[723]ある分隊の話<sage>2007/08/29(水) 11:03:35 ID:z7oBnv7i
[724]ある分隊の話<sage>2007/08/29(水) 11:04:08 ID:z7oBnv7i
[725]ある分隊の話<sage>2007/08/29(水) 11:06:10 ID:z7oBnv7i
[726]ある分隊の話<sage>2007/08/29(水) 11:07:10 ID:z7oBnv7i
[727]ある分隊の話<sage>2007/08/29(水) 11:08:36 ID:z7oBnv7i
[728]ある分隊の話<sage>2007/08/29(水) 11:09:56 ID:z7oBnv7i

機動六課という奇跡のような部隊から10年。
八神はやての望んでいた過剰戦力の一点集中という手法は
既に時空管理局に浸透していた。
これは、そんな理由で組織されたある分隊の日常の光景の記録である。


エリオ・モンディアル。
時空管理局遺物管理部機動5課所属サモンナイツ分隊分隊長。
広域捜査を担当する機動5課の「切り札」であるサモンナイツ分隊を指揮する彼は
機動5課のみならず多くの隊員の羨望を集めている。
故に―――――

「死ねええええええええぇぇっっ!!!」
「撃てっ!撃てえええっっ!!!当てても構わんむしろ当てろぉぉっ!!!」
訓練をすればこのような熱い歓迎を受けるのも当然といえた。

模擬戦の相手であるB班からの攻撃ならば解る。
しかし、何故自分が指揮するA班から上記のような台詞が聞こえるのか彼には理解出来ない。
いつも通りに二方向から自分を狙って発射された光弾の間を通常機動ですり抜ける。
魔法を使うまでも無い。その程度には鍛えられたのだ。
次に誘導弾が雨の様に降り注ぐが、まるでダンスのようなステップで回避。
七秒ほどよけ続けたが隊員の数が数だ。らちがあかないので彼は自身の槍に命じる。
「ストラーダっ!カートリッジロードっ!」
『explosion!』
己の身長が伸びるのと共に調整してもらった槍は今でも彼の身長より長い。
三発分のカートリッジの魔力が槍の中で暴れ狂う。
「サンダァ・レイジッ!!!」
槍から放射状に広がった数十条の雷撃が光弾を相殺し、ようやく一息つけた。
「はぁ・・・・・・訓練内容を僕対君達に変更!
 さぁ思う存分かかって来――――」
言い終わる前に5人の騎士が飛び掛ってきた。


「うわぁ、いつもの事だけどすごいね、エリオ君」
訓練をモニター越しに眺めている桃色の髪の女性が呟いた。
艶やかな髪は肩口で切り揃えられ、少し年よりも若くみえる顔を飾っている。
童顔とは対照的にその肢体は制服の上からでも解るほど豊満だ。
そして彼女の横には10年前と変わらない姿の彼女の守護竜がいた。

キャロ・ル・ルシエ。
時空管理局遺物管理部機動5課所属サモンナイツ分隊副隊長。
サモンナイツ分隊の最大の特徴である召喚士の少女である。
広域捜査を担当する機動5課においてこの分隊が遊撃部隊として活躍出来るのは
彼女ともう一人の召喚士の転送魔法のおかげである。
例えどの次元であろうが二人の召喚士による転送で駆けつける事が出来る。


「・・・・・・これで・・・・・・・・・12人撃墜」
紫の髪を臀部まで伸ばしてまとめている少女が呟く。
身長はキャロよりも頭半分程、エリオと比べると胸のあたりまでしか無い。
そして何が悪かったのか、制服に包まれるその体はとても滑らかだった。
そう、とても滑らかなのだ。
あるべき凹凸の凸が全くないという素晴らしい体がそこにあった。

ルーテシア
時空管理局遺物管理部機動5課所属サモンナイツ分隊隊員。
彼女は召喚士であるがキャロとの違いはやはりインゼクトの召喚である。
インゼクトを憑依させる事で大抵の魔道機械ならば制圧出来る彼女は
このサモンナイツ分隊において最大戦力でもあった。
彼女の活躍で多くのロストロギアを守るトラップが沈黙するのだ。
その能力や類稀なる容姿もあって、様々な部隊から引き抜きの話があるのだが
彼女はそれらを全て断っている。

モニターの中ではエリオに飛び掛った5人が飛び交う誘導弾の中で
背後をとられては首筋に手刀の一撃を叩き込まれたり、
投げられたりして一人ずつ沈黙していった。
次にかかってきた5人は突撃でまとめて吹き飛ばされる。
エリオの背後に二人の騎士がいきなり出現した、
が、次の瞬間には片方の騎士のみぞおちにストラーダの石突が突き刺さり、
もう一人は次の一撃で吹き飛ばされた。
後は後方支援の魔導師ばかりであり、彼らが放つ光弾やバインドはエリオを捕らえられない。
一方的な展開が始まった。


十数分後、訓練室からひとり出てきたエリオは疲労困憊だった。
他の隊員達は全員訓練室の床に倒れ伏している。
助けようかとも思ったが人数が人数だし、ささやかな腹いせとしてそのまま放置する事に。
たまに時間があけばこの様に他の部隊の隊員から模擬戦が申し込まれる。
最初は団体戦という形をとっていたのだが、いつからか彼が重点的に攻撃されるようになり、
今では訓練開始と同時に狙われるといういじめを受けていた。
その事を思うとついつい口から溜息が出る。
出てきたエリオを見つけて、ルーテシアとキャロがタオルを片手に駆け寄る。
「エリオ君おつ――――」
「・・・・・・エリ―――」
「おにいちゃんお疲れー!!!」
「ぐぼっ!!!・・・・・・・・・・・・」
しかしエリオに一番早く到達したのはその二人ではなく、金髪の少女だった。
丁度少女の頭部が胸の中央を強打したらしく、エリオがうずくまる。
実は今日一番のダメージだ。
「・・・・・・ヴィヴィオ。ありがとう」
ようやく搾り出した声で礼を言うと胸の中の少女はにぱーっと笑った。


ヴィヴィオ・T・H・スクライア
時空管理局遺物管理部機動5課所属サモンナイツ分隊隊員。
管理局のエースオブエースと閃光の魔女を母として育った彼女は
自身の才能を開花させ、今ではAAAランクの凄腕騎士でありエリオよりもランクは上だ。
というか、分隊の中ではエリオがAAと最も低ランクであり
彼はしばしその事で悩んでいたりもする。
今日は背まである金髪を頭の左右でまとめていた。俗にいうツインテールだ。


「今日はね?ママ達とおんなじ髪型にしてみたんだ。どう?似合う?」
「うん、すごく似合ってるよ」
微笑みかけ、頭を撫でるとヴィヴィオは猫のように目を細めてそれを受け入れた。
それを笑顔で見ているキャロといつも通りの無表情で見ているルーテシア。
だが、フリードは何かを察したように彼女達から離れていった。
「エ・リ・オ・君?」
「エリオ」
がしりと左右から両腕を掴まれた。
鍛え抜かれた歴戦の騎士であるはずのエリオが全く振りほどけない。
そのままずるずると連行される。
「汗臭いからシャワーあびなきゃね?」
「・・・・・・・・・・・・」
「あー、ヴィヴィオも洗いっこするーっ!!!」
いつも通りの展開になりそうだ。しかし常々疑問を感じていた。
20歳にもなって女の子と一緒にシャワーを浴びていいのか?
(いいわけないよ!!)
「いや、その、これいい加減やめないかな?シャワーなら僕一人であびれるよ?」
『駄目』
「いやだーっ!今日こそひとりでシャワーをっ!」
『駄目』
「僕のプライバシーとかの基本的人権は無いのっ!?」
『無い』
キャロは微笑、ヴィヴィオは笑顔、ルーテシアは無表情と
三人三様の表情だがエリオへの返答は見事にハモる。
このようにいつも通り無駄な抵抗をしてはいつも通り流されるのが彼の日常だ。



「またか!またあのモンディアルはあの三人とシャワーに入るというのかっ!!!」
「もう無理ですよぉ・・・・・・慣れたのか知りませんが
 あいつ前よりも全然速くなってますし。今日なんて一発もあたらなかったですし」
「納得出来るかぁっ!!!何故アイツだけがあれだけモテるんだよっ!?」
「そういえば医務室のフィーネ先生もどうやら気があるみたいだし・・・・・・」
「それを言うなよ・・・・・・つか、それならお前が憧れてた管制のミーティアさん、
 彼女もどうやら気があるみ―――」
「死ね!死ねよモンディアル!誰かやつに天誅をっ!!!」





シャワーを浴び終わり、エリオは一人男子更衣室で体を拭く。
ついつい先程の光景を思い出しては隆起しそうになる自身を少し情けなく思った。
キャロは気付いたら凄い事になっていた。
10年前は丘だったところに山が出来、谷が出来ていた。
曲線美とはこの事かという美しいラインを描く体はエリオにとっても目に毒だ。
ルーテシアはその分見ていて安心出来る。
だが、猫科の動物を連想させるしなやかな体のラインを
流れる水滴を眺めているとこう、何か、反応してしまってもしょうがない。
つまるところ目の毒には変わらないのだ。
ヴィヴィオはまだ発展途上である。
薄い脂肪に包まれた肋骨や膨らみかけの胸など、反応したら犯罪臭い危うい魅力があった。
全員が全員、見事に別の理由で目に毒なのだ。
さらにその三種類の毒が泡にまみれて自分を襲ってくる。
毎度毎度思うが、よくあの状況で自身を制御出来るものだとエリオは自画自賛した。
が、見下ろすと割れた腹筋の下にある彼のストラーダは既に臨戦態勢に入っている。
どうにかしなければならないが、彼女達をおかずに抜いてしまうのは彼の倫理観的にアウトだ。
(そういえば、こんな時は母親の裸想像したら萎えるって誰か言ってたな・・・・・・)
聞きかじった知識だが藁にもすがる心境のエリオはそれに従った。
フェイトの裸を想像してみる。
(えっと……柔らかそうで、綺麗で、実際すごい柔らかくて)
思い切り逆効果だ。
彼のストラーダは臨戦態勢どころかカウパーすらたらしていた。
(うあ・・・・・・僕、最低だ)
落ち込むエリオ。
結局自然におさまる事を選んだ彼は更衣室から出るまでいつもは15分のところを
30分もかかってしまった。
いつもの倍待たされた少女達を宥めるのにさらに10分。
エリオの日常には結構無駄な時間が多い。

そのまま昼食という流れになったエリオ達4人は本局にある食堂に向かった。
いつも通り、四人がけの円形のテーブル席にエリオの左右にキャロとルーテシア、
正面にヴィヴィオという配置だ。フリードはエリオの頭で寝そべっている。
テーブルの中心にうずたかく積まれたパスタの山や
左右に配置されたボウル入りのサラダが恐ろしい勢いで無くなっていく。
頬に色々つけてしまったヴィヴィオの頬をキャロがぬぐい、
ルーテシアはその間に全員分の食後のお茶を持ってくる。
と、そこに通信が入った。
ストラーダを介して四人の中心にモニターが表示される。
「ママーっ!」
そこに写ったのはなのは・スクライアとフェイト・T・ハラオウンの二人である。
10年という時間の経過で少し目じりに皺が出来たりもしたが、
老いよりもむしろ穏やかさを感じさせる変化の仕方である。
ふたりの母親を溺愛しているヴィヴィオが浮かべるのは勿論満面の笑みである。
「ヴィヴィオ、久しぶり。元気にしてる?」
「うん、元気だよっ!おにいちゃんもおねえちゃんも優しくしてくれるもんっ!」
その返答を聞いて二人の母はまた笑みを濃くした。
「そうなんだ。あ、それでね?今日はエリオにお話があるんだけど・・・・・・」
フェイトの口調に何か嫌なものを感じたエリオは眉を顰めた。
フェイトが言いよどむ事にろくな事は無い。
「お見合いの話ならお断りします。僕にはまだまだそんな余裕ありませんから」
先制攻撃を放つ。図星だったのかフェイトは言葉を詰まらせた。
「お二人が20歳で結婚したから心配してくれるのは解りますけど・・・・・・
 僕はまだそんな気無いですから」
10年前、この二人は同時に結婚式を挙げた。
なのは・スクライアとなったなのはと、
苗字は変わらずフェイト・テスタロッサ・ハラオウンとなったフェイト。
ふたりの結婚式は多くの笑顔に包まれて始まった。
何故か披露宴から様相が変わっていき、二次会に突入すると阿鼻叫喚の地獄になったが。
獄中のスカリエッティこそ呼べなかったものの、
保護観察中のナンバーズとスバルやティアナ、ギンガがどんちゃん騒ぎをしたり、
嫌味で呼んだレジアス中将の脳天に酔っ払ったはやてがビール瓶を叩きつけたり、
色々な事が起こり、様々な絆が結ばれてとても楽しかった思い出だ。
酒なんて生涯飲まないでおこうという誓いを立てるきっかけになった出来事でもある。
ちなみにその誓いはまだ破られていない。
「そう?いい人なんだけど・・・・・・写真だけでも見てみない?」
「やめておきます。写真見てから断ったんじゃ、その人が駄目だったみたいですし」
彼なりの心遣いであるが、残酷な仕打ちでもある。
その事を言い咎めようとして・・・・・・やめた。
エリオはともかく、彼の左右の人物のオーラがどんどんどす黒く変色していくのが解ったからだ。
「そ、そう?でも、気が変わ――――な、何でもないよ。忘れて?
 じゃ、今日のお話はこれでおしまい。
 ヴィヴィオ、キャロ、エリオ、ルーテシア、またねー」
そそくさと逃げるように通信が切られた。



「ふぅ・・・・・・あの三人も複雑だなぁ・・・・・・」
「違うよ、フェイトちゃん。四人だよ?」
「四人って・・・・・・ヴィヴィオもっ!?」
「うん、きっとそう。ヴィヴィオ、エリオ以外には結構内気だしね。
 それに一緒にいるのが凄く楽しそうだったし」
「そっかぁ・・・・・・ますますややこしくなったなぁ」
「私達みたいに、ひとりひとり相手がいれば良かったんだけどね?」
「あ、そうだ。いっその事、エリオの本籍をアルカナスにでも移そうか?」
「ふぇ?そうしたらどうなるの?」
「アルカナスは重婚が認められてるから、
 別にひとりに絞らなくても大丈夫大丈夫。これなら三人は喜ぶんじゃないかな?」
「その三人にエリオは絶対入ってないよね」






数日後、勝手に本籍を移されたエリオが、
その意味を知って驚愕の叫びをあげるのは・・・・・・・・・・・・
また、別の、お話。

著者:一階の名無し

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