たった瞬間。
勢いよく霧吹きを吹いたような音とともに、エリの秘裂から細かい水滴が噴出した。
無色で微かにアンモニアの匂いのする飛沫が、『彼』の手と腕を濡らしていく。
「ふぁ……やぁ……」
 がくがくと身体が震え、意識が白んで行く――――自慰による絶頂さえも知らないエリにとっては、
『彼』に与えられた快楽はあまりに強すぎた。くたりと全身を弛緩させ、ベッドに倒れこむ。
(おもらし……しちゃった。へんなの、こどもみたい…………きらわれちゃう、のかな)
 『『彼』に嫌われてしまうかもしれない』いつか浮かべた考えが、再び思い浮かぶ。
すでにまともな思考が失われていたエリは、その考えがおかしいということにさえ気づけなかった。
 そして。
「……う! うそ! いれないって……や、やだ……」
 ぴたりと入口に押し付けられる男根。
エリは快楽の余韻でまともに動かない右腕を後ろに回し、拒絶しようとしたのだが、
その腕を掴まれ、さらに身体を支えていた左腕までもが『彼』の手に掴まれる。
 両腕を後ろに引っ張られて
「おもらししたエリが悪い。……いれるぞ」
「やだ、やぁ…………やだああああああああああ!」
 剛直に貫かれた瞬間。エリの口からその夜最大の絶叫が飛び出した。
顎が外れるのではないかというほどに大きく開いた口から、
『あ』とも『お』ともつかない音が暗い部屋に響き渡る――――エリの肺から空気が無くなるに連れて、
その音は小さく、かすれていった。
「あ……あう…………はい、ちゃた。あたし、はじめて……はじめてなのに……」
 肉を裂かれる痛みに呆然とつぶやくエリの口の端から、
唾液がぼたぼたとこぼれおちる。さらに瞳からは涙が際限なくあふれ出し、
加えて全身から噴き出す汗――――エリの体から水分が無くなってしまうのではないか、
そう思えるほど大量の液体が、シーツに染みこんでいく。
「ああ……入ったぞ。結構すんなり入ったけど、中はキツイな。もう、イキそうだ」
 『彼』が苦しそうに呻いた言葉は、エリにとって非常に危惧するべきもののはずだった。
だが、処女を奪われた痛みがエリの思考を停止させ、『彼』の言葉を理解しようとできない。
「うそ……うそぉ……あたし、こんなはじめて……」
 キスから始まって、お互い照れながら服を脱がしあって、
明るいのは嫌だから電気を消してと頼んで、最初はうまく挿入できなかったりなんかして。
 ――――そんな甘い初体験を望んでいたエリにとって、
現実はあまりに過酷なものだった、思い人に奪われた、というのは望みどおりではあるが、
想いを伝えあっておらず、力で奪われたとなると望とはかけ離れてしまっていた。
「いっ! んっ! い、いたいよ。うごかないでぇぇ!」
 エリが失望を胸の奥で反芻している間に、『彼』がゆっくりと腰を動かしはじめる。
未だ成熟していないエリの身体は、男性器を完全に受け入れることができず、
腰を強く押し付けられるたびに、先端が子を宿す器官まで届いていた。
「おく、おくまできて……ああん!」
 尾骨から腰骨へ、背骨へ、頭へ、脳髄にまで駆け上がってくる振動から、
二種類の痛みが――――脳が焼けるように苦しい痛みと、
全身がとろけるような心地よい痛みが生まれ、エリの意識を掻きまわす。
「痛い。とか言いながら、ヌルヌルしたのがからみついてくるじゃないか。
本当はもっとしてほしいんだろ?」
「ちがっ……ちがうよぉ! あっ、あんっ!」
 『彼』の言葉攻めに首を大きく横に振って否定するが、
事実エリの膣内は『彼』のモノを貪欲に締め付け、奥へ、奥へといざなうように動いていた。
「ひあっ、うっ! や、やだぁ……変な動き……しない……んっ!」
 突然、『彼』の腰の動きが変化して、エリに与えられる快楽が変化する。
ただひたすらに前後に動き、奥を突くだけだった動きは、
どこか背徳的な快楽を――――『彼』に支配されているのではと錯覚してしまうような快楽を与えてきていたのだが、
腰を上下左右に動かし、丹念にエリの膣内の肉壁を擦る円の動きは、
エリに芽生え始めた快楽の発生点を攻め、痛みを快楽へと変えてくる。
 肉棒が差し入れされるたびに飛び散る飛沫の量は『彼』の太ももを濡らすほどまでに増え、
秘所から立つみだらな音が、エリの耳を侵食していく。
「いや、いやぁ! ぐちゅぐちゅ、んぅ……しないで、よぉ……」
 聞きたくなかった。快楽におぼれ、愛液を垂れ流しているからこそ生まれるその音を聞きたくなかったのに、
『彼』は容赦なく男根を突きたて、回し、擦りつけてくる。
「や、だあっ! あっあんっ、いやぁっ!」
 懸命に否定の言葉を出すエリだが、もはやその言葉に説得力は皆無だった。
子供さえもその声を聞いたのなら『喜んでいる』とわかるほどに甘い声しか、エリには出すことができない。
「ああ、やばい。もう出る。出るぞ……エリの奥に、一杯出すからな……」
 だが、『彼』が切羽詰まった声で宣言したのを聞いて、エリの意識が覚醒する。
「ひゃっ! あ、だめ、だめ、だめだめ! 膣内はだめぇ!」
 このままだと、膣内に出されてしまう――――つまり、妊娠してしまうかもしれない。
それを理解して、エリは懸命に暴れようとした。だが、彼女の身体は意識に反して動こうとしない。それどころか、
『彼』の性器から放たれる子種を受け止める準備をするかのように、きゅうきゅう男根を締め付けていく。
 膣内にだしてほしくない。そのはずなのに。身体は彼を受け入れようとしていた。
「出すぞ、出すぞ……」
「出さないで、出さないで……出さないでぇぇ!」
 速度を増し、角度を変えながら差し込まれる男根。エリの臍の下あたりにずん、
ずん、と響く感覚は、エリの身体全体をどろどろに溶かすような快楽を生んで行き、そして。
 ぶるると『彼』の身体が――――性器が震えた。
「……くっ……やば、吸い込まれる」
「え……? や、やだ……やだあああぁぁ!!!」
 精液が膣奥をたたく感触――――そんなものは無かった。
ただ、『彼』の身体が大きく痙攣したことと、放心したように力の抜けきった『彼』の言葉が、
射精が始まったことを示していた。
「いやぁ……ぬいて、ぬいてよぉ……」
 精液を注ぎこまれていることを理解しても、エリにはどうしようもなかった。
ぴったりと押し付けらえた腰は、どうあがいても密着したまま離れないということを示していたし、
快楽に溺れているエリの身体は、『彼』の絶頂を喜ぶかのように震えていたからだ。
 だくだくと子宮に流れ込んでいく精液を想像しながら、エリは口を開く。
「やだ、できちゃう……できちゃうよぉ……赤ちゃん、やだよぉ……」
 ぴったりと密着した結合部から響いてくる、じくじくとした震えを呼ぶ感覚。
身体全体に広がっていくそれは、子供ができるかもしれないという恐怖心を強くしていった。
「はぁ、はぁ、はぁ…………くっ」
 ――――『彼』がエリの膣内から性器を引き抜いたのは、精液を出して数分後だった。
すっかり柔らかくなってしまった男根がずるりと抜けて、
エリの膣内にあった異物感が薄くなって行き――――どろりとこぼれおちた精液が股を伝う感触が、新たに芽生える。
(お、おわった……のかな)
 少しだけ安堵して、エリはゆっくりと自らの秘所に両手を伸ばした。
乱暴に扱われたそこは強い痛みを発していたし、今すぐに自らの中に残留する精液を少しでも掻きだしたかったからだ。
「いたっ……あ……ぅ……やだ、たくさん……」
 精液と愛液と血液で濡れそぼった秘所に触れたとたん、視界が眩むほどの痛みが襲ってきた。
犯されたということを実感し、涙があふれ出すが、どうにか意識をつないで膣内へと指を沈める。
(だされたの、そとにださないと……)
 エリとて、その行為があまり意味のないことだとは知っていたはずだった。
どれだけ指で掻きだしても、精液をすべて掻きだせるはずもないし、妊娠する確率が大きく減るわけでもない。
だが、すでにまともな思考能力が失われているエリは、涙を流しながら指先にまとわりつく精液を外へと押し出していく。
 その行動が、『彼』の劣情を呼び戻しているとは気づかないままに。
「そうだよなぁ……このままだと、孕んじゃうんだよな」
 懸命に精液を掻きだしていると、ぬっとりとした熱いモノが、尻に押しつけられた。
「や、やだ……」
 それが何であるかを悟り、エリは手の動きを止め、前方に伸ばして身体を前に引っ張り始めた。
 逃げたかった。いつものように、逃げたかった。怖いことから、嫌なことから、辛いことから、逃げたかった。
 逃げたかったのに。
「はぁ、はぁ……逃げられるとでも、思ったのか?」
 がっしりと右肩をつかまれてしまう。手や肘を必死に動かして前に進もうとしても、
同じ場所から動くことができない。尻に押さえつけられている男根がどんどん固くなっていき、
身体の芯が震えるほどの恐怖が全身を包んでいき、終いには背後にいる『彼』が得体の知れない怪物のようにさえ思えてきて。
「ひっく……やだよ、やだよぉ……ひっく、だれか、だれか助けてぇ……」
 エリは遂に、助けを求め始めた。『彼』を止めようとすることを諦めて、救いを求め始めた。
「おかー……さん…………おとーさん……」
 まず最初に助けを求めたのは、両親だった。
十分な愛を一身に受け育ったエリは両親のことが大好きだったし、
エリが助けを求めたなら、『彼』らが拒むことなどあり得ないはずだったからだ。
「ふぇ……ふぇぇぇ……」
 だがその声が決して届かないことを知り、エリは大粒の涙をこぼして――――そして、
両親ではない他の人物に、助けを求め始めた。
「たすけて……おねがい……」
 エリの味方で、信頼していて、助けてもらいたい人物を。
「こなみくん……ふぇぇぇ…………たすけてぇ……」
 ――――エリがその名を口にした瞬間。エリの背中に熱い滴が落ちた。
泣いていたエリは、それに気づかなった。彼が泣き始めたことに、気付かなかった。
「い゛ぁっ!」
 そして、ぐち、と音をたて、エリの膣内に再び異物が侵入してきた。
再び硬度を取り戻した『彼』の男根は、いきなり最高速度でエリの膣内を掻きまわし始める。
「うっ! ぁんっ! やぁぁっ!」
「助けるはずないだろ! ……俺が、俺がエリを犯してるんだから!」
 部屋を震わすほどの叫びがエリの耳朶を打つと同時に、『彼』はエリの身体を包み込むように抱きしめてきた。
舌を首筋に這いまわらせ、両胸を握りつぶすかのように刺激して、
腰をグラインドさせて肉棒を内壁に擦りつけてくる――――体位がわずかに変わったことにより、
今までとは違う少し刺激がエリの身体に走り、冷めかけた熱が再び燃え始める。
「こわれるっ……こわれちゃうよぉ!」
 大きく燃え始めた身体の熱が、エリを快楽の虜にしようと全身を焼いていく。
エリの急所を乱暴に刺激してくる『彼』の分身が、放たれた精を潤滑油として、エリに痛みではなく強い快楽を与え、
今まで経験したことのないほどの大きな快楽の波がエリを襲いかかり、
口からだらしなくよだれをこぼしながら、エリは嬌声を上げる――――彼女の腰も、
もはや『彼』を止めようとする意志がないかのように『彼』に合わせて勝手に動き出していた。
「は、はははは。腰が、動いてるじゃないか!」
「あんっ! んぁぁっ! きもちいいの……やぁ、いやあああ!!」
 嫌だ。
 気持ち良い。
 どちらも本音だった。これ以上『彼』に侵され、心身ともに傷つきたくは無かったし、
とはいえ快楽が与えられなくなってしまっのなら、狂ってしまうのではないかと思えるほどだった。
乳首をつねられるのも、首筋を噛まれるのも、男根を差し込まれるのも、世界が歪むほどに気持ち良くて。
「はぁっ! あっ! だ、だめぇ! もう、もうだめ、だめ、だめぇぇぇ!!
やだ、やだあ……きちゃう、こわれちゃう! あああああぁぁっ!」
 尻を打つ腰の速度が、さらに、さらに速度を増して行き――――
「はぁっ! はぁっ! ……く、くそ…………また、出る……」
 二度目の宣言を下された瞬間、
「い、いや……もう、ださないで、せーえき、ださないでぇぇぇ!」
 子宮まで貫こうとするかのように、エリの最奥まで男根が打ち込まれる。
その衝撃でエリの視界が純白に染まり、彼女は強制的に絶頂に押し上げられた。
「あああああああぁぁぁっ!!」
 そして、二度目の精液の放出が始まる。それと同時に、
エリの意識が途絶える――――びくびくと身体が痙攣して、口の端から泡をこぼれおちた。
「くっ、はぁ……二回目なのに、すげえ出てる……」
 しばらくして、『彼』の言葉が聞こえると同時に意識が戻る。
浮遊感に似た絶頂感に恍惚の表情を浮かべながら、
エリは自らの胎内に精液がじわじわと満たされていく感触を捉えた。
 汚されてしまった。それを今までで一番深く実感して、エリは。
「ぅ……ぐすっ……また、なかに…………にんしんしちゃうよぉ……ぐすっ」
 失望の塊ともいえる言葉の羅列を口にした。
 好きなのに、大好きなのに、こんなの、こんなの――――――
「ぐすっ……うぁ……うわああああああああん!!」
 そして口から飛び出る、大の大人を恐怖させるほど大音量の泣き声。
 それも『彼』を止めることはできずに夜は続き――――――――



 ――――何回精液を注ぎこまれたんだろう。
「あー…………」
 体位を変えて、自分の上で腰を振り始めた『彼』を、エリはぼうっと眺めていた。
もはや痛みすら感じず、時間の感覚さえつかめなくなっている。
 ぐらりと、彼の姿が歪んで消え始める。
(そういえばきょうって……あんぜんなひ、だっけ。だめなひ、なんだっけ)
 『彼』が自分を犯しているという事実だけが、彼女の頭に浮かんでいたが、
それも真っ暗になった視界とと同じように、
ゆっくりと消えていく――――自分の意識が闇に沈んでいくことに気付いて、エリは思った。
 こんな、こんな辛いことがあるなら。
(…………このまま、眼が覚めなきゃいいのに)
 ――――それが死と同じ意味を持つことに、エリは気付かなかった。


続く

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