437 名前:エンカウンターズ・ウィズ(5話 1/4)[sage] 投稿日:2008/10/03(金) 23:56:34 ID:R1Xltttm
438 名前:エンカウンターズ・ウィズ(5話 2/4)[sage] 投稿日:2008/10/03(金) 23:57:24 ID:R1Xltttm
439 名前:エンカウンターズ・ウィズ(5話 3/4)[sage] 投稿日:2008/10/03(金) 23:58:25 ID:R1Xltttm
440 名前:エンカウンターズ・ウィズ(5話 4/4)[sage] 投稿日:2008/10/04(土) 00:03:48 ID:R1Xltttm
441 名前:エンカウンターズ・ウィズ(5話 4/4+α)[sage] 投稿日:2008/10/04(土) 00:05:04 ID:2dPdqSpd

ヴァイスがもうダメだと思ったその直後。
『ビキビキビキ・・・ドォォォン!!』

ヴァイスや違法魔導師の背後でゆらいでいた黒い半球の結界にヒビが入り、爆発した。
そして灰色の結界魔法の中には同じように白色半透明の巨大なプロテクションが現れ、中には砲撃魔法でおとされた空戦魔導師やヘリ
の乗務員達は地上に降りていた。
負傷してるようだが、全員命に別状はないようだ。

そして、結界の奥から誰かがこちらへ飛んできた。料理人の少女である。少女のコック帽の上には小さい人形のようなものが
のっかっている。

「ふぅ〜、結界魔法破るのに結構時間かかってしもうたわ。でも間に合ってほんま良かった」
「はいです。ヴァイス2等空士がここまでもたせてくれたおかげです」

「せやなリイン、さすがシグナムの言うとおりヴァイス二曹は『エース』やな」
「はいです!さすがです!!」
小さい人形、魔導生命体のようなものに少女は話しかけていた。驚いた違法魔導師達は瀕死のヴァイスにかまわず
少女に向けて砲撃魔法を放った。しかし、少女は逃げようともしなかった。


「バカ・・野郎・・逃げ・・ろ・・・・」
荒野の廃墟で砲撃魔法に飲み込まれようとしている少女を見て声にならない声をヴァイスは発した。
しかし身体が重くて言う事をきかない。何もできない絶望の中で風に舞い落ちる漆黒の羽が舞った。

「(ドゴォォォン!!!)」
そして砲撃魔法が少女にあたり、周囲は爆風の砂埃で何も見えなくなった。しかし、爆風が晴れるとヴァイスや違法魔導師たちは驚いた。
「な、何?」

爆風の中で少女は無傷で立っていたのだ。
しかし少女は真っ白い料理人の衣装ではなく、白いコートに黒と金を基調とした立派な騎士甲冑を身に付けていた。
そして左手には古代文字でかかれた魔導書を、右手には巨大な剣十字のデバイスが握られている。

そして少女の背中には、強大な抑え切れないほどにあふれる魔力の残滓であろうか、黒い羽が少女の周りを舞っている様に見える。

少女が変わったのは服装だけでなかった、少女の茶色がかった優しい色の髪は見事な金髪になり、瞳も色も落ち着いた黒から
ゆるぎない戦士の意思を秘めた真っ青な碧眼に変わっていた。

少女の前の真っ白いトライ・シールドが砲撃を全て受け止めていた。無数の砲撃魔法が打ち込まれたはずなのに、少女は顔色一つ
変えない。そして相手の足元に真っ黒な巨大なベルカ魔方陣が形成され、巨大な黒球が少女の頭上に形成されていく。

魔導師達は退避しようとするが、少女の横に巨大な蒼い狼が現れ大きな咆哮をあげた。
そうして足元から強烈な白い光の柱に身体を拘束された。並のバインドではなかったため、解除に手間取った。

『マイスター!!詠唱完了です!』
『了解やリイン!遠き地にて闇に沈め、デアボリックエミッション!!』

少女がそういうと、ドス黒い魔力の塊に周辺の魔導師があっというまに飲み込まれた。その魔力の強烈な波動にヴァイスはただただ驚く。
「(ただの料理人じゃなかったのか?つかそれ以前に明らかにただの魔導師じゃない!!)」

『よくぞそのデバイスとともに持ちこたえた。ここからは主はやてと我々にまかせろ!!』
『あんた・・・まさか!?』
蒼い狼から送られてくる念話。その渋い落ち着いた声には聞き覚えがあった。食堂の無口で屈強な配膳係である。
そうして周辺の空気を震わすほどに大きく吼える。

少女にも驚いたが、よもや男性の正体が屈強な狼であったことにヴァイスは驚いた。
『ザフィーラの言うとおり、安心し!もう大丈夫やから!』

昨日の夜は頼りなかった優しげな料理人の少女、いや聖王教会騎士団の騎士、八神はやての声は非常に頼もしく聞こえた。

そんな中、はやてのまわりを違法魔導師たちが取り囲み始めた。ヴァイスが陽動で混乱させ分散させていた敵が集まってきたのだ。

『予想以上に数が多い、ザフィーラ。もう一回、広域魔法の詠唱で一気に片付けるで!!それまで守りはお願いや!!』
そうしてザフィーラは巨体に似合わない速さで、スナイパーのヴァイスが眼でもやっと追える速さではやてへ攻撃を仕掛けようとする
もの達にとびこんでいく。

巨体でありながらもかなりのスピード。こんな速さの持ち主はシグナム以外に知らない。

ザフィーラは遠くの相手には鋼のくびきをお見舞いし、近くの敵に体当たりして、魔力を付した爪でデバイスごと切り裂き、けちらていく。
並の射撃魔法はかすったところで、ほとんどダメージを与える事ができず、違法魔導師たちはその牙や爪のえじきとなって地上へ墜ちていった。

ほんの数分前まではこちらが優位だったというのに。魔導師の一人はそう思ったが、更に仲間から悪い連絡があった。

「魔力反応!!あと数分で管理局の航行艦がこちらに転送されてきます!」
「護衛の騎士に艦船だと!?」

そしてヤケになった違法魔導師たちはミッドチルダにいる別の部隊に念話で遠距離通信を送る。
『くそっ!!俺だ!!あのオペレーター裏切りやがった。さっさとヤツの弟を殺せ!!』

少し遅れてから返答がくる。

『わかった・・・と言いたいところだがそいつは無理な相談だな』
声の主はそう言った。

『何だと!?てめえ誰だ?』
『名乗るほどの名前は持ち合わせてねえよ』

通信先の男、ゲンヤ・ナカジマ一等陸尉は違法魔導師に話を続けた。

『申し訳ないが、あんたらの仲間はパーティーからご退散願った』
念話の通信の背後でサイレンの音「さっさと護送車まで歩け!!」「人質の男の子は確保!!繰り返す・・」という声が聞こえる。

ゲンヤは倉庫に無造作に置かれていた書類を見ながら言葉を続けた。

『お前らの情報管理は、ドーナッツよりもひどい穴の開きようだったぜ。ゾウヒン流すのにこんな計画をたてるなんざ、俺から言わせて
みたら2流、いや3流だぜ。今度ヤマ踏もうとするなら、もう2度と俺達ミッド陸士のショバを使わないことだ』

「貴様!!」

魔導師は激昂したが、ゲンヤそんな魔導師の怒りを全く意にも介さずに魔法を詠唱するかのように、何かの一文を読んだ。

『・・・お前には黙秘権がある。その供述は裁判で不利な証拠として用いられることがある。また弁護士と相談することもできるし
取調べに弁護士を立ち会わせることもできる。自分で弁護士を雇うことができないときは、公費で弁護士を雇ってもらうこと
もできる・・・』

「何を言って・・・!?」
『そんな修羅場じゃ“ミランダ警告”も教えられてもらえねえと思うから、こいつは俺からのプレゼントだ。そんじゃ、せいぜい
残り数分のシャバを楽しめ(プツッ)』
「・・・」

違法魔導師は絶望のうちに通信を切られた。

はやてが詠唱を行っている間にザフィーラははやてに攻撃を加えようとするものをどんどんカウンターで沈めていったが、ザフィーラ
一人だけではたりず、わずかにスキが出た。遠くより4人の魔導師が複数で詠唱中のはやてに射撃魔法の狙いをつけている。
「・・・主!!!」
間に合わない、そう思ったのか、寡黙なザフィーラは思わず叫んだ。その時。

「ガンッ!!・・・(パン!!パン!!パン!!パリン!!)」

そんな魔導師達のデバイスコアを緑の光が駆け抜け、一気に割れた。地上からの一発の射撃魔法が彼らのデバイスを瞬時にして穿ったのだ。
地上にはかろうじて、骨折していなかった右腕でストームレイダーを空へかかげ。片手だけで狙撃を行うヴァイスがいた。
「今度は・・・きっちり守って・・・・やらないとな・・・」

そうしてはやては碧眼を見開いた。
「完了や!!」
その直後、今まで快晴だった空が、先ほどのデアボリックエミッションのような雲に覆われ始めた。はやての声があたりに響き渡った。
「夜天の書よ、主はやてが命ずる」

そして空気が振動し、激しい風がはやてを中心に巻き起こる。

『二人とも安心するデスよ!』
そんな幼い子供の念話を聞いたヴァイスやザフィーラに、スフィアプロテクションが形成される。

「眼下の敵を打ち砕く力を、今、ここに。撃て、破壊の雷!」

はやてがそう言ってデバイスを上空に掲げた瞬間、はやての持つ夜天の書から発せられる光が黒雲に昇っていき、増幅された紫色の巨大な閃光が
大地に突き刺さった。

そして結界魔法のごとく、紫の光が半球状に拡散していき全てのものが光の中に消えていった。

まさに旧時代に起こったと伝えられる次元震さながらの地獄の光景である。光が収まると、あたりにはパチパチと紫色の魔力の残滓が
スパークし、たくさんの違法魔導師が倒れていた。
「安心し、非殺傷設定や。24時間は立てへんと思うけど」

その光景を見ながらヴァイスは一つの噂を思い出していた。

かつて次元世界で猛威をふるった古代ベルカのロストロギア、闇の書。4人の勇敢なる守護騎士を率い、漆黒の羽をなびかせて
強大な破壊と死の力を行使する最強のS級のエース魔導騎士が管理局にいるという噂を。

「(そして、シグナム姐さんが尊敬する人。想像していたのとだいぶ違うぜ・・・)」


その直後どこからか、廃墟の真上に戦艦があらわれた。管理局のL級航行艦「アースラ」である。
そこから魔導師が多数降りてくる。そしてヴァイスの方へ救護班が降りてきた。

「グランセニック二等空士の容態は」
「バイタル安定!!」
そうして救護班はヴァイスに応急処置をほどこし担架に乗せた。

そうしてはやてが駆け寄って、こう言った。
「もう大丈夫やで、他のみんなもロストロギアもちゃんと保護しとるよ。さあ、ラグナちゃんの元へ帰ろか」

そんなはやての優しい表情を見ながら、ヴァイスの意識はゆっくり闇の中へと落ちていった。


−数日後、ヴァイスはロストロギアを狙ってワンズ・ベセルと輸送部隊を襲撃する計画を、陸士のナカジマ一尉からの情報提供を
受けた査察部から依頼を受けた聖王教会出向中の騎士、八神はやてとフェイト・テスタロッサ執務官候補生らアースラスタッフ
によって防がれたことを知る事になる−

そしてこれ以降、ヴァイスと八神家は様々な事件や出来事にともに巻き込まれたりしながら、今に至る。

「・・曹・・・ス陸曹、・・・イス陸曹、えい!!」
そうしてアルトは呆けているヴァイスの頬を思い切り引っ張った。

とたんにヴァイスは7年前の砂漠から、現在のロング・アーチの食堂テラスへと一気に引き戻される。

「ほい、ひてーよ、はると〜!!(おい!!痛ぇーよ、アルト!!)」
(結構伸ばしやすくて先輩の顔って面白い♪)そんな事を考えながらアルトはどんどん引っ張る。
「全く、何が小さい嬢ちゃんに借りがあったよ!!こんなロリコンが私の先輩だとは情けない。キャロも気をつけないさいね!」
「・・・えっ?ヴァイス陸曹」

キャロはヴァイスに対して不安な視線を向けてくる。そうしてヴァイスはアルトの腕をほどいた。
「アルト!!キャロに誤解を与えることを言うな!!」
「何やら楽しそうやな」

「八神隊長!待ってました!!」
空腹で今まで機能停止したターミネーターのように固まっていたスバルの補助エンジンが入ったようだ。目を輝かせる。

「これは何ですか?何かケーキとも違うようですけど」
ティアナが不思議に思ってはやての作ってきた料理をたずねる。

「これはな、お好み焼きいうんよ。今回は材料てんこもりに使ったんよ!!こっちはチーズともち、こっちは焼きソバと卵のヒロシマ風
いうてなこっちは豚肉とキャベツというオオサカ風いうんよ!!」
「へ〜、地方によって色々種類があるんですね、八神隊長」

そうしているとなのはとフェイトとヴィヴィオが更に追加で盛られたお好み焼きを持ってくる。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、持ってきたよ〜」

そこには様々な種類が並んでいるがひときわ形がいびつなものがあった。
「ヴィヴィオもお手伝いしたんだよ!!」
「にゃはは・・・まあ、おいしいと思うからみんなも食べて“あげて”ね」
「味のほうは本当においしいと思うから」

そう言ってなのはは新人達に遠慮したようにそう言った。

そうしていると、ゲンヤがヴォルケンリッターを伴って
「おっ、たまたまこっち寄ってみたらなかなかおいしそうなもんあるじゃねえか、俺も食べていいか?八神」
「お父さん?」
「ぶっ、姐さん?」

ヴォルケンリッター、とりわけシグナムがあらわれヴァイスはあわてて、賭けの皮算用メモを隠す。そんなヴァイスにシグナムは
「ヴァイス、お前が持っている表をおとなしく渡すのと、主の料理を食べた後に私のけいこに付き合うのとどっちがいい」
ヴァイスは泣く泣く、計画書を渡した。

「「「いっただっきまーっす!!!」」」
おいしそうなソースの香り、アツアツのお好み焼きを全員がおいしそうに食べる。そんな光景を見て、ヴァイスは何かを思い出したよう
に笑った。

そんなヴァイスにはやては駆け寄った。

「ヴァイス陸曹はみんなと食べんの?」
そういうはやての頭を軽くポンポンたたく。

「な、何や?ヴァイス陸曹?」
「いや、別に。大きくなりやがって・・・そう思ってよ(もう7年か・・・長い付き合いだよな)」

ヴァイスの目にはかつて、家族思いの料理人の少女が映っていた。妹と2人だけであったが、今はこんなにも頼れる仲間がいる。
少女のもとに集った仲間が・・・

「ほほお・・・ヴァイス。上官にそんな口の聞き方とはいい度胸してるじゃねえか!!」
感慨にふけっているヴァイスにゲンヤがそう言って横槍を入れる。
「本局の提督にもタメ口を使うどっかの三佐には言われたくないっスよ」

そうしてヴァイスにまたもアルトがつっかかった。
「はは〜ん!!もしかして、八神隊長に気があるとか?」
「ば、バカ!そんなんじゃねえよ」

ヴァイスのあわてた大声とみんなの笑い声がテラスを賑わせた。

そんな中、ヴァイスの念話をはやては聞いた。
『嬢ちゃんよ・・・』
そう言われてはやてはクスッと笑う。
『なんや久しぶりやな、ヴァイス陸曹からそう呼ばれるのは。どないしたん?』


−ありがとな・・・そしてこれからもよろしくな−

−こちらこそよろしく−


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目次:エンカウンターズ・ウィズ
著者:44-256

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