849 リリカル学院物語1/3 sage 2008/05/02(金) 04:19:01 ID:le1tfLbC
850 リリカル学院物語2/3 sage 2008/05/02(金) 04:19:50 ID:le1tfLbC
851 リリカル学院物語3/3 sage 2008/05/02(金) 04:20:34 ID:le1tfLbC

 機動六課解散から丁度一年がたった日の事。
 突如として発生した次元渦に飲み込まれるフェイト・T・ハラオウンの乗った戦艦。
 漸く艦に静寂が戻る頃、何故かクルー達は戦艦より放り出されていた。
 もちろん艦長であったフェイトも例外では無かった。



「ぅぅん…あ…れ?ここは…」

 フェイトが目を覚ましたのは、時空管理局の医務室を思わせる一室だった。
 白いカーテンに遮られており周りの様子は伺えなかったが、何やら話し声が聞こえてくる。

「気が付かれましたか?」

 カーテンが開き、奥からこの部屋の主であろう女性が顔を覗かせる。

「一体どうされたのです?フェイト先生ともあろう方が校庭で倒れて居られるとは…」

 彼女は歩み寄ると、フェイトと自身の額に手を当てて熱を計りながら心配そうに尋ねる。
 しかし、フェイトはそれどころでは無かった。

(え?どうしてここにシャマルが居るの?私は確か…)

「どうなさいました?」
「ねえシャマル、ちょっと聞きたいんだけど…どうしてあなたがここに居るの?」

 フェイトは記憶を手繰り寄せるが、思い出せるのは次元渦に巻き込まれた事だけで、それから後の事は全然
覚えていなかった。それもそのはず、彼女達クルーは次元渦に飲み込まれた時のあまりにも強大な振動で全員
が気を失ってしまっていたのだ。
 しかし、フェイトからすれば次元宇宙の海を航海していた自分と管理局本局の医療局に籍を置く彼女とは、
どれだけ急いだとしても顔を合わせるには後10日は掛かるはずであったのだ。

「もしかして私、10日も気を失っていたの?」

 ところが、フェイトの問いに返ってきたのは期待したものとは全くかけ離れていた。

「もぉ、何を言ってるの?ここはザンクト・ビルテ魔法学院の保健室じゃない」
「ザンクト・ビルテ?ザンクト・ヒルデでは無く?」
「ええ、そうよ。
 それに、たしかに私はシャマルであなたと同僚だけど、学院内ではちゃんと“先生”を付けて呼ぶようにって言った
 のはフェイトちゃん、あなたよ?それなのに…もしかして未だ意識がはっきりしてないのかしら?」

 シャマルの口から発せられた言葉に付いていけず、フェイトは頭を抱えてしまった。

「ちょ、ちょっと待ってシャマル」
「どうしたの?」
「えっと、その…」

 どうやらここは自分の居た世界では無いらしい。
 しかし、目の前に居るのは自分の親友の守護騎士である彼女とそっくりなのだ。いや、そっくりと言うのは語弊
があるかもしれない。というのも話し方から仕種まで、どれをとっても本人に間違いは無いのだから。
 独りで考え込んでいても埒が明かず、思い切ってフェイトは彼女に今までの経緯を話してみる事にした。



「そう、そんな事が遭ったの」

 フェイトからいきさつを打ち明けられたシャマルは、彼女の話を一笑に付さず真剣に考えていた。

「信じてくれるの?」
「当たり前じゃない、他ならぬフェイトちゃんの話なんだから。それにね」
「それに…?」
「あなたの目が嘘を言ってないもの」

 そうシャマルに微笑まれ、ついつい照れてしまうフェイト。

「でも、そうなるとすぐには帰れそうに無いわね」

 シャマルの言い分はこうである。
 ここはおそらく、フェイトの居た世界と酷似した世界であり、別の時空に存在する世界であるという事。
 何らかの原因で発生した次元渦に飲み込まれ、こちらの時空世界へとやって来たという事。
 それに伴い、こちらの世界のフェイトが彼女の代わりにあちらの時空世界へと行ってしまっただろうという事。
 事の元凶である次元渦に関しては、こちらの時空世界では調べようが無いという事。



「そんな…じゃぁ私はこれからどうすれば…」

 シャマルの言葉に、ただただ呆然とするしかないフェイト。

「暫くはここで、こちらのフェイトちゃんの代わりをしてみたら?
 もしかしたら、その内に手がかりが見つかるかもしれないんだし」

 その言葉に、フェイトは決心を固める。
 このまま嘆いていても始まらない、手がかりが見つかるかもしれないならどんな事でもしてみようと。
 それにあちらにはクロノやユーノといった頼りになる友人が居るのだ。彼等が異変に気付き方法を探してくれて
いるかもしれない。

「そうよね、少しでも可能性があるなら、それに掛けてみるわ」

 こうして、フェイト・T・ハラオウンのザンクト・ビルテ魔法学院での教師生活が始まったのだった。



次へ?
目次:リリカル学院物語
著者:ツンデレ王子

コメントをかく


「http://」を含む投稿は禁止されています。

利用規約をご確認のうえご記入下さい

メンバーのみ編集できます