[419] 41-340 sage 2007/12/30(日) 21:37:35 ID:SFpwElsV
[420] 41-340 sage 2007/12/30(日) 21:38:13 ID:SFpwElsV

フェイトは飾り気のない廊下を歩いている。まあここは監獄だから飾り気がないのは当然だが。
スカリエッティを捕まえてから一週間、やっと尋問が出来る。
一体彼が何を望んだのか、何をなそうとしたのか。聞かなければいけないことはたくさんある。
「ふぅ…がんばらなくちゃね」
部屋に着き、扉を開くとそこは取調室のような部屋で、椅子には拘束されたスカリエッティが座っていて、両脇には局員が二人立っている。
「フェイト執務官、わざわざご苦労様です!」
「うん、ありがとう。今から取り調べを始めるんだけど、少し二人にしてくれるかな?」
「は!……しかしそれは…」
「お願い。何かあったらすぐ呼ぶから」
「わかり…ました。それでは」
局員二人が部屋から出ていく。
フェイトはスカリエッティの向かいの椅子に座った。
と、それまで無言だったスカリエッティがいきなり喋りだした。
「これはこれは、フェイト・テスタロッサ。何の用かな?」
「貴方を取り調べに来ました。わかりきってるでしょう」
にやにやといつもの調子で答えるスカリエッティにフェイトは厳しく答える。
「この私がぺらぺらと喋るとでも?」
「ちなみにナンバーズはあれで全員?」
「ああ、私の傑作達は12体!素晴らしき戦闘機人達だよ!」
「その調子でぺらぺら喋ってくれると助かります」
「……」
心なしかしょんぼりしているように見えるスカリエッティ。
その後もいくつか質問をしていく
「さて――本題に入りますけど、貴方のバックには地上本部がいますね?」
「いいのかい?それを聞いたら、君も戻れなくなるよ……」
「構いません。だから答えなさい」
「ククク、いいだろう。いかにも、私のスポンサーは地上本部。戦闘機人や人造魔道士、
アインヘリアル等の見返りに資金援助や場所、情報提供等を受け取っていたよ」
「やっぱり……」
「君も薄々気付いていただろう?」
「ええ………あと、これは個人的にも聞きたい事なんだけど、何故こんなことをしたの?」
「こんなこと、とは?」
「今回の事件全部。レリックにガジェット、更にはゆりかごまで。
地上本部がバックについてるならわざわざ事件を起こさなくてもよかったんじゃない?」
それが知りたかった。なぜ捕まるという危険を犯してまで事件をおこしたのか。
「……」
急に黙り込む。
「黙秘権もありますが、あまり貴方の為にはなりませんよ」
「君が…」
「え?」
「君が欲しかったんだよ。私は」
「は?」
ちょっと待ってほしい。こいつは今何と言った?
「私が完成させることができなかったプロジェクトF、それをあの女プレシア・テスタロッサが完成させてから気にはなっていた」
「え、あの、ちょ…」
「最初はただの観察対象だった……それがいつのまにか、そう君達がプレシア・テスタロッサ事件と呼ぶあの事件から私は少しずつ君に惹かれていった…」
信じられない。そんな昔から私を知っていたなんて。しかもその内容も衝撃だ。
「その時既に私は犯罪者だ、何度も諦めようとしたよ。気分を紛らす為に女性型の戦闘機人も大量に造った。
でも足りない!君にはある何かが!私は……僕は……俺は……」
俯いて喋るスカリエッティ。
フェイトはただ黙って耳を傾ける。
「そうしている間にも君はどんどん強く、美しくなっていく……だが私は触れることすら許されない。
その金細工のような綺麗な髪に。ルビーのような緋い瞳も、絶対に私を見てはくれない…
そんな時だよ。君が私を調査していると知ったのは。もう、その時点で私は狂っていたのだろうな。
私は嬉しかった。君が、私を見てくれると!このまま罪を重ねれば君は私の所まで来てくれるのではないかとね!
それからの行動は我ながら手際がよかったよ。ガジェットを量産し、派手に暴れさせた。名刺を挟んだこともあったな」
なんて事だ…じゃあこの事件には私もかなり関係あるんじゃないか……違う違うそんなことじゃない。というかこれは告白なのだろうか?
「研究所で直接君を迎えたのは君を捕らえるためだよ。ゆりかごは私と君の城だ!地上本部や最高評議会などどうでもよかったのだよ!」
「ふざけないで!」
今まで黙って聞いていたフェイトが突然机を叩いて叫ぶ。
「そんなことで私が貴方のものになると思ったの!?大勢の人々の犠牲の上で貴方は笑えるの!?」
「君がいればよかったんだ…ただそれだけが私の望みだったからな………だがもう遅い。所詮犯罪者の私にはこんな形でしか愛を表現出来なかったのだよ…」
スカリエッティもただ単に、世の中の大勢の普通の男のように、人を愛したかっただけなのかもしれない。ものすごく歪んだ形ではあるが。
よく考えるとこんなに私に熱く思いをぶつけてきたのはスカリエッティが初めてかもしれない。
なのはやシグナム達の熱さとはまた少し違う。こう、何と言うか、体が奥から震えているような…って、いけないいけない。取り調べに集中しなきゃ!
「貴方の研究はちゃんと法律に則って行えば、大勢の人が救えます。司法取引になると思いますが、服役年数も大幅に減ると思いますよ」
「服役期間が終わって外にでても、私には何もないよ…」
「待ちますよ」
「何?……」
「人の役に立って、罪を償って、……そしたら今の告白、考えてあげます」
「な!?………私にチャンスをくれるというのか!?こんな私に!」
「ええ。ちゃんと反省するなら、10年でも20年でも待ちますよ。あ、でもそれじゃ私がおばさんになっちゃいますね」
スカリエッティは信じられない、という顔でフェイトを見ている。「私は……犯罪者だが…」
「知らないんですか?私も元犯罪者ですよ」
微笑みながら答えるフェイト。
「じゃあまた来ます。司法取引の権も考えておいてくださいね」
そういって部屋から出て局員に挨拶をして去っていくフェイト。
局員が入ってきてスカリエッティに話し掛けるが、スカリエッティは何も答えずただ一言呟いた。
「アンリミテッドデザイアも、返上かな……ハハハ…」



この日ここで起きた出来事が、極めて高いクローン技術や高性能の義手義足によって
数え切れない程の人々を救う「UNLIMITED・MERCY:無条件の慈悲」と呼ばれる天才医師を生み出したということは、
彼と、彼の妻しか知らない―――



著者:41-340

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます