86 或る執務官の鍋物 sage 2008/03/13(木) 03:32:49 ID:+GZW3hkr
87 或る執務官の鍋物 sage 2008/03/13(木) 03:33:42 ID:+GZW3hkr
88 或る執務官の鍋物 sage 2008/03/13(木) 03:34:20 ID:+GZW3hkr
89 或る執務官の鍋物 sage 2008/03/13(木) 03:34:57 ID:+GZW3hkr

炬燵布団の一辺にて、微笑みを交わしあい、そっと触れてみる。

手の平から伝わってくる体温が、とても優しげで心地よい。
抱き寄せて、押し倒し、甘い香りが鼻筋を通って舌を痺れさせる。

「フェイトちゃん?」

頬をぷにぷにと突付かれながら、なのはが私の名前を呼んでくれる。
いつになく手触りが気持ち良かったので、ちょっと摘まんで引っ張ってみた。

「駄目だよ…ヴィヴィオが見てる」

視線を向ければ、ザフィーラの側面にしがみついている後姿が、お気遣い無くと語っている。

良い子に育ってくれている、うん、フェイトママ頑張るから、今はちょっと思いつかないけれど、
なんとかして弟か妹が作れるように頑張るから、ありがとうヴィヴィオ。

「じゃあ、そういう事で」
「いったいどこに意思疎通が!?」



『或る執務官の鍋物』



わかり難く書けば、ぷにぷにをはみはみしている最中の突然に、踏まれた。

背中に流している金髪の、真ん中あたりに重量がかけられ、私の下でなのはが潰れている。
いわゆる、マッスルドッキングって一番下になる人が一番辛いよね状態。

「で、人ん家の炬燵で盛ってる万年発情執務官さん、何や言う事はあるかな?」

姦淫姦婦を重ねて一つに踏みつける、柱の如く迷い無き夜天の足の裏から見上げれば、
はやての震える両手は鍋掴み、ぐらぐらと煮立っているおでんの威容に、しばし黙考。

「…ふふふ、うん、安全マットを用意しよう、みんなで気持ちよくしてやるんだ」
「(耐えるの、今は耐えるしかないの)」

じゅ。

「おっと鍋の底が当たってしまったか、コンロの熱がいつまでたっても取れないやろう?」
「な、なのは! 上から来るよ気をつけて!」

「ああっ、フェイトちゃんが香ばしくなっていくの!?」

閑話休題、みぎゃー。

本日はACSで突撃八神家の晩御飯の日でありました、突撃すんな、いいじゃん一食ぐらい、
つーかフェイトちゃん、なんか休暇のたびにご飯たかりに、ウズラ玉子入り蒲鉾好きなんだ、
じゃ、こっちの花丸はフェイトちゃんにあげる、聞いて私の話、まる。

まあ、そんなこんなで鍋もたけなわ。

ぐつぐつにゃにゃー全力全開、ヴィヴィオがアキレス腱と格闘している鍋の横、
ぷにぷに教導官がはんぺんを箸で切り分けながら、ちょっとした疑問を口にした。

「そういえば、フェイトちゃんとはやてちゃんって、よく休みが被ってるよね」

餅入り巾着の紐を解きながら、的確に答えてみる。

「愛だね」
「悪いんやけど、家族愛以外は持ち合わせ無いから、フェイトちゃん対象外」

即座の返答が冷たかったので、餅入り巾着の紐の部分で爆撃を敢行する、はやての皿に。

一本二本、三本四本、ちょい待ち、さては紐だけ残して食っとったな、にやり、何の事かな、
好き嫌いすると大きくな、必要が無いからか、無いからかああぁ、あ、こっちの巾着は玉子だ
ヴィヴィオ、ヴィヴィオ、交換してあげるね、ありがとーフェイトママ、聞いてや私の話。

「なのは、今まで隠していたけど、実は私は6人目のヴォルケンリッターだったんだ」
「真顔で大嘘こくな、ミッド式」

しかしこのアキレス腱、地味に硬い。

「単に、職務がちゃうから、同じ任務でかち合う事が多いんよ」
「人事の方も、面通しが少ない組み合わせにしたがるしね」

まあ何の事は無い、蓋を開けてみれば実も蓋も艶気も無い世知辛い話。
実と言えば、ヴィヴィオは玉子が大きすぎて、またもや悪戦苦闘の有様だ。

しかしこのアキレス腱、本気で硬い。

仕方が無いので、炬燵の横のザフィーラのお皿から、生肉と交換しゃぶしゃぶ敢行。
ご飯の上に大根を乗せ、お肉を置いて汁を注いで、簡単な丼物を作成する。

「……硬かった」
「まったくだ」

牛ロースとアキレス腱を取り替えても、文句を言わないザフィーラは素敵だ。

一度目の煮込みでスジ肉に手を出すからやと、はやてが呆れた声色でたしなめた。
言葉を受けて反省の色の見える、ヴィヴィオが玉子を片付けたので、頭をワシャワシャ。

そのまま問答無用に食材を片付けながら、鍋の季節も終わりかと思う今日このごろに、
だらだらと食後を過ごしつつ、帰ってきたシグナムたちと入れ違いに、暇を告げる。

花冷えの帰路、見上げれば空は高かった。



(余談:ヴィヴィオの背中が眠っているから大丈夫と語っていた件について)



肌を重ねて、どれほどの時間が経過したのだろうか。
思えば随分と、この感触に飢えていた。

別に特別な事をしているわけでもない。
ただ、なのはと二人、そっと抱き合っている。

「フェイトちゃん…」

縋りつくような声色で、想い人に名を呼ばれ、再びに達する。
ぬるりと、汗や蜜液に濡れた太腿を擦りあわせ、押し殺した媚声を上げる。

でも、何もしない。

時折に名前を呼び、口付けを交わし、首筋を絡め、髪を食む。

しっとりと、お互いを染み込ませあうように、流れる汗が、体液が混ざり合い、
伝わってくる体温に歓びを感じながら、夜明けまで何もせず、ただ抱き合っていた。

(終)



著者:33スレ263

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