[192] 歳の差なんて関係ねぇ! 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/24(日) 11:00:34 ID:vqc9hSA5
[193] 歳の差なんて関係ねぇ! 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/24(日) 11:01:56 ID:vqc9hSA5
[194] 歳の差なんて関係ねぇ! 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/24(日) 11:03:30 ID:vqc9hSA5
[195] 歳の差なんて関係ねぇ! 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/24(日) 11:04:30 ID:vqc9hSA5
[196] 歳の差なんて関係ねぇ! 5 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/24(日) 11:06:02 ID:vqc9hSA5
[197] 歳の差なんて関係ねぇ! 6 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/24(日) 11:07:13 ID:vqc9hSA5

「この世はこんなはずじゃない事ばかりだ。」
クロノ=ハラオウンはかつてこう言う言葉を残した。そしてその日、ユーノはその言葉は
本当なんだと改めて痛感した。何故ならば……突然なのはが事故死してしまったのだから……。
高町なのはが訓練中の事故によって死亡した。この報告を聞いたユーノは一体何が起こったのか
理解出来なかった。そしてユーノは彼女との結婚を目前に控えていた。
結婚を約束した相手の突然の死。それによって受けたユーノの衝撃は計り知れない。

「南無阿弥陀仏…南無阿弥陀仏…。」
「う…う…なのは…。」
なのはの葬儀を終えた直後から…ユーノは無限書庫に引きこもるようになった。
無限書庫から一歩も外に出る事無く…ただただひたすらに司書長の仕事に没頭する。
そうする事でなのはを失った悲しみから逃げようとしたのだ。

中にはユーノにはそんな現実から逃げる様な事をせず、新たな恋に生きて欲しいと
言う願いを込めてお見合いを勧める者もいた。しかしユーノはそれに応える事は無かった。
何故ならば…ユーノはなのは以外…愛する事は出来なかったのだから。

ユーノが無限書庫に閉じこもる様になって十数年の時が流れた…。
「そうか……僕はもう三十五歳になっちゃったのか………。」
鏡を通して無精髭の生えた自分の顔を見つめながらユーノはふと呟いた。
しかし…この十数年の間…まともに思い出らしい思い出は無かった。
なのはが死んで以来、ユーノは現実から逃げ、ひたすら無限書庫の仕事に没頭し続けたからだ。
管理局としてはそれでも問題は無いのだろう。無限書庫司書長としての務めはしっかり
果たしているが故。しかし…ユーノ個人としてはどうだ。無限書庫での仕事以外の
他の何かが…ユーノには無い。そう考えると…ユーノは空しくなって来た。
「でも……僕が今更何をすれば良いと言うんだ。なのはが死んでから…何もする気が起き無いよ。」
結局それだった。なのはがいなくなってから…ユーノに生きる気力等存在しなかった。
ただただなのはを失った悲しみから逃げるべく…無限書庫の仕事に没頭する。
それ以外にユーノが出来る事…やろうと思う事等存在しはしなかったのだ。
「だからこれからも僕は無限書庫の仕事をする。ここで司書長としての仕事をしている間だけ…
なのはを失った悲しみを忘れられるから………。」
ユーノはそう独り言を言いながら本棚へ向かおうとした…その時だった。
「こんにちわユーノ先生。お久し振りですね。」
「ん…君は?」
突然ユーノの背後に一人の女性が現れた。腰まで伸びた長い金髪の美しい女性。
「誰だい? 君は…。」
「忘れたんですか? ユーノ先生。私です。」
「だから誰…?」
ユーノはやる気の無さそうな声でそう訪ねるのみで、女性も呆れ顔になるが…その後で言った。
「そうですよね…会うのは十数年ぶりですものね…。忘れてしまっても不思議ではありません。
ですが…本当に覚えていないんですか? 私の目を見てくださいよ。」
「目?」
ユーノは女性の目をじっと見てみた。女性の目は赤と緑のオッドアイ。
その目には確かにユーノにとって見覚えのある物だった。
「も…もしかして………ヴィヴィオ…?」
「そう! やっと思い出してくれましたか…。」
その女性の正体はなのはの養子だった高町ヴィヴィオだった。あの時はまだ五歳程度の
小さな子供だったと言うのに、十数年の時を経て美しく成長していたのだ。
それだけでは無い。聖王の器として作られた身であるが故の聖王としての
潜在能力を開花させ、管理局武装隊でベルカ式魔導師として活躍中の身だったのである。
「そうか…十数年の間にそんな事があったんだ……僕も歳を取るワケだよ。」
「その様子だと…もしかしてユーノ先生…まだお母さんの事…。」
「!」
ヴィヴィオの一言にユーノの表情が一瞬変わった。そしてそれに気付かないヴィヴィオでは無い。
「あ! ごめんなさい! 嫌な事思い出させてしまって…。」
「い…いや…君が謝る様な事じゃないよ…。」

間も無くして、ヴィヴィオは一度帰っていったが…その後でユーノは椅子に腰掛け天井を眺めていた。
「ハァ…他人と仕事以外の会話をした事なんて…久方ぶりだな…。」
ユーノは溜息を付いていた。なのはが亡くなり無限書庫に引きこもるようになってから
仕事以外の会話をした事など殆ど無くなり、それ故にヴィヴィオとの会話は新鮮だった。

数日後、その日はユーノにとって休暇の日であったが、外に出る事は無く無限書庫に
引きこもったままだった。そして無限書庫に存在する書物を読むのである。
無限と名が付く故に…無限書庫には長年働いているユーノでさえ知らぬ本が多数存在する。
それを探しては…読む。それが今のユーノにとっての休日の過ごし方だった。が…
「ユーノ先生! せっかくの休日なのにこんな所に閉じこもって…体に毒ですよ!」
「ヴィヴィオ…。」
突然ヴィヴィオがユーノの前に現れた。しかし、今の彼女は管理局の制服では無く
お出かけ用の私服を着ていた。恐らく彼女もまた休暇なのであろう。
そして彼女はユーノの手を引っ張るのである。
「ユーノ先生、せっかくの休みくらい外に出ましょうよ!」
「え? いいよ…別に…。」
「ダメです! たまには体動かさないと本当ダメになってしまいますよ!」
「ええ!?」
結局無理矢理外に引っ張り出されてしまった。ユーノも一応抵抗はしたのだが…
長年無限書庫に引きこもっていた彼がベルカ式戦闘魔導師として現役バリバリのヴィヴィオに
敵うはずも無い事は誰の目にも明らかであった。
「ハァ…。」
「ユーノ先生そんな落ち込まなくても…。お金は私が払いますからたまには遊びましょうよ。」
なおも落ち込むユーノであったが、ヴィヴィオは嬉しそうな顔でユーノを引っ張っていった。
ユーノが久し振りに浴びた太陽の光はまぶしかった。街並をこの目で見る事も十数年ぶり。
変わっていない所は本当に十数年前の変わってはいないのだが、逆に変わっている所は
変わっており、ユーノの知らない建物が幾つも建っていた。
それからユーノはヴィヴィオに引っ張られるまま、色んな所へ連れ回された。
ヴィヴィオにとっては別にどうと言う事は無い普通のお出かけに過ぎなかったが
長い間無限書庫に引きこもってすっかり体力が衰えていたユーノには一溜まりも無い。
すぐに息は上がり、脚もガクガク。帰る頃にはヴィヴィオに肩を貸してもらってやっと
歩く事が出来ると言う有様であった。
「ユーノ先生…やっぱりたまには外に出た方が良いですよ? 体力無さすぎです。」
「ご…ごめんヴィヴィオ…。」
二人は互いに苦笑いするのみだったが…ユーノは悪い気はしなかった。
最初の事は確かにヴィヴィオの行動はユーノにとって迷惑この上無かった。
しかし…こうして久し振りに身体を動かして見ると…疲れる事は疲れるが…その一方で気持ち良い。
そして十数年の時を経て立派な大人へ成長したヴィヴィオが時折見せる子供の様な
あどけなさがとても可愛らしかった。

この日を境にヴィヴィオは休日の度にユーノの所を訪れ、外に連れ出す様になった。
ある時は映画館で映画を見たり、またある時はデパートでショッピング。
またまたある時は遊園地へ行って見たりと…ヴィヴィオは色んな所へユーノを連れ回して行ったのだ。
その度にユーノは疲れてクタクタになって帰って来るのだが…悪い気はしなかった。
それどころか…今まで抱えていた空しさや寂しさが…吹き飛ぶような…そんな
清々しい思いをユーノは感じていた。

ヴィヴィオとの付き合いが始まってニ、三ヶ月程した頃のある晩。
ユーノが主に下宿に使っている無限書庫内の一室にて、ユーノと二人きりになった
ヴィヴィオが突然ユーノに対してこう言った。
「ユーノ先生は…私の事どう思いますか?」
「え? う〜ん…なのはの娘…じゃないの?」
「………。」
漠然と答えるユーノだが…その時のヴィヴィオは何処か悲しげな表情になっていた。
「そうですか……でも……私はユーノ先生の事が……好きです。」
「え? 今なんと?」
ヴィヴィオの言葉にユーノは軽く笑みを返した。
「好きって…まあもう僕達立派な友達も同然だからね。」
「友達とかそんなんじゃありません! 私はユーノ先生が好きなんです! 愛してるんです!」
「またまたご冗談を…。」
ユーノは笑いながら手を左右に振った。確かに今まで二人で色んな所へ行ったが…
流石にそこまでの関係になり得ない…ユーノはそう考えていたのであるが…
「私は嘘は付いていません! 私は……ユーノ先生の事が…好きなんです!」
「わっ!」
突然ヴィヴィオは顔を真っ赤にしながらユーノをベッドへ押し倒した。
確かにユーノも最初の頃に比べて体力も戻って来たが…それでもやはりヴィヴィオの方が強い。
「一方的に押しかけておいて…こう言う事言う筋合いは無いのでしょうけど…。
私は本当にユーノ先生の事が好きです。別にお母さんと結婚するはずだった相手としてでは
ありません。私は…一人の男性としてのユーノ先生が…好きなんです!」
「ヴィヴィオ………。」
その時のヴィヴィオは真剣だった。それはユーノにも目を見て直ぐに分かった。しかし…
「けど…僕と君とでは歳の差があり過ぎる…。こんな三十五のおじさんなんかより…
年頃の君に見合った相手がいるんじゃないかな?」
ユーノはそう言うしか無かった。決してヴィヴィオに魅力が無いわけでは無い。むしろありすぎる。
十数年前は本当に小さな子供だったと言うのに、今ではあの時のなのはにも負けない程
美しい女性へと成長していた。それ以上にヴィヴィオはユーノにとって、生きる喜びを
思い出させてくれた恩人でもある。だが…流石にその愛を受け入れられなかった。
およそ十五にも及ぶ歳の差がユーノを躊躇させていたのである。
「でも私にとってはユーノ先生こそ見合った相手なんです! それに…。」
「わっ!」
ヴィヴィオは突然ユーノの手を掴み…自身の乳房を無理矢理に掴ませた。
女性の乳房を掴むなど…ユーノにとってなのは以来の事だった。
それだけでは無い。乳房の大きさ、張り、弾力、柔らかさ…あらゆる点において
あの時のなのはのそれに勝るとも劣らない素晴らしい物であったのだ。
「私はもう子供じゃないんですよ…。今年で私も二十歳になります。もう立派な大人なんですよ。
それに、私はお母さんの出身世界に関しての勉強をしていた時にある話を知りました。」
「ある話?」
「お母さんの出身世界に昔存在した『木下藤吉郎』って人は二十六の時に当時十四歳だった『ねね』と
結婚…それも当時としては珍しかった恋愛結婚をしたそうなんです。」
「木下藤吉郎…豊臣秀吉の事だね…。」
「この例を見て分かる通り…歳の差なんて関係無いじゃありませんか? 他にも歳の差の
あるカップルなんて吐いて捨てる程ありますよ。」
ヴィヴィオはそう言った事例を挙げるが…ユーノにはまだ踏ん切りは付かなかった。
「けど…今とは時代も世界も違う例を出しても…ここミッドでは関係無いよ。」
「確かにそうです……けど…私は先に言った通りもう二十歳で、法的にも立派な成人です。
ですから……例え十五の歳の差があっても…………ユーノ先生と結婚する事は出来ます!!」
「け…けっこ………!?」
ユーノは絶句した。しかしヴィヴィオは真剣だ。真剣にユーノと結婚を希望している様子だった。
「ユーノ先生…ダメなんですか…? やっぱり…ユーノ先生にとっては私は
まだ子供ですか? 一人の女性として見てはくれないのですか?」
「そ…それは…。」
ヴィヴィオは涙目になりながらユーノを見つめ…それにはユーノも困る。
「で…でもいきなり返答は出来ないよ…。もう少し…考えさせてくれないかな?」
今はこう答えるしか無かった。それにはヴィヴィオも気を落ち着かせながら納得する。
「分かりました…そうですよね…いきなりこんな結婚を求める事自体
私がまだ子供な証拠ですよね……済みませんでした……。」
「いや、そう言う意味で言ったんじゃないよ…。」
気を落とすヴィヴィオにユーノは慌ててフォローを入れるが…ヴィヴィオは暗い表情のまま言った。
「じゃあ…先生の返答を…待っていますから…どっちにしても…早めにお願いしますね?」
そう言ってヴィヴィオは帰って行った。

「…………………。」
ユーノは一人ベッドに寝転んだままずっと考えていた。
勿論ヴィヴィオの求婚を受け入れるか否かに関して…である。
確かにユーノにとって決して嫌と言うワケでも無かった。ヴィヴィオはとても美しく…心優しい。
ここまでの女性は全次元世界探し回ってもそうお目にかかれはし無いだろう。
何よりも真剣にユーノの事を想っている。それはここ数ヶ月の付き合いで理解出来た。
それに生きる事に絶望していたユーノに希望を取り戻させてくれたと言う恩もある。
「でも………ここで信念を捻じ曲げてヴィヴィオと一緒になったら…それは
天国のなのはに失礼な事になるんじゃないか………。」
それがユーノにとっての気がかりだった。なのはが死んだ時点でユーノは
なのは以外の何者をも愛する事はしないと誓ったはずだった。
ヴィヴィオを愛すると言う行為はその誓いに反する行為では無いのか…そう考えていたのだ。
そして…ずっとそれに関して悩んでいる間にユーノはうとうとと眠りに付いてしまっていた。

『ユーノ君…起きて…ユーノ君…。』
「ん…誰だぁい? こんな時間に…。」
ユーノが眠りに付いて一、二時間もした頃、突然何者かの呼ぶ声によって目を覚ました。
眠気眼のままユーノはゆっくりと起きるのだが…自分の目の前にいた者を見て驚愕した。
「なのは!?」
ユーノの目の前にはなんと亡くなったはずのなのはの姿があった。しかもあの頃の姿のまま……
もしや夢では? と慌てて頬を抓って見るが痛い。と言う事はこれは現実なのか…。
「もしかして…本当になのは…。」
『うん。久し振りだね。』
ユーノは優しい微笑を向けるなのはへ手を伸ばすが…その手はすり抜けた。
もしや幽霊? だが…ユーノに恐れの文字は無い。例え幽霊でもなのはとまた会えた事が嬉しかった。
『ユーノ君…気にしなくても…良いよ。』
「え?」
優しい表情のまま言ったなのはの言葉にユーノは首を傾げる。
『私はずっと見てたから…。ユーノ君がヴィヴィオから求婚されたって事…。』
「あ…そ…それは…その…。」
ユーノは慌てて取り繕うとするが、なのはの表情はなおも優しい。
『だから別に私の事なんて気にしなくても良いよ。だって私はもう死んじゃったんだよ。
私がユーノ君と一緒になれなかった事は悔しいけど…でももうこの世にはいない私の事を想い続けて
ずっと悲しい生涯を送るユーノ君なんて…私はもっと嫌。だから…ユーノ君には新しい気持ちで
再スタートしてほしいの。』
「で…でも…僕はもうこんなおじさんになってしまったんだよ。ヴィヴィオの夫なんて似合わないよ。」
『だからそう言う事言わないの! ユーノ君は自分の事を過小評価してるみたいだけど
私に言わせればユーノ君程素晴らしい男性は全次元世界中探し回っても滅多にお目にかかれは
しないと思うよ。ヴィヴィオもきっと…ユーノ君の魅力に気付いたのだと思う。
それにヴィヴィオはもう子供じゃない。もう立派な大人になったんだよ。
例え歳の差はあっても、法的にも結婚しても問題無い歳じゃない。
だから…ユーノ君…もっと自信を持って…ヴィヴィオの想いに応えてあげて?』
「なのは…。」
『頑張ってね…ユーノ君…私は…ずっと…見てるから……ずっと…ずっと…ずっと…………。』
そうして…なのははユーノの前からフッ…と消え去った。これはただの幻覚なのか…
はたまた俗に言う死後の世界からなのはがユーノを応援しに来たのか…それはユーノにも分からない。
しかし、ユーノは信じた。先のなのはは間違い無く本物だと。そして…ユーノは決意を固めた。

                  前編完 後編へ続く



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目次:[[歳の差なんて関係ねぇ!]
著者:◆6BmcNJgox2

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