最終更新: nano69_264 2012年05月12日(土) 21:02:44履歴
658 名前:真冬☆無情 [sage] 投稿日:2012/01/22(日) 01:08:20 ID:Rksm.KFU [2/3]
真冬☆無情
雪が降った、寒い、冬である。
「さむい」
「うう、さむい」
「ああ、さむい」
女三人はまるで示し合わせたかのように言葉を漏らす。
白い息も混じっていた。
冬である。
「さむい」
「さむい」
「さむい」
痴呆のように連呼する女、それぞれに名を八神はやて、ヴィータ、シグナムという。
場所は海鳴、八神家、一階居間、こたつ。
二人ほど欠けているのには理由があった。
シャマルは医務官という職業柄の不幸で風邪を移され、二階の自室で寝込んでいた。
ザフィーラは獣の本能のままに公園で雪と戯れていた。
狼は良かった、このような時節すら楽しめるのだから。
医務官は不幸であった、誰も看病してくれず枕を濡らしていた。
だがそれにも理由はある。
海鳴市内において発生した停電の影響で暖房機器が沈黙、誰もこたつより出なくなったのだ。
つまりは薄情であった。
気温より人の情が応える。
冬である。
「なあ、ちょっとええ?」
「なんだよはやて」
「なんですか主」
「そろそろ魔法瓶のお茶がなくなりそうや……」
「……」
「……」
白い息だけ残して三人が沈黙した。
みかんと共にこたつの上に鎮座する湯のみと、魔法瓶には熱い日本茶が入っている。
現状で唯一身体を暖めてくれる恵みの露であった。
これを失うのは地獄と同義だというのに、それが切れ掛かっているという。
「なあ、私って八神家の家長やん?」
「はやてきたない」
「下劣です主」
「……じゃあどうするん残りのお茶」
「あたしって一番小さいじゃん?」
「なあヴィータ、私は守護騎士の長だな?」
「シグナムさっき私に言ったのはどの口なん?」
そして三者は沈黙した。
醜い私欲のぶつかり合い、これが本当にかつて仲睦まじかった八神家だろうか。
気温も心も冷めていた。
冬である。
「とりあえずお茶は公平に三等分でどうやろう」
「……異議なし」
「……同意」
そうして僅かな、本当に僅かな量のお茶を湯のみに入れて飲む三人。
言うまでもないがその程度ではちっとも暖かくならない。
出来る事はただこたつに深く身を沈め、うーさむい、と言いながらがたがた震える事だけである。
女三人寄れば姦しいと言うが、その場にうるさいほどの会話などなかった。
あるのはただ無言と白い息。
「なあ」
ふと、その沈黙をはやてが破った。
「なに?」
「なんでしょう」
「ザフィーラの毛皮って剥いだらあったかいんかなぁ」
言葉と共にシグナムのレヴァンティンが顕現した。
ぎらりと光のはただの刃光と呼ぶには禍々しすぎる、狂気であった。
「三人分には少し足りないかもしれませんが」
「その前に逃げられるかもしんねえよ?」
「そっかぁ」
残念そうにうなだれるはやて。
結構本気であった。
「あ、代わりに提案あんだけどさ」
「なんやヴィータ」
「シグナムの力で火出せばあったかくなんね?」
「それ結構名案やな。シグナムやれそう?」
「少し出力に加減が必要でしょうが、おそらく」
「よし! 頼んだぞシグナム!」
「頼んだよシグナム!」
ぼっ、とレヴァンティンに火が点る。
一気に気温は暖かくなった。
いや、なり過ぎたと言うべきか。
その時生まれた火焔は、見事に八神家の一階を消し炭にしたのだった。
はやてとヴィータは炎で髪がちりちりになって、高○木ブーの雷○様状態になった。
二階で寝ていたシャマルは思わず窓から脱出して転げ落ち、雪の上にダイブ、さらに風邪を悪化させて泣きを見た。
シグナムは放火未遂で留置所でくさい飯を食う事になった。
後で家に帰ってきたザフィーラは開口一番「こうなるんじゃないかと思っていた」と零したらしい。
悲劇であった。
冬である。
終幕
著者:ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ
真冬☆無情
雪が降った、寒い、冬である。
「さむい」
「うう、さむい」
「ああ、さむい」
女三人はまるで示し合わせたかのように言葉を漏らす。
白い息も混じっていた。
冬である。
「さむい」
「さむい」
「さむい」
痴呆のように連呼する女、それぞれに名を八神はやて、ヴィータ、シグナムという。
場所は海鳴、八神家、一階居間、こたつ。
二人ほど欠けているのには理由があった。
シャマルは医務官という職業柄の不幸で風邪を移され、二階の自室で寝込んでいた。
ザフィーラは獣の本能のままに公園で雪と戯れていた。
狼は良かった、このような時節すら楽しめるのだから。
医務官は不幸であった、誰も看病してくれず枕を濡らしていた。
だがそれにも理由はある。
海鳴市内において発生した停電の影響で暖房機器が沈黙、誰もこたつより出なくなったのだ。
つまりは薄情であった。
気温より人の情が応える。
冬である。
「なあ、ちょっとええ?」
「なんだよはやて」
「なんですか主」
「そろそろ魔法瓶のお茶がなくなりそうや……」
「……」
「……」
白い息だけ残して三人が沈黙した。
みかんと共にこたつの上に鎮座する湯のみと、魔法瓶には熱い日本茶が入っている。
現状で唯一身体を暖めてくれる恵みの露であった。
これを失うのは地獄と同義だというのに、それが切れ掛かっているという。
「なあ、私って八神家の家長やん?」
「はやてきたない」
「下劣です主」
「……じゃあどうするん残りのお茶」
「あたしって一番小さいじゃん?」
「なあヴィータ、私は守護騎士の長だな?」
「シグナムさっき私に言ったのはどの口なん?」
そして三者は沈黙した。
醜い私欲のぶつかり合い、これが本当にかつて仲睦まじかった八神家だろうか。
気温も心も冷めていた。
冬である。
「とりあえずお茶は公平に三等分でどうやろう」
「……異議なし」
「……同意」
そうして僅かな、本当に僅かな量のお茶を湯のみに入れて飲む三人。
言うまでもないがその程度ではちっとも暖かくならない。
出来る事はただこたつに深く身を沈め、うーさむい、と言いながらがたがた震える事だけである。
女三人寄れば姦しいと言うが、その場にうるさいほどの会話などなかった。
あるのはただ無言と白い息。
「なあ」
ふと、その沈黙をはやてが破った。
「なに?」
「なんでしょう」
「ザフィーラの毛皮って剥いだらあったかいんかなぁ」
言葉と共にシグナムのレヴァンティンが顕現した。
ぎらりと光のはただの刃光と呼ぶには禍々しすぎる、狂気であった。
「三人分には少し足りないかもしれませんが」
「その前に逃げられるかもしんねえよ?」
「そっかぁ」
残念そうにうなだれるはやて。
結構本気であった。
「あ、代わりに提案あんだけどさ」
「なんやヴィータ」
「シグナムの力で火出せばあったかくなんね?」
「それ結構名案やな。シグナムやれそう?」
「少し出力に加減が必要でしょうが、おそらく」
「よし! 頼んだぞシグナム!」
「頼んだよシグナム!」
ぼっ、とレヴァンティンに火が点る。
一気に気温は暖かくなった。
いや、なり過ぎたと言うべきか。
その時生まれた火焔は、見事に八神家の一階を消し炭にしたのだった。
はやてとヴィータは炎で髪がちりちりになって、高○木ブーの雷○様状態になった。
二階で寝ていたシャマルは思わず窓から脱出して転げ落ち、雪の上にダイブ、さらに風邪を悪化させて泣きを見た。
シグナムは放火未遂で留置所でくさい飯を食う事になった。
後で家に帰ってきたザフィーラは開口一番「こうなるんじゃないかと思っていた」と零したらしい。
悲劇であった。
冬である。
終幕
著者:ザ・シガー ◆PyXaJaL4hQ
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