[315] 私は納豆に命を救われた 1 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/17(日) 10:45:43 ID:kwMDNG8c
[317] 私は納豆に命を救われた 2 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/17(日) 10:47:38 ID:kwMDNG8c
[318] 私は納豆に命を救われた 3 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/17(日) 10:49:19 ID:kwMDNG8c
[319] 私は納豆に命を救われた 4 ◆6BmcNJgox2 sage 2008/02/17(日) 10:50:52 ID:kwMDNG8c

なのはがヴィヴィオを養子として引き取って以来、自炊する機会が増えて来た。
やっぱり母親となったからには自分の作ったご飯をヴィヴィオに食べて欲しい。
そういう思いがあったのである。そしてその日、なのはがヴィヴィオに出したのは納豆ご飯であった。
「ほら、これはママの世界にある納豆って言う物でね、こうしてかき回したら糸を引くんだよ〜。」
なのははヴィヴィオの目の前で実際に納豆をかき回し、糸を引く様を実演してみせる。
「ほら、凄い伸びるでしょ? 納豆の糸はね、同じ太さならナイロンよりも強くて弾力があるんだよ。
それに凄く美味しくて栄養があるんだよ〜。」
なのはは納豆が好物で、是非ヴィヴィオにも納豆を食べさせてあげたかった。しかし……
「う……き…気持ち悪い………。」
「え…? ヴィヴィオ…?」
ヴィヴィオは口を手で押さえ、今にも吐きそうな顔をしていた。
「どうしたの? ヴィヴィオ…何処か具合が悪いの?」
「う……そ……そのなっとうって言うの……気持ち悪いよ…。それに…くさぁい……。」
「ええ!?」
ヴィヴィオには納豆が気に召さなかった様子だった。それにはなのはも不満がる。
「え〜? こんなに美味しいのに…。」
なのはは自分が美味しそうに食べている所を見せればヴィヴィオも気が変わるに違いないと
考え、実際に納豆をご飯にかけて食べて見せた。
「ほら、凄く美味しいんだよ〜。」
「うわ……ネバネバ…糸引いて………気持ち悪い……。」
なのはが納豆の乗ったご飯を箸で摘んで口へ運ぶ度に糸を引く様が気色悪くて仕方なかった。
「このネバネバや糸が良いのに…ヴィヴィオったら…。」
「うあ…ママが…アレ…食べてる……。」
なのはが口一杯に頬張った納豆ご飯を噛んで行く様もヴィヴィオには気色悪い物だった。
ネバネバの糸が引いた豆とご飯が歯によって潰されて…最後には飲み込まれる。
想像するだけでもヴィヴィオにとって吐いてしまいかねない光景だった。
「う…うぇぇぇぇ………。」
「ヴィ…ヴィヴィオ!?」
挙句の果てには本当に吐き気をもよおしてトイレへ駆け込んでしまい、
なのはもほとほと困り果ててしまった。

翌日、なのはは先日の納豆の事で落ち込んでいた。しかしそこでフェイトとはやてが現れる。
「どうしたの? なのは…暗い顔して…。」
「そやそや、どうしたん? 相談ならのるよ。」
「フェイトちゃん…はやてちゃん…。」
やっぱり自分で考えているだけでは埒が明かない。藁をも掴む思いでなのはは
フェイトとはやてに相談して見る事にした。
「あのね……昨日ヴィヴィオの新しい好き嫌いが見付かったの…。」
「それはいけないね。」
「そやそや。ヴィヴィオの事可愛がるのも良いけど、時にはガツンと言ってやらんとな。
好き嫌いしてたらママみたいに大きくなれへんよ〜ってね。」
なのはの暗い言葉にフェイトとはやては笑いながらそう言う。
「所で…ヴィヴィオは何が嫌いだと分かったの?」
「それは納豆だよ。」
「え…納豆…。」
なのはが『納豆』と言う単語を出した途端、フェイトとはやての表情が気まずい物へと変わった。
「うん…ヴィヴィオが納豆を食べてくれないの。それどころか吐いてしまうなんて………。
大豆は凄く美味しいし……栄養だってあるのに………。でも大豆そのものが嫌いじゃない
みたいなんだよ。だってお豆腐やユーノ君がお酒のつまみに買って来るスナック大豆も
普通に食べたりするし……ねぇ…どうしたらいいかな?」
「……………あ………。」
「その………。」
何か言って欲しそうに視線を送るなのはに対し、フェイトとはやては苦笑いしながら言う。
「あの…なのは……あんまり無理に食べさせる必要は無いんじゃないかな……。」
「そやそや! 嫌いなもんを無理に食べさせる方がよっぽど毒や!」
「ええ!? 二人ともさっきと言ってる事が全然違うじゃない!」
納豆と知るや否や二人が掌を返した理由。それは二人とも納豆が大嫌いだったからである。
元々納豆は『外人が嫌う日本食ナンバーワン』と名高いし、同じ日本人の中でも
関西の人間は納豆を嫌の人が多い傾向にあると言う。ならばフェイトやはやてもまた
納豆嫌いだったとしてもそこまで可笑しい話では無いだろう。
しかし……いずれにせよ納豆が大好きななのはにとって面白い事では無い事は確かだった。

その日の仕事を終えて帰宅した後、なのはは納豆と睨み合いをしていた。
「何としてもヴィヴィオに納豆を食べさせてあげるんだから。でもいきなり普通の納豆じゃ
昨日と同じ事になっちゃうから……何とかヴィヴィオにも食べやすい様に工夫しないと……。」
その工夫の方法をなのはは腕組みし、唸りながら考えていたのであったが…
そこで突然電話がかかって来た。
「ハイ高町ですが…ええ!? ヴィヴィオが誘拐された!?」
余りにも予想外すぎる展開になのはは愕然とした。何とヴィヴィオが下校中、
大勢の友達の目の前で白昼堂々謎の男達に拉致されたと言うのである。
確かにヴィヴィオは聖王の器として作られた存在であり、普段はその辺の普通の子供と
大して変わりはしないが、JS事件で実際に聖王の揺り篭を動かして見せた通り、
その潜在している力は計り知れない。むしろそこを利用しようと企む他の時空犯罪者に
狙われてしまっても不思議は無いと言う事だ。こうなってはいてもたってもいられない。
なのはは着ていたエプロンを脱いでバリアジャケットを装着し、その場から飛び立った。
そして拉致されたヴィヴィオを救う為、まず管理局へ向かうのである。

一方、ミッドチルダの奥地のとある建物の中にヴィヴィオが縄で縛られた状態で
座らされていた。そして彼女を拉致した男達の姿もある。
「ほぉ…コイツがあのJS事件であの何とかの揺り篭とか言う巨大艦を動かす
馬鹿魔力を見せ付けたヴィヴィオってガキかい?」
「何とかの揺り篭じゃなくて聖王の揺り篭ですぜボス。」
「おうおうそうだったそうだった。性王の揺り篭だな。凄いないかにもエロそうな王だよな。」
「だから聖王の揺り篭ですって!」
ヴィヴィオを拉致したワリには何とも頭悪そうで子悪党臭のする連中であった。
「とにかくだ。このヴィヴィオってガキを利用すれば凄い事が出来るってワケだ!
で…………コイツの力を引き出すのは一体どうやるんだ?」
「え………どうやるって………。」
「ヴィヴィオも知らないよ。」
「…………………。」
周囲を沈黙と気まずい空気が包み込んだ。やはり頭悪い子悪党臭は伊達では無いのか
ヴィヴィオを拉致したは良いけど、それをどうやって利用するかまで頭が
回ってはいなかった。
「おいおいどうすりゃ良いんだよこりゃぁ!!」
「そ…そんな事言われてもぉ!!」
ボスも子分も号泣しながら大慌て。と、その時だった。

「お前達は包囲されている! 大人しく少女を解放しなさい!」
突然外からその様な声が響き渡った。慌てて外を見てみると、何と彼等のいた
建物は時空管理局の大軍団によって包囲されていたのである。
やっぱり頭の悪い子悪党な時空犯罪者。あっさりと管理局に居場所を突き止められてしまったのだ。
「ヴィヴィオー! いるなら返事してー!」
「ああ! なのはママの声だー!」
管理局軍団の中にはなのはの姿もあった。本来教導隊の人間であるなのはが
こういう事件に出張って来る必要は無いのだが、拉致被害にあったヴィヴィオは
なのはの娘であるし、管理局としても現場の士気高揚にもなるし、
また人々を感動させる美談にもなって管理局の支持率アップに貢献出来るんじゃね?
って事でなのはの出動をOKしたのであった。しかし、そこで突然ヴィヴィオを引っ張った状態で
窓から顔を出した時空犯罪者のボスがヴィヴィオの首にナイフを突き付けたのである。
「動くなお前等!! このガキがどうなっても知らないのか!?」
「ああ! ヴィヴィオ!!」
こうなっては大変だ。時空犯罪者達も子悪党であるが大変に焦り、気が立っている。
こういう状況で下手に刺激する様な事があれば本当にヴィヴィオを殺すかもしれない。
皆に緊張が走った。なのはもまたこの状況で何とかヴィヴィオを助け出す方法は
無い物かと必死に考え、その度に息が荒くなっていたのだが…………その時それは起こった。
「うっ…臭ぇ!!」
「え!?」
突然時空犯罪者のボスが鼻を押さえた。これには管理局の皆も首を傾げるが、
次の瞬間さらに時空犯罪者ボスはヴィヴィオを離してのた打ち回り始めたのだ。
「うぇぇぇ!! 臭ぇぇ!! 畜生!! 誰かこの中で納豆食いやがった奴がいやがるなぁ!?
俺は納豆が世界一嫌いなんだよぉぉぉ!! 臭ぇぇ!! 臭ぇぇよぉぉぉ!!」
「え…………納豆………。」
何か良くは分からないが…この男…とてつも無く納豆が嫌いな様子だった。
しかもその嫌いの度合いはヴィヴィオのそれを遥かに凌いでいる。
何しろここまで激しくのた打ち回る程であるから。
「臭ぇぇ!! 臭ぇぇ!! 納豆臭ぇぇよおぉぉぉぉ!!」
なおも男は鼻を押さえてのた打ち回る。ちなみに彼が感じた納豆の匂いと言うのは
なのはから発せられた物である。何しろその日の昼食にも納豆ご飯を食べていた故、
口臭にも納豆の匂いが混じっていて何ら可笑しい事は無い。と言っても、普通の人にとっては
別になんとも感じない程の僅かな物である。しかし、極度の納豆嫌い故に納豆に対して敏感になっていた
時空犯罪者ボスにとっては、ほんのかすかな納豆の匂いにも反応してしまったのである。
しかしこれは管理局にとって好機である。忽ち武装局員達が突入して一網打尽。
ヴィヴィオは無事救出され、時空犯罪者達は皆検挙された。

事件も解決し、ヴィヴィオを連れて帰宅したなのははテーブルを挟み
ヴィヴィオと面と向かって大切な話をしていた。
「勿論今日の事に関してヴィヴィオに非は無いよ。ヴィヴィオは悪くない。
悪いのはヴィヴィオを不当に拉致した時空犯罪者だからね。でも…………
もしもヴィヴィオが納豆普通に食べれる子だったら事件は未然に防げてたかもしれないんだよ。」
「う…うん………。」
ヴィヴィオが気まずそうに頷いた後でなのはは納豆をヴィヴィオへ差し出した。
時空犯罪者が極度の納豆嫌いだったのは偶然だ。しかし、逆になのはが納豆好きであったが故に
ヴィヴィオの命は救われたとも言える。だからこそ、今回の事を機になのはは
ヴィヴィオに対し納豆への再評価をしてもらいたかったのである。
「う…うん……ヴィヴィオ…食べてみるよ……怖いけど……納豆食べてみるよ…。」
当然ヴィヴィオにとって納豆を食べるという行為は怖い。しかし、今回なのはの
納豆好きのおかげで自分の命が救われた言うのは否定しようが無い事実。
なのはへの恩を返すと言う意味も込めて…ヴィヴィオは死ぬ思いで納豆を口の中へ放り込んだ!
「…………………。」
ヴィヴィオは物凄い形相で強く目を瞑り、全身を振るわせる。やっぱり不味いのか?
なのはも不安になるが………
「おいしい!!」
突然笑顔になったヴィヴィオになのはは良い意味で驚いた。
「何だ、結構美味しいんじゃない。」
「でしょぉ? 納豆美味しいでしょう?」
実際食べてみればこの通り。ヴィヴィオは納豆のネバネバや糸を引く所に
怯えていただけなのかもしれない。そして次々に口の中へ納豆を運ぶヴィヴィオの姿に
なのはも嬉しくて、思わず頭を撫でた。
「それじゃあ私も納豆いただきま〜す!」
なのはも納豆をかき混ぜてご飯に混ぜ、その日の夕食は二人で納豆ご飯を楽しんだそうな。

「さて…次はフェイトちゃんとはやてちゃんだね………。」
納豆を食べ終えた後で…なのはは呟きながらニヤリと笑みを浮かべた。
そう、高町なのはのミッドチルダ納豆布教伝説はこの日から始まるのだ。

  ミッド書房刊 ヴィヴィオ=T(高町)=スクライア自伝『私は納豆に命を救われた』より抜粋

                    おしまい



著者:◆6BmcNJgox2

このページへのコメント

俺の親父も納豆嫌い、俺は好き

0
Posted by ななっしー 2015年03月14日(土) 07:47:11 返信

因みに俺は、納豆が嫌いです。

0
Posted by 名無し 2013年02月14日(木) 17:48:10 返信

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