[409]さばかん つかいまなのなのは<sage>2007/06/04(月) 21:46:13 ID:bVkRu545
[410]さばかん つかいまなのなのは2<sage>2007/06/04(月) 21:47:19 ID:bVkRu545
[411]さばかん つかいまなのなのは3<sage>2007/06/04(月) 21:49:17 ID:bVkRu545
[412]さばかん つかいまなのなのは4<sage>2007/06/04(月) 21:52:56 ID:bVkRu545

 動物が生きる為には血が流れていなければならない。

 ぶしゃ すしゅ ぴちゃ ぴゅー

 動物が生きる為には血を求めなければならない

 どしゅ ざくっ ぎっ ごとっ

 今まで私は透明の血を啜っていた。そうやって生きていけた。
 
 でも、それを私は放棄した。
 
 大切な家族が。シグナムがシャマルがヴィータがザフィーラが、私を生かす為に
リンカーコアを取り、後に厄介な事にならないように殺していた。
 叫びと流血の奔流が耳朶に響き、私はそれを掻き消すため

「♪あなたとふたりで生きたい 光の差し込むこの世界で
  花咲く季節が過ぎても 生命の終りが訪れるまで
  ふたり同じ道 歩き続け 終まで離れずいられたら
  終わりが見えたなら 遠い始まりを振り返り この道行き語り合って
  あなたとふたりで生きたい 光の差し込むこの世界で
  あなたとふたりで逝きたい 遥かな旅路の果てには

  ふたり一緒に♪」
 歌っていた。

 少し前のお話。
 時空管理本局。クロノくんは激務におわれていて、現在少しだけ休憩していた。
 彼の仕事は忙しい時と暇な時が極端で確実に寿命を縮める仕事だ。
 そんな仕事を誇りと自身が信じる正義を貫く為奮闘していた騎士の休息を、
「クロノくん、ちょっといいかな?」
 エィミィの声が邪魔をした。
 ダルイ体を起こし、扉を開ける。
「エィミィ、どうした?」
「失礼するよクロノ執務官」
 知らないおっさんの声がきこえた。
 いや、いるのはエィミィだが、彼女は休息室にずかずかと入り込み、知らないおっさんも入ってきた。
 成る程、さっきの声の正体はこいつか。
「クロノくん。このおっさん誰?クロノくんの知り合いだからって言われて案内したけど」
「君も知らんのか。僕の近所に昔いた、豆腐を待ち続けてた人?」
「いや、違うぞ」
 おお、おっさんが突っ込みを入れた。

「初めましてクロノ執務官。私の名前はアサフキと言う。戦艦ドロブネの・・・艦長だ!!!」
「ねぇクロノくん。アサフキって・・・セクトかよっ!あの面でセクトかよって、ぷぷぷっぷぷ」
 クロノくんに耳打ちをして話すエィミィにクロノくんも言い返した。
「ああ。しかも戦艦ドロブネだって。昔、戦艦の費用削減の為に泥だけで船を造ったそうだ。
しかし、泥で造る技術の方が費用がかさんで結局お蔵入りになったと言う伝説が!!!」
「おお〜そんな話が」
「なんて設定があったら面白いかもな」
「もういいかな〜。おじさん短気なんだよ」

「は?今回の事件を貴方方が引き継ぐことになった?」
「ああ。今回の事件は裏が大きいそうじゃないか。若く優秀なクロノ執務官だが、まだこういった事件は
早いとグレアムさんが判断したかどうかは知らないが彼直々の依頼だよ」
 蓄えた顎鬚をさすり語るアサフキ。
「殺された局員は僕の部下でした。彼等には家族もいます。遺族は保障されるでしょう、しかし金も大切ですが人も大切です。そんな命を刈り取った奴等を法廷に叩き込むのは僕の仕事です」
「私も長年人の上につく立場にあり、君の気持ちも分かる。しかしもう決まった事だ。何故私に頼まれたかは私の知るところではないが。心配無い。外道をとっ捕まえてから君の仕事をすればいい」
 アサフキは扉を開け、再びクロノに振り返った。
「本来私は君にあう必要は無かった。会おうと思ったのはあくまで私の独断で、君の気持ちを胸に刻みたかった。君の無念、必ず晴れる。ドロブネに乗ったつもりでいて欲しい」
(泥船かよ)
 おっさんは去った。

「やあ、そろそろ来る頃だろうと思ったよ」
 クロノくんは真相を確かめるためにグレアムさんのいる部屋へ向かった。
「何故トランクスだけしか着てないんですか?」
「はは。情事の後は火照るからいけない」
 言って、ベッドの中で眠っている双子の使い魔を見つめた。
「まぁそんな事はどうでもいいです。それよりも、」
「それよりも何故今回の件をあのひげおっさんに頼んだのか・・・か?」
「ええ」
「今回の事件は君の調べた通り『闇の書』がらみだろうな」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 沈黙が訪れた後、グレアムさんは静かに語った。
「簡単なことさ、奴等が大きく動き出すのはもう直だ。そして、その奔流に流されるのは」
「戦艦ドロブネ・・・ですか?」
「そうだ。彼等には犠牲になってもらい、動きを円滑にする」
 ドンと何かを叩く音が響いた。
「そんなに僕の実力が信用できませんか?」
 クロノくんが怒りの表情で壁を叩いた音だった。グレアムさんは冷静に見る。
「信用できるできないではない。より確実に最小限の被害で済ませようとした配慮だ」
「ミニマックスだとかどうでもいいんだよこのパンツジジイ!!!」
「せめて絶倫じじいと言い直せ!!!!」
「クソッ!どうあってもこの件を僕に譲っ、」
 続きを言おうとした瞬間だった。
 グレアムさんに通信が入った。
「・・・そうか、ご苦労様」
 通信を切ったグレアムはにやりと笑い、皮肉そうに見つめていた。
「真坂・・・」
「喜べクロノ、君に仕事が戻ってきたぞ」

 その後の話。
 戦艦ドロブネはいたって普通の戦艦だった。クロノくんはその、今やただの血溜まり
と化した場所を冷静さを取り繕って歩いていく。ぴちゃぴちゃと雨が降った後のようなこの音は
自然ではなく、まぎれもなく人間の仕業だった。
 それが私達、八神家だと言うのはいわずもがなだった。
 クロノくんがやってきたのはコントロールルームだった。それを適当に操作すると別々の映像が表示される。それは現代で言う監視カメラだった。どうやらまだ生きているらしい。
 これが生きている理由は簡単だった。ここに進入した相手はハッキングのプロもいただろうが、アナログなシステムには気が付かなかったようだ。そして、普段はこんなものは仕掛けられていない。
 仕掛けられた理由は・・・彼等が人身御供だったからだ。
 クロノくんはその罪悪感をかみ殺し、映像を再生するのだった。
 
 見た光景はとても単純なものだった。
 40分前、5人の局員が操作から戦艦に帰ってくる。
 そう、この映像を見てだいたい予測できた。
 そう、この5人は侵入者である。変身魔法で局員に変身していたのだ。
 これだけの夥しい死体に、新たに5人が加わった。
 そこから先、目をそらすのを必死に堪えた。
 不鮮明な画像から血が、叫び声が。その鮮やかな殺しは、鮮やかでないものをどんどん量産していく4人。
 残りの1人、これが不可解だった。車椅子に乗り、誰も殺さない。こいつは恐らく、
「主・・・」
 その主は・・・歌っていた。この場所で、この場所だからこそなのか。
 不釣合いな歌は、とても懸命に歌われていて、この世界を掻き消そうと努力している。
 クロノくんはそう思ったらしいが、実際歌っていた私はよくは覚えてない。
 その後の光景が映る。

「なんだこりゃ?」
 その主の背中からおっさんが襲い掛かるも背中からばっさりと切られる。それだけならこの凄惨な
 光景では正常、そのおじさんの正体はここの艦長で、まだ息がある。
 その主が、剣を持った女性に何かを話しかける。
 その主は、女性の剣を持ち、倒れた背中に自らが突き刺す。止めを自らがするつもりだろうか。
 クロノくんは主を見て。
「まるで自ら血で汚れようとしているような・・・」
 何度も何度も突き刺し、艦長が絶命するのにはそれから少し掛かった。
 その映像を切ったクロノくんはさっき主が歌っていた歌詞を呟く。
「ふたり同じ道 歩き続け 終まで離れずいられたら か・・・」
 それは主がずっと一緒に使い魔といたいということなのか。クロノくんはそう思った。
 だが、そんな事を多数が許さないだろう。
 私達が生きるには多くの犠牲が必要で、しかも、それはとても自分勝手で自分しか望まない。
「その歌が僕に届くことは無いだろう。多数の代表、それが正義、それが僕だ。
 だが、せめて幸せな時を過ごしてくれ。一人の少女の望み位叶えてあげたかった」
 それは無駄な話、多数の意思が正義だというのなら
 私、八神はやての願う事は紛れも無く悪なのだから。
 その意思が交わり事は決してない。片方は全て捨てられる、そして、捨てられる方を私は知っている。
 
 だってこれは私の回想なのだから。
つづく

前へ 次へ
目次:つかいまなのなのは
著者:さばかん

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます