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 チャイムを鳴らして中へと自分の来訪を伝える。
 地球のとあるマンション。ここはクロノやフェイトたちが闇の書事件の拠点として使っていた場所だ。
 事件解決後、フェイトはここを住居としてなのはたちと同じ学校に通っているのだ。

「―――フェイトー? アルフー? 来たよー?」

 今日、彼―――ユーノ・スクライアがここを訪れたのは他でもない。友人であるアルフに緊急に呼び出しを受けたからなのだ。

 彼はたまたまこの世界に遊びに来ており、なのはたちが学校に行ってる間は比較的に暇だった。
 いつも通り高町家でウトウトと休暇中の惰眠を貪っていると、頭に響いたのはアルフからの念話。
 身体を丸めて入っていた籠からは転がり落ち、地面に見事激突して悶えること数秒。

 けたたましい声で正確な用件も告げず、すぐに地球のハラオウン家に来るように言われたのが、実に10分ほど前の話だ。

「おっかしいなぁ……アルフー? いないのー?」

 フェイトは学校、リンディさんは局としてもアルフもいないのは変だろう。
 何かあったのだろうか。そういえば、随分と慌てていた様子だった。
 ユーノは少し焦りを感じ、扉を思い切り叩いて中へと己の来訪を伝える。

「アルフ! いるなら返事して! アル―――」
「ユーノッ!!」
「―――フぶるあっ!?」

 突然開け放たれたドアに顔面が直撃。
 物凄い力をもって開かれたそれは、ユーノの身体を容赦なくふっ飛ばし、華麗に宙を舞った彼は―――そのまま手摺を綺麗に乗り越えて地面へと落ちていく。

 数秒後、飛行魔法で助かったユーノが鼻頭を押さえながらなんとか浮かび上がってきた。

「痛い……痛いよアルフ……」
「それどころじゃないんだよ! 急ぎなんだ、説明するから早く入っておくれ!」

 実は軽く死ぬところだったのをそれどころじゃないとはどういう了見だ。

 が、彼女がここまで焦るということは―――十中八九フェイト関連であろう。
 ユーノは今起きた出来事は水に流すことにして、顔に回復魔法をかけながら家の中へと上がる。

 相変わらず綺麗に整頓されたリビングを抜け、クロノ用の今は使われていない私室の前を抜け、何度か来たことのあるフェイトの部屋の前で立ち止まる。
 アルフはそこでユーノに静かにするようにとのジェスチャーを送ると、軽くドアをノックした。

「―――フェイト。ユーノが来てくれた、入るよ」

 中に入ると漂ってきたのは―――酸っぱいような、汗のにおい。
 女の子の部屋らしく、黄色を基調に可愛らしく整頓されている中。
 けど、その部屋は普段と少し様子が違っていて……まず、ベッドに金髪の少女が横たわっていた。

「フェイト?」

 更に、その横の勉強机には水の張った洗面器。
 他にも床には体温計や脱ぎ散らした下着類などが散乱している始末。
 出来るだけそれらからは視線を外しつつ、フェイトが寝ているベッドへと近づいて顔を覗き込んで見た。

「フェイト、大丈夫? 僕だよ、分かる?」
「……あ……ゆ、ユーノ……ごめん、……来てくれて……ありが……と」

 目が完全に開いていない。
 何とか頑張って作った風な疲れた笑みに、不自然に上気した顔。
 額にはタオルが置かれており―――頭の下には枕の代わりに氷嚢が敷かれていた。

 流石のユーノでもここまで来ればフェイトの身に何が起きているのか理解できる。
 つまり、彼女は。

「風邪でダウン、か」
「そうなんだよ。しかも結構熱も高くて……! 私も今からすぐに本局に飛ばなきゃいけないし、見てやれる人がいないんだよ」
「……つまり、僕がフェイトの看病をすればいいんだね?」
「悪い、頼めるかい? 今フェイトのこと頼めるの、ユーノしか思いつかなかったんだ……」

 人型のまま耳を垂らして俯くアルフ。
 そんな姿を見て見捨てて置けるほどユーノは人間腐っていない。
 笑顔を浮かべると、安心させるようにアルフの肩に手を置いた。

「大丈夫、任せて。フェイトのことは僕が責任を持って面倒を見ておくから」
「ユーノ……! ありがとう、助かるよ」
「ごめんね……迷惑、かけて……」
「フェイト、いいからフェイトはユーノに全部任せるんだよ。……アタシフェイトの使い魔なのに、肝心な時にフェイトを守れなくて……ゴメンよ」
「いいんだ……よ。アルフは私が行けない代理で、局に……行ってくれるん、だから……ありがとう、アルフ」

 なるほど……この事態にアルフがついていれないのは変だと思ったが―――そういう理由か。
 ユーノは一人で納得すると、アルフに向かって時計を指さす。

「時間が無いなら急いだ方がいいよ。上の人は時間に厳しい人が多いから」
「っとそうだった。じゃあ、私は行ってくる! ユーノは後をよろしく頼むよ!」

「―――さて、と。フェイト、今熱何度くらいなのかな?」

 彼女の頭からすっかり温まってしまっているタオルを取って、水に浸してからよく絞る。
 布が擦れるくらいまでキツく絞ってから、それを広げてまた彼女の額に乗せてあげた。
 冷たいタオルの感触を心地よさそうに受けながらも、擦れた声でフェイトは答える。

「39.8度、とか……だったよ。今は、もう少し上がってる、かも……」
「……そりゃ相当だね。出来るだけ動かない方がいいよ。欲しいものとか、して欲しい事、何でも言って」
「なん、でも……?」
「うん。僕が出来ることなら、何でもしてあげるから」

 フェイトはきっと目がちゃんと見えていないのだろう。
 さっきから焦点の合わない瞳は、ユーノを捉えたり捉えなかったりと、左右に動いている。
 だからフェイトの真意なんてちっとも読み取れなかったのだけど。
 少しだけ―――少しだけ、彼女の意識が強く現実に戻った気がしたのだ。

「何か、あるの? して欲しいこと」
「……うん。ちょっと、あるかな」
「水持ってこようか? 水分補給ならした方がいいから―――」
「違う、んだ。あの……でも……ユーノ、は……ケホッ。嫌がる、かも……」

 ユーノが目を見開く。
 そして次の瞬間、少し不満げな声で言っていた。

「フェイト。何を頼みたいのか知らないけど、僕が嫌がると思う?」
「あ、う……」
「―――あ。ご、ごめん……病人の枕もとで……。あ、氷嚢貸して。中身、入れ替えてくる」

 気まずくなってしまったので、少しだけ話題逸らしのためにフェイトの頭の下からゴム製の氷嚢を抜き取る。
 それの中身も最初は氷と水だったのだろうが……今ではすっかり溶けて、ほぼ水のみなってしまっていた。

 きっと、自分が部屋に帰ってくる頃にはフェイトも自分に言いたかったことを言ってくれる。
 そう思ったユーノは急ぐようにして台所へと向かい、氷嚢の中身を入れ替え、タオルや飲み物なども一緒に持って、部屋へと帰還した。

「ただいま。―――はい頭上げて」
「うん……あは。冷たい」
「氷が沢山入ってるから。あと飲み物、ね。飲む?」
「ううん。ユーノが……来る前、少し飲んだから……」

 そこでフェイトは言葉を切って。
 次の言葉を勇気を出して述べるかのように、目を瞑って、囁いた。

 ……え。
 言われた意味がよく理解出来なかった。
 だからユーノは首をかしげ、少し動揺しつつも聞き直す。

「……フェイト。もう一回言ってくれるかな」
「え、うん。あのね……」

 ―――私、ゆーのニ、身体ヲ拭イテ欲シインダ……。

 分かっている。風邪っていうのは引けばお風呂には入れない上、汗だけはかく。
 そうしてかいてしまった汗をそのままにすればいずれは汗が乾くなりなんなりして、熱を大きく奪われたり汗疹になったりする。
 熱を奪われるというのは、身体を一気に冷やすのと同義であり―――風邪が悪化する!

 だから、フェイトは彼に頼んだのだ。身体を拭くように、と。

「……がああああ! わ、分かったよ。ちょっと待って……」
「い、いいんだ。自分でやろうと思えば……やれる。汗臭いから、触りたくなんか、ないよね……」
「ち、違う! それは違うよ!」

 ユーノは別にフェイトが汗臭くても泥臭くても、そんなのは気にしない。
 そんなこと言ってたら彼の出身部族なんぞは汗臭くて泥臭くて、稀に血生臭い女性だっているのだ。へっちゃらだ。
 だから問題なのは―――当然だが、女の子の身体を拭くということで。

 同い年の女の子の身体を拭くなんて、流石に躊躇うに決まってる。
 だが。

「気にしないでユーノ……変なこと言ってごめんね。やっぱり、私、じぶ―――」
「起きちゃダメだよ。横になってて。今、お湯を汲んでくるから」

 だが―――
 一番の問題は、彼女がユーノに裸を見られたり触られることをどうとも思ってないということだ。

 ユーノ限定なのか、全ての男に対してなのかは知らない。
 けどあんまり無防備になられても……対応に困ってしまうのは当然じゃないか。
 そういえば、今思い出してみれば出会った頃のなのはも、ユーノと風呂に入ることに抵抗が無かった。男だって分かってるはずなのに。
 まあ、途中から自分も慣れてたといえば慣れてたけど……。

 蛇口からお湯をひねり、さっきのとは違う洗面器に満たしていく。
 緊張してきた。
 フェイトの身体を拭くのかと想像するだけで、身体が妙にそわそわする。

「くう……駄目だ余計なこと考えるな……! あれは義母さんの身体あれは義母さんの身体あれは義母さんの―――」

 途中、あんな小学生体型の義母じゃなかったことを思い出したが、全力で思考から省いた。
 よし大丈夫。自分はまだ戦えると確信する。
 アルフから頼まれたんだ。ここは全力をもってフェイトの病気を治すことに―――

「お待たせフェイト。お湯汲んできたから、パジャマの上、」
「あ、ユーノありがとう……」
「ぐあ……」

 ……既に彼女は上着を脱いで、風邪で潤んだ瞳をこちらに向けて微笑んでいたわけだが。

「き、気が早いねフェイト……」
「え、あ、うん……手間をかけたらいけないと思って……」

 それは嬉しけども。
 フェイトの身体は現在上半身裸で、少しだけ恥ずかしそうに胸元を両手で隠している。
 頬は熱のせいで上気しており、半開きになった口からは苦しそうな吐息が漏れて、その縋るような眼でこちらをじっと見つめていた。

 ……そうだ、とユーノは気付く。
 このままでどんどんフェイトの身体が冷えてしまう。早く身体を拭いて、パジャマを着せて寝かせてやらねば。

「フェイト、じゃあ背中を向けてくれる?」
「う、うん……お願いします」

 その応答はなんか気恥ずかしいと思いつつ、先程の念を頭の中に復活させる。
 そうだ。気にしなければどうということはない。これは治療行為の一貫。
 同い年の女の子の背中を、フェイトの背中を流していると考えなければ。

 温かいタオルを絞り、そっとフェイトの背中に触れさせる。
 彼女の身体が震え、僅かに艶やかな吐息が洩れる。

 ……我慢をすると誓ったので断じて何も考えないように努める。
 自分も彼女も既に11歳。子供であるが、身体は大人になりかける時期でもある。

 フェイトはきっとそっち方面の知識はあまりのないのだろう。ユーノに全幅の信頼を寄せるようにして、身体を任せている。
 だから万が一の事態なんて絶対に起こしてはならない!アルフの信頼を裏切っちゃダメいけない!

「ユーノ……?」
「あ、ごめんごめん」

 自分の手が止まっていたのを自覚して、また上下に動かし始める。
 汗を拭きとり、背骨にそってタオルを動かし、肩峰を撫でるようにして肩から腕にかけての汗を拭い。
 首筋も軽く拭いたところで―――腰にそっとタオルを当てると。

「あひゃうぅっ!」

 物凄く色っぽい声で、フェイトが啼いた。
 慌てて手をどかしてから驚いて聞く。

「うわ!? ど、どしたの!」
「あ、あぅぅ……ご、ごめ……なさい……。私、腰弱くて……」
「そ、そうなの……」

 顔を真っ赤にしているので、弱いというのは本当らしい。だが、弱いからと言って汗の溜まり易い腰の部分を拭かないわけにもいかないだろう。

 ゴシゴシ。

「はぅ……くぅん……っ!」

 キュッキュッ。

「あぅ、ユー……ユーノ……はぁぁっ!」

 ―――ここで、二人はすっかり思考が単純化していた。

 フェイトは熱で頭がぼーっとしていたし、ユーノはフェイトの身体に意識しないようにとするあまりに―――
 腰くらい、フェイトが自分で拭けばいいということを忘れていた。

 そしてそんな二人の単純な思い込みは、更に暴走することになる。

「終わったよフェイト」
「あ、はぁ……じゃ、じゃあ前も……お願いします……」
「うん? ……う、うん」

 ゆっくりと、重たい身体を動かす様にしてフェイトがこちらを向く。
 ユーノもベッドに座っているので二人、向かい合うような体勢となって見つめ合う。
 少し膨らんだ胸は両手によって隠されていたが、―――その方がどちらかと言えばいやらしく感じた。

「あ、あんまり見られると恥ずかしいよ……」
「う、うわごめん! すぐに終わらせるから!」

 考えるな、とユーノは何度も頭の中で繰り返す。
 実のところ、考えた方がマシな結果が出ることにはさっぱり気付いていない。
 再びお湯で洗い、絞ったタオルをフェイトの真っ白な、粉雪のような肌に触れさせる。

「んん……っ。あはっ」
「くすぐったい?」
「ちょ、ちょっと……でも平気だよ。続けて」
「うん」

 出来るだけ手早く済ませようと、腹回りなどをさっさと拭いていく。
 けれど、それもすぐに終わってしまった。
 だから、残っているのは……フェイトの腕によって隠されている部分だけで……。

「あ……。ユーノ……お願い」
「……!」

 気付いたフェイトは少しだけ恥ずかしそうに俯いていたが―――すぐにその両腕は開帳された。
 彼女の両胸が、一切の妨害を受けず、己の前に提示されている。
 ほんの少しだけのふくらみ、その頂点で固くなっている桜色の突起。
 フェイトは熱が1度くらい上がったように赤くなり、目を瞑って顔を逸らしている。
 ユーノは呼吸を荒くしつつ、口の中が乾くのを感じながらもタオルでそっと、それに下から触れていった。

「―――」

 柔らかい、と思った。
 彼女の体は比較的筋肉質で、触ったら少し硬かったが―――けど、この部分だけは別格に柔らかかった。

「〜〜〜〜〜〜!」
「……っ」

 2人、言葉はない。
 フェイトはユーノに自分の全身が支配されているような気分になって、その恍惚さに興奮しており。
 ユーノもまた、フェイトの身体を自分の思う通りに扱っていることに興奮を覚えていた。

 そんな時間が続いていたのも10秒程度。
 そっと彼女の肌からタオルを放したユーノは、大きくため息をついて後ろを向き、終わりを告げた。

「―――フェイト、服を着ていいよ」
「あ、……うん」

 どうやら予め換えを用意していたらしいフェイトは新しいパジャマに袖を通す。
 こうして二人の少年少女の、ちょっとだけ濃密な時間は終わりを告げた。
 ……かに思われたのだった。

―――――――――――――――――――――――




「熱―――下がらないね」

 お昼を回った。
 あまり食欲がないというので定番のおかゆをほんの少量だけ食べてもらい、ポカリスエットという飲料水を飲ませた。
 汗も拭いて氷嚢も変えて大分落ち着いてはいる。

 けど、熱が下がらない。
 フェイトは未だに苦しそうに呼吸をして、時折むせるように咳をしている。
 ……やっぱりここは薬に頼るべきなんだろうか。

「フェイト……薬ってどこにあるか分かるかな?」
「薬……うん。母さんが……冷蔵庫に入ってるって……」
「分かった、取ってくるから待ってて」

 辛そうなフェイトを一人残すのも気が引けるが、ここは仕方ない。
 早歩きで廊下を進み、リビングを抜けてキッチンに入る。
 冷蔵庫を開け、中を見回すと何やら色取り取りの見るからに甘いお菓子類が目に飛び込んでくる。

 さっきポカリスエットを取った時も見たが、こんなに毎日補給しないと倒れるのだろうか、とユーノは思う。
 見回すとどう考えてもクロノ用の牛乳とか(何やら魔法で腐りにくくしてある)、エイミィさん用のスモークチーズとか(『にょろーん』と書いてある)。
 普通の食材も入ってるが、皆己の欲望に従って冷蔵庫を使いすぎである。

「―――ん? あ、これかな……錠剤?」

 何やら人差指の第二間接くらい、つまり3,4センチくらいの大きさをした小型ロケットのような薬が何錠も連なっているものを発見した。
 ユーノはそこで、己の思考回路に没頭してみた。

 ……飲み薬にしては飲みにくいよね。
 ……ていうかこれ、凄く“アレ”な気がするんだよ。
 ……うん。まあ確かにフェイトくらいの年齢ならこれのがいいだろうけどね。
 ……ぶっちゃけこれさ。

「……坐薬って……自分でなんとか出来るものだったかな……」

 頭が痛くなってくるのを感じつつも、それを持って一応部屋に戻ることにする。

「と、言うわけなんだけど……自分で入れらるかな? これは」
「や、やってみるよ……」

 流石にお尻に薬を入れる、という事実は知られただけでも結構恥ずかしいらしい。
 ゆでダコを凌駕するかのように赤くなり、今にも煙を出しそうな勢いだ。

「じゃ、じゃあまぁ、僕は外にいるから……終わったら呼んでね」
「う、うん……すぐ終わらせるから」

 別に急ぐ必要はないけど、とユーノは思ったが言うのは止めておいた。
 フェイトは気を使うと逆に気を使ってくるタイプだ。今までもフェイトと何かを譲り合って20分経過とかざらにあったくらいに。
 ここで変な風に言い合いになって彼女の風邪を悪化させるわけにもいくまい。
 ユーノは廊下に出ると深くため息を吐く。

「もしかして……女の子の看病って、女の子がやったほうがいいんじゃないかな……?」

 洋服とか下着の替えもそうだし、さっきの汗を拭くのもそうだ。
 トイレとかだってあるだろうし、汗臭くなってしまったのをフェイトも最初は気にしていた。

 が、まあ今更と言えば今更。
 後少しすればなのはたちの学校が終わる。そうすれば彼女たちに看病を代わって貰えるだろう。
 もしかしたらその前にアルフが帰ってくるかもしれないし―――

「ゆ、ユーノ……い、いいかな……」
「え? ああうん。終わった?」

 そういえば……その、お尻の穴に手を突っ込んだ? のだし、手とか洗いただろう。
 まだ一人では歩くのも辛そうだし手を貸す必要があると判断する。
 ドアを開け、中に入ると、布団の上に座って恥ずかしそうに視線を逸らすフェイトの姿がある。

「手、洗う? 肩を貸すよ」
「……あ、ああ、うん。洗う……ありが……っと!」
「危ない!!」

 やはりまだフラフラしているのか。
 慌てて手を出して彼女を受け止めると―――そのままフェイトはぐったりと身体を預けてきた。

 坐薬とはいえ効果はそんなにすぐは出ないのだろう。最低でも30分……1時間は欲しいところだ。
 手を洗ったらすぐに寝かせた方がいい。
 そう判断したユーノは、お姫様抱っこをするような形でフェイトを持ち上げると、そのまま洗面所へと歩き始める。

 気づいたフェイトが力無く、

「ユーノ……私、歩ける……よ」
「ダメ。今の君、相当ふらついてるんだからさ。全く、無理するところなんかなのはそっくりだよね」
「う、な、なのは程は無茶したりしないもん……」
「どうかなぁ。似たもの同士だと思うけど」
「私は……ケホッ。ユーノの方がなのはと似てると思うけど……」
「……どこが?」
「頑固」
「えー……ふーん。なのはに言ってやろーっと」
「え、わ、だ、ダメだよっ!」
「あはは。冗談冗談」

 慌てるフェイトをあやしつつ、辿り着いた洗面所で下ろす。
 少し上体をふらつかせながらも手を洗ったフェイトは、今度はユーノに抱っこすることを許さず、肩を貸すだけで部屋に戻って行く。

 ベッドに彼女を寝かせ、冷たいタオルを乗せてやると―――ユーノはそっと、自然にフェイトの頭を撫でていた。

「―――お休みフェイト。寝るのが一番だから、さ。寝て起きる頃には、熱も下がってるよ」
「う、うん……お休みなさい、ユーノ」

 ゆっくりとフェイトは目を閉じる。
 それを見守って、ユーノは辺りを見回した。

「片付けでもしておくか……」

 それだけ呟いて、とりあえず簡単に片づけを開始した。



――――――――――――――――――――



 フェイトの家に来てから大分時間も経過した。
 彼女を寝付かせてから3、40分経っているので、もう寝てるだろうし熱も少しずつ下がってきているはず。
 リビングで学会用のレポートを作成しながら、ユーノはちらりと時計を確認した。

「……ふぅ。なのはたちはまだ、か」

 連絡は入れておいたので、恐らく帰宅する際に寄ってくれるはずだ。
 アルフもそろそろ、あと一時間もすれば帰ってくるだろうし、上手くいけばリンディが先に帰宅するやもしれない。
 自分がフェイトに頼られる時間が終わると思うと少し寂しくもあったが―――なんとかやってあげられたかな、とも思う。

「さて、と。夜の分の予定、せっかくだから今の時間で進めておこうか―――」
『ユー―――ノ』
「……え?」

 念話。そう悟った瞬間、ユーノはソファから立ち上がって、フェイトの部屋にかけだしていた。
 非常に苦しそうだと分かる声色で、彼に助けを求めていた。
 何があったのかは分からないが―――急がなければならない。

 フェイトの部屋の前にたどり着き、ドアを開ける。

「フェイト、どうしたのっ!」
「ユーノ……あの……ケホッ、ごめ……ぅ」
「……フェイト? どうしたの? 薬、効いてないの?」

 慌てて駆け寄り、すぐさま横にあった体温計を渡して熱を測るように指示する。
 風邪のようなものには気休め程度だがフィジカルヒールをかけつつ、洗面器の水でタオルを冷やして額に置き直す。
 そんな彼の様子を見ていたフェイトは、申し訳なさそうに言った。

「ごめん……ユーノ……実は……お薬、使ってないんだ……」
「え?」

 フェイトの言葉に呆然とする。
 クスリを、使わなかった?
 熱が高くて苦しそうだったから、使ったのに?
 何故?

「……ど、どうして?」
「そ、それが……その……お、お尻に……」
「お尻に……?」
「う、うう、ううううううまく入らなかったの……っ」

 物凄い沈黙が訪れた。絶対零度の沈黙といってもいい。
 どちらも発言しない。否、ユーノからすればどう反応していいか分からず停止している。
 フェイトも自分の発言に真っ赤になってしまっており、布団を眼元まで持ち上げて顔を隠していた。

「……あの、フェイ、」
「あ」

 すると、フェイトの胸元に入れられて、脇に挟まっていた体温計が電子音を鳴らす。
 フェイトがゆっくりと取りだすと、その体温計は―――40.1度を示していた。
 ユーノはそれを見て顔をしかめる。

「朝より上がってるじゃないか……。やっぱり、薬……でも、どうしよう……」
「……」

 考えこんでいるユーノをフェイトはじっと見ている。 
 何かを、決意するような表情で。
 ユーノを穴が開くように見つめ―――そして、ゆっくりと口を開いた。

「ユーノ。最後のお願い、していい?」
「? 何……?」

 最後、という言葉に引っかかりを覚える。
 別に最後などと言わずとも、フェイトの頼みならなんでも聞くのに。

 だが、ユーノが考えているのと、この最後の意味合いは違った。
 最後というのは―――フェイトなりの決意の表れ。
 彼女の中で固まった結論を口に出すための、後押しの言葉。

 そうして決めた意思を、吐息とともに彼に吐き出した。

「―――私に、お薬を入れて下さい」
「―――は?」
「……さっきの薬を、……お願い」
「え、でもさっきのって……お尻の薬だよ……?」
「うん……でも、いいよ私……ユーノになら、見られても、触られても……平気だから」

 心臓が高鳴る。
 全身から汗が噴き出しているように感じる。

 フェイトの、お尻に、薬を?
 誰が?
 僕が?
 だって、あの薬を入れるには指も入れなきゃ駄目なんだよ?
 でも僕なら別にいい?
 え、えええええええええええええええええ―――

「お願い―――苦しいんだ……」
「……! わ、分かった……待ってて、冷蔵庫から、取ってくるから……!」

 ―――結局、フェイトの苦しそうな顔が決断に止めを刺すことになった。

 薬は今、自分の手の中にある。
 使用法によると少し温めてから使うらしい。
 掌の中にそれを握りしめつつ、目の前で起きようとしている光景に想像を走らせてしまう。

 だが、見ることはしない。
 大丈夫。そこは完璧に死守した。
 なぜなら―――

「ゆ、ユーノ大丈夫……? 目隠ししてて、分かる……?」
「全然オッケーです。もうなんていうか心眼とか開けそうだよ今の僕。手はフェイトが導いてくれればそれで」
「あ、うん……じゃあ、脱ぐね」

 別に言わなくてもいいことを言って、フェイトはユーノの頭に攻撃を仕掛けてくる。
 いや、本人に自覚はないのだろうが、それが余計にたちが悪い。

 スルスルという布擦れの音がする。パジャマの下、そして下着が足から外される音。
 そうして、ギシ、とベッドが揺れたのち―――フェイトの声が、ユーノの耳へと届いた。

「来て、ユーノ」
「あ、ああうん」

 曖昧な返事をしつつ、手を前に出す。
 そうして差し出された薬を握った手が、フェイトの手にそっと掴まれて、導かれる。
 彼女の手で、彼女の肛門へ。

「―――分かる? ユーノ……」
「わ、分かるよっ」

 触れば、理解した。
 このすぼみのような場所が……フェイトの、お尻の穴で……大事なところなんである、と。

「あ……ッ!」

 少しだけ指先でなぞると、フェイトが短く嬌声を上げる。
 いけない、と思ったユーノは手の中の薬を持ち直し、すぐさまその穴へと宛がった。
 キュッ、とその部分の周りが緊張するのを感じつつも、フェイトへと問いかける。

「じゃあ、入れるよ? 少しだけ力を抜いてくれるかな」
「あ、あぅ……い、入れて……ユーノ……」
「こ、ここかな……?」

 薬の先端で入口付近をなぞる様にして軽く円を描く。
 描かれたそれの中の中―――中央部に、集まるような場所を発見した。

 そこに宛てがい。
 ユーノは指先に少しずつ力を込めていく。

「あ、あうぅ……く……」
「フェイト、押し戻されちゃうから、力を抜いて……」
「だ、だって、だって……どうしても力が入っちゃうの……」
「―――お願いだよ。これじゃまた……」
「ああっ」

 自分の指先が、フェイトのお尻の中へと突入したのを感じた。
 非常に温かく、まるで脈動しているかのような感覚に少し動揺したが、そんなことも言っていられない。
 ぐぐぐ、と更に奥まで己の人差し指を押し込むと、更に強い力でその指が締め付けられる。

「ふぇ、フェイト……」
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
「泣かないで……」
「だ、だって、私のお尻なんて汚い場所にユーノは指を入れてるのに……私、それなのに……!」

 ポロポロと涙するフェイト。
 それを目隠しの中でも聞いたユーノは、フェイトのお尻の穴に指を入れたまま身体を動かして。

 フェイトの身体に覆いかぶさるように全身を移動させ、彼女の耳元に、そっと囁いた。

「―――汚くなんか、ないよ」
「え……?」
「フェイトの身体は、汚くなんかないよ。―――どんな場所でも、とっても綺麗だ」
「あ、え……」

 瞬間。
 フェイトのお尻の筋肉に入っていた力がスッと抜けて、ユーノは自分の指が奥にぐっと入っていくのを感じた。

 自分の指がほぼ根元まで埋まったことを確認して、ユーノはほっと息をついた。
 これだけ奥まで入れば大丈夫。
 あとは、この体勢のまま5秒ほど維持していればいいだけ。

 ほら、もうすぐだ。すぐに―――

「フェイトただいま! 少し早く終わったよ!」
「お邪魔しますっ。フェイトちゃんユーノくん! お見舞いとお手伝いに―――」
「フェイトさん、大丈夫だった? ユーノ君もありが―――」

 ―――これはなんだろうか、とユーノは聞こえてきた声に遠く思う。
 まるで計ったかのように彼女たちが帰ってくるなんて―――そんなの、酷いにも程がないだろうか。

 自分は今、四つん這いになったフェイトのお尻に指を突っ込んでいて、身体は覆いかぶさるようになっていて。
 フェイトは見えないがきっと、苦しそうにその指を受けいれて顔を赤らめており。
 で、しかも考えてみたら自分は目隠しまでしているわけで、どんなプレイだよと。

 でも。
 言い訳しないとただの犯罪者なので、とりあえず声のした方向に顔を向けた。

「あ、違うんだ。これは―――」
「―――スティンガー」
「―――ザンダー」
「―――必殺必中必倒必滅」

 解説しておくと上からリンディ、アルフ、なのはなのである。
 ああ、なんかこう、色んな意味で大変な休暇だったなぁ、とユーノが最後の思考を出来た瞬間。

 身体はそれらの攻撃によって的確に吹き飛び、部屋の壁へとめり込んで、……その意識すらをも手放すことになったそうである。


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目次:ユノフェお尻(仮題)
著者:シナイダ

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