403 ジャスト・ラック・ブルース(最終話 1/5) sage 2008/03/10(月) 18:47:41 ID:zYAM60OH
404 ジャスト・ラック・ブルース(最終話 2/5) sage 2008/03/10(月) 18:48:48 ID:zYAM60OH
405 ジャスト・ラック・ブルース(最終話 3/5) sage 2008/03/10(月) 18:49:34 ID:zYAM60OH
406 ジャスト・ラック・ブルース(最終話 4/5) sage 2008/03/10(月) 18:50:39 ID:zYAM60OH
407 ジャスト・ラック・ブルース(最終話 5/5) sage 2008/03/10(月) 18:52:03 ID:zYAM60OH

ゲンヤの頭にシューターが打たれようとしていたその瞬間。

『ガキィィン!』
相手のデバイスが何かにぶつかる音が聞こえる。

そして、聞いたことのある声が呼びかけてくる。
「ナカジマ三佐!!」

ゲンヤの目の前を黒い羽が散らばるのが見えた。その奥には見慣れた騎士甲冑に
身を包む金髪・碧眼の少女がいる。はやてだ。

そしてはやての横にゲンヤを囲むようにシャマル、シグナム、ザフィーラ。

そしてはやての前には杖の攻撃をはじくヴィータの姿があった。
ヴィータはグラーフアイゼンで魔導師を吹き飛ばしてこう言った。

「まったく、ナカジマ三佐も無理するよな」
「これ以上、主の大切な方を、我らの仲間を傷つさせない!!」

「数が多い。みんな、時間かせいで!」
はやての声に守護騎士たちはいっせいに駆け出していく。

「レヴァンティン!!」
「アイゼン!!」
「ておあー!!」

ザフィーラは鋼のくびきで相手の自由を奪い、蹴散らしていく。
シグナムも詠唱中のはやてやゲンヤに向かってくる相手を1度にシュランゲの餌食にした。
ヴィータも相手をシールドの上からつぶしていく。

そうして火災の時に聞いた、あの詠唱が地下水路に響いた。

「仄白き雪の王、銀の翼以て、眼下の大地を白銀に染めよ・・・」
(はやてちゃん、守護騎士とナカジマ三佐へ以外への対象調整はまかせてくださいです!)

そうリインが言うと、はやては周りの魔導師たちを睨みつけた。
かつて次元世界に数多の災厄をもたらした闇の書の主の怒り、それは全ての違法魔導師たちに戦慄を走らせた。

「来よ、氷結の息吹。アーテム・デス・アイゼス!!」

そうして地下水路内に青い光が広がっていく。
「か・・・身体が・・・!!」

光をあびた魔導師たちがどんどん凍り付いていく。
数秒後には地下水路の広場は氷付けの魔導師たちで死屍累々となった。

もっとも非殺傷設定で命をとられていないのは当たり前である。

戦闘が収束すると、ゲンヤはこう言った。
「・・・寒いぜ・・・何とかしろい」

それに対し、ヴィータはツッコむ。
「おい、おっさん。ちゃんとシャマルがプロテクション張ってるの見えるじゃねーか!
というか大怪我してて、弟一声がそれかよ!?」

「奴・・・ヴィンセントは?」

「大丈夫です。ちゃんと保護してますよ」
そうシャマルが言った。

そうしてはやては周囲の安全を確認してからBJを解いた。
目の前にドレス姿のはやてが現れる。はやては少しこわばった表情をしている。

それをおぼろげにまだ見える片目で見て、少し驚いたあとに力なく笑い
「お前さん、誰だよ?美人すぎてわかんねぇよ・・・なんてな・・・似合ってるぜ、八神」
「こんなになって、ずっと・・・ずっと待ってたんですからね!!」

「遅れちまって・・・すまなかった。まだ8時・・レストランに行っても間に合・・い・・・」
そう言ってゲンヤは倒れた。
「ナカジマ三佐・・・ナカジマ三佐!!」

驚くはやてにシャマルが語りかける。

「気絶しただけ。大丈夫よ、はやてちゃん。ここからは私が自然治癒の妨げにならない
程度に回復魔法使うから」

−数日後−

クラナガンの管理局病院の屋上。そこにはやてはいた。
奥に待ち人がいる。待ち人はゲンヤであった。

左腕にギブスをしており、トレンチコートを肩にかけて立っていた。

「よう、八神」
「ナカジマ三佐、ケガの方はもう大丈夫なんですか」

そういって未だギブスのはまった左腕を少し持ち上げ
「もう大丈夫だぜ・・・って痛っ〜・・・」

今日は先日の事件でドタキャンしてしまったレストランで改めてディナーを楽しもうということに
なった。参加者はゲンヤとはやての2人に機動6課の主要メンバーにギンガを加えての大所帯である。

そのディナーが始まる前にはやてはゲンヤに病院の屋上に呼び出されたのである。

「もう、退院してまだ3日目なんですからあまり無理しないでください」
「ああ〜、すまんすまん」

そしてはやてはゲンヤに聞いた。

「あの、ナカジマ三佐。ヴィンセントさんは?」
「軌道拘置所だ。最も捕まえるためじゃなく、組織の残党からあいつの身を守るためにな。
奴さんの娘も管理局の施設で保護してるよ」

「それじゃあ、2人はまた離れ離れに」

「取調べにも素直に応じてる。奴の密貿易のルートの情報自体、『海』にとって価値があるものだからな。
身柄も地上本部から本局に移してもらったし。向こうにはハラオウン提督もいるし、2人の処遇は問題ないだろ」

空は夕方から夜になりかけており2つの月が浮かび上がる。
そうしてゲンヤは話を切り出した。
「この前は、すまなかったな」
「えっ?」

「レストランのことだよ。行けなくて本当にすまんかった」
「い、いや。そんなことは。ナカジマ三佐も本当に無事でよかった・・・」

そうした時に不意に北風が吹いた。

「くしゅっ」
はやてが小さくクシャミをした。先日ほどではないが、風にあたりすこし冷えたようだ。

(フワッ)
はやての頭の上を暖かいものが覆った。ゲンヤが自分のコートの中にはやてを通した。
本当ならはやてにコートを渡してかけたかったのだが、左腕がギブスでふさがっているためこうしたのだ。

最初は驚いたはやてであったが、コートの暖かさに甘えた。

「・・・すまねえな、八神。こんな寒いところに呼び出しちまって、ただよ。俺みたいな
ヤクザな男はあんま礼とか感謝とかを人前で言うのが苦手でよ」

「えっ?」
「あん時、4年前の火災のとき。感謝するのは本当は俺の方だ」

「そ、そんなことは・・・」
自分が礼を言わねばならないのに、逆に礼を言われてはやては更に驚いた。

「お前はよ、空港の利用客もそうだがギンガとスバルを助けてくれた。管理局三等陸佐としてでなく
2人の娘の父親として礼をいわせてくれ」
「ナカジマ三佐・・・」

「火災だけじゃないぜ。俺の方がお前さんから、受けてる返しきれない恩がたくさんあるんだぜ」

そうしてゲンヤは制服の内ポケットからケースを取り出しはやてに渡した。

はやてがあけてみると、中にはペンダントが入っていた。
シンプルなつくりだが非常にしっかりした物であった。

「4年分の礼にしてはちゃちいもんだけどよ、本当にありがとな・・・」

そう言うと、恥ずかしいのかゲンヤがこう言った。
「ふぅ、女性にプレゼントなんて、クイント以来だぜって・・お、おいっ?八神!?」

見ると、はやては泣いていた。

プレゼントが気に入らなかったのかとゲンヤはあせった。
するとはやてはペンダントを握り締め、ゲンヤに寄りかかってきた。

「私も・・・ありがとうございます。ナカジマ三佐、私の方こそ本当に・・・」
そんなはやての言葉を聞いて、ゲンヤははやての頭をやさしくなでた。


そしてスバルが2人を呼びに来た。
「お父さーん、八神部隊長ー!時間だよー!」
「おう、わかった。すぐ行くぜ」

ゲンヤはそういってはやての方を見て優しく問いかける。
「もう・・・大丈夫か?」

はやては涙を拭いた。
「・・・はい、大丈夫です」

「よし、レストランで高町やハラオウンのお嬢、それにギンガも待ってるしな。この前の仕切りなおしだ」
「はい!」

そうしてゲンヤとはやては屋上のドアの方へ歩いていった。

−八神、これからもよろしくな−
−こちらこそ、よろしくお願いします−

季節は秋、空には2つの満月と星空が輝いていた。

end



前へ
目次:ジャスト・ラック・ブルース
著者:44-256

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます