[130]さばかん つかいまなのなのは<sage>2007/06/25(月) 23:47:25 ID:+7HiUKX0
[131]さばかん つかいまなのなのは2<sage>2007/06/25(月) 23:48:27 ID:+7HiUKX0
[132]さばかん つかいまなのなのは3<sage>2007/06/25(月) 23:49:50 ID:+7HiUKX0
[133]さばかん つかいまなのなのは4<sage>2007/06/25(月) 23:50:45 ID:+7HiUKX0

 忙しい毎日ももうすぐ終わろうとしていた。
 闇の書のページ蒐集も順調に進み、残りのページもみたされようとしている。
 みんな顔には出さなかったけれど、疲れている。
 少ししか力添えしていない私でさえ疲れているんだからシグナム達はもっとつかれているだろう。
 なので、今日はみんなでお休みです。
「おおー広いなはやて!早く遊ぼうぜ」
 ヴィータがそう言って車椅子を押してくれる。地面が舗装されていないので、がたがたと車椅子が揺れるけれど、ちっとも不安じゃない。みんなの優しさが、私の確かな足だった。
「ヴィータちゃん待って!私も行くー」
 すずかちゃんもヴィータの後について行く。
 今日は八神家+すずかちゃんで自然公園へ遊びに来ています。シャマルと一緒に弁当をつくったり、ザフィーラの犬モードでもちゃんと入場できる所を探したりと、久方ぶりに心地よい疲れを味わった。
「はやてちゃん達、とっても楽しそうね」
 ふふふと笑うシャマルの横にいたシグナムも柔らかい笑みを浮かべ、縞模様のレジャーシートを敷いた。
「ああ、本当に楽しそうだな…よいしょ」
 シートにボフンと座り、その横にシャマルも座るとまたくすくす笑い出した。
「よいしょって…ババ臭いよシグナム」
「…ほっとけ」
 少し顔が赤くなり、シャマルから視線を逸らすと私達の方を見た。
 私は、すずかちゃんとヴィータに背を向け、
「みんないくよー。ぼ・う・さ・ん・が・へ・を・こ・い・た!」
 後ろを振り向くと、すずかちゃんが良く分からないといった表情でこちらを向いた。
「坊さんが屁をこいたって…何?」
「え?何ってすずかちゃん、言い終わったら動きを止める遊びやん」
 ああ成るほどという顔ですずかちゃんは言った。
「ああ。はやてちゃんの住んでいた場所では坊さんが屁をこいたなんだね。
私達の地方では『だるまさんがころんだ』だよ」
「そっちではちゃうんや!は〜成るほどね、よっしゃ。そっちでやってみるよ」
 再び元の場所に戻った二人をヴィータは訳わかんねぇという顔で見ていた。
「いくよ〜だ・る・ま・さ・ん・が・こ・ろ・ん・だ!!!」
 振り向くとそこには硬直した二人が。少し間抜けな光景だと思う。
「だーるーまーさーんーがころんだ!!!」
「タッチ!!!」
 ヴィータがタッチをして、すずかちゃんもヴィータも逃げ出した。
「ストップ!!!」
 二人は止まった。…そして私も止まった。
「…はやてちゃん?」
「はやて?」
 暫くの沈黙が不味い空気を生む。

「この後って…どうすればよかったかなぁ?」
「いや、知っててやってたんじゃないのかよ、はやて」
 ヴィータの呆れ顔の後ろにいるすずかちゃんはう〜んと考えている。
「確かに…この後って何をするんだっけ?」
 再び沈黙が流れようとしたが、
「じゃあ、勝手に考えればいいんじゃないか?」
 ヴィータナイスアイディーア!!!
「「それだ!!!」」
 私は少し考えて、ヴィータに近寄ると、
「は、はやて…?」
 ヴィータの髪と頬に優しく触れた。
「ヴィータはカワエエなぁ…髪も綺麗やし、体だってこんなに細い」
 腰に手を回して4本の指でピアノを弾くように優しく触れた。
「はやて…くすぐったいよ」
「ヴィータ、好き」
 その言葉で空気が一変する。
「ははははははは、はやて!!!!!!!!!」
 顔を真っ赤にしながらも呼吸を整えて、答えた。
「わ、私も…好きだ」
「「ブーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」」
 魔法瓶に入っていたお茶を飲んでいたシグナムとシャマルがそれをホースの如くぶちまける。
「ま、まままままままま待って下さいある、」
「よっしゃ。私の勝ちやー」
「え?」
 何なのかよく分からないヴィータ。
「名付けて告白ゲーム。大成功!!!」
「なっ、はやてーーーーーーーーーーーーー!!!!」
 怒って、はやての車椅子を素早く押してどこかへ走っていった。
「待ってよヴィータちゃ〜ん」
 その姿を見て、シグナムは思わず言っていた。
「だるまさんが転んだの意味は…なんかあったのか?」
「その遊び自体転んじゃった…とか」
 ……………………
「「はははははははははは」」
「いや、つまらんぞ」
 シグナムが冷静な顔で答えた。

「さてと、私達も何かして遊ぼうか」
「いーやった〜☆」
 シャマルのテンションに驚いたシグナムだったがまぁいい。
「昨日、主の家を探っていたら面白そうな物が出てきてな」
 シグナムは大きなリュックから、折りたたみ式の机を出し、そこに、四角い
何かをバラした。
「これ、麻雀牌?面白そうね」
「だろ?こんな綺麗な青空の下、麻雀。最高じゃないか、しかもタコスまで買ってきてるじぇい」
「シグナム、何のまね?」
 じゃらじゃらと牌を混ぜる二人の手に違う手が加わった。
「俺も混ぜてくれ」
 久しぶりに見たザフィーラの人間の姿だった。
「構わんが、その騎士甲冑、目立たないか?」
「問題ない。見ている人はコスプレだと思ってくれるだろう」
「いや、いいのか人として」

 じゃらじゃらじゃらじゃらじゃらじゃら。
「所で、麻雀ってどうやってやるんだ?」
 シグナムが二人に尋ねる。
「え?知らないわよ私」
「我も知らん」
 ………………
「し、シグナム!!!貴女ルールも知らない癖にこんな大荷物持ってきたの?私も運ぶの少し手伝ったのよ。それが全て徒労だったなんて!!!!!!!!」
 シャマルは怒ってソッポを向く。
「あ、ああああ。済まなかったーーーーーーーーーーーー!!!!」
 シグナムは土下座をして謝る。
「こんな事になったのは誰のせい?」
「私の、他力本願のせいです」
「今夜…してくれる?」
「何をだー!!!」
 シャマルが凄みをきかせる。
「し・て・く・れ・る・の?」
「…はい、ごめんなさい」
「じゃあ、よろしい!」
 シャマルの顔が笑顔に戻り、シグナムは一安心した。
「カカア天下だな、シグナム」
「保健所が近くにあるが、行っとく?」
 ザフィーラは顔を下げ、そのまま黙った。
 こほんとシャマルが咳払いをして。リュックからマイクを取り出す。
「じゃ〜ん!ジャパネットたかたのカラオケマイクで〜す」
「シャマル、花見じゃないんだぞ」
「いいじゃない、いいじゃない。デュエット用に2本買っちゃった」
 シグナムの意見を無視してマイクのスイッチを押す。
 マイクに音源があるのか、そこから音が流れる。
「もし、あしたーがー晴れ〜ならばー♪」
 シャマルが一曲歌い終わると、マイクの音源が勝手に拍手をした。
 シグナムは拍手の強要だと思いつつもザフィーラと拍手した。
「さて、次はシグナムに歌ってもらおうかしら」
 シャマルが勝手に曲を入れて私に渡す。
「いや、私はあんまりここの国の曲は知らないぞ」
「他の国の曲もあるけど?」
「訂正する。曲自体あんまり知らない」
「大丈夫よ。シグナムが前、熱唱してた歌だから」
 シグナムは仕方が無げにマイクを手に取り、
「8時丁度のーあずさ2号でー私は私は、貴方から、旅立ち〜ます〜♪」
 大熱唱だった。
「次はデュエットよー」
「寂しさに負けた♪」
 とシャマル。
「いいえ、世間に負けたーのよー♪」
 シグナムも何時の間にかカラオケに嵌っていた。
 ある程度の曲を歌い終わり、シグナムのマイクをザフィーラが奪った。
「古い曲ばかりというのも良くない。ここは一つ、少し前だが流行った曲でも歌うか」
 カラオケのボタンを押すのと同時にベースとドラムの軽快な音が聴こえた。
 二人はこの曲が何なのか直ぐに分かった。
 ザフィーラは腰を振りつつ、ノリノリで歌いだしを待った。
「♪乾いた、心で…ってアレ?」
 二人の姿は無かった。
 ザフィーラは眼球が乾くほど泣いたという。

 その二人と言えば、普通に散歩をしていた。
「ただ歩くというのもいいな」
 とシグナム。
「そうね…ザフィーラのゴッドなんちゃらを聴くよりはね」
「それをいったらおしまいだ」
 シャマルがザフィーラから離れる時に持ってきた弁当箱を取り出す。
「はい、おにぎり」
「すまないな、シャマル」
 シグナムは美味しそうにオニギリを頬張る。
「んぐんぐ…美味い。この入ってる具は?」
「それはオカカね」
 シグナムは顔を青ざめる。
「いや、お母さんを食べては駄目だろ。人として、大人として」
「オ・カ・カ」
「あ、ああ。オカカか」
 シグナムはてへへと腕を頭の後ろにやる。
「それはボケですか〜?」
「聞き間違いだ!」
 シャマルはシグナムの体に寄りかかり、
「ふふ、そういう事にしといてあげる」
 シグナムは照れながら、シャマルの手を繋いだ。
 暫く二人は無言で名も知らない花を眺め、看板にある名前を見て、かわった
名前だねとか綺麗な花だねとか色々話した。
「こんな時間が、ずっと続けばいいのにね」
 シャマルがふと口にする。
「なんだ突然」
 シャマルの方へ向くと、寂しそうな横顔が見えた。
「私達がやってる事は間違いなく悪い事。悪い事はそう長くは続かないと思うから」
 だんまりをきめこもうかと思ったシグナムだったが、シャマルの哀しげな顔には勝てなかった。
「お前の思っている事は恐らく正しい。けど、シャマルも知ってるだろ、この世で一番
強いものを」
「でも…」
「でもじゃない」
 シャマルをゆっくりと抱きしめる。
「幸福の果てはここではない。やっと見えた光…まだ抱きしめてもいない」
「……」
「剣は、柄を持った人間しか救えないんだ。だが、それでもいい」
 シグナムは腕に力を込めて、シャマルの暖かさに埋まった。
 昼の青空は、容赦なく二人の姿を照らした。

「ちくすぉ〜絶対見つけてやるからな〜」
 ヴィータは近くに隠れている私達から遠ざかる。
「はやてちゃんかくれんぼ上手いねー」
 関心するすずかちゃんに思わず得意気になる。
「かくれんぼの基本はこんな分かり易い所には絶対隠れないだろうという場所に
隠れると見つかりにくいんや」
「へ〜」
「そして、隠れる場所を一つに決めない」
 すずかちゃんは笑顔になり、私の乗る車椅子を動かす。
「ということは…」
「れっつごー」
 私達は自然公園の森の中に隠れる。
「ここなら見つからないよ」
「うん…そうだね」
 私はすずかちゃんの方へ振り向くと、そこには何故か彼女はいなくって。
 再び正面を向いたら彼女はいた…だが、振り向くのと同時にお腹に妙な感触が
あった。とても硬く、熱い、鉄。
 それは…ナイフだった。
つづく☆ 

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目次:つかいまなのなのは
著者:さばかん

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