[112] 今日だけはヴィヴィオがママだよ 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/16(日) 15:51:40 ID:BJiD/g6V
[113] 今日だけはヴィヴィオがママだよ 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/16(日) 15:53:32 ID:BJiD/g6V
[114] 今日だけはヴィヴィオがママだよ 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/16(日) 15:54:46 ID:BJiD/g6V
[115] 今日だけはヴィヴィオがママだよ 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2007/12/16(日) 15:55:39 ID:BJiD/g6V

「え!? なのはママが大変な事になったの!?」
ある日、突然ヴィヴィオは電話でそう報告を受けた。何でも回収したばかりのロストロギアが
誤作動を起こし、その影響によってなのはの身に大変な事が起こったそうである。
そうなればいてもたってもいられないヴィヴィオは慌てて管理局の方へ向かった。

現場にはフェイトやはやてを初めとする様々な面々が既に集まっていた。
「なのはママは一体どうなったの!? 大怪我でもしたの!?」
ヴィヴィオは必死だった。ここまで人が集まる程の大騒ぎであるからして、
なのはがとにかく大変な事になったのは必至。もしかして命に関わる様な大怪我をしたのでは?
…と、血は繋がっていなくともなのはを母親と慕うヴィヴィオはなのはが心配だった。
「大丈夫。なのはちゃん別に怪我はしてへんよ。」
「でも…ねぇ………。」
皆は何やら苦笑いしており、そこでフェイトが胸に抱いていたある物をヴィヴィオに見せる。
それは小さな赤ん坊だった。
「バブ〜! ダァ〜!」
「何この赤ちゃん? そんな事よりなのはママは!?」
「いや…この赤ちゃんがなのはなんだけど…。」
「え…。」
フェイトの一言にヴィヴィオは一瞬固まった。
「落ち着いて聞いてな、ロストロギアの誤作動でなのはちゃんが大変な事になったんは
先に電話でも話した通りやけど、その大変な事がこれや。つまり赤ちゃんなってもうたんや。」
「え? 本当に…? 本当にこの赤ちゃんがなのはママなの?」
ヴィヴィオは改めてフェイトの抱く赤ん坊の方を見るのだが、確かに髪の色や
目の色など、なのはを思わせる面影が幾つもある事がヴィヴィオにも分かった。
と、そこでユーノが一冊の本を持って皆の前に現れた。
「なのはを赤ちゃんに戻してしまったロストロギアの正体が分かったよ!」
どうやらユーノは無限書庫からロストロギアに関しての文献をサルベージして来ており、
皆の前でその本のページを開いた。
「これはどうやら若返りの研究を行っていた成果物みたいだね。」
「若返りの研究!?」
ユーノの発した『若返りの研究』の言葉に皆はざわめき始めた。
やはり『若返り』と言う奴は全次元世界共通の人類の夢であるから、注目されないワケは無いのだが…
「と言っても、そのロストロギアは失敗作みたい。何しろ若返る年齢調節が利かず
強制的に赤ちゃんに戻ってしまうだけだし、効果はたったの一日と来てるからね。」
「何や〜、たったの一日か〜。」
皆は思わず拍子抜けしてしまうのだが…
「でもまあ良かったじゃない。一日待てばなのはは元に戻るんだから。」
「そうやな。そういう意味では幸いやな。」
ユーノがサルベージして来た文献に記された通りになのはが一日で元に戻ると知るや否や、
皆は忽ち安心していた。そしてヴィヴィオはフェイトの胸に抱かれながら小さく動く
赤ん坊なのはの方を見つめながら言った。
「なのはママも最初は赤ちゃんだったんだ〜。」
「そうや。最初は誰だって赤ちゃんなんよ。」
はやては笑顔でヴィヴィオにそう言うが、さらにヴィヴィオは言い返した。
「本当に本当? じゃあもしかしてゲンヤおじちゃんも最初はこんな赤ちゃんだったの?」
「え…?」
普通に考えれば勿論ゲンヤにも赤ん坊の時代があったのであるが、フェイトやはやて達には
どうもゲンヤの赤ん坊時代と言うのが想像し辛い。その為に今のゲンヤがベビー服を着て
おしゃぶりを口に咥えてベビーベッドに寝ている光景を連想してしまい、スバルとギンガには
申し訳ないと思いながらも吹いてしまっていた。
「プッ…プププ……も…もちろんや……もちろんヴィヴィオの言う通りや………。」
「どうしたの〜? どうしてそんなに笑ってるの〜?」
ヴィヴィオは何故はやてが吹いているのか分からずに首をかしげていた。
とりあえず、これで事件は解決と言う事で、次にはなのはが元に戻るまでの一日、
誰がなのはの世話をするか? と言う事へ話題が移るのである。
「なのはは僕が責任持って世話しよう! いずれにせよ近い内に僕はなのはと結ばれて
子供も生まれるだろうし、本当に子供が生まれた際に世話する練習も兼ねて…。」
と、まず第一に立候補したのはユーノであったが、直後にフェイトに軽く突き飛ばされてしまった。
「私はそんなの認めない! 赤ちゃんなのはは私がお世話するんだよ!」
「ああ! フェイトさんずるい! なのはさんは私がお世話したいです!」
と、フェイトに対して異を唱えたのはスバル。なのはに対して熱狂的とも言える
憧れを抱いているスバルだからこそ、赤ん坊化したなのはを一日だけでも良いから
世話をしたいと言う事なのだろうが、それにさえ異を唱えるのがはやてだったりする。
「ダメやダメや! 赤ちゃんはお人形さんやあらへんよ! ちゃんと責任持って
世話出来るもんが引き取らなあかん! っちゅ〜ワケでなのはちゃんは私が預かる!」
何だかんだ偉そうな事言っておきながらはやても赤ちゃんなのはが可愛いから
世話したいだけだったりする。それだけでなく…
「あたしもはやてに賛成だ! はやてなら信用出来るからな!」
と、ヴィータもはやての意見に賛成した。はやてが赤ん坊なのはを世話する事になれば
はやての守護騎士であるヴィータもまた赤ん坊なのはを世話する事が出来るからである。
「いやいやはやてには任せられない! なのはは将来夫となるこの僕が!」
「だからそんなの認めないって言ってるでしょ! なのはは私が!」
「いくら相手がフェイトさんだって譲れません! なのはさんは私が!」
残念ながらユーノもフェイトもスバルも引き下がる様子を見せず、忽ち
赤ん坊なのはの取り合いが始まってしまった。ついには赤ん坊なのはを
直接掴んで引っ張り合う事態にまで発展し…
「オギャー! オギャー! オギャー!」
なのはも痛がって泣き出してしまった。だが赤ん坊なのはを自分の物にしたくて
必死な皆はそれに気付かずに一心不乱に赤ん坊なのはを引っ張り続ける。
「もうやめてぇぇぇ!!」
「!!」
部屋中にヴィヴィオの怒鳴り声が響き渡り、涙目になりながら皆を睨み付けていた。
「なのはママ痛がってるよ! どうして気付かないの!?」
「あ……それは……。」
「オギャー! オギャー!」
今更になってやっと気付いた皆は気まずくなるのだが、そこでヴィヴィオがなのはを
取り上げ抱き上げる。小さな見かけより重い体に少々身を落としそうになるが、
それでも何とかヴィヴィオは赤ん坊なのはを抱き上げさらに言った。
「なのはママはヴィヴィオがお世話する! 今日はヴィヴィオがママになるんだもん!」
「ヴィヴィオ………。」
その時のヴィヴィオの目は本気だった。普通ならまだ小さいヴィヴィオに
赤ん坊なのはを任せるのは不安と考えるはずなのだが…先程なのはが痛がっていた事も
気付かずにひたすらなのはの取り合いをしていた事もあり、皆はヴィヴィオに対して
まともに何か言い返す様な事は出来なかった。
「しゃーない…。なのはちゃんはヴィヴィオにまかすわ。」
「でも…何かあったら私達に連絡して? 力になるから。」
とりあえずここは赤ん坊なのはをヴィヴィオに任せる事に決めた。
もっとも、どうせ直ぐに音を上げて皆に助けを求めてくると皆は考えていたのだが…

ヴィヴィオが赤ん坊なのはを抱っこして帰宅してから数時間が経過した。
ちなみに粉ミルクや哺乳瓶、紙オムツも皆が用意してくれた。
「なのはママすやすや寝てる。」
ヴィヴィオのベッドで気持ち良さそうに静かに寝ている赤ん坊なのはの姿を見ながら
ヴィヴィオは優しい笑みを浮かべていた。
「それじゃあなのはママが寝ている間に学校の宿題を済ませようっと!」
なのはが寝ている間にヴィヴィオは机に向かい、学校の宿題を始めるのだが…
「オギャー! オギャー! ビェェェェェン!」
「え!?」
突然なのはは泣き出してしまったでは無いか。ヴィヴィオは慌てて宿題を中断し、
なのはを抱き上げた。
「どうしたのなのはママ!」
「オギャーオギャー!」
とにかくヴィヴィオはなのはを軽く揺らしながらオムツの方を調べた。
別に特に漏らしている様子は無い。ミルクを飲ませてからそこまで時間も経過していない故に
お腹が空いて泣き出したと言う線も無さそうだ。だとすれば単純に赤ん坊なら
良くある突然理由も無しに泣き出した事と見るべきだろう。
「なのはママ! お願いだから泣き止んで! ほ〜ら高い高〜いだよ!」
ヴィヴィオは赤ん坊なのはを持ち上げたり下ろしたり、揺らしたりと
色々と泣き止ませられる様な事をやるのだが…
「オギャー! オギャー!」
一向に泣き止む気配が無い。部屋中に赤ん坊なのはの泣き声がなおも響き渡り、
これにはヴィヴィオも思わず涙目になってしまうのだが…それを必死に堪えた。
「泣いちゃダメだもん。今日はヴィヴィオがなのはママのママだもん。だから無いちゃダメ…。」
ヴィヴィオは涙を堪えながら、再びなのはを持ち上げたり下ろしたり、揺らしたりと
なのはが喜べる様な試行錯誤を続けた。今日だけは自分がしっかりしないとダメだから…
だから絶対に泣かないとその思いを胸に…。

「キャッキャッ! ダァ〜!」
「良かった。やっと泣き止んでくれた。」
やっと泣き止んで笑い出した赤ん坊なのはにヴィヴィオも安心するのだが、
それも束の間、赤ん坊なのはは突然ヴィヴィオの髪の毛を引っ張り始めたでは無いか。
「あ! 痛い! 痛いよ! なのはママやめて!」
「キャッキャッ! ダァ〜!」
髪の毛を引っ張られると言う行為は地味に痛い。これにはヴィヴィオも涙目になってしまうが
赤ん坊なのははやめる所かむしろそれを面白がってなおもヴィヴィオの髪を引っ張り続けた。
「痛い痛い! なのはママやめてよ〜!」
「キャッキャッキャ!」
ほとほと困り果てるヴィヴィオだが、赤ん坊なのはは赤ん坊故の無邪気さで
悪気は無いのであろうから怒るに怒れない。そしてヴィヴィオには今の赤ん坊なのはの姿が
かつてなのはに色々我侭言って困らせていた以前の自分の姿が重なって見えた。
「そっか…。あの時ヴィヴィオが色々我侭言ってた時のなのはママもきっとこんな気持ち
だったんだね…。なのはママごめんね。だからヴィヴィオも少し我慢するよ。」
赤ん坊なのはの世話を通して自分がどれだけなのはに迷惑を掛けて来たか…
それを悟ったヴィヴィオは少しだけ大人への階段を上がった…様な気がした。

その後でヴィヴィオは赤ん坊なのはに一つのぬいぐるみを渡した。
以前なのはに買ってもらったフェレットのぬいぐるみである。
フェレット形態のユーノを思わせるその可愛らしいフェレットのぬいぐるみは
ヴィヴィオが初めてなのはに貰ったウサギのぬいぐるみに続いてのお気に入りだった。
そして例え赤ん坊になろうとも何となく分かるのか、赤ん坊なのはは
そのフェレットのぬいぐるみが気に入った様子であり、ヴィヴィオのベッドの上で戯れていた。
「ゆ〜のくん! ゆ〜のくん! バブゥ〜! ダァ〜! キャッキャッキャッ!」
赤ん坊なのははフェレットのぬいぐるみを抱っこした状態でベッドの上を
転がりながらそう言っていた。やっぱり例え赤ん坊になっていてもそういうのが分かるのだろう。
ヴィヴィオは机に向かって宿題をしながらも微笑ましい気持ちになっていた。

ヴィヴィオが宿題を終えた後で、静かになった事に気付いたヴィヴィオは
赤ん坊なのはの方を見ると、そこではフェレットのぬいぐるみを抱いたまま
すやすやと眠りに付いてる赤ん坊なのはの姿があった。
「ゆ〜のくん…ゆ〜のくん…キャッキャ…。」
寝言でもその様な事を言っている。恐らくは本当にフェレットと遊んでいる
夢でも見ているのだろう。
「でもちゃんと布団着ないとなのはママ風邪引いちゃうよ?」
ヴィヴィオは赤ん坊なのはに布団を被せると、自分の寝る用意を始めた。

「お休み…なのはママ…。」
寝る用意を済ませたヴィヴィオは布団の中にゆっくりと潜り込み、
赤ん坊なのはを優しく抱いた。
「なのはママあったかい…。」
ヴィヴィオにとって赤ん坊なのはの世話は色々と大変だったが、これで
いつもヴィヴィオを世話してくれるなのはの気持ちが分かり、
ヴィヴィオにとって有益な一日であったに違いない。
「ヴィヴィオもいつかは大人になって…本当にママになる日が来るのかな?
こんな風に赤ちゃんを抱いて…。」
ヴィヴィオはすやすやと眠っている赤ん坊なのはを優しく抱きながら
様々な想いを馳せていたが…そうしている内に彼女もまたゆっくりと眠りに付いた。

夜が明けて朝になり、ヴィヴィオが目を覚ました時にはなのはは既に大人に戻っていた。
ユーノが無限書庫からサルベージして来た情報の通りたった一日の効果に過ぎなかったのである。
「ヴィヴィオ…一日ありがとう。」
赤ん坊になっていた頃の記憶が残っているのか、なのはは目を覚ましたヴィヴィオに
優しく微笑みながらそう口ずさみ、ヴィヴィオの顔にも笑みが溢れた。
「わーいなのはママやっぱり元に戻ったー!」
ヴィヴィオは嬉しくて、思わずなのはに抱き付いていた。
                 おしまい


著者:◆6BmcNJgox2

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