16 ジャスト・ラック・ブルース(1話 1/6) sage 2008/03/08(土) 14:28:39 ID:Sj+R2wrW
18 ジャスト・ラック・ブルース(1話 2/6) sage 2008/03/08(土) 14:29:47 ID:Sj+R2wrW
19 ジャスト・ラック・ブルース(1話 3/6) sage 2008/03/08(土) 14:30:39 ID:Sj+R2wrW
20 ジャスト・ラック・ブルース(1話 4/6) sage 2008/03/08(土) 14:31:57 ID:Sj+R2wrW
21 ジャスト・ラック・ブルース(1話 5/6) sage 2008/03/08(土) 14:33:11 ID:Sj+R2wrW
22 ジャスト・ラック・ブルース(1話 6/6) sage 2008/03/08(土) 14:34:48 ID:Sj+R2wrW

「・・・(やれやれだぜ)」

ゲンヤ・ナカジマ三等陸佐は壁に背をもたれて座り、自嘲気味にそう思った。

目の前には違法魔導師たち。肩、足、頭からも血が流れている。

くわえたタバコももうフィルターしか残っていない

ギンガとスバルには悪いがそんな俺の人生も納め時ってところか

ボロボロのトレンチコートに安物のソフト帽、ださい陸士の制服じゃ格好がつかないよな

こんなんで逝ったらあの世で真っ先にクイントに笑われちまう

「死ね」

魔導師の一人が無情に言い放ち、杖をゲンヤの頭に向けて魔力をこめ始めた。

ゲンヤは静かに眼を閉じた。そして一人の少女を思い浮かべた

(八神、てめえとの約束、守れそうにないぜ・・・)



「よし、いっちょあがり」
デスクワークも何とか一段落を見て、ゲンヤは帰り支度をする。

そうしていると部隊長室の書棚で資料を探していたギンガが顔を上げた。
「早いね、お父さん。何かあるの?」

「まぁな、八神と食事だ」
「そうなんだ、あんまり遅くなんないでね」

「あのよ、ギンガ。前から気になってたんだけど、何で自分の親がお前らとそんな年の
離れてない若い女性と食事するってのに、そんなあっけらかんとしてるんだ?」

「八神二佐とは昔からの付き合いなんだし、私もスバルも今更驚かないわよ。それにいざと
なったら八神二佐の方がしっかりしてるし、安心してお父さんまかせてられるから」

「そ、そうか(ガクッ)」
2人の娘の評価が相当低いことはオヤジとしては少しだけショックだった。

そんなゲンヤの心を知ってか知らずかギンガは言った。

「あまり遅くならないでね」
「ああ、わかった」



ことの起こりは先日の地上本部。佐官会議のあと、はやてに呼びかけられたことに始まる。
「ナカジマ三佐、その、今度の金曜に食事に付き合ってもらえないですか?」

いつもと違い、少し硬い雰囲気のはやてをゲンヤは不思議に思い。

「ああ?何だよ改まって・・・まあ別にいいけどよ。こんな40代のおっさんと食事しても
何も楽しいことねーぞ。高町やハラオウンのお嬢、ギンガやスバル、ティアナがいるだろ」

「いや、明日はどうしてもナカジマ三佐と一緒に食事したいんです!」

(まぁ、いいんだけどよ、本当にどうしたんだろうな?)

そう思いながら、部隊長室を出ようとしたときに、通信音がなった。
どうせ地上本部からの調査依頼だろう。

「時間もないし、今日は勘弁してもらうか」
そういって部屋を出て行ったが・・・すぐに部屋にもどりディスプレイをオンにする。

「はい陸士108部隊」
一応は出てたものの、はやてとの約束がある。用件を断ろうと考えていた。

『・・・ゲンヤさん』
声の主は中年の男性であった。年はゲンヤより若干若いだろうか。
ゲンヤは驚いてこう言った。

「おまえ・・・ヴィンセントか?」



クラナガン港湾区の廃工場、そこにゲンヤがいた。

今夜は雲ひとつない夜空、トレンチコートの襟を立てていても寒さが身にしみた。

さっきはやてに遅れる旨の連絡をした。

はやては「そ、そうですか。お仕事なら仕方ないですよね」
と言っていたが、4年の付き合いだ。ショックを受けているのが十分にわかった。

(チビたぬきに悪いことしちまったな。さっさと話を聞いて用事をすませるか・・・)

そう思っていると奥から男が現れた。無精ひげを生やし、やつれた顔が
月明かりでおぼろげにわかる。

「ゲンヤさん」
「久しぶりだなヴィンセント、いつシャバに出てきた?」
「・・・1カ月前です」

男の名はヴィンセント・ボガード、ミッドチルダの貿易商であったが
事業に失敗して莫大な借金を背負った。そこを犯罪組織につけこまれ
ロストロギアや違法デバイス密売のカモフラージュとして使われていたのだ。

しかし、逮捕。組織はトカゲの尻尾きりといわんばかりに全てを彼に押し付け闇に消えた。
そしてゲンヤは当時、そのヤマ(事件)を担当していた。

「今頃どうした?」
「あなたに伝えたいことがあるんです」

そう言って、ヴィンセント話し始めた
「管理局の軌道拘置所を出所して、組織から連絡がありました。また力を借りたいと」


ゲンヤは思い出していた。ヴィンセントは貿易、とかくルート作りに恐ろしいほどの
能力を発揮する男であった。

関税がかからないルート、管理局のチェックが甘い貿易ルート
証拠の残りにくい貿易ルートなどである。

そんな才能を持つヴィンセントをあげられたのは、ゲンヤが靴をすりへらし
血の気の多い港湾作業員や、運び屋の船乗りたち一人一人からジドリ(証言取り)したり
輸出入のデータを一件一件を地味にナシ割り(出所確認)して稼いだ執念のたまものであった。


「それでわざわざ逮捕した俺に宣戦布告しにきたってわけか?」
「いえ、ゲンヤさん、私は組織を抜けるつもりです」

意外な言葉にゲンヤは驚く。

「あなたには話していなかったが、私には娘がいます。もっとも妻は組織に
入る前に別れてから病死し、私も拘置所の中だったので孤児院にいます。あの子のために
もこれ以上罪を犯せない」

そしてヴィンセントはゲンヤに何かを投げた。メモリーディスクと写真だ。

「これに全ての証拠が入っている。この証拠を手に入れるために、組織の仕事をしてしまった。
再犯者はもう2度と日の目を見ることはない、そうなる前にあなたに娘のことを頼みたかった」


「ヴィンセント、お前・・・ふせろ!」

そういい終わらないうちに、上空から無数の魔力球がヴィンセントに迫ってきた。
ゲンヤはとっさに彼を押し倒し、一緒に転がりながら柱の影に隠れた。

シューターが床に当たってコンクリートが吹き飛んだ。

ゲンヤはズレたソフト帽をなおし、柱の影から少し顔を出して周囲を確認した。
上空、廃工場の入り口に数人。デバイスで武装した魔導師が見える。

再び柱の影に隠れてヴィンセントに言った

「何なんだあいつら!?」
「組織の魔導師だ、まさかつけられていたなんて」

そして魔法の掃射が不意にやみ、工場内はさっきまでと打って変わって不気味な静けさに包まれた。

(奴ら、入り口から全くこっちに来ようとしない・・・まさか!?)
ゲンヤがそう考えると数人の魔導師が、上空と入り口からコンビネーションで砲撃魔法を放った。

ゲンヤの視界がまばゆい魔力光に包まれてゆく。
そして廃工場は大爆発をおこした。



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目次:ジャスト・ラック・ブルース
著者:44-256

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