[651]224  ◆Nw9Ad1NFAI <sage>2007/06/24(日) 01:33:14 ID:NXXIXhlj
[652]224  ◆Nw9Ad1NFAI <sage>2007/06/24(日) 01:33:57 ID:NXXIXhlj
[654]224  ◆Nw9Ad1NFAI <sage>2007/06/24(日) 02:01:07 ID:NXXIXhlj
[655]224  ◆Nw9Ad1NFAI <sage>2007/06/24(日) 02:02:33 ID:NXXIXhlj

キスをしたことがない青い若者たちの眼前で熱烈なラヴシーンを展開したアルフは、ザフィーラの左腕に自分の右腕を絡ませ身を寄せて、ようやくエリオたちと向き合って会話をした。
「3時を過ぎた頃にこっちに到着してね。フェイトやはやて達、六課のみんなとクロノの子供のこととか世間話をしてたりしてたわ。
その後スバルたちの訓練を覗きに来てみたら、ちょうどみんなと今こうして……て、お化けでも見たような顔してどうしたの?」
 ここではじめてアルフは新人たち全員が凍っていたことに気づく。
 気を取り直して、ティアナが四人を代表して聞く。
「い、いや〜アルフさんが突然ザフィーラさんにキスをしたんで驚いちゃいました」
「え?この前言ってなかったっけ?ザフィーラとあたし婚約してること。ホラッこれが証拠だ!」
 にやけながらアルフはザフィーラの左腕を持ち上げる。
ザフィーラの左手薬指に嵌っている飾り気の無い金の指輪と、自分の左手の指輪を近づけ、二つがお揃いであることを示す。
再度驚きの声が通路に鳴り響いた。

廊下をエリオとキャロが歩く。
未だにさっきの衝撃が抜け切らなかった。
あの後、アルフは「それじゃ、また」と言ってザフィーラを引きずり、外の訓練場に居るなのはとシャーリーに会いに行った。
「エリオ君、アルフさんが婚約してたって知ってた?」
「全然知らなかった。ザフィーラさんが人型になれるのも知らなかった」
 フェイトの実家でアルフと一緒に過ごしたことのあるエリオは、驚きでガスが抜けた表情で言った。
「あれ、凄かったね……」
「うん……」
 キャロがキスシーンのことを言った。
 テレビドラマとかで見たことがあったが、二人して直接見たのは初めてだった。
 昨晩、フェイトと一緒に三人で川の字で眠ったが、そのときフェイトからおでこにキスして貰ったのを思い出す。
 アルフの唇にした行為は、二人にとっての母親が行ったとは全く異質だった。
 熱い口づけを見た二人の心臓はいまだに鼓動の速度がゆるまない。




 あの後、何か飲み物でも飲もうかとキャロに言って、スバルとティアナとは別れて、暫く小休憩室で時間を潰した。
以後黙り、二人の足が向ったのは施設の一角にある倉庫だった。
 訓練直後で汚れた姿のままであるが、一向に気にならない。
 内側から施錠したのを確認し、薄暗い倉庫内で二人は見つめあう。
「ルシエさん」「エリオ君」
 ふたり同時に互いの名前を言って、顔を真っ赤に染める。
「あ、え……と、ごめん。緊張しちゃった」
 そんなエリオを見てクスと笑い、キャロが言う。
「エリオ君の顔、耳までユデダコみたいに赤くなっちゃてる……。ねえ、わたしの顔どうなってる?」
「ルシエさんのほっぺた赤くて……とってもキレイだ……」
 しばし見詰め合う二人。
訓練でついたドロがこびりついていても全く気にならない。
それよりも二人の頭にあったのは、アルフのキスシーンと午前中シャマルから聞いたことだった。
(これから言う事は誰にも内緒ね。ヴァイス君とティアナちゃんはB区画一番端の倉庫でね、よくキスしてたりするのよ。キスっていうのはね……)
 頭の中に、アルフとザフィーラのキスシーンと、尊敬する二人の年長者の姿が重なる。
兄のように接してくれるヴァイスと、先輩として頼りになるティアナが、あんなふうに心を通じ合わせているのではないか?
そのように想像すると、幼い二人の体の芯がまた熱くなる。

先に口を開いたのはキャロだった。
「エリオ君、わたしのこと「キャロ」って呼んで……」
「じゃあ、ボクのことも「エリオ」だけで良いよ……」
 エリオがキャロの肩に両手を置く。
「キャロ、行くよ……」
「いいよ、エリオ来て……」
 目を閉じたキャロにゆっくりと顔を近づけるエリオ。
 ドクンドクンと互いの鼓動が耳に入る。
 互いの息遣いがわかるくらいまで近づいて初めて感じた。汚れた顔も、汗の臭いも全てが愛おしい。
 そして、赤い髪とピンクの髪が触れ合う。
 チュッ……。
 ついに二人の唇が重なった。
「ン……」
 柔らかい、とお互いに思った。
 キャロがブルっと震えて、エリオの背中に手を回す。
 それに合わせるようにエリオが肩に置いた手をキャロの首に回す。
体を近ずけせようとすると、キャロもまた手に力を入れてエリオと一緒になろうとした。
 互いの頬はさらに紅潮し、息遣いが荒くなる。
 そしてキスをしてから30秒くらいしかたってないが、二人は唇を離す。
「ハァ……」
 キャロが蕩けた様な表情で目を潤ませ、息を弾ませるのを見て、エリオはとにかくキャロを再び抱きしめた。
 ただそうして居たかった。
 それしか思いつかなかったといってよかったが、二人はそれだけで満足だった。
 うれし涙を流しながら、ようやく幼い二人は互いの思いを口に出せた。
「キャロ……好きだ……」
「わたしもエリオと会った時から……エスカレーターで助けてくれた時から大好き……」
 エリオはキャロの髪を優しく撫でてやり、キャロはエリオの訓練用のシャツをギュっと握り締める。
 臭いを感じ、肌のぬくもりを感じ、鼓動を感じ、自分にとって大切な人がそこに居ることを感じあった。
 シャワーを浴びて夕食に行かなきゃいけないってことも分かっていたが、二人はずっとそうして居たかった。
……乱入者が現れるまでは。




 エリオとキャロが、熱くなんかドロリとした視線に気付き、背筋が凍りつく。
 ビックリして振り向いた先にいたのは、蛍光灯とか雑用品を置いた棚の影から、顔を半分出して除いていたアルフだった。
 飼い猫がいる方なら理解できよう。ときどき扉や物陰から顔半分で飼い主を見る猫のソレである。
「チッ気付かれたか」
 アルフがニャニヤしながら言った。バレるのを思いっきり狙っての行動だ。
「あ、あ、あ、あ、アルフさんいつからそこに!」
 二人は急いで離れながら、同時に訪ねる。
 汗が流れる。
 エリオは自分がすでにアルフを「さん」付けで呼んでいることに気付いていない。
「お〜その声良いねえ〜。思いっきり動揺してるのがよくわかるわ〜」
 笑いを堪えるのに必死な感じで、腹を抱えながらアルフは言った。
「その辺にしておけ」
 アルフの隠れていた棚からザフィーラが現れる。
ザフィーラが続けざまに言った。
「エリオ・モンディアル……。事に及ぶ前に、最低でもスキャンをかけるべきだった……」
 顔を背き、声にどこか哀愁を感じたのは、同情してるが故か。
 いや、実際厄介な女性に見られたエリオたちをひどく同情していたのだが、ザフィーラの威厳漂う騎士の風情がそれを阻んでしまった。
「フフフ、ここは私たちが先客だったのだ。つまり、君たちの昼メロ的行動は全てこの目に焼き付けた!"つまりもうおまえは助からない"」
「そ、そんな、そんなこと言うアルフさんたちだって、さっきキスしてたじゃないですか!」
 エリオが言い返すがアルフは全く動じない。
「あたしたちのはスキンシップ!いわば挨拶の一つ。挨拶するのに周りの目を気にしてどうすんの?」
 胸の前で腕を組み、とにかく偉そうにふんぞり返るアルフ。
 ザフィーラがそんなアルフの後頭部を、ガッという音を立てて、かなり本気な感じに「小突く」!
 結構本気で怒ってらっしゃるようで……。
 エリオとキャロはヴォルケンリッターの恐ろしさを、ちょっぴり知る。
「あだーーーッ!ちょっとザフィーラ!乙女の、それも生涯の伴侶の顔になにするかー!!」
「脅すな!あと、スキンシップでもTPOをわきまえろ!それと突いたのは後頭部だ。しかもその口調、どこからメディアから拝借した!」
 ザフィーラはきつく睨んでるが、アルフは意に返していない。本気でないと判っているのだ。
 そんな夫婦漫才(?)を見て、すっかりさっきまでの緊張感がなくなってしまったエリオとキャロ。
 アルフはそれを察して二人に向いて、尻尾を振りながら言った。
「さっきのキスのことなんだけど。みんなに黙っていてあげる代わりに、このあとお土産と夕飯の材料の買出しに付き合ってほしいんだけど、どうかな?
  なのはの実家で教えてもらった料理をザフィーラに食べてもらいたいんだけど、暫く"向こう"に居たから、あたしあんまりここら辺のこと詳しくないのよね。
  ホラ、しかもザフィーラってこういう人でしょ?マーケットとか流行のお店とか、そんなこと全く気にしないのよ」
 エリオとキャロは、ザフィーラをチラっと見てから、ああなんとなくわかったと思った。
「それにね……、シャーリーから、お二人さんが最近のデートでデパートに行ったってこと聞いてあるから」
 アルフが何もかもお見通しだといわんばかりに言う。つまりお前達に逃げ場は無いぞとでも言わんばかりに。
ルージュを引いた唇の端から覗かせる上顎犬歯、いわゆる八重歯がさらに艶かしい。
キャロが勇気を出して言った。
「あの、私たち、夜間外出申請とか出してないし……」
「出してみたら?きっと通るから」
 ニンマリとした顔で答えるアルフ。
「ヘ?」とあっけにとられるエリオとキャロであった。

 シャワーを浴びて汗を流し、外出着に着替えたエリオとキャロが正面玄関に向う。
 そこには既に車が待っていた。
 角ばったフォルム。派手さの無い、いかにも軍用車輌という匂いを漂わせる。
 地球で言うところのジープという車輌だ。
 助手席のアルフが二人に気付いて手を振る。
 運転席に座っているのはザフィーラ。
 車に乗り込むと、アルフが「出発だッ!」と片手を挙げて言った。




 機動六課管制室。
 正面モニター映されたMAPの道路上に光点が進む。
八神はやて部隊長が机に肘をつき、あわせた手を口元に置く感じに見続ける。
いわゆる"ゲン○ウ・スタイル"というやつだ。
通信士のアルトとルキノが次々と報告を寄せる。
「スターズ03、目標死角より追跡を開始。スターズ04、後続車二両後ろから追跡中」
「機動一課より配置完了の連絡。機動一課課長より暗号入電。"たまにはこういうイベントも面白い。非常に面白い。とてつもなく面白い"だそうです」
 それを聞いた部隊長は、腕を組みながら薄く笑う。
「なんや、向こうもヤル気満々やんか。よっしゃッ!現時点を持ってして、作戦は第三段階へ移行や!みんな、気張りや!」
 管制室内の部下たちが、一斉に応じる。
「ヤ・ヴォール、ヘルコマンダー!」

 そのころ、施設アンテナ塔最天辺では夜景きらびやかな市街地のほうへ向う白衣の女性がいた。
 指輪型デバイス、クラールヴィントが怪しく輝く。
「これぞ、人の心を流し動かす"湖の騎士"の技なり。全ては私の思うがまま……」


(続く)

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目次:エリキャロ
著者:224  ◆Nw9Ad1NFAI

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