[526]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:51:55 ID:RcbJ9bmb
[527]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:53:37 ID:RcbJ9bmb
[528]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:56:10 ID:RcbJ9bmb
[529]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:56:39 ID:RcbJ9bmb
[530]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:57:14 ID:RcbJ9bmb
[531]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:58:02 ID:RcbJ9bmb
[532]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:58:57 ID:RcbJ9bmb
[533]魔法少女ネガティブフェイト Y´s 第二話<sage>2007/07/11(水) 12:59:33 ID:RcbJ9bmb

「僕がエイミィと結婚した理由、ユーノ、君に解るか?」
「え?好きあって、とかじゃないの?」
「甘い。母さんのお茶より甘すぎる。まぁそれもないとは言わないが。いいか、ヒントは本編における出番の差だ」
「確かに僕よりクロノのほうが圧倒的に出番が多いけど…それと何の関係が」
「ヒントその2だ。このリリカルなのは、と言う作品は恋愛要素の排斥を積極的に行ってる節がある」
「それって逆効果なんじゃ…いや、まてよ…!」
「気付いたようだな。そう、モブとまでは言わないが出番がないキャラとくっつく事による効果は
この作品においては絶大なモノだと断言しよう」
「確かに本編ではエイミィとクロノの結婚についてはとりたてて目立たず、
サウンドステージやコミックスなどの媒体を通すことで発表し、本編における恋愛要素排斥になんら影響を与えない…」
「そう、そして騎士カリムとの会話では妻がいることを仄めかしメイン女性陣、特に主役格の三人に対して
恋愛対象にならないことを暗に示した。この意味、判らないでも有るまい」
「男が出てくれば恋愛と結びつけずにはいられない視聴者でも安心してなのはたちに萌えることが出来る、か」
「そこで君の場合を考えてみよう。容姿は多少男らしさにかけるが整った顔立ち。戦闘能力には欠けるが
補助と特殊な魔法に特化し、デバイスの等の調整も可能な多彩なスキル。
情報を一手に集める職も使い所が多い設定だ。しかもそれまで手付かずだった無限書庫を利用可能にしたという功績は大きい。
正確は真面目で温厚、しかも責任感に溢れ時には命令違反も厭わない強い信念ももっている。
淫獣化がネックとはいえそれすらも長所の一つとして数えてもいいだろう。しかも三人娘とは同年齢で10年来の幼馴染。
リリカルなのはが少女向けなら見せ場も有ったろう。
しかしコレはおっきなお友達向け!モテ男なぞ塵芥と同レベルなのだと知るがいい!」
「そ、そんな…そんなことって…」
「お前がこれから取れる手段はあまりに少ない、たまにでるゲストとして微妙に痕跡を残すか、
出番のないキャラとくっつき本編で相応の出番を得るか、だ。
勿論君と結ばれたキャラは本編での出番は絶望的になるだろう。まぁ悪い言い方をすれば生贄といったところか。最低だな」
「クロノの棚上げ技術は次元一だよ!」
「そう褒めるな。リリカルなのはシリーズは女性が沢山いるから選り取りみどりじゃないか。
アリサやすずか、美由希さんにメイドさんたち、なんならうちの母さんなんてどうだ。
まぁ、僕のお勧めではアリサか。ツンデレは王道だし、なにより風呂場で大事なトコを握られてぴくぴくした関係だろう?」
「今のは僕が聞いてきた中で最低の台詞だ!でも首から胴体にかけては確かにとても大事な部位だよね!」
「とりあえずそれは置いておくとして、
さぁ選べ。このまま『1期』のマスコット(淫獣)と言われ続けるか、
『シリーズ全編』に渡って活躍する希少な男キャラとして僕を双璧をなすか、決めるのは君自身だ」
「ぼ、僕は…僕はぁああああああああああああああああああああああああああ!!!」

「うわああああああああああああああああああああああああああああああ」
寝床から跳ね起きる。息は荒く、なかなか落ち着かない。
酷く悲しく、どうしようもない夢を見ていた気がする。夢の内容は覚えていない。
「ぅ…どうかしたのかいユーノ。朝っぱらから大声出して」
「あ、ごめん。起こしちゃったかな」
布団から抜け出し大きな欠伸をかます紅い体毛をした狼、アルフ。
「いや、いつもこのぐらいの時間に起きるしね。丁度いい目覚まし代わりさ」
狩り衆の朝は早いらしい。朝食に使う食料を用意する役目があるからだ。
「ウチのご主人様を起こすにはちょいとばかり音が足りなかったみたいだけどね」
「すぅ……むにゅ……んぅ………すぅ」
結構大きな声を出したつもりなんだけど、あいかわらずフェイトは寝つきがいい、と言えばいいんだろうか?
「もうちょっと寝かせてやっておやりよ。慣れない生活で疲れてるのさ」
「そのつもり。さて、川で顔を洗ってこようかな。アルフも来る?」
「あたしゃもうちょっとこのコの寝顔でも拝んでるよ。もぅ可愛くてしょうがないのさ、最近のこの娘の寝顔」
人型に変身し、膝を布団と頭の間に差し込みフェイトの髪をなでるアルフ。
「昔のフェイトと来たら寝てる時も泣き面で、もう見てられなかったものさ」
優しくなで続けるアルフの言葉には万感の想いが込められていたように思う。
二人の姿はあんまりにも綺麗で、憶えてない程古い記憶と結びつき鼻の頭が熱くなってきた。
今はもういない、記憶の中にすらない母親は、たぶん、こうして僕の頭を撫でていてくれたんだろう。
溢れてきた涙を見られるのが恥ずかしくて僕は川へと急いだ。

冷たい水でさっぱりした後、偶然遺跡衆4班班長であるカイン兄さん(48歳)と出会った。
挨拶を済ませた後、当然のように今調査中の遺跡のことについての意見交換に移る。
「あとニ、三日もすればあそこは調査完了だろうな。構造上これ以上の隠し部屋があるとは思えない」
「そうですね…地下へ続く道もありそうにないですし…やっぱりただの神殿だったんでしょうか」
地下施設が貯蔵庫を除けば1個もない、と言うのは珍しくはあるが、まぁ、許容範囲だろう。
「結論としてこの遺跡はアーキスの祈祷神殿と見ていいんでしょうか?」
「ああ、この次元はアーキスの支配領域だしな。機械兵士も戦争時代の名残だろう」
そうなるとあまり面白みのない仕事だった。
宗教色の強いアーキス文明では神殿なぞ珍しくもないし、特に目新しい事柄が発見できたわけでもない。
機械兵士と言う収入がなければ赤字だったとも思う。部族全体の生活は自給自足ではあるが、それでもお金はかかるのだ。
「あまり不満を顔に出すな。リーダーのそういった表情は周りの人間に伝播するからな」
はっとして表情を引き締める。まだ終わったわけではないのだ。
「そうだ、最後まで気合を持って事に当たれ。油断や慢心は自分のみならず周囲にも被害を及ぼすからな」
そういって厳しい顔をしていたカイン兄さんは僕の頭に手を載せ乱暴に動かす。
「まぁ、お前ならそう失敗も起こさないだろう。終わればお前も俺たちの仲間だ。長老たちからも文句は出ないだろう」
普段人を褒めたりしないカイン兄さんがこんなことを言うなんて…
その期待は裏切らないようにしないと、と一層気合を入れる僕だった。

汚れを残さないよう力をいれ、しかし生地を傷めぬよう優しく。のんびりやればと生地が縮む、ゆえに素早く。
でこぼこした板をたらいに乗せ、その上で服を動かし的確に汚れを落とす。
魔力で力や持久力を高めてる私は他の人たちより素早くこなす事が出来、このときばかりは重宝がられている。
自分の家庭の分を終わらせて、他の家庭の分の手伝いに写る。
(ふふ、自分の家庭、だって…)
胸の辺りがキュウと締め付けられる。昨日の夜あんな会話したから変に意識してしまっている。
照れ隠しにひたすら選択を続ける。洗濯板を眺め、がしゅがしゅ、がしゅがしゅ。
(ユーノはおっきい方が好きそうだな…お母さんいないとそうなる傾向があるっていうし、アルフのたまに見てるし)
何がとは言わない。まだまだこれからなのだ。がしゅがしゅ。
雑念よ、穢れとともに落ちよとばかりに洗濯に励んでいると、遠くのほうで何がが崩落するような音が聞こえた。
数秒続いたソレは時間とともに収まり、やがて何も聞こえなくなった。
いやな胸騒ぎがした。
音の聞こえた方向にはたしか遺跡があった筈だ。この時間なら遺跡班のユーノもいるはずだ。
最悪の想像を振り払い、遺跡のほうへと向かい走りだした。

辿りついた私が見たものは瓦礫の山。いまだ土煙を上げているソコは確かに遺跡のあった場所だった。
呆然と崩れ去った遺跡を見つめる私に声がかけられた。
「おぉい、ここは危ないぞ。はやく集落にもどるんだ」
確かユーノと同じ班にいたロドさん、だったと思う。
「あ、あの…皆無事だったん、ですよね?」
見れば沢山の人が固まって遺跡を観察している。だいたい遺跡衆の人数ぐらいはいるだろう。
安心して胸を撫でおろ――
「いや、ユーノが中に残された」
「………え?」
だって、なかって、あんな、え、うそ、そんな、あれ、くずれて、なか?
「な、んで…」
「―――」
ロドさんが何か言っている。なぜか耳に届かない。
あの瓦礫の山の中に?こうして見ているだけじゃ全貌すら見えない大きな遺跡なんだよ?
それが、ユーノを……?
駄目だ。駄目だ。駄目だ。
血が凍る。身体も凍る。呼吸が出来ない。指先がガタガタ震える。
まるで母さんから捨てられたときみたいに。
一個だけ違ったのは、頭が空っぽにならず、最悪の絵が脳裏をちらつく。
ユーノが、あの瓦礫に潰されていた。
「っアッ!」
凍った身体に力を入れる。噛み合わない歯の根も強引に打ち付ける。
「バルディッシュッ!!」
『yes,sir』
目標は瓦礫全部!一撃で全部吹き飛ばすッ!
「って、フェイト!何やってんだお前」
「ちょ、皆この娘とめろぉーーーーー!!」
遺跡衆の人たちがバインドで私を取り押さえる。
「離して、離し、離せぇええええええええええええッ!!」
だって、速く助けなきゃ、ユーノが死んじゃう。いなくなっちゃう!
駄目。本当にそれだけは駄目なんだ。私はもう、ユーノがいなくちゃ生きていけないんだ!
「っから落ち着けって!お前ユーノごと吹っ飛ばすつもりかよ!」
「でも、だって、速くしなきゃユーノが」
「ああ、だからお前、エリアサーチで生体反応探れ。反応無いとこ俺たちで瓦礫どかしてくから」
首をがくがく振る。もうユーノを助ける以外に考える余裕はなく、支持に従い魔方陣を展開する。
いない。ここにもいない。こっちにもいない。もっと奥には…いない。さらに奥…
「そんな…嘘」
何処にもいない。人間と思われる反応が一個もない。それって…し
「嘘だ!!見落としただけだ!もっとよく探せば!」
何度やっても結果は変わらなかった。虫やネズミなどの小さい生物の反応は拾えるのに、ただ探している反応だけみつからない。
だって、ユーノが助けてくれて新しい私になって、その私の傍にずっといてくれて…
「嫌だ、嫌だよ…独りにしないで…」
いや、そんなことどうだっていい。好きなのだ、彼のことが。誰よりも、何よりも。
だから死んで欲しくない、生きていて欲しい、隣にいて欲しい、笑ってて欲しい、笑いかけて欲しい、寄り添って欲しい。
知らぬ間に、随分欲張りになってた。でも、ユーノがいなくちゃ、何一つ叶わないんだよ?
「ユーノ…ユーノぉ!!」
「ぇ、呼んだ?」

………はぃ?

いつの間にか私の隣には、胴長のネズミがいた。
不思議そうに私の顔を見上げる彼の瞳は見慣れた翠色で…
「ゆ、ゆーの?」
「うん、あれ?心配かけちゃった?ごめんね」
ぺこり、と謝るその表情は見知った仕草で。
「ほ、ほんとに?ほんとにユーノ?」
「あれ?この姿見たことなかった?スクライア秘伝のトランスフォームでね、使用時は魔力と怪我の回復が速くなって、
しかも使える魔法は変わらず気絶状態や睡眠でも解けない優れものでわぷっ」
「ユーノッ!!」
思いっきり抱きしめる。
無事だった。元気だった。怪我もしてない。おまけに可愛くなってる。
「よかった…ほんとうに、よかったぁ…」
ぼろぼろと涙がこぼれる。立っていられなくてそのまま腰を下ろす。
「あ、そんな心配してくれたんだ…ありがとう。本当にごめんね?」
申し訳なさそうな顔をしてるユーノ。その顔をこちらに近づけ、
ぺろり、と私の涙を舐めとる。
「……」
絵的には何の問題もないけど、心情的にはこう、ちょっとアレだ。
涙を舐めて拭うって…新婚夫婦だってせめて指どまりじゃないのかな?
先ほどまで涙で濡れていた顔は、火が付くくらい真っ赤になった。
そういえばさっき自分はとんでもないことを自覚した気がする。多分、いろんなものが私の中で芽生えた、と思う。
今のままの心地よい関係よりも、先に進みたがってるのがその証拠。
「ね、ユーノ。元の姿に戻って」
「え?あ、うん。解った」
軽く眼を閉じ、魔法が発動される。ユーノの姿が光の線に変わり、だんだん大きくなって、人の型を成す。
その眼が開かれる前に

軽く、その口を啄ばんだ。
二度、三度と親鳥が雛に餌を与えるように。

柔らかい。暖かい。――きもちいい。
いつまでもして居たかったが、そういえば、思い出すことが一つ。
確か遺跡衆の人たち、いたよね?そう思いその方向を見ると…
凄いいい笑顔を浮かべたいい大人たち。綺麗な歯をしてるのがよくわかる。
そして示し合わせたように全員が一斉に親指を立てて拳を突き出してくる。
意味するところは一つ。
『よくやった』
私はユーノから顔を離し、皆に向かい親指を突き出す。
さらに深くなる皆の笑顔。私はきっと鼻息荒く自慢げな顔をしてるだろう。
そう、私はやり遂げたのだ。恥ずかしくはあるが、しかしそれを超えた達成感。
「じゃ、ユーノ。今日は腕によりをかけてご飯作るから、楽しみにしてて」
「ぁ…う、うん…うぁ……ぁああああああああああああああぉおおおおおおおおおおおおおおおおおっ?!」
理解を超えた事態に叫び声を上げるユーノに背を向け走り出す。
自然と笑いがこみ上げてくる。
なんだか自分じゃないみたい。あんなこと人前で堂々と出来るなんて。
この気持ちを自覚した私は、前の私では想像もできないぐらい大胆なのだ。

「ぁわ、あわわわわ」
フェイトが走り去った後、僕はまだ混乱から抜け出せないでいた。
い、今のは、まさか、接吻?!
「ふりぃよ、接吻て。キスとかちゅ〜とか言いようがあるだろうが」
蹲る僕を蹴飛ばすロド兄さん。
「いや、大人しい子と思っていたが、存外やるものだな」
「やっぱあれっすね。死んじゃったんじゃないかとか思った反動とかそんなトコじゃないんすかねぇ?」
「吊橋効果、は違うか。なんていうんだろうな?ショック療法?」
「それにしてもウチでも一番若い夫婦の誕生だな。新記録更新おめでとうってか」
「まだユーノが成人してませんから、まだまだ解りませんよ。遺跡もこんなになっちゃいましたし」
兄さんたちは勝手な言葉を並べていく。人事扱いならまだ判るがこの人たちはそんな大人しい性格をしていない。
こっちの意見も聞かず話は結婚生活の後や子供ができた時の対処などにどんどん移る。
やばい、話を止めないといつの間にか予想もできないことが決定しそうだ。
「あ、そういえばユーノ。お前どうやって出てきた?」
「そういえば後ろから出てきたな。転送魔法つかったならすぐわかるし…」
そう、それだよ、それなんだよ!
「皆が脱出した後、ちょっとヘンな崩れ方をしてる床を見つけてね、トラップかも、と思ったら地下への通路で――」
話を上手くごまかせた僕は今までの経緯を話す。
話しながらも思い馳せるのはさっきの、フェイトのことだ。
まさかあんなことをしてくるとは。ああ、嫌なんて事はありえない。純粋に驚いただけだ。
吃驚もしたが、その後の彼女のあの顔。
清清しいまでのその表情は、いままでフェイトが見せたことのない顔だった。
今までも綺麗な子だ、とは思っていたが、あの笑顔はちょっと反則だ。
あんなことをされてあの顔を見たら、そのままの関係なんて、
家族としての関係なんて、もう保てるはずがない。

思えば、僕はずっと前から彼女のあんな表情が見たかったのだ。あの一点の曇りもない笑顔を。
前はそこが終着で、目標だったのに、それが叶ったとたんにその先をまた望んだ。
どうしよう。このまま彼女を好きになっていったら、いずれ彼女無しでは生きられなくなってしまうかも…
それとももう手遅れだったりするのだろうか?

昨日と同じように同じ布団に入っている。
違うのはアルフがいないことと、私とユーノの気持ちだろう。
アルフは晩ご飯時の私達の様子に何を察したのか、今日は外で寝ると告げテントを出て行ってしまった。
もうランプの光じゃ誤魔化せないほど顔が赤い二人。眼も碌に合わせられない。
掛け布団の下で結ばれている手を意識する。どちらが言い出すでもなく、繋がれた手。
お互い遠慮がちに結ばれていた手が、やがて彼のほうから強く握られる。
「フェイト。僕は、君と一生を共にしたい」
ストレートすぎる言葉。今までのユーノからは想像も出来ないその言葉。
「わたしも」
返す言葉なんて決まってる。強く手を握り返し、
「わたしも、ユーノと結婚して、夫婦になって、子供を作って…一緒にこれからを生きたい」
そう、ずっと一緒に。
「まだ僕ら子供だから、結婚は出来ないけど、今伝えておきたかったんだ」
その真剣な瞳を見入ってしまう。嘘や冗談なんかじゃない、本当の本気。
「誰にも取られたくない。何処にも行かせたくない」
「うん」
「なんか、上手く言葉にできないけど、そう思った。だから、その気持ちが伝えたくなった」
そっか……やっぱり、繋がってる。ユーノの思いは、そのまま私の思いだ。
「遺跡は崩落で未発見の地下が見つかって、調査に2ヶ月ぐらいはまたかかるだろうって」
「じゃあ、成人の儀式は継続?」
「うん。だから2ヵ月後、調査が終われば感謝祭だ。そこで、もう一度君にこの思いを告げる」
「うん。その時、もう一度その思いに答えるよ」
もう、私達に距離はなかった。繋がった手は二人の身体に挟まれ、お互いの顔は額がたまにぶつかるほど。
キスしない理由なんて、なかった。

ユーノが深い眠りに入った頃、私は目を覚ます。もう毎日の日課なので特に意識しなくても起きてしまう。
昨日までは寝ているユーノの顔を眺めたり撫でたり、
アルフを寝ぼけた振りして移動させて私アルフユーノの順番をアルフ私ユーノに変えてみたり、
一度外に出てお花摘みを済ませたあと「寝るとこを間違えちゃった」とユーノの隣に寝付くこともあった。
しかし今日からはもうそんなせせこましいことをする必要はない。
婚約。そんな言葉を浮かべ布団をバンバンたたきたくなる衝動に駆られる。でも我慢。
隣にいる彼の温もりに名残惜しさを覚えつつ、布団から抜け出る。
寝巻きのまま寒さ避けの上着をまとい、テントから出て目的の場所へと向かう。
深く暗い森にぽっかり明いた広場。月明かりに照らされて、静かに佇む紅毛の狼がいた。
「やぁフェイト。今日も月が綺麗だねぇ」
「うん。ありがとうアルフ。気を使ってもらっちゃって」
頼れる使い魔。可愛いお姉さん。もう一人の私。
「フェイトの為なら、さ。結果は聞くまでもなさそうかな」
「うん、ユーノと、ずっと一緒って約束したよ」
そうかい、と大きな口の端が嬉しげにゆがむ。
「でも、そうなるとあたしはお役御免かねぇ」
なんでもないことのように。なんでもない口調で。
「ユーノは、どうしようもならなかったあたし達を救ってくれた。いい奴だよ、ホントにさ」
遠くを、月を見上げてアルフは続ける。
「あたしは、なにもできなかった。でも、あいつはフェイトにくれた。ちょっと、妬けるよ」
「アルフ」
「ユーノがいればフェイトを護ってくれる。安心だ。スクライアの皆だって優しい人たちばっかだしさ。
戦闘がなければあたしはフェイトのお荷物だしね。もう、あたしは――」
首の辺りをキュッと抱きすくめる。
「ケヒッ」
あ、力加減間違えた。ちょっと腕を緩める。
「アルフと私はずっと一緒だよ。ユーノと一緒になっても。子供が生まれても。
おじいちゃんおばあちゃんになっても。死ぬまで一緒。だって、家族だから」
「ゲホッゲホッ…でも、あたしもう、フェイトに何もしてやれないし…」
「そんなことない。絶対。傍に居てくれるだけで嬉しい。今だってこうしてるだけでもあったかだ。
でも、アルフがそれでも満足できないなら、スクライアの人たちや、これから産まれてくる私達の子供のために――」
「フェ、フェイト?!まさかもうそんな進んだ関係に!?」
「ちち、違うよ!まだ綺麗な身体のまま!そういうのは結婚してからだってユーノが!」
ああ、話が逸れた。えと、何処まで話したかな?
「ああ、なんか色々考えてたのが馬鹿馬鹿しくなってきたよ。もう帰ろうか」
「アルフ…」
「まだまだ二人とも危なっかしいしさ、やっぱこのあたしが面倒見てやらないと駄目だね!」
「うん!」
二人で暗い森を抜けて、ユーノの居るテントまで戻る。二人で一緒に見る月は殊更綺麗だった。

「あ、今日からアルフ私ユーノの並びだからね、寝るとこ」
「あんまり人目気にせずいちゃいちゃすんのは勘弁しておくれよ」
あはは、確約は出来ない、かな?

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目次:『魔法少女ネガティブフェイト』
著者:ユーノマニア

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