560 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:46:34 ID:Na1CHKIc
561 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:47:16 ID:Na1CHKIc
562 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:47:48 ID:Na1CHKIc
563 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:48:22 ID:Na1CHKIc
564 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:49:02 ID:Na1CHKIc
565 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:49:39 ID:Na1CHKIc
566 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:50:45 ID:Na1CHKIc
567 名前:ギンガの恋路 [sage] 投稿日:2009/12/30(水) 14:51:21 ID:Na1CHKIc

ギンガの恋路 (後編)



「しかしまあ……まさかこんな事になるとはな……」


 そう一人呟くカルタスの声には、諦念と自分自身に対する呆れの気持ちが込められていた。
 彼は今、自分の家にいる。
 クラナガン市内の、これといって高くも安くもない、長所を上げるならば職場に近い、そんなマンションの一室だ。
 広いとも狭いとも言えぬ間取りの我が家の寝室、そこに鎮座する安ベッドの上に彼は腰掛けている。
 姿は制服を着たものだが、しかしネクタイを取り上着も脱ぎ捨て、シャツのボタンを五つも外したラフな格好。
 理由は決して、自室故に気を抜いた、というものではない。
 もっと艶めいていて、かつ堕落した理由。
 それはこれから始まる睦事に備えて、円滑さを出す為だ。
 部屋の空気には、彼の息遣い以外の音が響いている。
 それは水音。
 幾粒もの水滴が放たれ、硬質なタイルの上で跳ねる残響だ。
 音源は寝室から廊下を隔てた先にある浴室。
 そこでシャワーによって音を奏でるのは、今宵彼と床を共にする為に訪れた少女、ギンガ・ナカジマに他ならない。
 静かな部屋の中に響く水の滴る音色が艶やかに響き、カルタスの心を昂ぶらせていく。
 これから彼女を抱くのだという実感が、肌を粟立たせる程に興奮を呼び起こしていた。
 普通自分の家に帰り着けば、そこには安堵がある筈なのだが。
 しかし今の彼を満たしているのは、緊張と興奮、そして熱い期待だった。
 部隊のオフィスでの一件の後、今宵彼女と床を共にする事になり、選ばれた場所が彼の家。
 ギンガの家ではもしかしたらゲンヤが帰って来るかもしれないし、制服姿でホテルに連れ込むのも気が引ける。
 それ故の選択だった。
 だが、いつもは見慣れた筈の我が家も、恋しい少女と一晩を過ごすとなればまるで落ち着けない場所に感じてしまう。
 人として、男として、それなりに多くの事を経験して積み重ねてきたつもりだった。
 しかし、ギンガが身を清めて床に来るのを待つ、たったそれだけの事が心臓の鼓動を早鐘の如く打たせるのだ。
 落ち着け、と彼は自身に言い聞かせる。
 年上の自分がこんなではギンガに見せる顔がない。
 深呼吸を二度、三度と繰り返す、新鮮な空気で思考をクリアにしていく。
 だが、しかし。
 次なる刹那、四度目の深呼吸を打ち破る音が響いた。
 それは浴室のドアが開く音、濡れた足音が寝室まで至る音。
 そして、


「あ、あの……シャワー、終わりました……」


 甘く澄んだ乙女の囁きだった。





 カルタスは息を飲んだ。
 今まで冷静さを取り戻そうとしていた思考は瓦解し、心の臓はもはやドラムロールと化して鼓動を刻む。
 それ程までに、目の前の少女の媚態は素晴らしかった。
 湯で身を清め、ほんのりと朱色に上気した肌を、たった一枚のタオルで覆い隠すのみの姿。
 タオルの張り付いた肢体はその美しいプロポーションを惜しげもなく浮き彫りにする。
 実りに実った釣鐘型の豊満な乳房から、余分な贅肉など一ミリたりとて存在しないウエスト、だがそれが嘘のように張り出した肉付きの良い尻。
 むっちりとした太股のラインもまた実に美味しそうな絶景。
 男として産まれ落ちた者ならば一度は抱きたいと思い描く、究極的に完成された女体。
 腰まで流れるように伸びる青い髪も、またそれらに負けず劣らずに美しい。
 濡れ光り、艶を持ち、シャンプーやリンスといった洗髪剤だけではない、彼女本来の甘い香りを誘うように放っている。
 そして何より心を惹き、魅せるのは美貌。
 整った目鼻立ちはもちろん、じっとこちらを見つめる碧眼は熱を帯びて潤み、カルタスの心を完全に魅了した。
 彼の心がギンガの媚態に打ちのめされ、硬直するのをよそに、少女は歩み寄る。
 ひたりひたり、と、先ほど浴びたシャワーで僅かに濡れた足が音を立ててベッドへと近づき。
 とすん、と、カルタスの横に少女が尻を乗せた。
 伝わるのは熱と香り。
 触れ合った肩から火照った少女の微熱が染み入り、髪から香る蕩けるような芳香が鼻腔をくすぐる。
 カルタスはただ呆然と息を飲んだ。
 一拍の静寂が場を支配し、無音の時が流れる。
 互いの息遣いと触れ合った身体から伝わる鼓動が全てとなる世界。
 どこかもどかしく、だが心地良い静けさ。
 そんなしめやかさを破ったのは、隣に座る乙女だった。
 
 
「……カルタスさん」


 蚊の鳴くような小さな、しかし澄んだ声が、その内にたっぷりと恋慕を孕んで彼の名を紡ぐ。
 告げられた言葉を飲み込み、一瞬沈黙の中で意味を反芻したカルタスははっと気付き、ああ、と答える。
 

「なんだ? ギンガ」


 声と共になんとか心を落ち着かせ、彼はそう問うた。
 だが、心落ち着いたのは一瞬。
 次の瞬間、カルタスの心はまた掻き乱される。
 少女が顔を上げたのだ。
 今まで少し俯かせていた顔を上げ、ギンガが潤んだ瞳でこちらを見上げる。
 そこに込められた万感の想い。
 胸を焦がすような愛しさと恋しさの中に、不安と期待を孕んだ縋るような眼差し。
 まるでそれ自体が特別な魔力を帯びたような視線に、カルタスの身は再び硬直する。
 だが彼のそんな内心など露知らず、乙女は言葉を連ねた。


「私、その……男の人とこういう事するの、初めてで……だから、えっと……」


 連ねる言葉は恥じらいを宿し、だが確かにそこに期待を込めて。
 彼を想う恋慕と共に、甘く蕩けるような声で囁かれる。


「だから……優しく、抱いてください」


 と。
 甘い、それは過剰なまでに甘い請いだった。
 彼を見つめる瞳も、彼に告げる残響も、彼を想う心までも。
 その全てがあまりにも甘美。
 ギンガの請うた甘き誘いに、カルタスは言葉でなく行動で応えた。
 彼女の肩にそっと手を回し、抱き寄せて顔を寄せる。
 二人は再び唇で繋がり、交わった。
 一瞬身を強張らせたギンガだったが、しかしすぐに力を抜く。
 彼に全てを委ねるように。
 それに応えるように、彼はそのまま動いた。
 肩に回した手に力と体重を掛け、ギンガを優しくベッドの上に押し倒す。
 スプリングの軋みと、シーツに人が倒れる音が重なる。
 次いで連ねられる音色は水音。
 重なった唇と唇の合間から、舌と唾液を絡ませる淫靡な響きが静かな部屋の中に木霊する。
 

「んぅぅ……ちゅぷ……ん、ぴちゃ……」


 彼は彼女を求め、彼女もまた彼を求める。
 ただキスするだけだというのに、それは堪らなく情熱的な愛撫だった。
 しばしの時を二人は口付けに耽る。
 そして、唐突にその愛撫を終わらせたのはカルタスだった。
 組み敷いたギンガからそっと身を起こし、彼は唇を離す。
 絡み合った唾液が透明な橋を名残とばかりに掛けるが、それもまたすぐ途切れてしまう。
 突然キスを中断された少女は、もっとして欲しかった、とばかりに少し物欲しそうな顔をした。
 だがカルタスはそれを半ば無視し、口を開いた。


「なあギンガ。本当に良いのか?」


 告げたのは問う言葉。
 良いのか、と、了承を確認する意。
 彼の言葉の意図を計りかね、ギンガは疑問符を問い返す。


「……え?」

「いや、な。俺は君の事を好きだし、君も俺の事を好いてくれてるってのは分かったんだが……いきなりこんな事になって、本当に良いのか。ってさ」


 と、彼は告げた。
 こう言われ、その言葉の意図するところをギンガは理解する。
 カルタスが言いたいのは、こうして契りを交わす事の是非を問うているのだ。
 確かに、互いの想いを交わしたその日に肉体まで情交に至るというのはいささか性急かもしれない。
 それはギンガもよく分かっていた。
 だが、しかし、


「……恐いんです」


 少女は、静かにそう呟く。
 タオルに覆われた豊かな胸の前で不安を紛らわせるように指を弄り、頬を羞恥で淡く染め、ギンガは身を震わせながら言葉を連ねた。
 

「ずっと前からカルタスさんの事好きで、大好きで……その気持ちが叶ったのが嬉しいんだけど……でも、不安なんです」 

「不安?」


 問い返すカルタスの言葉に、ギンガは頷く。


「好き合ってるって分かったのが突然過ぎて……なんだか夢みたいで」


 だから、と言葉を続け、乙女は告げた。
 


「あなたが好きでいてくれる……愛してくれる証を……私にください」


 駄目ですか? と、最後に問う言葉を加えてギンガは請うた。
 絶世の美少女が告げる儚く甘い懇願はどこまでも愛らしく、抗い難い魅する力でカルタスの心を穿った。
 愛する少女にここまで言われて、それを蔑ろに出来る彼ではない。
 その言葉に、カルタスも腹を決めた。
 覚悟を決めた男は、もう一度顔を寄せて組み伏せたギンガにキスをする。
 彼女の請いへの返答とばかりに、優しく唇を重ねるだけの口付け。
 そっと顔を離したカルタスは、耳元に静かに囁いた。


「分かった」


 と、たったそれだけを。





 彼の告げた小さな、だが芯に力を持つ言葉にギンガは震えた。
 嬉しい。
 ただただ、歓喜が胸を打つ。
 彼を想う恋しさが一方通行じゃなくて、そして彼は自分の求めに応じてくれる。
 それが、どこまでも嬉しかった。
 つぅ、と目元に喜びの涙を流し、ギンガは胸元に己の手を移す。
 指を絡めるのは、自分の身体を覆っているタオルの結び目だ。
 手を掛けるや、少女は迷う事無く結びを解いてそれを剥ぐ。
 剥ぎ取られた先にあったのは、一糸纏わぬ穢れなき裸身だった。
 その様に、カルタスは本日何度目になるのか、息を飲んで魅入られる。
 白い、まるでミルクを溶かし込んだかのように白い、染みもくすみもない瑞々しい肌。
 邪魔物がなくなり露になる乳房もまた絶景で、頂上にある桃色の蕾が愛らしく。
 そして引き締まったウエストから薄く青い茂みのある股ぐらの情景にカルタスの中の男は、いよいよ燃え上がる。
 だが、彼は自身の中で轟々と燃え盛る欲情の炎を諌めつつ口を開き、
 

「凄く綺麗で、可愛いよギンガ」


 愛する少女に、優しく囁いた。
 ギンガは彼のその言葉に恥じらい、だがそれ以上に喜んで頬をより一層朱色に染め上げる。
 そんな彼女に、カルタスはまた口付けた。
 今度は唇ではなく、白くしなやかな首筋にだ。
 吸いつく音を立て、何度も何度もキスをされる。
 唐突に始まった愛撫、そして身体に刻まれる淡い快感。
 敏感な肌に走る悦楽の電流に少女は喘ぎ、震えた。


「ひゃッ! んぅ……はぁぁッ」


 啄ばむようなキスをされるだけだというのに、それは初めて男に身体を許す少女にしっかりと快楽を刻んでいく。
 カルタスは口付けだけでなく、時折ギンガの肌を味わうように舌を出し、その身をちろちろと舐め上げた。
 特に重点的に攻めるのは乳房。
 まろやかなラインを描く釣鐘型の胸にキスの雨を降らせ、舌を這わせて丹念に愛撫する。
 白い肌に次々と口付けが為され、淡い桃色の跡を幾つも残していく。
 その度にギンガは身を震わせ、甘く心地良い喘ぎを零した。
 愛撫が乳房の頂点、桃色の乳頭に至った時、反応はより劇的になる。
 

「ひゃぁぁんッ!!」


 一層甲高く甘い声を上げ、ギンガの背が弓なりにのけ反った。
 彼は粟立つ乳輪の端から乳頭の先端まで口に含み、まるで乳房を先端から溶かし込むように舌をで舐め上げて愛撫する。
 さらにもう片方の乳房には手を回し、緩やかな指の律動で捏ね回しては愛でた。
 愛され、次第に硬くしこり始める乳首を舌が舐め、時に歯が甘噛みし。
 指は優しく乳全体を揉みしだいては先端の肉豆をこりこりと転がす。
 その度にギンガは甘く喘ぎ、身を何度もしならせ、震わせた。
 しばしの時、カルタスは乳肉への前戯を続ける。
 一体幾度目だったろうか。
 ギンガが身をしならせ、ベッドのシーツを千々に乱した時、彼は乳首から口を離した。
 唾液を糸を引かせたまま離れた口は、しかし次の瞬間にまた新しい獲物に向かう。
 乳房の下半分をそっと舐めつつ、彼の口は下半身に向かって這った。
 下乳を愛で、次いで引き締まったウエストラインを愛で、さらにはヘソに舌まで差し入れて愛でる。
 ちろちろと舌先でヘソをほじくると、途端にギンガが堪らず身をよじった。
 

「ふぁ! お、おへそ……だめぇ……」


 瞳を潤ませ、自分の腹の上で愛撫を続けるカルタスに彼女は懇願する。
 が、彼はそれを無視して目の前の肢体を愛で続けた。
 這う舌は遂にヘソを超え、股ぐらへと向かう。
 髪の毛と同じ青い色の茂みは既にしっとりと果汁に濡れ、てらてらと光を放っていた。
 彼はその様に、ふと呟きの声を漏らす。


「胸を弄っただけで、もう随分濡れてるな」

 
 やや感嘆を込めたその声に、ギンガは頬を羞恥で真っ赤に染め上げる。
 まるで自分の身体の敏感さを淫らだと言われているようで、恥ずかしくて堪らない。
 


「や、やだぁ……そんなこと、いわないでください……」


 カルタスの言葉に、ギンガは愛らしい恥じらいの懇願を漏らす。
 だがその様は雄の嗜虐心をそそるような媚態を孕んでおり、彼の愛撫に燃料を注ぐ事となった。
 濡れそぼる淫口に、迷う事なく舌が滑り込む。
 こんこんと蜜溢れる膣口に尖った舌先が侵入し、掻き回すように抉る。
 唐突に始まった膣への愛撫に、ギンガの身は再び震え、しなった。


「ふぁぁ……だ、だめぇ……そんなところ、ひゃあぁ!」


 一段と甘味を増した嬌声を響かせ、乙女は震える身でよがる。
 しかし、だめ、という言葉に拒絶の色は薄く、むしろ肉体のみで語るならば彼女は大いに悦んでいた。
 秘所への愛撫は実に効果的で、膣口を舌で抉り始めてからは溢れる蜜の量は素晴らしく増している。
 もはや洪水と零れる愛液はシーツに幾つものシミを作り、悦楽の証としてしっかりと残っていた。
 その潤いをもっと欲するように、カルタスの為す愛撫の手はより激しさを増していく。
 舌はより深く膣口を抉り、音を立てて果汁を啜り、さらにはその上にある淫核へも攻めを加えだした。
 包皮に覆われた肉豆に舌が這い、皮の上からこりこりと転がす。
 それは今までにない強烈な快感をもたらし。
 瞬間、ギンガは背筋に電撃が駆ける錯覚を感じて身をのけぞる。


「ふぁぁッ!」


 甘さと張りのある嬌声を上げ、少女は喘いだ。
 淫核を攻められる快楽は、今までの攻めとは比べ物にならない程に激しいものだった。
 ギンガも年頃の少女だ、自分で自分を慰めた経験がない訳ではない。
 今までに何度もカルタスの事を想っては秘所に指を伸ばした。
 が、今味わっている快楽に比べればそんなものは児戯に等しいものだ。
 実際に彼の手で為される愛撫は繊細かつ大胆で、女の快楽のツボを心得えている。
 カルタスも二十台も半ばの男で、女と床を共にするのも初めてではない。
 彼の愛撫は、性の経験に乏しいギンガとは比べるべくもない。
 陰唇から膣口、そして淫核へと連なる三箇所を緩急をつけて攻め立てる愛撫は徐々に加速し、少女の悦楽を未知の領域まで高めていった。
 今まで自分で得たものを遥かに超える絶頂の高みが、どんどん近づいてくる。
 漏れ出る吐息は荒く甘くなり、淡く朱色に色づいた肌は珠の汗に濡れ光り、淫らな美しさを増す。
 そして最後の一手とばかりに、カルタスは攻めた。
 女体の中で一番敏感な淫核を唇で全体を挟み、口内にて舌先で押しつぶす。
 瞬間、少女の中で快楽が爆ぜた。


「はぁああぁんッッ!!」


 甲高く甘く蕩けきった嬌声で、叫ぶようにギンガは鳴いた。
 背は折れんばかりにのけ反り、しなやかな四肢が痙攣して震える。
 初めて人の手で登り詰めた絶頂の頂きは、あまりにも高く、そして奈落のように深かった。
 神経の一つ一つに至るまで甘く溶けていくような錯覚さえある。
 荒く何度も息を吐き、ギンガはベッドの上でぐったりと絶頂の余韻に浸った。
 そんな彼女をよそに、カルタスは一度身を起こして立ち上がる。


「さて、じゃあ俺もそろそろ邪魔なものを脱がせてもらおうかな」


 と、彼は呟き、服に手をかけた。
 シャツのボタンを外し、ベルトを外し、ズボンを下着ごとズリ下ろす。
 大ざっぱに、だが素早い脱衣。
 露になったカルタスの五体は、男らしく引き締まったものだった。
 無駄な脂肪のない肉体は筋繊維の一つ一つを見せつける。
 そして彼の胸板や腹部には幾つか、穴を穿たれたような跡があった。
 銃創だ。
 捜査官として様々な事件を扱ってきた軌跡、とでも言うものなのだろうか。
 が、目を引くのはそれらではない。
 彼の下腹部で隆々と脈打つ、肉の棒。
 へそにまで届きそうな程に屹立したカルタスの陰茎に他ならない。
 絶頂の余韻の中に蕩けていたギンガは、その様に思わず息を飲んだ。
 昔父と入浴した時に男性器を見た事があるが、しかしその時見たものと今目の前にあるものではまるで違う。
 カルタスの肉棒はゲンヤのものより遥かに大きく、傘の張ったカリ首や血管の浮き上がった太い幹はあまりにも凶悪だ。
 これが、今から自分の中に入るのか。
 火照った身体に冷たい汗が伝うのを少女は感じた。
 彼を受け入れる心の準備はしたつもりだったが、それでもやはり恐い。
 不安を紛らわせるように、ギンガは手を硬く握り締めた。
 そんな時だった。
 膝を突いて身をベッドに沈めながら、カルタスが口を開いた。


「恐いか?」


 と。
 そして、続けて告げる。


「もし嫌なら、ここで終わりにするか?」
 

 そう、情事を続けるか否かの是非を問うた。
 彼の中の肉欲は、既に少女の痴態をこれでもかと魅せ付けられて限界まで滾っている。
 今すぐにでもギンガを貪りたくて仕方ない。
 だが、彼は敢えてそれを抑え込み、是非を確認した。
 もしギンガが拒むようなら、無理に契ろうとは思わない。
 幾許かの時、少女はカルタスの言葉を反芻し、熟慮する。
 そして、答えた。


「大丈夫、です」


 囁く残響で告げ、そして四肢を動かした。
 彼を自分に導くように手を広げ、脚を開く。
 
 
「痛くても我慢しますから……私の事、愛してください」


 乙女は、ただそう告げた。
 もはやここまで言われれば、引く道理はない。
 カルタスは了承の意とばかりに一度身を沈め、ギンガの唇にそっと口付けする。
 短い、だが愛の込められた甘いキス。
 そして、顔を離すと共に囁いた。


「分かった」


 ただそう一言を告げ、彼は動く。
 艶やかに汗に濡れたギンガの太股を掴み、ゆっくりと開かせ、そこに身を進める。
 むっちりとした肉質の両の脚は彼の腰に絡められ、まるで食虫花が獲物を捕らえたようにしっかりと掴む。
 だがそこに妖艶さはない。 
 むしろ震える身体から、彼女の中の不安が伝わる。
 それを掻き消すようにカルタスは少女の頬や髪をそっと撫でてやる。
 優しい愛撫に、ギンガはまるで飼い主に触れた子犬のように目を細めた。
 震え、硬直していた心が氷解する。
 少女は潤む瞳に想いを込めて彼を見上げた。
 欲しい、と。
 眼差しへの応えは、濡れそぼる膣口に触れた熱い陰茎の感触。
 くちゅり、と音を立て、硬く隆起し尽した肉棒が淫穴の入り口に浅く刺さる。
 が、最後まで挿入はされない。
 寸前で動きを止め、再び彼の口が言葉を紡いだ。
 それは了承や、結合のの是非を問うものではない。
 契りの宣告。


「ギンガ……入れるぞ」


 ただ一言を告げると――彼は彼女を己で貫いた。
 瞬間、肉棒はその身を全て蜜壷へと埋没させていく。
 既に一度の絶頂でしとどと濡れた蜜壷は、硬く隆起した凶器のような肉棒をぬるりと受け入れる。
 一秒にも満たぬ間の中で、カルタスは完全にギンガを貫いた。
 されどその合間には確かに何かを突き破るような抵抗があった。
 問うまでもない、それは乙女が純潔を失った証。
 

「いっ……ああぁ……!」


 愛撫を受けていた時とは違う、切なげな声がギンガの濡れた唇から零れた。
 それは問うまでもない、身をつんざく破瓜の痛みを耐えるうめきに他ならぬのだろう。
 しかし、対するカルタスは少女とは相反する感覚、想像を絶する快楽の中にいた。
 初めて侵入したギンガの肉穴は、まるで悦楽の塊だった。
 ただ単に締め付けが強いなどではない。
 緩急、強弱を以って埋没する陰茎を締め上げ、幾重にも渡って設けられた肉ヒダが絡みつき、締め付ける。
 まるで男を蕩かせる為に存在するような天性の名器。
 たった一度の挿入で、久しく女を抱いていなかったカルタスは絶頂寸前まで昂ぶる。
 それ程までにギンガとの結合は甘美だった。
 が、しかし。
 肉体が甘受する快楽が深ければ深い程、彼の心は痛む。
 自分はこれ程までに肉欲を貪っているのに、目の前の愛しい少女は苦痛に涙しているのだと。
 その認識が、彼の心を快楽に浸らせない。
 どこか罪悪感を胸に抱き、カルタスは涙を流して身を震わせる少女へと口を開く。
 

「すまん、ギンガ。痛かったか? もし辛いなら、ここで……」
 

 今にも腰を振りたくりたい衝動を抑え、彼は案じの声を囁く。
 もしギンガがあまりに痛みを訴えるようならば、契りはここで終いにしようと思い。
 だが、彼に貫かれ涙する少女は首を横に振った。
 紛れもない、否定の意として。 
 

「ちがうんです……」


 荒い息遣いの合間から、囁く声が言葉を紡ぐ。
 珠の汗の浮かぶ白い肌を淡く朱色に色づかせ、その身を震わせ。
 涙に濡れ潤んだ碧眼で彼を見上げながら言葉を連ねた。


「……カルタスさんと一つになれたのが、うれしくて」


 彼女が告げたのは、痛みへの訴えではなかった。
 瑞々しい唇が零したのは喜び。
 ただ彼と契れた事を心から嬉しく思う、健気で愛らしい言葉だった。
 そして少女は、彼の逞しい肉体に白魚のような指を這わせ、背に回して抱きしめて囁きを連ねる。
 甘く恋しく、蕩けた声を。


「だから、もっとください……カルタスさんを、もっと私に……」


 と。
 その言葉に、その愛らしさに、その媚態がただただ狂おしく。
 もはや彼の中に渦巻く愛しさと狂おしい肉欲は、堰を切った。
 

「――ッ!!」


 声にならぬ声をあげ、カルタスは一気に腰を沈める。
 蜜に濡れた秘裂を硬く屹立した肉棒が貫き、抉り、貪る。
 湿り気を帯びた肉同士のぶつかり、淫靡な音色を奏でては、二人の体重を受け止めているベッドのスプリングを壊れそうなくらい軋ませた。


「はぁぁ! あああぁぁあッッ!!」

 
 初めて男を受け入れたばかりの膣を力強く抉られ、少女が喘ぐ。
 喘ぎを喚起するのは苦痛で、しかしそこに溶けるのは愛しさと悦び。
 痛く辛い、だが嬉しい、もっと欲しい。
 矛盾した望みが無垢な女体を、そして心を、狂おしい程に焼く。
 その想いに呼応するかのように、カルタスの情欲は昂ぶりの極みへと向かう。
 硬さも太さも限界まで怒張した肉棒が、淫らに雄を咥える蜜壷を暴力的なまでに抉り、貫き、貪り、犯す。
 打ち付ける動きはどんどん強さと速さを増していった。
 それは終着点が近い事の証明。
 極上の肉穴がもたらす快楽の前に、カルタスの射精感も終わりを迎えようとしていた。


「……ギンガッッ!!」


 苦痛に耐えるような顔で、彼は愛する少女の名を叫んだ。
 その刹那――ギンガの中で何かが爆ぜた。
 身体を貫いていた肉棒がどくどくと脈動し、熱いものが注がれていく。
 紛れもない、それは彼の子種に他ならない。
 快楽が深かったが為か、注がれる精の量は凄まじく、二人の結合部から白く粘ついた液が溢れる程だ。
 身も心も焼き尽くすようなその熱は、どこまでもギンガを蕩かせた。


「あぁぁ……あつぅい……」


 濡れた唇から零れるのは愉悦を帯びた喘ぎの声。
 彼の全てを受け入れ、もはやギンガは苦痛など忘れる程の悦びを得る。
 そして、肉体だけでなく魂まで結ばれるようなその感覚の中で、少女は意識を手放した。



 

「んぅぅ……あれ……もう、朝?」


 部屋に差し込む陽光に、ギンガは身をよじると共に目を覚ました。
 肌に感じるのは朝の冷たい大気と、それとは相反する温もり。
 そこでギンガは、自分が裸で、しかもカルタスに抱きついているという事に気付いた。
 悟った瞬間、頬にほんのりと朱色が注す。
 少女の脳裏に、昨夜の事がありありと思い出されていった。
 ずっと好きだったカルタスと想いが通じ合って、そして彼の家で二人は、


「エッチ……しちゃったんだよね」


 契りを交わし、自分が純潔を捧げた事を少女は噛み締める。
 意識すれば、肉体に残る昨夜の残滓はしっかりと認識できた。
 首筋や胸にされた口付けが、白い柔肌に朱色の幾つもの赤い跡を残し。
 何より下腹部の、子を成す雌の器官に注がれた精の熱は、未だに余韻を感じるような錯覚さえあった。
 愛する男に何もかもを捧げたという実感は、少女の心を甘く蕩かす。
 まるで糖蜜で胸がいっぱいになったような恍惚がギンガを満たした。
 傍で眠る彼に寄り添い、厚い胸板に頬ずりする。
 しかし、そこである事を思い出した。
 

「そういえば、お父さんには何て言おうかな」


 と。
 よく考えれば昨日は何も連絡せずにここに来てしまった。
 ギンガの父ゲンヤは、確か今日の朝に家に帰る予定だと言っていた。
 ならば今頃誰もいない我が家で娘の事を案じているかもしれない。
 恋しい男にかまけて父を蔑ろにしてしまったかと、ギンガは少し罪悪感を感じた。
 そんな時だった。
 少女の寄り添うカルタスの身が動いたのは。
 

「ああ……もう、朝か」


 先ほどのギンガと似たような言葉を吐き、カルタスが目を覚ました。
 目覚めた彼は目を少しこすると、すぐに思考を明瞭なものへと変えていく。
 そしてカルタスは寝起きとは思えないほど力ある眼差しで自分に抱きついているギンガを見下ろすと、優しく笑った。
 仕事の時にはそうそう見せる事のない、毒気の少しもない破顔。
 そのあまりにも唐突な笑みに、ギンガは胸の鼓動が一瞬で高鳴ったのを感じる。
 少女の鼓動を知ってか知らずか、カルタスは青い髪を優しく指で梳きながら言う。


「おはよう、ギンガ」

「は、はい……おはようございます」


 大人の余裕とばかりにさらりと朝の挨拶を告げるカルタス。
 彼に反して、まだ喜びと興奮と緊張で頬を真っ赤に染めて歯切れの悪い言葉で返すギンガ。
 そんな少女を、カルタスは微笑を以って撫でてやった。
 髪のその一本一本の感触を確かめるように指を通し、優しい手つきで何度も頭を撫でる。
 彼の愛撫に、ギンガはまるで飼い主に愛でられる子犬のようにうっとりと目を細めた。
 愛と欲望を肉体で交わした気だるい朝を飾る愛撫はどこまでも穏やかで、まどろむような時間は静かに過ぎ行く。
 だが、それは唐突に終わりを告げた。
 カルタスはいきなりギンガの髪に通していた指を離してしまう。
 心地良い愛撫を中断され、少女は不満を込めて彼を見た。
 もっと欲しかった、と。
 しかし、その不満もすぐに掻き消える事になる。
 彼は自由になった手でギンガの頬をそっと撫で、顎先をくいと上げさせると、顔を寄せていった。
 意図を悟った少女は受け入れるように目を閉る。
 そして、音もなく唇と唇は触れ合った。
 触れ合う時は一瞬で、されど心が繋がるのは無限の時にも思える。
 時間はたったの数秒。
 口付けた時と同じく、二人の音もなく唇は離れた。
 しかし今度は身体ではなく、見詰め合う視線がカルタスとギンガを結ぶ。
 熱く愛情の溶けた眼差しを向け、彼は言った。


「それじゃあギンガ。これからも、よろしく頼むな」


 この先共に歩むであろう、愛し合う男と女としての関係に対しての言葉。
 カルタスの告げた言葉に、少女は頷き、答える。
 瞳に喜悦の涙を浮かべて。


「はい。私こそ、お願いします」


 と。
 静かに、だが確かに耳に届く凛とした澄んだ声で。
 互いに言葉を伝え合った二人は、そして再び口付けた。

 まるで永遠の愛への誓いのように。



終幕。


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目次:ギンガの恋路
著者:ザ・シガー

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