[465] フェレット二匹の侵入作戦 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/10/13(土) 23:09:42 ID:aBgyxpDl
[466] フェレット二匹の侵入作戦 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/10/13(土) 23:11:09 ID:aBgyxpDl
[467] フェレット二匹の侵入作戦 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/10/13(土) 23:12:40 ID:aBgyxpDl
[468] フェレット二匹の侵入作戦 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/10/13(土) 23:13:57 ID:aBgyxpDl

あくる日、なのはとユーノは珍しく二人揃って休暇が手に入り、家でゆっくりしていた。
なお、ヴィヴィオは平日なので聖王教会系列の学校に行っている。そんな時に…
「ヴィヴィオが心配だよー!!」
「なのは!?」
突然なのはが叫んだ。それには思わずユーノも慌ててしまう。
「だってもしかしたらヴィヴィオ学校で苛められてるかもしれないんだよ!」
「考えすぎだよ! 第一それならヴィヴィオだって僕達に相談してくるはずじゃないか!」
余りにもヴィヴィオに対して心配性ななのはにユーノも呆れていた。

聖王教会系列の学校に通う様になって、当初はなのはがいなければ何も出来なかった
甘えん坊なヴィヴィオも随分しっかりした子になっていた。しかし…ヴィヴィオに甘えられる事に
喜びを感じていたなのはがその事実を不満に思わないはずは無い。
故にもうヴィヴィオの方が困ってしまうくらいの親馬鹿ぶりを発揮する結果になっていたのだが、
今のなのはは別に何か問題が起こっているワケでも無いのに勝手にヴィヴィオが学校で
苛められているかもしれないと被害妄想を膨らませていたのであった。

「もうこうなったら様子を見に行こうよユーノ君!」
なのははユーノを引っ張って学校にまでヴィヴィオの様子を見に行こうとしていたが、
その直後にユーノはなのはを逆に引き止めていた。
「なのは忘れたのかい!? 以前にもそういう事が何度もあったからあちらから
運動会や授業参観日みたいな一般に開かれた日以外は出入り禁止にされちゃったじゃないか!」
「あ…………。」
その事実を思い出すなりなのははその場に跪いてしまった。

実は過去にも今回の様な事が度々あった。ヴィヴィオが学校で授業を受けている最中に
ドアの隙間からこっそりカメラで写真を撮って職員の方に怒られてしまったり…
そういう事が何度も続いたせいでなのはとユーノは聖王教会の方から一般に開かれる日以外は
出入り禁止を申し渡されていたのであった。

「絶望した!! この世の何もかもに絶望したぁ!! 今こうしている間にも
ヴィヴィオは学校に棲み付く悪ガキ共に乱暴されているかもしれないと言うのに
私はこうやって手をこまねいている事しか出来ないと言うの!? 何がエース・オブ・エース!?
私はたった一人の女の子の命さえ救う事が出来ないと言うの!?」
「だからなのは! 考えすぎだってば!」
勝手にどんどん被害妄想を膨らませていくなのはにユーノもほとほと困り果てていたのだが…
そこで何か思い付いたのか、突然笑顔になってユーノの肩を掴んでいた。
「そうだよユーノ君! 良い方法思い付いちゃったよ!」
「え?」
先程まであんなに嘆いていたのが嘘の様に笑顔になったなのはにユーノも慌てるが…
「フェレットに変身してこっそり見に行こう!!」
「ええええええええ!?」
何か凄い発想に至っていてユーノも本気で慌てていたが、なのはは本気だった。
「だってフェレットなら小さくて見付かりにくいし! 物陰にだって隠れやすいし!
何より私達って事がバレないから良いじゃない!」
「え…あ…うん…。」
そう考えれば理に適っていると言えなくも無いが、それ以上になのはから発する
迫力に押されてユーノはもう大人しく頷くしか無かった。
「それじゃあ決定だね! 私達は今すぐフェレットに変身してヴィヴィオの学校へ直行ー!」
「あ…うん…。」
白いフェレットと黄土色のフェレットの二匹が道の隅っこをトコトコ歩いていた。
勿論白い方はなのはで、黄土色はユーノである。
「別に学校の近くまで普通に行って、それからフェレットに変身すれば良いのに…。」
「えー? 良いじゃない! こうやってフェレットの姿で行くのも悪くないよ!
だって普段歩き慣れた道でもフェレットの姿だと随分違って見えて面白いよ!」
なのはの言う通り、フェレットの姿だと人間形態に比べて随分小さくなってしまう故、
逆に周囲の物が大きく見えてしまう。だからこそ普段見慣れている物でも新鮮に感じて
なのははこれはこれで随分楽しんでいた。問題があるとすれば…
「きゃあ!」
「なのはどうしたの!?」
「む…虫がこんなに大きく…。」
と、虫と遭遇した時に虫も普段より遥かに大きく見えてしまう諸刃の剣。
よっぽど虫が好きな人間で無ければお勧め出来ない。

その後、近所の野良猫に追い駆けられてしまったり、保健所に捕獲されそうになったり
野良犬同士の抗争に巻き込まれたり、色々な苦難を乗り越えながらも何とか
なのはとユーノはヴィヴィオの通う学校まで到着した。そこは聖王教会系列の学校故に
警備なども厳しいのか、周囲を高い壁で覆い、門は固く閉じられていたが、
フェレットに変身している二人は人間の時よりも小さい体と機敏な動きを利用して楽々門を乗り越えていた。
「ほらほら、フェレットの姿なら侵入してもバレてないでしょ?」
「う…うん…そうだね。」
確かになのはの言う通り、フェレットの姿ならば門を乗り越えて侵入しても
学校側の誰からも気付かれている様子は無かった。それにはなのはも乗り気だったのだが、
ユーノはまだまだ心配していた。

二匹のフェレットは壁沿いにちょこちょこと移動を開始した。
そうして運動場の方へ行くと、そこでは丁度ヴィヴィオのクラスの子供達が
体育の授業の真っ最中だった。二匹のフェレットは運動場の端に立っていた木の上に
登ってその様子を見る事にした。この木を登ると言う行為も人間の時には
全く出来ないと言うのにフェレットの状態では楽々に出来た。
「木の上から見ればよりバレにくくなるよね。」
木の上からなのはとユーノが改めて運動場の方を見ると、そこでは
ヴィヴィオとクラスの皆がドッジボールを楽しんでいた。
そしてその時のヴィヴィオの笑顔から見て、とてもなのはが心配している様な様子は伺えなかった。
「ほら、ヴィヴィオだってあんなに嬉しそうな顔してるじゃないか。なのはは心配性すぎるよ。」
「うん…。」
流石にヴィヴィオが学校で苛められているかもしれないと言う被害妄想を膨らませていたなのはも
これには納得せざるを得なくなるのだが、これはこれでなのはは不満そうな顔をしていた。
不謹慎かもしれないが、以前みたいにヴィヴィオに甘えられる様な事が無くなるのだから…
「でもああやってドッジボールしてるヴィヴィオを見てると私も小さい頃を思い出しちゃった。」
なのはは小学生時代にフェイトやアリサ・すずかなどのクラスの友達とドッジボールをした事を
思い出し、かすかに微笑ましい顔になっていた。
「なのはには申し訳無いけど…昔のなのははお世辞にも運動が上手く無かったよね。」
「今も運動は得意じゃないよ。魔力的に運動補助してるから皆気付いてないけど。」
と、申し訳なさそうに言っていたユーノをフォローするのか、なのはもそう言い返していたのだが
その時の二匹はとてもほんわかしていた。が…
「あっ!」
なのはは思わず叫んだ。丁度その時ヴィヴィオが相手からボールを当てられて尻餅を付いていたのである。
「やっぱりヴィヴィオが苛められてたんだね! 許せない!」
「ちょっと待ってなのは! 落ち着いて!」
今にも飛び出して行こうとしていたなのはを慌ててユーノが止めていた。
「放してユーノ君! 私はあの子にお話聞いてもらうだけだよ!」
「だからなのはこそ落ち着いてったら! 不当な暴力ならともかく、ドッジボールはボールを
当てるスポーツなんだからそんな事したらなんはの方が悪者にされちゃうよ!
それにヴィヴィオだって自分の力で立ち上がってるじゃないか!」
ユーノの言った通り、ヴィヴィオは自分の力で立ち上がって外野に出ていた。
なのはと会った当時のヴィヴィオはなのはがいなければ立ち上がる事も出来なかったと言うのに
やっぱり成長したなと実感させ、これにはなのはも不満げながら納得せざるを得なかった。

体育の授業は特に何事も無く終了し、ヴィヴィオ達はそのまま校舎の方へ戻って行った。
「ほら、もう大丈夫だから帰ろう?」
「まだだよユーノ君! 休み時間の方がむしろ危ないんだから。先生の見ていない所で
クラスの悪ガキがヴィヴィオに乱暴してるかもしれないじゃない!」
「だから考えすぎだって!」
まだヴィヴィオの様子を見続けるつもりだったなのはにユーノもほとほと呆れてしまうが、
結局ユーノもなのはに付いていくしか無かった。

なのはとユーノはヴィヴィオのクラスの近くに立っている木へまで移動し、その木の上から
窓ごしに学校の様子を見ていた。皆すっかり元の制服に着替えてワイワイと休み時間を
楽しんでおり、ヴィヴィオもまた友達と笑顔で雑談をしていた。
「ほら、別に誰もヴィヴィオに乱暴なんてしてないでしょ? 分かったらさっさと帰ろうよ。」
「う…うん…。」
本来なら何も無いに越した事は無いのだが、なのははそれを不満そうに思っている様子だった。
やっぱりヴィヴィオに泣いて縋り付かれる展開を期待しているのだろうか…とそんな時…
「あっ!」
またもなのはは叫んだ。ヴィヴィオのクラスメートと思しき女の子がヴィヴィオの肩を
軽く叩いていたのである。
「あの子…ヴィヴィオを叩いた…。」
「わ! 落ち着いてなのは! 確かに叩いてたけどヴィヴィオも痛そうにしてないし
あのくらいはただの軽い挨拶みたいなものじゃないか! なのはだって子供の頃に
ああいう事された経験あるでしょ?」
と、また怒りに任せて飛び出そうとしていたなのはをユーノは必死に止めていた。
「でも本当は痛いけど我慢してるかもしれないじゃない!」
「それが考えすぎなんだってば!」
まだまだ全力全開レベルに被害妄想を膨らませるなのはにユーノもほとほと困り果てていたが、
これだけ騒いでも皆に気付かれなかったのはある意味奇跡だった。

そうこうしている内に休み時間も終わり、授業が始まった。どうやら国語の授業らしかった。
木の上に登っている二匹のフェレットは未だに帰る事無くオッドアイの少女の様子を見ていた。
黄土色の雄フェレットはもうすっかり飽きて眠そうにしていたのだが、白い雌フェレットは
注意深くオッドアイの少女の様子を見張っていた。

だがその後も放課後まで結局なのはの予想する展開は一切起こる事無かった。
仮に何かあっても精々がなのはが勝手に被害妄想を膨らませただけの子供にとっては
至って普通な事ばかりであった。
「だからさ…もう心配ないから…いい加減に…帰ろう?」
「うん…。」
ユーノにポンと肩に手を置かれ、なのはも仕方なく頷くしか無かった。

そして夕日を浴びながら道の隅っこをトコトコと連れ添って歩く二匹のフェレットが見られたと言う。

「ただいまー。」
「おかえりヴィヴィオ。」
ヴィヴィオが帰宅した時、なのはとユーノ(勿論元の人間に戻ってる)が仲良く出迎えてくれた。
「今日も学校は楽しかった?」
「うん!」
なのはの言葉にヴィヴィオは表裏の無い笑顔で答えた。
「でも何かあったらママに相談するんだよ? 出来る限り協力してあげるから。」
やっぱりむしろヴィヴィオにすがり付いて来て欲しいなのははついついそう言うのだが、
ヴィヴィオは笑顔で答えていた。
「うん! でも心配はいらないから大丈夫だよ。だからママもパパも何も
フェレットに変身してまで学校に見に来なくても良いから!」
「あ………。」
ヴィヴィオは二人がフェレットに成りすまして来ていた事を悟っていた。
それには二人も気まずくなるが、ヴィヴィオは構わず自分の部屋へ歩いて行った。

                     おしまい


著者:◆6BmcNJgox2

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