[270]シャマるときシャマれば<sage>2007/06/02(土) 13:28:52 ID:GPkbAxVa
[271]シャマるときシャマれば<sage>2007/06/02(土) 13:29:38 ID:GPkbAxVa
[272]シャマるときシャマれば<sage>2007/06/02(土) 13:30:17 ID:GPkbAxVa
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[274]シャマるときシャマれば<sage>2007/06/02(土) 13:34:26 ID:GPkbAxVa
[275]シャマるときシャマれば<sage>2007/06/02(土) 13:35:28 ID:GPkbAxVa

沈鬱な表情で医務室へと入ってきたのはティアナだった。
この白い城の主であるシャマルはその表情で体のケアでなくて、
ティアアナが心のケアを欲しがっている事に気づく。

「いらっしゃい、ティアちゃん」
「あの……」
「とりあえず、座りましょう。あなた、切羽詰まった顔しいるわ。ゆっくりとお話をしましょうか」

切り出そうとしたティアナをやんわりと制して、椅子を促す。
出鼻をくじかれた形だが、幾分か落ち着いたティアナは頷いて腰かけた。
シャマルはポットのお湯に手をかけて微笑む。

「コーヒーと紅茶か何とも言えずトロッとしたもののどれがいいかしら?」
「コーヒーお願いします」

コポコポと、静かな白い部屋に暖かな音。
それほどの時間をおかずにカップがティアナに手渡されるが、それまでの時間が
ティアナには居心地が悪く感じてしかたがなかった。
早く言って楽になりたいという気持ち。
誰にも言いたくなくて塞ぎこみたい気持ち。

「何か、悩みごとかしら?」
「……はい」
「言いづらい事なら、少しずつでいいの。話したい事を話してくれてもいいのよ」
「……」

ティアナがぎゅっと、唇を噛んだ。
苦しい。
裡に秘めた想いを、どう扱えばいいのか理解できずに持て余しているのだ。
せめて、ここに来ればちょっとは楽になると足を運んでも、
未だ決心が固まったわけではない。
そんなティアナを、シャマルは辛抱強く待った。
2人が持つカップから昇る湯気ばかりが動く白い世界。
ティアナが口を開く。

「あたし……スバルの事、好き、みたいで…す」

ティアナがぎゅっと目を瞑った。力いっぱい、目を閉じた。
歯を食いしばるようにうつむいて、言ってしまった開放感と
言ってしまった後悔が混ざりあう奇妙な感覚。
それに耐えるよう。


表:「そうだったの……気づいたのは、いつから?」裏:(うん、みんな知ってるわよ)
「…分かりません。気付いたらもう…その……変ですよね。こんなの。おかしいですよね…?」
表:「そんな事ないわ。性別の問題じゃないのよ」裏:(レズ大好物だもん)
「でも……」
表:「気の迷いかもしれないと、思ってる?」裏:(あ、もちろんボーイズラブも歓迎よ)
「…はい」
表:「でも、スバルちゃんが気になる?」裏:(やっぱり同性どうしってピュアよねぇ)
「はい。どうしようもないんです! あの娘と一緒にいるだけで…その、胸が熱くなって、いつまでも触れあっていたくなって……」

吐き出すものを、吐き出させた。
とにかく解決ができる出来ない以前に、喋らせる事である。
随分と長い時間、ティアナを質問も交えてしていろいろと聞きだした。
カップの中身が冷める頃合い、ティアナの話は「スバルをどうしたいか」という内容にまで及んでいた。

「抱きしめて…」
「抱きしめる、だけ?」
「あ、ぅ」
「キスは? 睦み合いたくはないの? あの娘を独り占めにしたく、ないかしら?」
「…………」

カァッと、ティアナの頬が目に見えて赤くなっていく。
激昂して叫んでしまうかと思ったシャマルは、この反応に瞳を光らせた。

「わかったわ。じゃあ、予行演習ね!」
「へ?」
「さ、脱いで脱いで」
「あ、ちょ、シャマル先せ…ッ!」
「ウフフウ、まぁ、可愛い下着ね。そそっちゃうわぁ」
「いや、ちょ、待って、少し、あの、アッーーーー!」



ティアナが出て行ってしばらく後。
もじもじと、身をよじりながら、シグナムが入室。

「あらシグナム。どうしたの?」
「あの…その……」

何か期待するような眼差し。
熱っぽく、匂いたつような色気を伴いながら、口ごもる。

「あら大変、ちょっと顔が赤いわよ? ほら、風邪薬、さ、早く帰ってゆっくりしなきゃ」
「あ、いや、違う、これは…あの」

風邪薬手渡されてすぐ締め出されてしまったシグナムは、
しばし医務室の閉じられた扉の前で立ち呆けていたが、
やがてすげぇ残念そうにとぼとぼ帰って行った。




次に入ってきたのはスバルだった。
先ほどのティアナの事もあり、シャマルは自然と苦笑が漏れる。

「いらっしゃい、スバルちゃん」
「あの、ちょっと質問というか……その…」

ほとんどティアナと同じような雰囲気だった。
ティアナが罪悪感と言うか背徳感を滲ませているのに対して、
こちらは自分では理解できないから大人に聞きにきた子供のような風だろうか。
シャマルは、スバルに椅子に座るよう促しながら、再び嗜好品を詰めた戸棚に手をかける。

「コーヒーと紅茶か何とも言えずトロッとしたもののどれがいいかしら?」
「紅茶を……」
「うん、ちょっと待っててね」

やはり、紅茶を用意する間のスバルもそわそわした様子で座っていた。
すぐに出来上がる紅茶を手に、フーフーしてからスバルは一口。
そして、まっすぐにシャマルを見つめてきた。

「あたし、なのはさんが好きなんです。あの……憧れとか、そんなんじゃなくて、ホントに、好きなんです」
表:「……そう、なの」裏:(ちょwwティアカワイソスwww)

もう覚悟しきってこの医務室へと足を運んだのだろう。
明瞭な意識の元、スバルは言い切った。
とはいえ、流石に顔が真っ赤だ。その態度も言葉も、真摯に受け止めながらシャマルは頷く。

「恋愛感情と言う事ね」
「はい」
「自分で変だと思う?」
「……はい。でも! 自然な気も、するんです。男の子を好きになるより、自然になのはさんが、その、好きなんです……」
「うん、うん」
「いろいろ、調べたんです……思春期特有の、疑似恋愛感情かもしれないとか、憧れの感情と勘違いしてるとか……でも、この感情は、違うと、言い切れ……ます」

それからは、やはり、やる事はティアナと同じ。
感情の全てを吐き出させる。
シャマルは穏やかに聴きに徹するだけだ。徹するしかできない。

「やっぱり、普通じゃ、ないんでしょうか?」
「そんな事ないわ。最後の最後には、感情の問題よ」
「そう、ですよね!」
「そうそう、人の目なんか気にせずに、ね」
「あの…それで…ちょっと質問なんですけど……」

恥ずかしげに、スバルが上目遣いでシャマルを見てくる。
赤らんだ頬。視線は忙しない。

「女の子どうしって、その……どこまで……あ、あの、やっぱりいいです!」
「ウフフ、そんなに遠慮しなくても大丈夫よ。教えてあげるわ、イロイロと……」
「あ、いえ、その…失礼します!! え!? ロック!? あ、開かない!?」
「そんなに邪見にしないで。優しく教えてあげるから」
「いえ、あ、ちょ、待って、その、アッーーーー!」




「シャマル……」

またシグナムが来た。
いつもは凛と鋭い双眸が、今は物欲しそうに潤んでオンナを感じさせるものである。
身じろぎしながら、腿をすりよせながらシャマルに甘えた声。

「シグナム、酷くなってるわよ!? 体は大事にしなきゃダメよ!?」
「ぁ……違、シャマル、その、私にも……」
「すごい熱!? 火照りすぎじゃないの!? 早く寝なさーい!」

またつまみだされた。
クスン、と一度だけ鼻をすすってからシグナムはとぼとぼと帰っていく。




次の来訪者はスターズ分隊隊長だった。
難しい顔だ。
だが、その根底はやはり先の思春期の2人と同じものを抱えている表情である。

「いらっしゃい、なのはちゃん、どうかした?」
「ちょっと、お話を聞いてもらいたくて」

エヘヘ、とどこか無理をした笑顔を零しながらなのははちょこんと椅子へ腰かけた。

「コーヒーと紅茶か何とも言えずトロッとしたもののどれがいいかしら?」
「何とも言えずトロッとしたものをお願いします」

ものごっつい時間がかかってからなのはに湯気の立ち上るカップが手渡される。
シャマル自身も中身が同じものを手にして口へと運んだ。
少しだけ、トロッ、チュルル、とすする音だけが白い部屋に溶けて消えるだけの時間が続く。

「また、なんです」
「……うん」

極々自然に、なのはがぽつりと漏らす。
シャマルも、なのはの言わんとしている事を承知の上で頷いた。

「フェイトちゃんと別れてから、男の子が気になる事もなかったんですけど、女の子にも、もう何とも感じなくなったのに……また」
「………」

余裕のあったなのはの表情が、変化する。
カップを握る手の力が強くなり、苦しそうな、歯がゆそうな。

「ティアに、特別な想いが、出来ちゃいました……」
表:「訓練中?」裏:(三角関係wwww)
「はい……頑張る姿がいじらしくて。『ちょっと苛めたくなっちゃう』程度だったんですけど。気付けば、その………」
表:「サディスティックな気持ちになったの?」裏:(よし、まずは部隊長に報告ね)
「はい。この前、ちょっとティアが頑張りすぎたのをキッカケに……つい頭を冷やさせるのを口実にして……」
「気分が良かった?」
「はい。すごく。あの娘を、独占して、崩して、弄んで、痛めつけて、愛して、愛したい……」
「うふふ、相変わらずね、なのはちゃん」


照れて、はにかむようになのはが苦笑する。
おかわりを淹れてから、なのはは訓練中のティアの事を語った。
ポジションが同じゆえの個人訓練の話が、主だった。
ティアを独占できる時間。好き勝手出来る時間。至福。幸福。
2人の時間。
打てば打つだけ響く性質は、スバルら新人全員の持つ粘り強さであるが、
「ここにいていいのか?」と鬱屈した思いを抱えながら耐え続けるティアを、
なのはは愛でているようだ。
汚したい、と言うと少々荒っぽいが、サディズムに溢れたなのはは
それに近い事をティアにしたい様子が会話の節々で読み取れた。
現状では、訓練中のティアをギリギリまで苛めぬく事に快感を得ているようだ。

「でも、まだティアには手を出せないんです」
「どうして?」
「分かりません……単純に、拒絶されるの、怖いかもしれません」

笑った。やはり、無理がある。

「だから」

そして笑い方が、変わった。
背筋に嫌な汗が流れたのをスタートにして、シャマルが弾けるように扉に走った。
閉まっている。ロック。

「今日は」

コツコツコツ

「シャマルさんを」

コツコツコツ

「な、なのはちゃ…アッーーーー!!」

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目次:シャマるときシャマれば
著者:268?

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