[62]さばかん つかいまなのなのは1<sage>2007/05/11(金) 22:33:47 ID:muxPky4z
[63]さばかん つかいまなのなのは2<sage>2007/05/11(金) 22:35:05 ID:muxPky4z
[64]さばかん つかいまなのなのは3<sage>2007/05/11(金) 22:36:21 ID:muxPky4z
[65]さばかん つかいまなのなのは4<sage>2007/05/11(金) 22:37:26 ID:muxPky4z

 それは連続写真を繋げたように乱暴な流れ。
 衝撃が大きすぎると人は流れを忘れ重要な点のみを見つめる。
 その点がシグナム達にとって、私、八神はやてだったのだ。
 倒れた私を病院に送った後、何もする事が無いと直に分かったみんなは家に戻る。
 暫くの沈黙が続きシャマルが言った。
「ごめんなさい、私が直に気付いてあげていれば・・・」
「違う・・・」
 シグナムは俯き、腕に爪を立てる。
「シャマルは何も悪くない。軽率だった」
 シグナムは更に何か言おうとしたが、悲しみがつっかえた。
 ヴィータは涙を堪え、ザフィーラはいつもの沈黙の中にも悲しみを帯びていた。
 簡単に言えば、私の体が不自由になり、倒れてしまったのは「闇の書」の仕業だった。
 仕業・・・言葉のあやとは言え、悪い表現だった。
 闇の書は何も悪くないし、それに彼は私に大きな出逢いをくれた家族だ。
 回想とは言え、家族の悲しむ姿は見たくなかった。でも、私は逃げない。
「将である私が何故気が付かなかった!くっ!」
 自分の太股を何度も叩く。
「シグナム、自分を責めないで!悪いのは・・・」
「どっちでもいいよ」
 シグナムとシャマルはその声に振り返った。振り返らなくてもヴィータの声だと分かったが声色が
随分と重かった。
 さっきまで泣いていたのが嘘のように涙は止まり、目蓋は赤く腫れていたが、冷静な顔だった。
「二人で責め合って、脚ぶっ叩いて何とかなるなら幾らでもしてろよ・・・」
 シグナムは脚を叩くのをやめてそれでも沈黙だけは守った。
「しっかりしろよ!あたしたちがこれからすべき事が分からない位落ちぶれたのかよっっ!!!」
「無理だ!」
「何故!」
「主はやてと約束した。ページの蒐集はしない、と」
「・・・・・・・・・・・・」
「無欲で優しい主が、たった一つ、いや、二つか、望んだ事を反古(ほご)にする訳にはいかない。
それが私の騎士道だ」
 ヴィータはシグナムをじっと見つめて刹那視線をそらしたが、覚悟したのかシグナムを見つめ、言った。
「シグナム・・・お前」
「もう一つを言わないのは、反則だろ?」
 柔らかい笑みが浮かんだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
 シグナムはヴィータに論破されたかったのかも知れないし、単に真面目だっただけなのかも知れない。
「シャマルもザフィーラもあたしも知ってるけどさ、言ってくれよ・・・もう一つはやてが願った事って何さ」

「ずっと・・・ずっと一緒にいて下さい」

 シグナムの頬をすっと涙が流れ、徐に立ち上がり、いつものあの凛凛しい表情に戻った。
「主はきっと、私達を嫌いになるだろうな」
 傍観していたザフィーラも立ち上がる。
「ああ。我らの事を怒り、一生許さないだろうな。だが、あの笑顔が消える位なら・・・
そちらの方がずっといい!!!!」
 シャマルも立ち上がり、シグナムに近付く。
「はやてちゃんごめんなさい。でも、貴女の事を世界で誰よりも愛してるわ」
「苦しみは続くかもしれないけど、いつか・・・いつか必ずあたし達がなんとかするから!!!」
「いこう!主が待っている!!!!」

「「「おおうっっ!!!!」」」

 戦艦アースラ内クロノくんの部屋。
「エィミィ知ってるか?」
「知らないよ・・・」
「随分とノリが悪い・・・エアコンはエアーコンディショナーの略らしいんだ・・・北へ!カードっと」
「うわー出たよ、目的地が稚内の時に近くのカード売り場で北へ!カードを買って次のターンで
発動。そうすれば絶対に稚内にはいれるもんねーって、エアコンの略知らなかったんだ、常識よソレ」
 アースラは忙しい時と暇な時が極端だ。暇つぶしのゲームは常備して然るべきらしい。
 エィミィとクロノくんはモモテツをプレイ中だった。
「常識って、君は天才か?じゃあこれ知ってるか、ファイブミニの色素って虫からとってるんだ。
合法だから心配しなくてもいいけど。次は鹿児島か、ぶっとびカード!」
「それも常識。順調だねークロノくん、でも。モモテツって運が良すぎるとかえって勝てないよー」
 そう、クロノくんが使ったぶっとびカードはよしんばホールインワンしてしまったのだ。
「げ!!」
 ニヤリと笑うエィミィと適当に数を揃えた局員2人。
 本来ホールインワンはラッキーなのだが、他の人達が離れていると最悪の展開になる。
「次の目的地次第だろ?・・・あ、青森っっ!!!!」
「ふふ、新幹線カード!」
 その後の展開はクロノくんにとって最悪なものだった。青森に速攻で入ったエィミィ。次の目的地はまたしても東北!しかもふういんカードを使われ、貧乏神がキングボンビー。ここが人間同士の対戦のイヤな所で近くの目的地にあえて入らない。エィミィの逆転勝ちだ!!!
「あ〜!!!!!!!!!!ミスエィミィ、もう一度だ!!!!!」
「あのークロノ執務官」
 新たに来た局員がクロノくんに話しかける。
「あ、すまない。もう席は埋まってるんだ。誰か適当な人を誘ってくれないか?」
「いや、そうでは無くて、魔法が発達していないはずの世界で巨大な魔力反応がありました」
 クロノくんの表情が真剣になり、支持を送る。
「武装局員を3名行かせ、原因の究明を」
「はっ!」
 局員は急いで出て行った。
「ビンゴかもねー」
「ああ。今度こそ当たりだと信じたい」
 武装局員3名は私達の世界にやって来る・・・それが誘蛾灯とも知らずに。

 ただ闇が広がり、浮かんでいた私は何かを感じ取り、誘われるようにそこに向かう。
 長く暗い廊下を抜け、自動扉はすり抜けた。
 時速5キロメートル位の速さ、歩く程度の速さでその大きな何かに向かって行く。
 暫くすれば明るい街に出る。暗い欲望が明るく映る繁華街を、何かが覆った。
 透明の膜、自分がガチャポンになったみたいだと思った。
 人は包装された食品みたいに動かない。
 そんな静寂が一部だけ無かった。
「ぐあああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」
 誰かの、男性の声。
 脚を進めたい訳じゃないのに勝手に進んでいく、いや、そもそも脚などない。
 喘ぎ声の嵐が過ぎ去り、静寂が支配し、しかし、
 スバン、ビシャ、ビュー。日常では聞かない音が響く。なんだろうと思って路地裏に
進む。
 聞きなれない音とは対象に、随分と見慣れた姿があった。
 あ・・・あ・・・っ。
 声が、出なかった。
「あっけなかったな。リンカーコアを回収するのに随分と手間取ると思ったが」
 言って、リンカーコアを抜き取ったカラの首を飛ばした。
「ああ・・・でもこれじゃあキリない。どうしようシャマル?」
 今度のカラは脳天を砕かれ、肉片と血が飛ぶ。
「それは家に帰ってからみんなで考えましょう」
 みんな、何してるんや・・・
 手には血に塗れたアームドデバイスが光り、廻りの壁は血が光を反射させ、それよりも輝いていた。
 そして、光りさえもしない肉片。
 あ・・・あああ・・・
 そして、その凄惨の舞台を生み出したのは・・・
 その答えが浮かぶ前、
 シグナムの血に濡れた顔が此方を得物を捉えた鷹のように睨んだ。
 
 ああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!

「は・・・はぁ、はぁ、は・・・・・・・・!」
 気が付けば、私は暗い部屋にいた。冷たくなった汗が気味悪くその存在をべたべた感で主張する。
 見渡す前にその匂いで直に分かった。病院だ。
 一番最後の記憶を辿っても肝心の場所は空白だった。何故私が病院に居るかは知らないけれど。
 そんな事は気にならなかった。気になるのはさっきの夢。いや、あれは夢ではない。
 確信は無いがどうも夢とは思えなかった・・・根拠は無いけど。
「でも、みんなが、そんな・・・」
 考えがまともに浮かばない私は、眠気だけがまた浮かんで何時の間にか眠っていた。

 翌日、ヴィータがお見舞いに来た。
 本当は意識が戻っているのだが、彼女達の真意がまだ分からないので寝たふりをした。
 などと言い訳をしている私。本当は、家族であるはずのみんなが恐かった。
 あの時のシグナムの鋭い目、あれだけで死にそうだった。
 だが、そのシグナムはいない。ヴィータ一人だ。
 シグナムやシャマルはどうしたんだろうと思ったら、
「はやておはよう。その・・・さ、今日は皆色々都合があって、あたし一人なんだ。
でも寂しくなんかさせないからさ!うん!こうやってさ、意識の無い人に話しかけるといいって
本で読んだことがあるんだ。煩いかもしれないけど我慢してくれよな。
 今日さ、たまにはいいんじゃないかってみんなでモス食べにいったんだ。あたしは新テリヤキバーガー
を頼んだんだよ、で、偶然シグナムが普通のテリヤキを頼んでさ。あたしが注文言ったんだ。
テリヤキと新テリヤキを一つずつたのんだらさ、テリヤキ二つですねっていわれたんだよ。
後で知ったんだけど、テリヤキも新テリヤキも一緒だったんだな。ははははははは!!!」
 ヴィータが一人で笑い続け、笑いが何時の間にか嗚咽に変わった。
「うっ・・・ぐすっ・・・つまんねーよ、はやてがいないと全てがつまんないよ!なぁ、はやて!!!」
 ゆさゆさと少し揺らして無駄だと悟ったのか、ヴィータはその手を放す。
 パイプイスのキイッという音が響き、ヴィータが座ったのだと分かった。
「はやて。はやての人生はあたし達のせいでこれから先辛い事が起こる。それは間違いなくて、それでも・・・ずっといるからさ。
 泣きたい時も甘えたい時も一緒に遊びたい時もずっといる。
                      ずっとだ!
んでもしも誰もはやてのお婿さんに来なかったらあたしが、はやてのお婿さんになるから!!!」
「うっうう・・・ぐ、ずっ」
「はやて!?」
 閉じた瞳から涙が零れ、それを腕で拭う。それでも涙は止まることは無かった。
「はやて、どっか痛むのか?」
 私はヴィータを抱き締めヴィータの胸の中で首を横に振った。
「あ・・・」
「ごめん、ごめんな、みんな!」
 私は、信じてあげられなかった。みんなのことを、恐いって思ってた。でも、言葉も体も、誤解を払拭する位
暖かい。
「はやて?」
「もう、背負わんでええから・・・私もみんなと一緒に幸せになりたいから、私も背負う」
 それがどんな意味か分かっていた。
 大勢の人を犠牲にして生きるその大罪。でも、それでも今の幸せを手放したく無かった!

 利己主義という甘い蜜を吸いながら、いるはずのないカミサマに許しを請うた。

つづく☆

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目次:つかいまなのなのは
著者:さばかん

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