[152] シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました sage 2007/09/06(木) 00:25:57 ID:cPV9WtPA
[153] シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました sage 2007/09/06(木) 00:26:39 ID:cPV9WtPA
[154] シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました sage 2007/09/06(木) 00:27:15 ID:cPV9WtPA
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[167] シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました sage 2007/09/06(木) 00:35:02 ID:cPV9WtPA
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[170] シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました sage 2007/09/06(木) 00:36:12 ID:cPV9WtPA
[171] シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました sage 2007/09/06(木) 00:36:50 ID:cPV9WtPA

「ところでセイン。貴女は聖王教会のシスターシャッハにプレゼントを贈ったそうね」
「そっすよー。むふふふ、引っ掛かったかなー?あの暴力シスター」
「・・・はぁ、見事に引っ掛かったそうよ。シスターはカンカンに怒ってたそうだけど・・・」
「げげっ、やりすぎた!?」
「とても素敵な香水をくれたから帳消しにしてあげるって」
「はぁ良かった〜」
「ねぇ、セイン、ここからが本題なんだけど・・・」
「?そんな真剣な顔して、どしたの?ドゥーエ姉」
「その、貴女が贈った香水って言うのは、もしかして、私がこっちに戻ってきてから貴女にあげた香水?」
「そだよ。ドゥーエ姉に貰った香水。あたしは香水なんて使わないからさ。シスターなら使うかもって思って」



○シャッハさんは大変な香水を貰ってしまいました



「ん、んーっ!!むーっ!!」

やめなさい、離しなさい。力の限り叫んでいるつもりなのだが口から出てくるのはくぐもった悲鳴だけだ
何故、こんなことになっているのだろう。シャッハは混乱の極みにある頭の中でそんなことを考える
いつも通り、今日も、いつも通りの一日が始まって、あの子に貰った香水を少し使ってみて、その上品な香りに良い気分だったというのに

「・・・」

ガラス玉のように瞳を濁らせた男が三人
騎士でも無い、訓練を積んだ経験など一切無い、屈強とさえ言えないただの一般人の修道士である
いかにシャッハがAAAランクの陸戦騎士と言えど、不意打ち気味に三人の男から襲い掛かられては抗う術を持たなかった
廊下を歩いていて、挨拶と共に擦れ違い、後ろから呼び止められた瞬間には、いきなり三人掛かりで寄ってたかって押さえ込まれ、近くの物置に引きずり込まれ、
現在に至っているのである
この期に及んで尚、教会の関係者を傷つけたくないという思いが、シャッハに実力行使による逃走を選ばせないでいた



ケープは既にはぎ取られており、尼僧服の上から胸をまさぐられている
異性から、しかも強引に。自分で触ることさえ風呂場で身体を洗うときくらいしかないというのに
後ろから抱きしめるようにして動きを封じ、片手で口を押さえている男が首筋に舌を這わせてきた
いくつもの痣を残し、熱い吐息を吐きかけながら、涎まみれの舌先はうなじから首の付け根、首筋を上って下顎のラインをなぞられる
最後の一人はあろう事か尼僧服のスカートに潜り込んで太腿に撫でさすりながら股間を舐めようと躍起になっている
脚をバタつかせて抵抗しようとしたが、その拍子に一度股間を舐められて、その瞬間走った、初めての快感に意識が飛びかけたシャッハは今は何もできずにいる
ただぴったりと脚を閉じて、侵入を拒むのが精一杯だった

びりり、という音に混濁した意識を取り戻すと、尼僧服の胸元がはだけられていた。ボタンも外さず強引にはぎ取ったのだろう。布地が少し破れている
飾り気など欠片もないブラジャーが覗いている。これもあっさりと剥ぎ取られた
裸の胸が見られている。恋人でも無い男に。埃っぽい物置の中で、三人掛かりで押さえ付けられて
零れ落ちた涙さえ、天上の美味でも味わうかのように舐り取られた。頬に残る粘っこい涎の感触が気持ち悪い
プロポーションに関してはあまり自信がないシャッハだが、厳しい鍛錬により引き締まった肢体は健康美に満ちている
ボディラインのメリハリに関しては、常々こっそりとカリムやはやてを羨ましく思っていたくらいで、特に胸に関しては10代後半の頃からずっと慎ましさを保っている
6課の隊員達の胸が豊かなのは、はやてが揉んでいるからだと耳に挟んだときには、こっそり頼んでみようかと思ったくらいで

だが現実に自分の胸を触っているのは、汗と脂にべたべたする男の手だ
ぎゅう、と胸の芯を握りつぶされる痛みに思わず身を屈ませてしまう。だが、ほんの僅かに走った甘い電流に動悸が速くなりつつあった
熱い舌が乳房に押しつけられた瞬間、背筋に走ったのは全身が産毛が逆立つような悪寒だったのだろうか。それとも、快感だったのだろうか
ぷっくりと勃ち上がった乳首は指先に弄ばれる度、舐り上げられる度に身体に震えが走る
貞淑な修道女の顔が、恐怖と羞恥と、ほんの少し快楽に歪み始めている

「んー!ん、ふぁぅっ!!んむーっ!!!」

塞がれた口から漏れ聞こえる嗚咽も、少しだけ熱を帯びつつある
聖職者として、騎士として、長らく己を戒めてきたシャッハは、殆ど未知の体験である『快楽』には酷く脆かった

スカートに潜り込んで太腿にしがみついていた男が、いきなりショーツの上から湿り始めていた膣に強引に指を突き込んだ
自分の指でも滅多に触れぬ秘部に薄布越しに責め立てられ、シャッハは咄嗟に腰を捩って逃げようとするが、
その拍子にショーツの布地でクリトリスが擦られ、そこから走った快楽の電流に彼女は小水を垂れ流しながら絶頂を迎えた


カリムの執務室のドアをノックして、ひょぃと顔を覗かせたのはヴェロッサだった

「おはよう、義姉さん。それにシャッ・・・あれ、今日はシャッハはお休みかい?」
「あら、ロッサ。おはよう。シャッハはまだ来ていないのよ。朝食の時間にも食堂に出て来なかったそうだから、少し体調を崩しているのかもね。
最近、ようやく事後処理が一段落してきたところだったから、シャッハも疲れが出たのかも」
「ふぅん・・・でもその様子だと、何の連絡も無いみたいだけど・・・?」
「そうね、ロッサと違って遅刻も無断欠勤もしたことが無いし・・・少し心配ね」
「・・・僕と違って、って言うのは余計だけど・・・まぁ、その通りだね」

少しだけ鋭い顔になって、ロッサはカリムに尋ねた

「・・・それじゃあ、朝の礼拝の時には?」
「その時はいたわよ。いつも通りだったけど・・・ロッサ?」
「あぁ、ごめん義姉さん。ちょっとシャッハの部屋に行って様子を見てくるよ。体調が悪いようなら休みを取って貰うってことで良いんだよね?」
「え、えぇ、それで良いわ。シャッハの部屋は判るの?」
「何度も連れ込まれてお説教されたからね。僕にってはシャッハの部屋と言うよりも、あそこはお説教部屋だよ。じゃぁ、少し行ってくる」

言うが早いか、ヴェロッサは執務室を後にしていった
カリムは普段に似合わぬ素早い義弟の姿を、呆然と見送った


執務室を出てすぐにヴェロッサは走り出していた
一月前の“ゆりかご事件”。その事後処理が一段落付きつつある。それは良い事だ。勿論良いことだ。ヴェロッサとしても仕事が片付くというのはとても喜ばしい
だが、こういう時期というのは何かと良からぬ事を目論む馬鹿が湧いてくる
視察に赴いていた要人が誘拐されたり、人手が駆り出されて警備が手薄になった管理局保有の施設が襲われたり、
現在、クラナガンの警備は主に機動6課が受け持っているが、それが首都圏ではない僻地となると話は違ってくる。そして聖王教会は管理局とも強い繋がりがある

(警告に来たつもりが間に合わなかったか・・・クソ、最悪だ・・・!!)

勘違いであればいい。あのシャッハがそうそう拉致などされるものか。部屋に行ったら、きっと風邪でも引いて伏せっている筈だ
そう、自分に言い聞かせながら、ヴェロッサは走る



「シャッハ、シャッハ!居るかい?」

ドアを叩くが返事はない。ついでに鍵が掛かっている。シャッハに限って、爆睡してて気付かないと言うことは無い。絶対にありえない
あの武闘派シスターの日常は日の出と共に始まるのだ。それが、既に日も高い、そろそろ午前のお茶にしても良いような時間にまで寝入っているという事はありえない
起き上がれない程の病状である。その可能性も無くはないが、早朝の礼拝には出てきていたというのだから、その線は限りなく薄い
では、やはり・・・

最悪の予想に奥歯を噛み締めながら、ヴェロッサは猟犬を放った
猟犬、と言っても勿論本物の犬ではない、ヴェロッサだけが使える稀少技能:無限の猟犬である
魔力の続く限り、無限に放つことのできる彼の猟犬は、視覚・聴覚の共有能力などを持ち、不可視化も可能という優れた斥候だ
また、本物の猟犬同様の嗅覚も備えており、臭跡探知もお手の物である

手始めに30頭
聖王教会の建物は、正面こそ城壁のような高い石積みの壁と堅牢な門扉を備えているが、残る3方は木々の茂る山に囲まれている
逃げるならば山の方だろう。そうアタリを付けてヴェロッサは三方に10頭ずつの猟犬を放った
あとは、カリムに頼んで正門では検問を行ってもらうよう、連絡を取る・・・取ろうとした時だった

ふと、妙な匂いが鼻についた
不快な匂いではない。良い香りだ。だが、この教会という建物の中では少々不自然な香りだ

「・・・香水・・・かな?」

神父と香水、何とも退廃的な組み合わせを想像してげんなりとするヴェロッサであった
外部の人間が香水を吹きかけていた可能性も無くはない。だが、既にここは教会でも奥の方である。そうそう部外者は立ち入ってこないだろう
もし、侵入してくる部外者がいるとすれば・・・実行犯はそいつ、という事になるのだろうか
部外者である自分の事は棚に上げて、ヴェロッサはそう結論付け・・・物は試しと香水の残り香を猟犬に追わせてみることにした

「香水なんてつけて教会に侵入するような馬鹿なんて、居るはずは無いんだろうけどね・・・マダムキラーな神父でも居たのかな?」

颯爽と走り出した猟犬は、すぐに立ち止った
そこは、シャッハの自室からさほど離れてもいないところに、ひっそりと立つ薄暗い物置である


「・・・ぅぅ・・・ぃゃだ・・・やめ・・て・・・」

震える声帯を駆使してそう懇願するが、男達の返答は丸めたショーツを口に突っ込むという行為であった
床に組み伏せられ、股を開かされ、男の一人がベルトを緩めてズボンを降ろし、

シャッハが初めて見る成人男性の性器は、実にグロテスクに隆起していた

蹴り付けようと繰り出した脚は逆に掴まれて逃げられなくなってしまった
こんな、こんな所で無理矢理に犯されるなど、できることなら舌を噛み切って死にたいくらいだ
だが、それもできない
熱く潤った秘部に、何かが当たる感触を感じる。くちゅり、という小さな音の意味を認めたくなかった
もう駄目だ
だが、どうせ駄目ならば、狂ったように泣き叫んでやろう。それで破瓜の傷みが紛れるとはとても思えないが
最後の抵抗のつもりで、シャッハは鼻から大きく息を吸い込んだ
そして、

「げうっ!!?」
「がぁっ!!!?」
「くえっ!」

三様の呻きを残して、突如男達が倒れ伏した
衣服の肩の辺りが激しく破れている。まるで、獣にでも襲われたかのように



「シャッハ!シャッハ!!!」



「・・・ろっ・・・さ・・・?」



その後のことは、シャッハは良く覚えていないようだ
ヴェロッサは取りあえず、シャッハの裸身を自分のジャケットと脱ぎ捨てられている強姦魔達の衣服で隠し、やむなくカリムの執務室へ駆け込んだ
仰天するカリムだが、シャッハの只ならぬ様子に慌てて人を走らせた
一つ、件の物置で昏倒している修道士三名を拘束すること
二つ、シャッハに着せる衣服を用意すること
本当は風呂にでも入れてやりたいが、今のこんな状態の彼女をあまり人目に晒したくない
ヴェロッサが気を利かせて湯を張った桶を持ってきたため、温かいタオルで身体を拭いてやることにする

酷い有様ね、とカリムはそう呟いた
・・・まだマシな方だよ、とヴェロッサは応えた

強姦は未遂だった。殴り付けられたような痕跡も無い。だが、首から胸元にかけては、刻印のような黒い痣が幾つも残っている

「ロッサ、ごめんなさい。話し合うことは色々あるのだけれど・・・」
「わかってる、これはもう仕事どころじゃないよ。義姉さんは、シャッハに付いていて欲しい」
「・・・ごめんなさい。私がしっかりしていたら、こんな、シャッハがこんな目に遭うことなんて・・・」
「・・・当面、警備を厳重にして欲しいんだ。最近、ミッドのあちこちで管理局に恨みを持ってる連中が暴れてる。そうした連中の差し金かもしれない」
「わかった。あなたから見れば万全の警備なんて言えないかもしれないけど・・・全力を尽くす」


そんな事件から一週間
ミッドチルダの各地では、今日もはぐれガジェットが出ただの、テロリストが出ただのと事件が一日に一回は起こる
聖王教会での、現職の修道士が修道女を強姦未遂という事件は水面下で処理され、人々の口には上っていない。ただ、武闘派シスターの不在に首を傾げる者は若干名居るようだ
だけど、今のところは、表面上はいつも通りの、穏やかな平穏を保っている


「義姉さん、ロッサです」
「どうぞ、入って頂戴」
「お邪魔します、と・・・さて、とりあえず、コレがあの三人の尋問の最終報告。
信じ難いことだけど、あの三人は何も憶えてない。最初は演技なんじゃないかと疑っていたけど、どうやら本当に憶えていないようだ。
三人揃って礼拝堂に向かっていたら、急に立ちくらみがして・・・っていうのが共通している最後の認識だね」


「何故、シャッハを狙ったのかは?」
「わからない。気が付いたら拘束されていて、訳が判らなかった。ってね。外部から何者かに操られていた可能性もない。
かといって、本人達の意志だった訳でも無いみたいだ。本局の心理分析官が断定したそうだから・・・そうなんだろうね」
「・・・つまり?」

言いにくそうに顔を歪めて、ロッサは呟くように言った

「シャッハの方に、原因があったのかもしれない。捜査担当はそういう見解を示している」

その言葉にカリムは息を呑み、その言葉に含まれる下卑た意味に、憤りを露わにして執務机に両手を叩きつけた
そんなことがあってたまるかと、その瞳は語っている。勿論ロッサも同じ気持ちではある

「ともかく、この一件はもうこれで決着という事にするしかない。問題はこれからだよ」
「・・・そうね、シャッハはどうしてる?」
「何も変わらないよ。毎日大人しくしてる。セーフハウスからは一歩も出ようとしないし、僕が仕事をさぼって見舞いに行っても怒りもしない。
僕としても、見るに耐えないよ。カウンセラーの真似事はしてみているけど・・・いつも反応は薄いね、何とか会話にはなるけど」
「カウンセラーの真似事って、ロッサ。あなたが?」
「似合わないのは承知してるよ。だけど、放っておけないから・・・」
「そうじゃないわ、話をしてくれるのね。“あなたになら”」
「え?」
「実は、私の方からカウンセリングの手配はしていたの。女性のカウンセラーに行ってもらったのだけど、報告では長丁場になりそうだって言ってたわ。
ロッサ、お願いできないかしら」
「ちょ、ちょっと待って義姉さん。その、専門家よりも僕の方がうまく行くなんて、そんなことあるわけないって!」
「でも、あなたの方が専門家よりも良い感触みたいだし、お願い、シャッハには一刻も早く笑顔を取り戻して欲しいの。
秘書官としてとか、そんなのじゃなくて、私達とシャッハは家族のようなものでしょう?」

カリムの懇願に、ロッサは諦めの混じった溜息を一つ吐いて、両手を上げた
降参、という意思表示である

「わかったよ・・・シャッハとは、毎日何時間か話してみる。それで状況が好転するなら安いものだしね」
「ロッサ!ありがとう!!」


そうして、ロッサはクラナガンにあるセーフハウスに毎日脚を運ぶことになった
あまり区画整備のされていない、雑多な住宅街の中にある極平凡な一軒家である

「シャッハ、ロッサです。入るよ」
「・・・ロッサ」

3日目くらいから少しだけ、シャッハは笑顔を見せてくれるようになった
だが、そんな笑顔もヴェロッサの目には酷く寂しく映る。彼にとって、シャッハ・ヌエラという女性は、気が強くて口うるさく、おまけに手が早い、困った姉のような存在だった
そんな彼女が、静かに落ち込んでいる姿など、見たくはなかった

「今日は、ケーキを焼いてきたんだ。新作だから、是非忌憚の無い感想を聞かせて欲しいな。お茶淹れてくるね」

そう言い残して、ヴェロッサは台所に立った
こうして日に1・2時間。シャッハと他愛のない時間を過ごすようになってそろそろ一週間になる。未だに、ヴェロッサはシャッハに復帰を促すような言葉を掛けてはいない
本当に、他愛のない話しかしていない。新しいケーキのレシピについてとか、クロノの最近の親バカ振りについてとか、時には一緒にクラシックを聴いただけという時間もあった
だけど、そんな時間を重ねることで、シャッハは彼女の“日常”を少しずつ取り戻していけるんじゃないか
何冊もの参考書と格闘して泥縄な知識を詰め込んだヴェロッサとしては、取りあえず焦らないことだけは決めている
書類の塔に囲まれつつあるカリムには申し訳ないと思うが

「はい。どうぞ。食べてみて」
「えぇ・・・うん、とても美味しいわ」
「そう?良かった・・・」

シャッハの負った心の傷は深い。だけど明るい材料が無いわけでも無かった
食は細いが自発的な食欲があること、会話が何とか成立すること(ヴェロッサ相手に限るが)、PTSDによる自傷行為等が見られないこと
日常に戻ってこれる日はそう遠くないだろう、そう思う
だけど、聖王教会に戻るのかどうかはヴェロッサにもわからない。むしろ、戻らない可能性の方が高いと思っている

「ロッサは・・・とても器用ね」

珍しく、シャッハの方から会話を切り出してきた



「良くそう言われるよ。だけど世の中には器用貧乏って言葉もあってね。あんまり役に立つ事は無いものさ」
「貴方が、最初にケーキを焼いたのは・・・13歳くらいの頃だったかしら。騎士カリムと、私と、御祖父様や御祖母様。みんなに振る舞って、自分は食べられなかった」
「・・・そうだったね、余ったクリームだけ舐めたんだっけ」
「それでも・・・とても嬉しそうだった」
「みんなが喜んでくれたからね。もし僕の身にレアスキルが宿っていなかったら・・・菓子職人なんてのも悪くなかったかもしれないね」

その言葉に、シャッハはいつもより少しだけ明るい笑顔を見せた
何かを懐かしむかのように、少しずつケーキを口に入れてゆく

「私の手は・・・」
「ん?」
「私の手は、騎士の手・・・硬くて、がさがさした。優しくない手・・・」

ぽたり、と大粒の涙がこぼれ落ちた

「ロッサ・・・私は、貴方に私の事を話した事がありましたか・・・?」
「シャッハの事?シャッハの事は大体知っているつもりだけど、出会う前の事までは、知らないかな・・・?」
「じゃあ、少し、聞いてください。私は・・・私も、ロッサと同じく孤児としてグラシア家に引き取られてきたんです。
生家であるヌエラ家は代々ベルカの誇りを受け継いできた、聖王教会とも縁のある尚武の家系・・・
しかし、ヌエラ家にとっては不幸な事に、当主であった両親は女児を一人授かっただけでした・・・つまり、私の事です」

ヴェロッサは、黙って彼女の言葉に耳を傾ける
シャッハは、紅茶の入ったカップを、そこに映る自分の顔を見つめながら、訥々と語った

「武家の家系として、騎士の誇りを受け継ぐ血筋として、私は幼い頃から武術の鍛錬に、軍学の勉強に励んできました。
厳格だった祖父からすれば、男児を授かれなかったことが悔しかったのでしょうね。私は、12歳になるまでに女の子らしい遊びや、服を着たことなど一度もありませんでした」
「・・・お祖父さんが、憎かった?」
「・・・少しだけ・・・でも、祖父が天寿を全うし、両親が相次いで病に倒れ、ついには帰らぬ人となり・・・私は、あっという間に天涯孤独になったんです」
「・・・」


シャッハは、静かに泣いていた
声音を震わせることもなく、ただぽろぽろと、涙だけが流れ落ちていた

「グラシア家に引き取られてきて、貴方の良く知るシャッハ・ヌエラとなってからは・・・最初はただ、ただ怯えていたんです。
誇りや血筋に縛られない、自由な生き方がどうしてもできず、ひたすら鍛錬に明け暮れていました。そうしている間だけは、祖父の影に怯えずに済んだから・・・」

カップを取り落とし、シャッハは両手で顔を覆い俯いた

「私の手は・・・女の手とは思えないほどに堅くて、優しさなんて一つも持ち合わせていなくて・・・
騎士としても身を立てることができず、女としても私は結局中途半端で、私は騎士の血筋を疎みながらも、その血筋に縋っていたんです・・・浅ましいほどに・・・」

嗚咽を聞きながら、ヴェロッサは心の中で溜息を吐いた
両親がどうだったのかは判らないが、厳格だった祖父としてはシャッハには家系に恥じぬ騎士となって欲しかったのだろう
シャッハ自身も、その期待には応えたかったのだろうが、その前にヌエラ家そのものが無くなってしまった
拠り所を失った彼女の不幸は察して余りある。騎士として生きることしか教えられなかった少女にとっては、生きる意味そのものが失われた様なものなのだから

そして、今回の事件で、彼女は自分が“女”であることを、強姦という最悪な形で強引に意識させられた
幼少の頃から“女”であることを捨てるようにして生きてきた彼女にとって、今まで何とかバランスを保ってきた自分の心を崩壊させるほどの出来事だったのだ

救わなくてはならない。かつては、自分をそうしてくれたように

「・・・僕は、シャッハには何度も怒られて、その度叩かれて・・・
でも、憶えていないかもしれないけど、最初にケーキを焼いたとき、一番に褒めてくれたのはシャッハだったんだよ。優しく、頭を撫でてくれたよね。あの時は本当に嬉しかった」
「・・・ロッサ・・・」

ヴェロッサは、シャッハの手を包むように、そっと両手で握り締めた。彼女がくれた温もりを、今度は自分が彼女に伝えるために

「シャッハの手、僕は好きだよ。そりゃ何度も叩かれたけどね。だけどそれだけじゃない。優しさや温もりを教えてくれた。
それに、大切な人を護るために、シャッハはここまで頑張ってきたんだろう?誇り高い生き方をずっと貫いてきたんだ・・・僕や義姉さんは知ってるよ」
「でも、私は・・・」
「おまけに、僕みたいな軟弱者をここまで導いてくれたんだ。シャッハが居てくれて本当に良かったって思ってる」



ヴェロッサは、椅子に座っているシャッハの前に跪いて彼女の身体を抱きしめ、震える身体に染みこませるように、そっと言葉を紡ぎ出した

「お願いだから、もうお祖父さんの影には怯えないで・・・シャッハは、シャッハのままで良いんだ。騎士として生きることがシャッハの人生の全てじゃない」
「・・・ロッサ・・・でも、私は・・・!!」
「誓うよ。もしも、シャッハをシャッハでなくそうとする奴が現れたら・・・その時は、僕が絶対に守ってみせる。だから・・・」

そっと抱擁を解き、跪いた格好のまま、ヴェロッサは涙顔を見上げた

「だから、もうシャッハも自分を押し殺さないで、自分で自分を傷つけないでくれ・・・シャッハの本当の気持ちを知ったから、もう、シャッハのそんな姿を見たくないから・・・
「ロッサ・・・ロッサぁ・・・う、う、うああぁぁぁぁぁ―――――

初めての慟哭だった
初めて聞く慟哭だった
ヴェロッサに縋り付いて、心の澱を全て涙と共に押し流すように、シャッハは泣き続けた

“人は皆、泣きながら生まれてくる”。シャッハ・ヌエラは今日この日に、ようやく生まれることができたのかもしれない





「・・・ぐすっ・・・ごめんなさい。ロッサ・・・その、困らせてしまって」
「全然構わないよ。シャッハの泣き顔なんてレアな物を堪能させてもらったしね」
「あ、あなたという子は!全く・・・今日だけは、許してあげますけどね。今度そんなこと言ったらぐーで行きますよぐーで!」
「それは勘弁・・・でも、やっぱりシャッハはそうで無いとね」

あはは、と笑うヴェロッサに、シャッハは顔を赤くして俯いてしまった
泣き顔を見られたり、乗せられてしまったり、今日はもう散々だ

「それじゃあ、シャッハ。義姉さんにはなんて伝えようか?もう2・3日休んでも良いんじゃないかと僕は思うけど」
「な、何を言いますかっ!2週間も休みを貰っておいて更にズル休みをするなんて許される事じゃありませんっ!」


いつものガミガミとした口調に戻ってくれたのは嬉しいが、ヴェロッサとしては少々不安も残る

「・・・でも、本当に大丈夫なのかい?」
「大丈夫、本当に大丈夫です・・・もう逃げるのはやめるって決めましたから。騎士カリムにも申し訳ないですし・・・それに!」

だん、とテーブルを叩いて、シャッハはヴェロッサを睨め付けながら言った

「私がいつまでもここに居ると、貴方が全然仕事をしてないんじゃないかって心配になりますからね・・・!!」
「失礼だなぁ、僕だってちゃんと仕事をした上でここに通っていたのに」

わざとらしく拗ねた顔を作りながら、ヴェロッサは心の中でだけ、(ここ2・3日は)と付け加えていた
いつもならば、そろそろ拳骨と共にお説教が飛んでくるところなのだが、常に無いことにシャッハは顔を赤くして俯いていた

「そうですよね・・・ロッサ、本当はちゃんとしていますものね・・・」
「え?あ、あー。うん、そうそう。勿論そうだよ!」
「・・・本当でしょうね」
「ほ、本当だよ!本当に本当!」
「・・・まぁ、信じてあげましょうか」
「意地悪だなぁ・・・でも、今日、もう一晩はここでゆっくり過ごすんだよ。僕は先に戻って、義姉さんに報告しに行くから」
「えっ!?ロッサ、も、もう行くんですかっ!?」

立ち上がり掛けたところで、がっちりジャケットの裾を掴まれていた
その素早さはまさに烈風一陣と言うべきか

「あ、あの、シャッハ?義姉さんだって心配してたんだよ?早く安心させてあげたいし。まさか泊まっていけなんて言うつもりじゃな ―――

涙顔が、そこにはあった
ただごとでは無いくらいに、孤独を怖れる顔がそこにはあった

「・・・怖い、夢を見るんです・・・あの日、物置であった事・・・」
「!!」



「だから、その、今日だけ・・・一緒に、いて欲しいです・・・明日から、いつもの私に戻れるように・・・」
「・・・わかったよ」

気を揉んでいるであろうカリムには申し訳ないが、今日だけはシャッハの罪の無い我が儘に付き合おう

「それじゃ、夕食の支度でもしようか」
「あ、それは私が!ロッサはのんびりしててください。腕によりを掛けて準備しますから!」

そう言って、シャッハはいそいそと台所に向かった
ヴェロッサはそんな、新妻のような後ろ姿を見送りながら、少しだけ引き攣った笑みを浮かべていた

シャッハの得意料理は、聖王教会風煮込み料理・・・またの名をブチ込み鍋・・・だけである
時には、限りなく闇鍋に近いものが食卓に並んだこともあるのだが・・・

「あれ、ここにはあまり変わり映えのしない食材ばかりですね・・・残念」

というシャッハの独り言に、ヴェロッサはこっそりと聖王に感謝の祈りを捧げた


真っ当な夕食にもありつき、シャワーも済ませると、早々に寝ようとシャッハが言い始めた。曰く

「明日からは、またいつも通りの私に戻るんです。早起きは三文の徳なんです!」
「幾ら何でも日の出前に起きるのは早すぎると思うんだけどね・・・」

口答えには聞く耳を持たない

シャッハはヴェロッサを寝台に寝かせると、有無を言わせずその隣に居座って同じ毛布をひっ被り、問答無用で電気を消した

「それじゃ、おやすみなさい。ロッサ」
「あ。うん。おやすみ、シャッハ」


電気が消えて、部屋中に静寂が満ちて、どれくらいの時間が経っただろうか
言うまでもなく、ヴェロッサは寝付けないでいた。隣にシャッハが眠っている。仄かに漂う甘い香りは石鹸か、それとも彼女の香りなのか
そんなことを考え出したら寝付けるはずもなく、まるで遠足前の小学生のように、ギンギンに意識は冴えていた

「・・・・・ロッサ、もう眠りましたか?」

不意に、シャッハが静寂を破って問い掛けてきた
一瞬、寝たふりを決めこもうかと思ったが、

「・・・・・いや、起きているよ。シャッハこそ、寝てなかったのかい?」
「はい・・・何だか寝付けなくて・・・ねぇ、ロッサ」

むくり、と隣に横になっていたシャッハが半身を起こしたようだ
部屋が真っ暗なせいで細部はわからないが、何やら、ぷち、ぷち、という音が小さく聞こえてくる
不意に、カーテンの隙間から差し込んだ月明かりに、ヴェロッサは言葉を無くした

シャッハが、パジャマの上着を脱いで、素肌を晒してそこに居る
月光に照らし出されたその裸身はどこまでも白く、胸元に付けられた黒い痣が酷く醜い物に見えた

「シャッハ・・・?」
「・・・ロッサ。お願いです・・・私を、抱いてもらえませんか・・・?」

涙の気配が微かに混じるその懇願に、ヴェロッサは思わず硬直した

「怖いんです・・・あの日から、私は、自分の身体が不意に熱くなるのが、怖くて・・・」
「でも、シャッハ。それは・・・」
「お願い、ロッサ。私の最後の我が儘です・・・あなたが、好きだから・・・」

覚悟を決めるか。ヴェロッサ・アコース
少し投げやりっぽく自分の心に言い聞かせて、彼はその腕にシャッハの身体を抱き締める。毎日の鍛錬の為に、女性らしい丸みや膨らみには少々乏しい身体
だけど、最初に女性としての憧れを抱いたのは、彼女だったっけ。そんなことを考えながら、そっと震える唇を重ね合わせた


触れ合わせるだけの、互いの存在を確かめ合うような接吻はしばらく続いた
ヴェロッサはゆっくりと唇を離して、シャッハの目を覗き込む。互いの顔を見つめ合いながら、小さく尋ねた

「シャッハ。本当に・・・僕で良いんだね」
「ロッサだから良いんです。ロッサでなきゃ・・・嫌です。ん、むっ」

唇を重ねる。今度は深く、情熱的に。唇に吸い付きながら舌を滑り込ませ、シャッハの舌に挨拶をするようにそっとつついた
驚いたのであろう。すぐ目の前にある彼女の目が少し見開かれ、ぎゅっと抱擁をきつくした
怖ず怖ずと舌を絡ませてきたシャッハの反応を嬉しく思い、ヴェロッサも舌使いを激しくする
数分間に渡る接吻が終わり、名残を惜しむように互いの唇は唾液で繋がっていた。上気したシャッハの顔に、性行為に対する恐怖の色が浮かんでいないことに安堵を覚えながら、
ヴェロッサは掌で包み込むようにシャッハの乳房に触れた
その瞬間、シャッハが少しだけ怒ったような表情を浮かべた様に思ったのは・・・気のせいでは無いだろう
自分のプロポーションに少しコンプレックスがあるのかな・・・そんな風に思いながら、ヴェロッサは一言、シャッハに告げた

「綺麗だよ。シャッハ」

たった一言でコンプレックスを撃砕し、胸元を指先で掬い上げるように撫で上げながら、張り詰めた乳首を転がすように触る

「んっ・・はぁ・・・っ!!」

少しだけ嬌声が漏れた。その事が嬉しかったヴェロッサと、その事が恥ずかしかったシャッハの目が合い、シャッハは真っ赤になって顔を俯けた
掌全体を押し当て、少し遠慮がちに乳房を揉み込む。ぴくり、と肩が跳ねたのは快感のためだろうか
掌を背中に回し、シャッハの身体を抱きしめながら彼女の肌に顔を寄せてゆくと

「や、やだっ!ロッサ、それは、いやっ!」

明らかに質の違う抵抗に見舞われた。抱きしめた身体は離さないまま動きを止めると、合点がいった

シャッハの胸元に、刻印のように残る黒い痣。無理矢理に付けられた行為の証
彼女としては全てを忘れたくても、この痣が残るために忘れられない。薄くなりつつあるとは言え、そんな痣がまだ幾つも残っているのだ
自分が望んだ相手だからこそ、見られくない。触られたくない。そんな気持ちはヴェロッサも理解できる



だからこそ、ヴェロッサはシャッハの胸元に口付け、きつく吸い上げた。痣を残すほどに

「ロッサ!やだっ、やめて!お願いだから!」
「・・・シャッハ、よく見て。この痣は、僕が付けた痣だ。シャッハを傷付けようとした男達が付けた物じゃない」

彼女の胸元に残された幾つもの痣。白い肌を汚す黒い刻印。ヴェロッサは同じ場所一つ一つに唇を押し当ててゆく

「・・・ごめん、でももう終わったよ。もう、シャッハの身体には、あいつらが触った跡なんて残ってない。僕が、全部塗り替えたから・・・」
「・・・ロッサ・・・」

抵抗を止めて、こちらを見上げる涙顔にそっと笑いかけ、涙を流す目元にキスを落とす
塩気のきつい味を感じながら、ヴェロッサは愛撫を再開した

「んっ、うあ、あっ?!・・・く、ふぁぅぅ、ひゃんっ!」

愛撫の度に嬌声を上げるシャッハの身体を楽器を様にも思いながら、ヴェロッサはその喘ぎ声に聞き惚れた
張り詰めた乳房を揉みしだき、乳首を指先で摘んで弄ぶ。その度に鈴を振るような喘ぎを漏らすシャッハが、たまらなく愛おしい
パジャマのズボンに指を掛けると、シャッハの手がそれを押し止めた

「待って・・・ロッサ。自分で、脱ぐから・・・」

息も絶え絶えのままシャッハそう言うと、寝そべったまま、腰を浮かせてズボンとショーツを一緒に下ろした
湯気を上げそうなほどに熱く汗ばんだ身体を抱いて、シャッハは潤んだ瞳をロッサに向けた

「・・・シャッハ、触るよ」
「う、ん・・・ッ!?」

指先が、熱く潤った秘部を撫でた瞬間、シャッハの身体が跳ね上がった

「ご、ごめんなさい・・・びっくりしました。急に頭が真っ白になって、身体が勝手に・・・」
荒い息を吐くシャッハの額をヴェロッサはそっと撫で、少し心配そうな表情を作った



「シャッハ・・・本当に大丈夫なのかい?」
「だ、大丈夫です・・・最後までちゃんとしてくれなかったら・・・多分、一生後悔するから・・・」
「わかったよ・・・じゃぁ、シャッハ。少し手を・・・」

ヴェロッサはシャッハの手を取り、彼女自身の手を、彼女の秘部へと導いた
シャッハの指先が、そっと割れ目をなぞった

「・・・な、何これ、私の身体、こんなに熱く・・・?」
「熱いだけじゃない、すごく敏感だよ。僕に触られるのは怖いかもしれないけど、自分の指なら怖くない・・・かな?どうだろう?」
「は、はい・・・自分でなら、少しは・・・んっ・・・ふ、あ、あぁっ!?」

入り口を往復するばかりだった彼女の指先だったが、快感を求める膣は指先を呑み込んだ
指先が埋まり込んだくらいの浅い挿入ではあるが、それでも自慰の経験さえほとんど無いシャッハにとっては強い刺激だった

「や、やだっ、指、腰も、止まらな、い・・・ッふあぁぁぁっ!!!」

蜜を溢れさせる秘部に指を埋め、少しでも快感を得ようとガクガクと腰を揺すりながら、彼女は2度目の絶頂へと押し上げられた
背筋を反らせて快楽の波に翻弄されるシャッハの姿に、ヴェロッサはいよいよ辛抱をしきれなくなり、絶頂の余韻に小さく震える彼女の身体にゆっくりと覆い被さってゆく

「・・・ロッサ・・・?」
「ごめん、シャッハ・・・僕ももう、我慢ができない・・・」
「・・・良いですよ。来てください・・・」
「・・・その、初めて、だよね。すごく痛いかもしれないから、もし痛かったら、すぐやめるから」
「わかりました・・・じゃぁ、絶対に痛いとは言いません」
「え?」

ヴェロッサに組み伏せた身体の下で、彼の呆気に取られたような顔が面白いのか、頬を染めて少し照れたように笑うシャッハである

「言ったでしょう。最後までしてくれなかったら、私は多分一生後悔するって・・・だから、絶対に途中でやめて欲しくないから・・・だから、ロッサ」
「・・・うん、わかった・・・じゃぁ行くよ」


ちゅくり、という粘液を掻き混ぜたような水音が小さく聞こえた。熱く潤った秘部に、ヴェロッサはゆっくりと男性器を埋め込んでゆく

「シャッハ・・・ごめん、少しだけ我慢して・・・」
「はい・・私は、大丈夫だから・・・」

こくり、と頷く彼女の額に接吻を落とし、ヴェロッサは一気に腰を押し進めた
何かが切れるような感触と共に走った痛みは、文字通り身体を引き裂くような痛みだったが、シャッハは歯を食いしばり、ヴェロッサに首筋に抱きついて悲鳴だけは上げなかった
破瓜の証である赤い雫が愛液と共に溢れ出してきた。二人は繋がったまましばらく抱きしめ合っていた

「・・・シャッハ。大丈夫?」
「だい、じょうぶ・・・こんなの、全然、平気ですよ・・・ロッサ」

ちっとも大丈夫ではなさそうな顔でそんな健気な台詞を吐かれても困る
その気持ちに応えたくて、ヴェロッサはゆっくりと腰を動かし始めた。シャッハの膣の中は、性器が細いゴムをぐるぐる巻きにされたかのように強烈な締め付けを感じさせてくれる

「んっ・・・ふっ・・・・はんっ・・・」

シャッハも、段々慣れてきたのか。苦痛に顰められた眉はそのままだが、ほんの少しずつだけど喘ぎ声が唇を割って聞こえてくるようになった
ヴェロッサは、自分の胸板とシャッハの身体がくっつく程に彼女の身体をきつく抱き締め、徐々に腰のスピードを上げてゆく

「ふあっ、んぅっ、ロッサ・・・ロッサ、ロッサぁっ!!!」
「シャッハ、ごめん、僕は、もう・・・っくぅ、ぁ・・・っ!!」

お互いに限界だった。シャッハの絶叫と共に膣は精液を吸い上げるように収縮し、ヴェロッサは抜くことさえ忘れてシャッハの膣を白く汚した

くたり、と汗まみれの身体から力が抜ける。お互いに荒い息を吐きながらもう一度唇を重ね合わせて、二人の意識は眠りの淵へと落ちていった



がば、とヴェロッサは目を覚ました。カーテンの向こうはまだ暗いが、地平線の向こうは微かに紫色に染まりつつある
隣に眠る愛しい女性は、まるで子供のようにあどけない寝顔で寝息を立てていた。お互いに全裸。少なくとも夢では無かったらしい



ヴェロッサはベッドから下りて、取りあえず着替えを片手に風呂場に向かった
手早く汗を流して、朝食の支度を済ませて、シャッハを起こすのはそれからで良いか

日常が戻ってくる
朝焼けに包まれて眠るシャッハの穏やかな寝顔にそんな確信を抱きながら、ヴェロッサは寝室を後にした



幸せになるのも楽じゃない
だけど、不幸を望んでたんじゃあ、幸せにはなれない
幸せを拒否していたんじゃあ、幸せにはなれない

取り戻す、なんて悠長な言葉じゃ間に合わない。奪い返しにゆこう。貴女に得る権利があった、貴女の為の幸せを
君と、僕の、二人で










「しかし、あなたにあげたあの薬が、まさか他人の手に渡るなんて・・・しかも修道女に・・・」
「ねぇ、ドゥーエ姉。あの香水、何かあったの?」
「あー、えっと、その、あの香水はね。私が10年前のちょっとした、大事な任務の時に使ってた香水だったから、
折角セインに上げたのに、セインから人に贈られちゃうのはちょっと悲しい、かな、ってね」
「う、ごめんなさい。ドゥーエ姉」
「あー良いの良いの、そのシスターシャッハも、貴女からの贈り物だったから喜んでくれるんでしょう?“元々は姉に貰った物”なんてこと、絶対言っちゃ駄目よ」
「うん、わかった」

著者:26-111

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