42 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 1 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:22:47 ID:iw3SaxBk
43 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 2 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:23:23 ID:iw3SaxBk
44 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 3 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:23:53 ID:iw3SaxBk
45 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 4 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:24:28 ID:iw3SaxBk
46 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 5 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:25:05 ID:iw3SaxBk
47 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 6 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:25:37 ID:iw3SaxBk
48 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 7 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:26:26 ID:iw3SaxBk
49 名前:ユーノとキャロの結婚前夜 8 ◆6BmcNJgox2 [sage] 投稿日:2009/04/14(火) 23:26:55 ID:iw3SaxBk

 無限書庫司書長ユーノ=スクライア29歳と管理局の名物竜召喚士キャロ=ル=ルシエ20歳の電撃結婚は
ミッドチルダ全土を震撼させた。その昔、とある人物が「この世はこんなはずじゃない事ばかりだ」と言う
言葉を残したが…その言葉はこの二人の結婚の為にあるも同然であった。

 そして結婚前夜、ユーノとキャロの二人は翌日の式本番に備えて段取り等の打ち合わせをしながら
静かな夜を過ごしていたのだが、そんな時にキャロの友人だったエリオ=モンディアルと、
その妻ルーテシアが駆け付けて来ていた。

「キャロ! フェイトそんに聞いたんだけど無限書庫のユーノ先生と結婚するって本当かい!?
水臭いな〜。どうして教えてくれなかったんだい?」
「あ、ごめん。他にも色々とあって二人に招待状を出すの忘れてたみたいだね。」

 どうやらモンディアル夫妻には二人の結婚が知らされていなかった様だ。それに関して
ユーノは申し訳無さそうに謝ってはいたが…

「エリオ君とルーちゃんには余計なお世話と思ってあえて呼びませんでした。だってそうでしょ?
私なんかの結婚式の為に貴重な時間を潰す位なら、ベッドの上で二人きりでイチャ付いてる方が
よっぽど二人にとって有意義でしょう? だから私達の事は構わず愛を深めてて下さい。」

 その時のキャロの表情は優しい笑顔にあふれた物であったが、その目には明るみが無く…むしろイッていた。

「キャロ…まさか…まだ僕達が結婚した事について根に持ってるのかい?」
「いえいえ、そんな事は決してありませんよ。エリオ君が機動六課の頃からずっとコンビで
頑張ってきた私を放ってルーちゃんとくっ付いてギシギシアンアンとやりまくってても
私は何とも思っていませんよ。だって私は明日ユーノさんと結婚するんですもの。
ユーノさんの赤ちゃんを産むんですもの。」

 キャロはやはり優しい笑顔であったが…その目だけは明らかにイッていた。

「キャ…キャロ…あのね…。」
「いえいえ。構いませんから。私は何とも思ってませんから。根になんて持ってませんから。
どうぞどうぞ。エリオ君もルーちゃんも私の事なんて構わずに愛を深めてて下さいよ。
私は平気ですから。早く何処かに行ってください。私の理性が少しでも残ってる内に…何処かに消えてください。」
「キャ…キャロ…。」

 昔はあんなに仲が良かったと言うのに…何故二人はこんな事になってしまったのだろう。
それには数年前に遡る必要があった。

 数年前のその日、キャロはある光景を目の当たりにした。それはエリオがルーテシアと二人で歩いていた光景。
それだけならば大した問題では無かった。キャロ自身もルーテシアとお出かけしたりと仲が良かった。
ならばエリオともそういう事があっても不思議では無いと最初は思っていた。しかし…

「どう? 私の新しい召喚虫。」
「フリードよりはやーい!」

 ルーテシアが何処からか調達して来た飛行型召喚虫の背に乗ってフリードより速いとか
のたまうエリオの姿まで目撃してしまった。挙句の果てには…

「ルー! ルー!」ギシギシ
「エリオー! エリオー!」アンアン

「え…嘘…嘘でしょ…エリオ君…。」

 キャロはついに見てしまった。エリオとルーテシアの二人がベッドの上で一糸纏わぬ姿で抱き合い
激しく愛し合う姿を…。キャロに対してはエッチはおろかキスさえしなかったというのに、
ルーテシアに対してはその肢体を貪る様に愛し合うエリオの姿は…キャロには異様に映った。

 勘違いして欲しくは無い事だが、決してキャロに魅力が無いワケでは無い。
むしろ今のキャロは幼少時のそれとは別人の様にボンッ! キュッ! ボーンッ!
なエロけしからん肢体な女に成長してしまっている。どんなに低く見積もっても
ルーテシアより良いスタイルをしていた。しかし…エリオは幼少時からボインな女性に
囲まれて育った反動により、ボインな女性に魅力を感じなくなってしまっていたのである。
むしろルーテシアの様なスレンダーな女性に興奮してしまう。その為に…この様な結果になってしまった。

 それだけでは無い。ルーテシアの母メガーヌ、エリオとキャロの保護責任者フェイトそん、
機動六課時代にエリオ・キャロ・フェイトそんの所属していたライトニング分隊の副隊長をしていたシグナム、
そしてJS事件の際にルーテシアと行動を共にし、そして今は亡きゼストに代わってシグナムの
パートナーになったアギト等、皆もまたエリオとルーテシアの仲を肯定的に受け取っていたのである。

「二人とも早く孫の顔を見せて頂戴ね。」
「エリオも何時の間にかにこんなに立派になって…私は嬉しいよ…。」
「エリオ…これからもいっそうの努力をして、ルーテシアを守れる騎士になるのだぞ。」
「エリオ! ルーを泣かしたら承知しないからな!」

「え…嘘でしょ…フェイトそんまで…そんな…。」

 キャロは信じられなかった。まるでキャロ=ル=ルシエと言う人間は最初からいなかった様な…
そんな蚊帳の外な扱いにする皆をキャロは信じる事が出来なかった…。

「そっか…皆…もう昔とは違うんだね。エリオ君もルーちゃんも…フェイトそんも…もう
昔とは違う…明らかに別の生命体に変わっちゃったんだね…。私の事なんてもう忘れちゃったんだね…。」

 幼き日、村を追い出され、管理局に入った後も不遇な目にあっていた所をフェイトそんに引き取られ、
エリオと共に機動六課で頑張った毎日。そしてその後も作って来た沢山の思い出…その全てが
ガラスの様に音を立てて崩れ落ちて行く様な気がした…………

「あは! あは! あははははははははははは!! あひゃ! あひゃ! あーっひゃっひゃっひゃっひゃ!」

 キャロは笑った。泣きながら笑った。既にイッてしまった目から大量の涙を流しながら、
狂った様に笑った。幸い誰もその光景を目の当たりにする事は無かったが、もし見られていたら
絶対に引いている。エリオだってルーを選んで良かったと改めて思うに決まってる。
それだけ凄まじい狂いっぷりであった。

 その日を境にしてキャロは荒れた。狂った。不良竜召喚士になってしまった。その結果、
自身の恩人であるフェイトそんに対しても…

「うっせぇクソババア! 何時までもなのはさんと百合って無いでいい加減男作って結婚しろ!」

 と言葉遣いも乱暴になってしまった。挙句の果てにはフェイトそんの義母のリンディさんに対しても

「もう孫も立派に社会人してるのに何時までも若いつもりになってんじゃねーよ! 空気を読んで
いい加減老けろ! 今何歳だと思ってんだよ! って言うか本当に人間かよ!」

 などと暴言を吐いたりする始末。キャロの変わり様は言葉遣いだけでは無くその生活態度にも及び、
甘酒(酒の誤植では無い)を浴びるように飲み、タバスコ(タバコの誤植では無い)も吸う様になった。
 その結果、タバスコに含まれるニンニクのせいでキャロは口臭の非常に臭い女になってしまった。

 何しろタバコでは無くタバスコである。文法的には「ス」の字があるか無いかの差でしか無いが
本質的には凄まじい程の差がある。まず、タバコは二十歳になるまで吸ってはいけないし、
管理局内は愚かミッド全域において禁煙の場所が多いが、タバスコはそうでは無い。
と言うか、まさかタバスコをそのまま吸う奴が現れるなんて誰も想定していなかった。
だからこそ今のキャロは厄介この上無かった。

 キャロがニンニクの含まれるタバスコを吸った事によって発生した非常に臭い口臭によって
タバコの煙なんて比にもならない程の被害を管理局は被る事になった。しかし、かと言って
タバスコを吸ってはいかんと言うルールは無い為、誰もキャロを攻める事は出来なかった。

 当時のキャロの不良ぶりは非常に目に余る物があった。それを象徴するあるエピソードがある。

 それはエリオとルーテシアの結婚式の際、他の皆は結婚式と言う祝いの席に相応しい服装で
出席していたと言うのに、キャロ一人だけは何故か尼僧の格好で現れ、数珠をジャラジャラと鳴らし
木魚をポクポクと叩きながら…

                 「南無妙法蓮華経!」チーン

 などと…法華経を唱え出したのだからもう大変。めでたい結婚式が一転してお通夜ムードに。
しかも結婚式の会場として使われたのが聖王教会で、その状況下で尼僧の格好で法華経唱えるなんて…
もうケンカ売ってるってレベルじゃない。この余りにもシュールな光景はミッドチルダで
放送されているバラエティー番組『次元世界仰天ニュース』でも取り上げられる程だった。

 だが、キャロの犯した奇行はそれだけでは無かった。突然尼僧服の中からナイフを取り出したかと
思うと、雄叫びを上げながら新郎新婦のエリオとルーに向かって突撃! そしてそのナイフで
二人の腹をそれぞれ突き刺してしまった! 忽ち上がる悲鳴! の割りに何故か血が流れない。
それもそのはず。キャロが二人に突き刺したナイフは、ナイフはナイフでも、マジックナイフだったのである。
ほら、玩具屋とか行ったら売って無いかね? 相手に刺すと刃の部分が引っ込む奴。
だからエリオとルーに突き刺した所で刃が引っ込むだけで血なんて出るワケが無い。
それ以前に刃自体もプラスチック製だしね。

 エリオとルーがくっ付いたショックで気の狂ったキャロとて、決して馬鹿では無かった。
もし本当のナイフで二人を刺したらそれこそキャロは法的に抹殺される。だからこそ、
酒の代わりに甘酒を飲み、タバコの代わりにタバスコを吸い、エリオとルーの結婚式の席で
法華経を唱える等、法に触れない様に上手く工夫して二人に対しての嫌がらせをやっていたのであった。

 こうして、キャロはマジックナイフを使う事によって、エリオとルーを傷付ける事無く
二人を刺し殺したつもりになって満足しようとしたのだが…あたかも本当のナイフで
刺されたかの様に苦しむ振りをしてたエリオとルーもどうかしてる。

 と、この様に数々の伝説的奇行を繰り返し、挙句の果てには管理局のスケバンとまで
言われる様になってしまっていたキャロが立ち直った理由…それは無限書庫司書長
ユーノ=スクライアとの出会いにあった。確かに初めて二人が出会った時、流石のキャロも…

「寄るな淫獣! てめぇ淫獣ってだけに動物の匂いがしてくせぇんだよ!!」

 などと…自分のタバスコの吸いすぎで凄い臭くなった口臭を棚に上げて
ユーノを罵倒したりなんかしていたが…ユーノは全く動じる事は無かった。あたかも…

「その手の罵倒は既に遥か昔に通過した場所だ!!」

 とか言わんばかりに平然とするユーノにキャロは自然に気圧され、知らず知らずの内に
大人しくなって行くのを感じていた。

 それからだった。キャロは知らず知らずの内にユーノに惹かれる様になって行ったのは。
相手は九つも年上だと言うのに…もう直ぐ三十路だと言うのに…何故かユーノが恋しい。
 キャロとユーノ…この二人には接点らしい接点は無い。精々出身地が田舎っぽいとか、
サポート系の魔法が得意とか、アホ毛が生えてるとかそういう要素位。なのに何故か
キャロはユーノに身近な物を感じていた。

 そしてキャロは気付く。ユーノの優しい瞳の奥に今のキャロと同じ悲しみを抱えていた事を…
キャロがエリオ・ルー・フェイトそんに裏切られた(と本人は勝手に認識していた)様に、
ユーノもまた信じていた人に裏切られた経験があったに違いない。だからユーノはキャロに
自分と同じ物を感じ、あれだけ罵倒されてもユーノは動じる事は無かった。(とキャロは勝手に認識した)

 その日を境にキャロはちょくちょく無限書庫に押しかける様になった。ユーノと一緒にいるだけで
エリオ・ルー・フェイトそんに裏切られて(勝手にキャロがそう認識しているだけ)傷付いた心が
癒される様な気がしたから…。

 ユーノも最初の頃はそれにやや迷惑気味であったが、慣れとは恐ろしい物。
何時しかその日々にも慣れ、次第にユーノもキャロと一緒にいる事が当たり前に感じる様になり、
休日には二人で出かける様になったり、遺跡調査の際にもキャロとフリードにサポートを
頼む様になったりと…知らず知らずの内に二人は親密な関係となり…ついには結婚に至っていたのだが…

 結婚前夜に突如として現れたエリオ・ルーの二人のせいでキャロが必死に忘れようと
していたトラウマを呼び起こす結果になってしまっていたのである。

「私は別に何とも思ってませんからもう帰って下さいよ! 明日の結婚式にも来なくて良いです!
エリオ君とルーちゃんは私の事なんて気にせずベッドでイチャイチャギシギシアンアンって愛を深め続けていれば
良いんです! って言うかこの状況下でも仲良く手繋いでる所見せつけんじゃねーよ!
だから私の理性が少しでも残ってる内に早く消えて下さい! じゃないと…。」

 するとキャロは何処からか数珠や木魚を取り出し…

                   「南無妙法蓮華経!」チーン

 またも法華経を唱え始めてしまった。一見ふざけている様に見えるが、キャロの目は真剣そのもの。
その光景にエリオとルーは引く所かむしろ可哀想な目で見つめていた。

「キャ…キャロ…。」
「まだ消えないんですか!? もう良いです! 私が消えます! 私が消えれば良いんでしょ!?」
「え!?」

 キャロは何処からかナイフを取り出し…悲痛の雄叫びを上げながら自身の腹を掻っ捌いた!

「うっ!!」
「キャ! キャロォォォ!!」
「キャァァァァァァ!!」

 見事な切腹だった。そして倒れて動かなくなるキャロに悲鳴を上げるエリオとルーであったが…
何故かユーノは全く動じていなかった。

「ユーノ先生! 貴方はどうしてそんな平気な顔をしてられるんですか!?
キャロが…キャロが目の前で自殺してしまったんですよ!? なのに何故…。」
「自殺って………。君達二人も同じ体験をしているのに…。」
「え…? ってまたマジックナイフかよ…。」

 キャロが使ったナイフは実はあの時と同じマジックナイフ。当然これでは腹を掻っ捌けるワケが無い。

「もう驚かせないでくれよ。キャロが死んじゃったのかと思って本気で驚いちゃったじゃないか…。」
「いいえ、死んだよ。」
「え…。」

 キャロの言葉にエリルーは一瞬硬直。そしてキャロは自分で死んだとか言いながらも立ち上がり…

「エリオ君がルーちゃんと結ばれてもなお往生際が悪く未練を持ち続けたキャロ=ル=ルシエは今日死にました!
そして今ここにいるのは明日から正式にユーノさんの妻になる女、キャロ=スクライアです!!」
「え…。」

 どうやら先の切腹詐欺はこういう意味合いがあった様だ。マジックナイフによる切腹詐欺によって
エリオに未練を持ち続けた自分を殺し、ユーノの妻に新生すると言う彼女なりのけじめだった。
そして、彼女はエリオとルーにそれぞれ一枚の紙を手渡していた。

「ですから、二人に明日の結婚式の招待状です。出席するなり構わず二人きりで愛を深めるなり好きにして下さい。」
「え…? でもこれ…呪いのお札って書いてあるんだけど…。」
「うっせぇな…人生山あり谷ありなのは至極当然だろうが…。そういう不幸を乗り越える事が
出来てこそ本当の夫婦ってもんだろうに…え? だからお前等に艱難辛苦を与えよって
願いを込めてそれを送ったんだろうが…。つべこべ言わずに受け取っとけよ…。」
「……………………………。」

 突然態度が真っ黒になったキャロにエリオとルーは愕然とし…黙り込む事しか出来なかった。
って言うかお前…全然エリオに対して未練捨てきれてねーじゃねーか…。

 と、そんな時に突然部屋のドアが開き、高町ヴィヴィオが現れた。

「あの…こんばんわ…キャロちゃん…。」
「あら? ヴィヴィオちゃんこんばんわ。こんな時間にどうしたの?」

 先程までのどす黒さが嘘の様に笑顔で優しく答えるキャロであったが、その直後ヴィヴィオは…

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!」
「!?」
「キャッ! キャロ!」

 突如として有無を言わせずにナイフを両手に構えた状態でキャロに突撃し、そのまま突き刺してしまった!

「許さない! 私はキャロちゃんを許さないから! 私を差し置いてユーノ君を寝取った
(本人が勝手にそう思い込んでるだけ)キャロちゃんなんて死ね! 死んでしまえば
良いんだから!! そして地獄に堕ちろぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 出来ればジュデッカ辺りを
お願いぃぃぃぃ!!(ジュデッカに関してはダンテの神曲を参照の事。決して異星人の
地球侵略ロボットの事では無い。)」

 ヴィヴィオはキャロをそのまま押し倒し、手に持つナイフでキャロの全身を滅多刺し!
…の割りにキャロの肢体からは血の一滴も流れていない。それは何故かと言うと…

「またまたマジックナイフかよ! このネタ何度続ける気なんだよ!」

 そう。ヴィヴィオがキャロを刺す際に使ったのもマジックナイフ。当然キャロの体に当たると同時に
刃が引っ込むからキャロの肢体が傷付くはずが無い。

「だって本物のナイフを使ったら私犯罪で捕まっちゃうもんね。だからマジックナイフでキャロちゃんを
刺し殺したつもりになって自己満足って言う私なりのけじめ…。だからってキャロちゃんも安心しちゃ
いけないよ。これは死ぬ気でユーノ君を支えてあげなさいって意味合いもあるんだから。
もしユーノ君を泣かせる様な事があったら…その時こそ私はキャロちゃん許さないから…。」
「うっせぇよ…余計なお世話だよこの糞餓鬼が…。てめぇも何時までもユーノさんに
しがみ付いてねーで新しい恋を探す努力をしろ…。」
「!!」ビクッ

 またどす黒くなったキャロにヴィヴィオもまた一瞬震えて硬直していた。
正直今のキャロの姿はエリオ・ルーとしても引いてしまう代物。口には出さずととも
キャロを捨ててルーとくっ付いて良かったと心底考えているに違いない。
だからこそ逆にそんなキャロとくっ付く道を選んだユーノの正気を疑った。

「ユ…ユーノ先生! ユーノ先生はどうして平気でいられるんですか!?」
「え? だって一々相手してたら疲れるじゃないか。時には僕にさえ平気で罵倒して来るんだよ彼女…。」
「うっせぇよ…淫獣野郎は少し黙ってろよ…。」
「ほらね。」
「…………………。」

 どす黒いキャロに物凄い顔で罵倒されてもなお平然としているユーノにエリルーの二人は
違う意味で黙り込む他無かった。正直このユーノは大物過ぎる。

「ああそうですよ! 黒いですよ私は! おかげで管理局のスケバンとか言われる様になりましたよ!
その昔、番長って言われた某野球選手じゃねーんだぞって話! でもついつい良い気になって
スケバン張ったあたいが何の因果か管理局の手先なんてフレーズ使っちゃうんだよね〜!
でも…そんな私をユーノさんは愛してくれますか…?」

 どす黒モードから急にノーマルに戻り、むしろ涙目でユーノに訴えかけるキャロに
エリルーの二人は異様な物を感じていたが、ユーノはそんな彼女を優しく抱き締めた。

「当然じゃないか。だから明日結婚式を挙げるんだろう?」
「あ…ありがとうございます…ユーノさん…。」

 そして始まる二人の口付け。ユーノとキャロ双方の唇が強く密着し、柔らかな舌を絡ませ合う…。
その姿は端から見ていたエリルー・ヴィヴィオの三人にとっても甘い物であり、愛に歳の差なんて
関係無いのだなと改めて考えさせる程であったが…

「オラァ! じろじろ見てんじゃねーよ! 私とユーノ先生の愛はてめぇらに
見せびらかす為にあるもんじゃねーぞ!」

 どうやら『どす黒い』とか『スケバン』とかの異名はそう簡単に返上出来そうに無さそうだ…。

                     おしまい


著者:◆6BmcNJgox2

このページへのコメント

いや、あの、「フェイトそん」ってのはエリオの台詞回しを皮肉った定番ネタでな……

0
Posted by    2012年07月10日(火) 18:32:27 返信

初めて文にフェイトさんの名前が出てきてますが、フェイトそんってなってますよw

0
Posted by 砕けえぬ闇 2012年07月08日(日) 01:35:39 返信

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